PandoraPartyProject

ギルドスレッド

同人ショップ『二次元ぱれぇど』

【PR】春色の天秤と秋の残り香

ひと昔前のアニソンメドレーが流れる店内で、黙々と読書に励む店主。

新しくなった事といえば、カウンターに飲食用の椅子が設置された事だろうか。

「よう。今日は漫画飲みながら一杯やってくか?」

オタクショップ<にじぱれ>は今日も平和?
※誰でも乱入OK
※店主多忙につきまったり・ムラレスRP

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……そういうのじゃなくて、ふわふわしててかわいいやつ。僕に着せてみたいやつの話!
(ぶっすりと頬を膨らませたまま、カクテルを作る様子に目だけきらきらさせた)

何かあったらちゃんと逃げられるもの。春樹さんに心配される程じゃないよ!

(唇の端を緩めた事には気付かないままころころと笑った後、栞を挟み直して丁寧にランベールに頭を下げる)
これはこれはご丁寧に。さっき紹介されましたけど、僕は透垣政宗って言います。
……やだー、先生誰にでもそんな事いってたんだぁ…らしいけどぉ…っていうか、春樹さん何を依頼したんですかぁ?

(こてんと首を倒し、姉ヶ崎の方に顔を向けた)
自分の中にイメージがあるなら、そのふわふわした可愛いヤツ着ればいいじゃねぇか?

(現れた探偵の前に桜泡カクテルを。すぐに再び手を動かして)
政宗は確か、酒はあんま強くないんだよな。
(と問いつつレシピを脳裏で探る)

逃げきれなかったから今俺達は困ってんだろ。
探偵の得意分野といやぁ身辺調査、そして推理。俺たちが奪われたものを取り返すための糸口を見つけられりゃと思って呼んでみたんだよ。
(ランベールの足元の影から、ぬるり。金と蒼の目がのぞく。ぱちぱち瞬いて、政宗と姉ヶ崎を交互に見)
ちーがーうーのぉ!春樹さんが僕に着せたいやつがいいのー!
(やだやだと駄々をこねる子供のように首を振る。)

うん、あんまり強くない。あと甘いのが好きです!……でも、勤務中だし僕お茶でいいですよ?
なんとなく従業員としていけない気がするの。
(真面目にしといた方が何かと便利だしなぁ。と言わないように口に袖を当てつつ思う)

…あうう、めちゃめちゃ耳が痛い。
凄いなぁ、にしても春樹さんそんな事考えてたんですね。糸口、かぁ…何かあれば良いんだけど。僕はともかく、春樹さんが奪われっぱなしだと困っちゃうからなー。
(影から顔を覗かせた竜に少し驚いたが、即座目を輝かせてしゃがみこむ)
わー、こんにちはぁ!ランベールさんランベールさん、この子なぁに!?
ありがとう、姉ヶ崎さん。いい香りの、これは……シャンパンカクテルかな?

それにしても、何だか面白い関係の2人だね、君達は。透垣くん、転職考えるような事があったらうちの探偵事務所においで。……その様子だと、姉ヶ崎くんにあしらわれてもめげなそうだけど。

(影がらぬるりと龍の頭が覗き、透垣と目線を合わせる)
あぁ、これが「僕」の本体なんだ。獣種の体の方は死体なんだけど……っと。話したら長くなるから割愛して。

龍の目から2人の様子を見ると、なるほど何か「欠けてる」気がする。
助けてあげたい所ではあるが、僕は武器商人さんに大恩があるんだ。直接的な介入は出来ないなぁ。
着せたい?特にないが。
……そこまで言われたら、なんか考えるかぁ。

政宗ならそう言うと思ったから、ほら。
(鮮やかなピンク色の飲み物を出し)
ノンアルコールカクテルにしといたぞ。「バージンブリーズ」。気になったら飲んでみな。

(ランベールの主張を聞くと、目を僅かに見開いた。すぐに腕組みして考えつつ)政宗、ランベールにいい感じに「お願い」してみろ。これも業務のうちだぞ。
探偵事務所で働くのも楽しそうですねぇ。…まあ、春樹さんが記憶を失う前からちょくちょくかわされてたので慣れてますよ。転職するとしたら、そうだなぁ……先生に愛想つかしたらお邪魔しましょうかね。

…ぶっちゃけ春樹さんの趣味でいいんだけど。なんなら性癖でもいいんだけどぉ。なんか考えてくださいな。
(鮮やかな色合いにほう、と息を吐いて)
あ、ありがとうございます…!綺麗…後で飲ませて頂きますね。

(目線が合った龍を見つめたまま、ランベールの言葉にこくこくと相槌を打つ)
この子が本体なんですか!?……えっ、え、どういう仕組みで体が動いてるのかめちゃめちゃ気にはなるんです、けど…!今度にします…

(春樹の言葉に仕方ないな、と目を伏せて)
僕は「罪悪感」を、先生は「記憶」を持っていかれてるんですよねぇ。春樹さんはそれだけじゃないっぽいけど…
間接的な介入でもいいんです。探偵として出来る範囲の事で良いので、助けてもらえませんか…?
……僕の大事な人の一部が、師匠に奪われたままっていうのは嫌なんです。どうかお願いします!
(じっとランベールの目を見たまま、真剣な声色でそう告げて頭を下げた。上手い表現が思い浮かばず、馬鹿正直になってしまったし、いい感じではなかったかもしれないけど、本心だ。)
狡いぞ、姉ヶ崎。そうやってまわりの人間をダシに使って。
とはいえ。うーん……演技でもなさそうだし、透垣さんは本当に困ってるみたいだね。
(目をそらせず、お願い事に顎をさすりながら考え込む素振りを見せる。カクテルに口をつけて喉を潤した後)

今聞いた話であれば、取り戻したいものは3つ。
透垣さんの「罪悪感」、姉ヶ崎さんの「記憶」加えて失ったらしい「何か」。

であれば、もっとも君達が取り戻しやすいのは姉ヶ崎さんの「記憶」であると推測するよ。そしてその手がかりは、恐らく武器商人さんを介する必要はない。
確かどっかに仕立て屋の名刺貰ってたんだよな。俺じゃコーディネート上手くないし、そいつが信頼出来そうな奴なら依頼してみるか。

……俺としては、政宗の失ったもんが取り戻せれば他はどーでもいいんだが、難しいもんなのか?
貴方に着せて欲しいっていうのに……このわからず屋ぁ。春樹さんはもっと娯楽とか色んな事に目を向けるべきです!もういい!
(腕を組み、ぷいっとそっぽを向く。乙女心のわからぬ奴め。…や、乙女ではないけども。)

僕のに関しては、師匠に取り引き持ちかけるしか方法はないと思いますよぉ?……春樹さんはそう言うけど、僕だって貴方と同じ気持ちなんですからね。
ランベールさん、先生の記憶を取り戻せる手掛かりがあるなら教えてください。
狡いぞ、姉ヶ崎さん。そうやって美少年を気まぐれに振り回して。なんだか透垣君が不憫に思えてきたよ……。

透垣さんの言う通り、感情の欠損は奪った主から返して貰わないと、多分どうにもならないと思うんだよ。しっかり対策を練らないと、多分逆に追い剥がれるんじゃない?
(肩を竦めて軽く首を振ってみせる)
ただ、記憶については……記憶を失う前の姉ヶ崎さんなら、万が一の時のために、何かしら「保険」を用意していると思うんだよ。例えば、この建物の何処かにとかね。
人生が娯楽だ。いかに効率的に日々を過ごし、余裕をもって暮らせるか。……他に必要な事あるか?
(顎の無精髭をさすりつつ首を傾げた。なんか哀れみの目でこちらと政宗を交互に見るランベールに、理解出来ないと眉を寄せる)

保険ねぇ。買い被りすぎだと思うが、要は家捜ししろって事かよ。まぁ、命がけの交渉よりは、よっぽどいいが。
(本当にそういう所が嫌いだ!もっといっぱい、人間らしくあるためには大切な事があるだろうに!…思い返すと、先生もそういう所あった気がする。案外淡白だったような…?
頭を振ると、きっと睨んで指をさした)
……わかった。もういい。僕が勝手に色んなとこ連れ出したりするから!美少年とデートだぞ喜べ姉ヶ崎春樹!
同情してくれてありがとうねぇ、ランベールさん。もう「姉ヶ崎春樹」に振り回されるのには慣れっこだからいいんだよ……
(苦笑し、ほんとは嫌じゃないんだとランベールにだけ聞こえるように囁いた)

保険?……まあ、計算高い先生ならしてても可笑しくはないよねぇ。前に渡した写真とかショック療法になり得ないかなー…
また師匠に何か持っていかれるの嫌ですし、探してみますか?春樹さん。
……?そんなに怒るな。
前みたいにデート先で熱出して倒れんなよ、美少年。おつきの騎士(ナイト)は心配なんだ。何だかんだで、まだまだお前さんは危ういところあるからな。

(ランベールへの囁きには、何か唇が動いたようなところは気づくも声は聞こえず、眉を寄せた)
なんか言ったか?

なるほどな、もしも俺が今から新しく記憶を失うとしても、多分そうする。記憶が戻れば気になる事はあるものの、純粋に……忘れていた戦闘のノウハウを手に入れられるのはデカい。
というか、写真ってなんだ。この店に置いてある感じの(コスプレ的な)写真か?
慣れっこねぇ。……ん。
(政宗の囁きに頰が緩む。姉ヶ崎が囁きを気にすると、見せつけるように唐突に、政宗を自分の方へ引き寄せようと二の腕へ手を伸ばそうか)
気になるかい?姉ヶ崎さん。……超ヒミツ。

さて、合意を得たなら僕も探すとしよう。その前に一言断っておくが、僕は探偵。探しものは得意だがーー
片付け、下手くそだからそこんところは宜しくね?
ぐ…!あ、あの時は熱じゃあなくて…!うう。いつも心配かけてばっかりですね……年相応に、も少し落ち着いた方が良いのかなぁ。

(媚薬だったなんて言えず、言い淀みながらも「騎士(ナイト)」という響きに胸をときめかせる。突然腕を引かれるとよろけてランベールの胸元に頭を預ける形になり、生娘のように顔を赤らめた)
ら、らっ、ララランベールさん!からかうのは止してください…!

この店に置いてある感じのではあるけど…今思うともうちょっと過激だったと思う。発端は先生にあると思ってるけどさ。

……片付けは僕が頑張るので、任せてくださいな。
構わん。俺が必要でなくなったら困るからな。

……あ゛?
(ランベールの挑発に、珍しく不機嫌そうな声が漏れる。指の関節をバキバキ鳴らしながら)
政宗はうちの従業員だ。困るんだよ変な事吹き込まれたら。

過激な写真だろうが何だろうが探してやるよ。記憶がなくとも、ここは俺の城だ。何なら競うか?どっちが先に手がかりを見つけるか。
ダメだよー透垣さん。そんな無防備な顔、僕以外の前で見せちゃーー……ん?
(胸元に引き寄せた政宗の頭を優しくぽんぽんと撫でていたが、思っていた以上につっかかってきた姉ヶ崎に、飄々とした笑みを浮かべて)
君こそたまには脳細胞の動かしてない部分を働かせたまえよ。

やっと面白くなってきたね。それじゃ俺も遠慮なく探すか。
(獣種の双眸が妖しく光る。その瞬間、まわりの小物がふわふわと浮き始めたり)
"濁欲ノ大神 降りませり。水重到来、喼急如律令"
どうしてぇ?貴方が必要じゃなくなっても、会いには来るのに。

僕以外の前でなんて…今日が初対面、ですよね…?
(触れられたのに不思議と不快感を感じず、目を伏せて恥じらう。初めて聞いた姉ヶ崎の苛立った声に驚くと慌てて胸を押した。)
あっ、あ、駄目です春樹さん!変な事されてないから平気ですよ…!

(おろおろと宥めていたが、提案にはぱっと明るい表情を浮かべて頷いた。)
競争、良いですね。楽しそうだし!へへ、見つけたら多分びっくりしますよぉ!

……すごぉい…どうなってるんですか…?
(驚きに口を開けたまま、きらきらと目を輝かせた)
何事も理由ってのは人を動かす理由になる。
それがねぇうちは何も信用ならん。

だから策を練る。理由をつける。狡猾に動く。
口約束だけで心が縛れるなら、とっくにやってるさ。
(何故こんなにも「信頼」に近い言葉に疑心がわくのか。それも記憶を取り戻せば、或いは分かるかもしれない。辺りの物が宙に浮くと、邪魔っけそうに近くのものを避けながら腕をまくり)

上等ォ。俺が勝ったら、とりあえず政宗に歯がガタガタに浮きそうな甘い言葉をかけるのをやめろ。
政宗が見つけたら、そうだな…今月の給与に特別ボーナスだ。

(スタートの合図は切らずに、さっさと背を向けて棚を漁りはじめる。この男、本気である/乱数勝負で大きい数を出した人に手掛かり)
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透垣さんは満足してるようだが、君は君で、もっと評価されるべきだと僕は思うよ?
(焚き付けてムキになった姉ヶ崎を視線で指してから、政宗へ茶目っ気たっぷりにウィンクをする。辺りにうかんだ物のうちのひとつを手に取り)

僕はこれでも神さまだからね。混沌肯定ですっかり力は失われてしまったけど、これくらいは。さて、目当ての物はどこかなー?
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……春樹さんは臆病だね。僕は、春樹さんの事を裏切ったりしないのに。

駄目ですよ。これ以上もっと、なんて迷惑をかけてしまいます!…一緒に居られるだけで僕は良いんですよ。
(信用されていない。少なくともそう感じて、酷く悲しくなった。彼からすれば僕は会ったばかりの人だから当然だってわかってるのに。どこか遠くを見るように目を細め、ランベールに微笑み返した)

神様…?友達に魔王や勇者は居るけど、神様は初めて。どんな原理で動いてるのか気になるけど、今は手がかり優先だなぁ!

あとね、僕としてはボーナスよりも貴方との時間が欲しいです!
(浮いた小物に興味が行くが、姉ヶ崎の真似をするように腕捲りして作業机の引き出しに手をかけた)
65
(政宗がガラッ!と作業机が開けた引き出しに、明らかに大事そうな金庫が入っている)
……マジだね。(あまりにもアッサリ見つかった手掛かりに、そこかしこに浮かせていた物をばさばさと落とす)
……マジで?(思った以上に掃除が大変そうだなぁと真顔になりつつ、丁寧に金庫を取り出した)
どう見ても見られたくないモンだよな、これ。鍵が掛かってるみたいだが。
(取り出された金庫は、ダイヤル錠のもの。抱えて持たなければいけない程の大きさのものだ)

四桁入るみたいだが、いったい何を入れりゃいいんだ?
あとランベール、落としたやつで汚れたのは弁償な
いやいやいや、前置きしたじゃないか。お掃除は専門外だって。

どれどれ?ダイヤルね……。ちょっと待ってて。えーっと……コンクリートマイク、どこにあったっけ。忘れてきたかな?
(影からぬるっと出てきた龍と一緒に、金庫の右側と左側にそれぞれの耳をあててダイヤルを弄りはじめる。格闘する事ものの10分。カチャンと解錠の音がした)

0527、で開いたね。
(あの人が、どんな物を閉まっていたのか。果たして開くのか。
不安と好奇心で落ち着かなくて、無言のままうろうろと周囲を歩き続ける。
解錠の音がすると、緊張感にきゅっと袖を握った)

……なんで0527なんだろ。
そういや店にあるカレンダーも、0527にまるが付けてあったな。何か意味のある日なのか?

(金庫の戸を開けてみると、そこには束になった漫画の原稿が置いてあった)

何だよ今まで描いた原稿か。見ないと思ったらこんな所に隠してたんだな。
政宗、一応中身見といてくれ。俺はほかに何かないか探す。
意味……少し、考えてみます。思い当たりそうな気がするので。

…はい。
(何だよって何だよ。先生にとっては、何より大事なものだったのに。まだ足りない、やっぱり、やっぱり僕の惹かれたあの人じゃない!何か喋ったら余計な事を言ってしまいそうで、一言だけ返した。
束になった漫画の全てを読み返そうと、そっとページを捲った)
(「俺は、不器用な人間だ。」
そんな描き始めから始まる原稿には、中学生くらいの仏頂面の青年が描かれていた

青年の名は姉ヶ崎春樹。学校での成績は上の中。目立ちすぎず、面倒な人とのぶつかり合いを避けて無難に生きることを目標にしていた、何とも無気力な主人公だ。

そんな彼の隣で無邪気に笑う、幼馴染の兄峰冬理。彼が二次元オタクになったのをきっかけに、姉ヶ崎も「仕方がないな」と漫画を読み、アニメを見て、ついには絵を描けない冬理の代わりに漫画を描き始めていく)
……違う。これ、今まで読んだ事のある漫画じゃない…

(先生の画風ではあるが、見覚えのある仏頂面。もしやと思った予感は「主人公」自らに答えられた。
恐らく、先生の自伝なのだろう。漫画を描き始めるまでは、今みたいな人だったんだって知れたけど……
冬理さんが出てくると、きゅっと心臓が痛んだ。多分、僕じゃ一生勝てない相手だから。二次元オタクになるきっかけの上に、初恋の人だもの。絶対に覆らない。
じくじくと胸が痛むけど、それでも読み進める。……これを読めば、僕の事をどう思ってるかもはっきりするだろうから。)
(BLの世界を知って、同人活動がBLに変わっても、素直に作品を褒める冬理。やがて編集者になった彼を支えるために、夜はバーテン、昼は原稿作りの生活がはじまり
密かな想いを描く日々を続けていた。

そんな日々も、そう長くは続かない。
「俺、婚約したんだ!真っ先に親友の春樹に報告したくて!」
笑顔の冬理に無理矢理な笑顔で返した後の事は、もうよく覚えていない。

ただ、描きはじめた作品がアニメ化を迎えるにあたり、最後まで描こう。その後には何もない。
漠然と死の匂いを感じていた。

ーーだから。

「ごめんくださぁい。
貼り紙を見て来たんだけど……お邪魔したかな?」

そんな俺の気持ちに土足で踏み入ってきた"彼"に、正直最初は戸惑った。店主と店員。ビジネスライクに。日々、仕事だけの関係でいられれば悪くはないと。
それが……こんなに好きになっちまうなんて。隣に居て欲しいと、思うなんて。

俺は、二人を同時に愛せるほど器用じゃない。だからこの原稿を書き終えたら、武器商人さんに力を借りて、全てをまっさらにするつもりだ。

過去さえ無ければ。冬理との思い出を忘れちまえば、"君"の気持ちに真っ直ぐ向き合えると思ったから。

この原稿を、もし"君"が見ているなら、きっと上手くいっていないんだろう。それでもまだ、俺を好きでいてくれるならーー)

(原稿はそこで"Fine"と綴られ、終わっている)
姉ヶ崎さん。この本の表紙の汚れ、ちょっと水で拭いたら取れたけど、セーフ?
ふやけてんじゃねーか表紙。アウトだアウト。ほら、キリキリ片付けろ。俺も手伝ってやるから
……馬鹿。ほんと、本当に馬鹿だなぁ…僕が好きなのは、貴方なのに。元の貴方じゃなきゃ、意味がないのにさぁ…!

(愛されてると分かって嬉しいのに、全部お見通しなのが悔しくて、今"ここ"にいない彼に寂しさを覚えて。ぎゅっと原稿を抱き締めて、笑いながら大粒の涙を溢す。
……春樹さんにこれを見せたら思い出してくれたりしないかな。っつーか押し付けてやろう。それでも思い出せないなら、師匠に魂だって売ってやっても良い!
……それよりも先に、告白か?考えは巡るが、)

春樹さん!
(行動した方が、きっとまとまる。振り返ると笑顔でそう呼び掛けた)
よくよく見てみたら、絶対隠してなさそうな店の棚までひっくり返してんじゃねーかランベールさん。アンタこれ本当に収拾つけない気で……、ん?

(背中ごしに声をかけられると、目を僅かに見開いて振り向く)
好きです!
(目があった瞬間にそう言い放った。じわりと朱を差し、はにかんで。)

記憶を無くしても、僕を大切にしてくれたし……どんな貴方でも、結局僕は放っておけないみたい。

…あのね、後これ!あの人が残した手掛かり。
絶対あの人、これしか残してないから。読んで?
(半ばぶつかるようにして抱き付き、嫌とは言わせないと原稿を押し付けた。)
……っ。
(最高の笑顔。紡がれた迷いのない声。
なのにその言葉を、知覚する事が出来ない)

政宗、お前……。

(何を言ってるんだ?
そう問いかける前に押し付けられた原稿に目を落とす。
何枚か捲ると、表情が歪んだ)
これは……。
……そうだった。春樹さん、好きだって言葉がわかんないんだっけ…
僕なりに伝えたつもりなんだけどなぁ。手紙にしたら、読める?

(そういやランベールさんも居たし、理解されてないと解ると急激に恥ずかしくなってきた。
頬を覆い、目線をさ迷わせる。
歪んだ表情には、上目遣いに見上げた)
春樹さん…?
……なるほどね。(どういう困り方をしているのか、ようやく二人のやり取りを見てとれた。顎に手を当て、ぐるぐると考える。
政宗と目線が合ったなら、お気になさらずと軽く手をひらひらと振るのだ。

恋愛に"耐えられなかった"男に挟める口など何もない)
………。
(無くした筈の記憶が、否が応にも頭の中で組み上がる。
「いいんスか?姉ヶ崎先生。このまま冬理さんが結婚するの、黙って見ていて」
アシスタントの秋斗にも、後押しをされたっけ。
「馬鹿言えよ。32年一緒だったんだぞ?この歳にもなって、冬理にフラれてみろ。好きな人も、親友もいっぺんに失ったら、俺はどうすりゃいいんだよ。
つーか冬理もこの歳で親友なくすとか、誰も幸せにならんだろ」

いつ何をするにも、先の事に怯えちまう。天秤が傾く事を恐れて、不変を愛しつ付けてきた。

ーーそれでいいのか?目の前で、こんなに一生懸命に愛してくれる人がいるのに)
あーもう、何だこの原稿。山なしオチなし意味なしすぎるだろ。これだから同人に染まったやおい本は……。
本当に、俺みたいなクソ腐男子にピッタリだぜ。
政宗たんはこういう、切ない系の薄い本好きなのか?俺は苦手なんだよなー。尊さよりも、胸がこう、キュッて締め付けられるだろ?
(あっうわ気を遣われてる!はっず!苦笑し、そっとランベールから視線を外した)

……はる、きさん…?

(懐かしい喋り方。期待と不安で揺れる瞳で見上げる。
思い出して、くれたかな。ああ、でも、思い出したなら振られちゃうかもしれない。怖いなぁ。

……また、先生って呼べるかな。)
(……呼べる!)

せ、せんせ……先生、姉ヶ崎先生…っ!
お帰りなさい、僕、ずっと……っ、う…せんせいぃ……!
(やっと、会えた。ずっと会いたかった。
ぼろぼろと大きな瞳から涙が溢れ、感情も溢れる。言葉がまとまらなくて、呼べなかった愛称を呼びながら抱き付いた。
頭を撫でてくれないかな、なんて期待を込めて胸に頭を擦り付ける。)
うおっ。こけるこける!何だー、無邪気なわんこ系キャラにでも転身したか?どっちにしろ萌えるから俺的にはオッケーだけどな。
(抱きつく相手を支えて、わしゃわしゃと大きな掌で頭を撫でよう。原稿を傍に置くと、抱きしめ返して)
……ただいま。随分と長い間待たせちまったな。
もう、もう…っ!久々に会ってもそうなんだから…!それも含めて大好き…ですけど!
(声色に些かの照れが混じる。撫でられると安心して涙が止まった。大丈夫、ちゃんと帰ってきてくれた。
抱き締め返されると思っていなかったために僅かに身を強張らせたが、幸せそうに微笑む)
……本当に、待ちくたびれちゃいましたよぉ。
だから聞こえないんだって!まぁ……気持ちはその笑顔で伝わるけどさ。
というか、健気すぎるだろ。原稿見たなら分かるだろ。俺は片思いこじらせてばっかのダメ中年で、自分の中で整理つかなかった挙句、政宗たんまで巻き込んじまってさ。
本当……情けない奴だよ。

(頭を撫でてやりながら、少し困ったように眉をハの字にして笑う)
それでもいいのか?こんなオッサンで。若気の至りならまだ引き返せるんだぞ?

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