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美少女道場

【RP】前略、貴方へ

貴方はこの物語の続きを知っていますか?

(美少年と美少女の間で交わされ、紡がれる童話。
 無数の手紙と原稿用紙の束。その記録)

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魔法使いは言う。
かつてこの物語も様々な人に触れられてきた。そんな気もする。
多くの人に触れられ、多くの人に親しまれた。そのような気もした。
一番の物語を聞かせてほしいと子にせがまれた親に朗読された。そんなこともあったような気がした。
そのことを喜びとし、それを幸せとしていきたこともあったかもしれない。

魔法使いは言う。
しかし時が流れればそれもまた変わる。
物語は「めでたしめでたし」で終わったとて、その先もそうであるとは限らない。
いつしか「素晴らしい」と褒めたたえた者は、見向きもしなくなった。
いつしかページを読み飛ばされて、手に取られることもなくなった。

魔法使いは言う。
言葉は何時だって嘘になる。行動は誤魔化される。
「めでたしめでたし」のその先で、願いを叶えた魔法使いの行く末など誰も気にしないように、誰もがその時その時もっとも心地の良い物語を、そのように受け取っている。

魔法使いは言う。
「確かなものは事実だけ。疑いようのないものは事実だけ。
 好きも幸せも、求めれば求めるだけ欲しくなるから、ずっと手元にあれば邪魔になる。
 だからね君、ボクは君の願いを叶えたかったんだ。
 そうすればボクは本当に『誰かの願いを叶えられる魔法使い』になれる。
 その確かな事実さえあれば、ボクはこの物語を抜け出してどこにだって行ける。」

少女は灰色の魔術師に問う。
あなたの幸せはなにかと。

「自分の為に、自分が幸せになれる何かになるために頑張ることだ。
 それがボクの幸せ。世界中の誰にも誤魔化されない、確かな幸せだ。」

魔法使いがそう言い切った時、物語の最後の一文にシバンムシの顎が伸びた。
「やめろ!それはボクのものだ!ボクが手に入れたものなんだ!」
魔法使いがそう叫ぶのも束の間、じゃくりじゃくりと音を立てて紙片が嚙みつぶされる。
音を立てて消えていく物語、崩れ去っていく魔法に、魔法使いは悲痛な叫びを挙げるもなす術はない。

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