ギルドスレッド
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美少女道場
『昔々のお話です。
あるところに一人の小さな少年がいました。
少年は毎日をとても退屈に過ごしていて、この退屈な毎日を変える術を探していました。
ある日のこと、少年の元にひとりの魔女が現れて言います。
「あなたの願いをひとつだけかなえてあげましょう」
しばらく考えたのち、少年は――― 』
少女の目の前で、少年のいる景色にぐしゃりと穴が開く。
ぐしゃり、ぐしゃりと景色に空いた穴は徐々に大きくなっていって…穴の向こう側から、赤暗い色の大きな虫が覗き見えた。書物を食らうシバンムシの怪物が、物語の中にいくつもの大きなトンネルを掘っていたのだ。
悲鳴を挙げる少女の傍らで、魔法使いはそれを宥める。
「大丈夫だよ。あいつらは君には手を出せない。だって君は本物だからね。」
自らの物語がスポンジのように穴だらけにされても尚、魔法使いは穏やかに言う。
戸惑う少女の手を引き、魔法使いは物語を進む。
どこもかしこも穴だらけで、少年が何を願ったのか、その中で何があったのかの何一つも読み取ることはできない。
「ねえ、魔法使いさん。あの少年は?」
「ああ、あれかい?あれはボクだよ。」
「少年はどうなっちゃったの?魔女に出会って何を願ったの?」
「さあ、わからない。もうずっと昔に食べられてしまったから。でも、たったひとつだけわかることがあるよ。」
『―――そして少年は、自分の魔法を手に入れて魔法使いになったのでした。』
「ボクは魔法使いになったんだ。」
食い残された結末に添えられた、丘から見える街の景色の絵。
街を彩る木々や家々も、空の明るさも、虫に食われて見る影もない。
「ねぇ、どう思う?この話は素晴らしい話だと思ったかい?」
少女は首を横に振って否定する。
あるところに一人の小さな少年がいました。
少年は毎日をとても退屈に過ごしていて、この退屈な毎日を変える術を探していました。
ある日のこと、少年の元にひとりの魔女が現れて言います。
「あなたの願いをひとつだけかなえてあげましょう」
しばらく考えたのち、少年は――― 』
少女の目の前で、少年のいる景色にぐしゃりと穴が開く。
ぐしゃり、ぐしゃりと景色に空いた穴は徐々に大きくなっていって…穴の向こう側から、赤暗い色の大きな虫が覗き見えた。書物を食らうシバンムシの怪物が、物語の中にいくつもの大きなトンネルを掘っていたのだ。
悲鳴を挙げる少女の傍らで、魔法使いはそれを宥める。
「大丈夫だよ。あいつらは君には手を出せない。だって君は本物だからね。」
自らの物語がスポンジのように穴だらけにされても尚、魔法使いは穏やかに言う。
戸惑う少女の手を引き、魔法使いは物語を進む。
どこもかしこも穴だらけで、少年が何を願ったのか、その中で何があったのかの何一つも読み取ることはできない。
「ねえ、魔法使いさん。あの少年は?」
「ああ、あれかい?あれはボクだよ。」
「少年はどうなっちゃったの?魔女に出会って何を願ったの?」
「さあ、わからない。もうずっと昔に食べられてしまったから。でも、たったひとつだけわかることがあるよ。」
『―――そして少年は、自分の魔法を手に入れて魔法使いになったのでした。』
「ボクは魔法使いになったんだ。」
食い残された結末に添えられた、丘から見える街の景色の絵。
街を彩る木々や家々も、空の明るさも、虫に食われて見る影もない。
「ねぇ、どう思う?この話は素晴らしい話だと思ったかい?」
少女は首を横に振って否定する。
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(美少年と美少女の間で交わされ、紡がれる童話。
無数の手紙と原稿用紙の束。その記録)