コン＝モスカ領にて依頼人と合流。
ここまではポータルでの移動だが、これから往復5～6日の航海となる。
船上戦は久しぶりだが、船の上で動いていれば現場に辿り着くまでには勘を取り戻せよう。

コン＝モスカを出発して1日目
船の上は狭いし、やる事がないので暇である。
暇なので美少年とトランプしたらハチャメチャに負けた。
ポーカーって運勝負じゃないの？
明日から絶望の青、もとい静寂の青に入るらしい。

コン＝モスカを出発して2日目
静寂の青という名前の通り、極めて穏やかな航海になった。
以前この海域を通った時は常に荒れ狂っているような波の様子だったが、リヴァイアサンの影響でここまで変わるものなのか。
散発的に標的の化け物が出たので適当に対処した。
美少年はずっと酒飲んでる。

コン＝モスカを出発して3日目
目的の海域に到着。
美少年が敵を集めてくれるのでほぼ作業のような戦闘が終わる。
一応、打ち漏らしがいないか確認してから戻るらしい。
甲板に化け物の死体がたくさん転がっているので食べれないか聞いたがアクが強いので無理らしい。
人間もアクが強いのにアクが強いものは食べられないとは不思議である。
って、言ったら美少年が「眼球ってプチトマトみたいな食感で好き」って言った時と同じ顔してた。
解せぬ。

コン＝モスカを出発して4日目
早朝、狂王種の襲撃を受ける。

（無人島に漂着して7日目
　狂王種の一撃で損傷した船が沈没し、漂流の果てに無人島に辿り着くが今日も沖に船影なし。
　依頼人とは船が沈没した際に別れたきりだが心配している余裕などどこにもない。
　幸い島内に湧水があったので飲料水の確保は出来ているが、食料は狩り頼りである。
　それも日中は日差しが強すぎて体力を消耗する為、朝と夕の短い時間にだけ行っている。
　一体どこに流れ着いたのかはさっぱりわからない。
　人工物が何もなかったので海賊も拠点に使っていないような僻地なのか……。）

船、通らないな。

（何度呟いたか分からない言葉が漏れる。
　事実確認と言うよりも、同行者が死んでないか確認するための色合いが強い）

……ああ。

（陽光を避けるように物陰に坐した人物は、掠れた声で応えた。
　やはりその繊細な外観に反して不相応にしぶとい人物であった。）

（最初の方こそ文句を飛ばしながら試行錯誤をしていたが。
　最近では体力の消耗を避けるために、必要な時以外はじっと動かずにいた。
　まるで蜷局を積み上げた蛇が洞の中に閉じこもっているように、そのままだ。）

（狩りも水汲みもこちらが行っていたが、それに対しての不満はない。元々野に放てばそのまま野生に帰るような気質である。
　それよりも同行者が異様に口数が少なくなった事の方が気掛かりだった。これは自分よりも自然界に適応できないモノであるので）

航路から外れていそうなのは仕方ないとして、そろそろローレットでも捜索を始めていそうなところだが……。

（ファミリア―らしき鳥でも飛んでいないかと空を見上げても、青い空ばかりが広がっている）

そうだな。

（捜索の開始が、早くとも入港が１～２日遅れてから、として。
　まずは近海の船に連絡し…各船から該当船の目撃を確認………そこから始まって。それで見つからない場合…漸くローレットに話が届いて、事務処理と募集、準備に早くて１日。冒険者の保護する船の数隻で外洋に絞った捜索活動を……近海は巡行する船への通達で捜索して……。
　………捜索にかかる時間は、該当船の渡航及び漂流時間の二乗に比例したとしても。）

恐らくは……長くとも２週間以内には見つかるんじゃないか。

（およそそんなものだろう。過信でなければこんなものであるはずだ。）

2週間。

（それは自身に対してはさして長い時間ではないが……）

持ちそうか？

死にそうにでも見えるか。

わからない。お前はヒトの平均から大きく外れているから。

………張り倒すぞ。

飢えも病みもしてねえよ。

(きゅう、と眉が下がった。困惑した気配)

……消耗はしているだろう。
だが、大丈夫だと思っていていいんだな？

お前の持ってきたものを煮て焼いてんの誰だと思ってんだ。
消耗して死ぬことはねえよ。

お前の死ぬ条件が、他のカオスシードとは違うのは理解してる。
でも、お前にとって何が致命的なのか分からないし、吾に教えるのも不味いだろう。

だが、それとは別に……心配した。
意味がないし……うん、本当に意味がないな……。

そう。

（ゆらと一度、視線が横にいる人間を撫ぜた。）

………よく喋るな。
案外参ってんのはボクよりお前の方だろ。

そうかもしれない。

（お前を巻き込んだからな、と口に出すのはやめておいた。
　代わりに乱暴に頭を掻くと百合の花に似た香りが強く臭う）

すまない。

（何に対しては言わない）

辛気臭。
（一蹴する。
　語気に今迄ほどの力はないが、それでもいつも通りだ。）

この状況で謝罪に何の意味もねえよ。
下らねえことにエネルギー使うんじゃない。

そうだな。

じゃあ、なにか有益なエネルギーの使い方を教えてくれ。
海上の監視はそろそろ飽きた。

………。

初日で触れた通りだ。
筏を用いた脱出は近海に住む魔物の標的になりやすい。
狼煙も同様、狂王種の気を引くことになる。
脱出よりもできるだけ長く生存し、そして体力を消耗しないようにする。
つまり、実質的に現状維持以上の択がねえわけで。
そうすることが最も有意義だが………

それともなんだ。娯楽に飢えてんのか。
木と石でチェスゲームでもやろうってか。

娯楽に飢えてる。
それに同じ事をずっとやるのも効率が悪いし精神にも良くないと思う。
お前も船に乗る前に暇をつぶせるものを持っていけと言ったではないか。
……でも、チェスはわからないな。碁なら分かるが。

正論みてえなこと言いやがって。
じゃあ、碁でいい。付き合ってやるよ。
幸い、好事家に誘われて何度かやったことはある。
５個並べる…ではない方だろ。

（火掻き棒代わりの枝切れで、地面に線を引く。縦に、横に、交互に。）

囲む方な。五目並べでもよいが。
ふうん、海洋か、豊穣の方にでもツテがあるのか。
まぁ、吾も大昔にやったきりなのでいい勝負にはなりそうだな。

旅人の知識で作ったボードゲームってのは案外広まるんだよ。
金持ちってのは知識人や文明人を気取りたがるからな。

（15×15、些か小ぶりな碁盤ができた。
　本来は19×19であるが、間違って流入したものを覚えているか、それともセレマ自身の記憶が曖昧であるかのどちらかだろう。）

石は。

珍しいものを知っていた方が知識人というのも違う気がするが……。

（記憶の中にある碁盤よりも思いのほか小さくて首を傾げた。
　しかし、具体的に何本線が足りないという事は分からないので疑問を口にするのはやめておいた）

（石、と乞われて、少し離れた所にある木の枝を折ってくる。枝には葉が茂って薪にするにも不適だが……）

葉っぱと石でやろう。