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造花の館

これを逢引きと言い張るならそう

営利目的ではない逢引き。

これほどまでに生産性のないものはない。
ついでに言えばこちらに恋愛感情はないし婚姻を前提とした関係も求めてない。
参加することで利益を見込めるかと言えば、必要経費に対する見返りも薄そうであるし。これによってさらなる進展を得られるかと言えば、そんなことしなくともあいつは『仕事』に対する付き合いは良い方である。
さらにいうとボクがそういうことをしたいかと問われれば『その気はない』と答えざるを得ない。

つまりこんなことに一切のモチベーションもないわけだが。

そこでボクはあれがここに至るまでずっと着たきり雀であったことに再び注視した。
あれに教育を施すことによって得られる利益は、ここまでの経緯を考えれば「ない」とも言い切れないため、今回はあれにその分野における視野と選択肢を広げるよう促すつもりである。
それくらいの理由があれば、まあ、時間と労力を割くことも吝かではないと言えよう。

すでに百合子には依然渡した衣装で来るよう言いつけた。
変に律儀なあいつのことだから着てくることは着てくるだろう。
あとはボクの手腕とあいつ次第だ。


●ロケーション
練達(再現性東京)のショッピングモール

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(きらきらしい衣装に目を奪われた事はあるか。
 それは人と自身の差異として目につき、やがて他者の美点であるという事に気づいた。
 いつしか艶やかなデザインを個性を夢想し、時に自身で創作する事もあったが……。
 それでもそれは自分の外の出来事であったはずだ)

(足元に揺れる白いプリーツは今はない。
 心もとないホットパンツからはぴっちりと黒いタイツが足を覆って、白いシャツとスカジャンと、あとは赤いスニーカー。
 まったくもって『美少女』らしくない姿に何度目か分からない身震いをする。
 髪を押し込めたキャップを目深に被って、置いて行かれそうになるたびにセレマの後ろを小走りに追いかけた)

(要求した方の癖になにもかも集中できていない様子で周囲を見渡してばかりいる。
 誰かに出会ったらどうしようなんて、その時は背筋を伸ばして対応できる癖に、今は背筋を丸めてばかりだ)

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