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別邸『イハ=ントレイ』
……お戯れを。
私は他の方と同じように、突然喚ばれた異界を放浪している、まさに旅人に過ぎませんよ。
――では、失礼致します。
(困ったように微笑んだ後、勧められた通りに席につく。
硬過ぎず、かといって礼に欠かない程度の姿勢を保ったまま、男の蒼い双眸が彼女を見つめ、やがて穏やかな頬笑みを湛えた)
先日は浅はかな言葉を述べてしまい、申し訳ありませんでした。
全ての国、地域、家系には独自の考え、或いはしきたり――積み上げてきた、文化があって当然です。
私はモスカという存在についてあまりにも不勉強なまま、あのような発言をしてしまいました。
本日はまず、改めてその非礼をお詫びする為に参った次第です。
(落ち着いた口調で言葉を紡いでいく。
謝意を伝えているが、ひたすらに頭を下げて陳謝するといった雰囲気ではない。
ただしそれは、そのような事を望むような器の相手では無いと信じての事であり、言葉の真意に嘘偽りはないのだ)
私は他の方と同じように、突然喚ばれた異界を放浪している、まさに旅人に過ぎませんよ。
――では、失礼致します。
(困ったように微笑んだ後、勧められた通りに席につく。
硬過ぎず、かといって礼に欠かない程度の姿勢を保ったまま、男の蒼い双眸が彼女を見つめ、やがて穏やかな頬笑みを湛えた)
先日は浅はかな言葉を述べてしまい、申し訳ありませんでした。
全ての国、地域、家系には独自の考え、或いはしきたり――積み上げてきた、文化があって当然です。
私はモスカという存在についてあまりにも不勉強なまま、あのような発言をしてしまいました。
本日はまず、改めてその非礼をお詫びする為に参った次第です。
(落ち着いた口調で言葉を紡いでいく。
謝意を伝えているが、ひたすらに頭を下げて陳謝するといった雰囲気ではない。
ただしそれは、そのような事を望むような器の相手では無いと信じての事であり、言葉の真意に嘘偽りはないのだ)
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でなければどうして耐えられよう?
貴族の社会とは、近現代以降の地球に相当する文化圏が想像するものとは違う。
貴族とは官僚や軍人など国家の運営に関わるものとして要職を担いながら、しかし同時に所領に於いては実質上の支配者に当たる総合的な”文化の担い手”でもあった。
そしてそういう話で言えばコン=モスカの社会は、女性が優位にあると言ってもいい。
なぜがそれが判ったか?
問うまでもなく廊下を歩きながら感じる――それはもう、ひしひしと感じられるのだ。
『あら、殿方よ』
『畏れ多くも祭司長様にご意見なさったらしいのよ』
『わあこわい、やっぱり陸の男は野蛮ですわね』
『ぜんたいどうしてクレマァダ様はあのような者をお招きになったの?』
そういう囁きが、先程からずっと聞こえる。
たまりかねてちらと視線を送れば、それとは逆の方からひそひそちらちらとまた、好奇と軽侮の入り混じった軽口が聞こえるので、これはもうたまらない。
たまらないがさりとて足を止める気もなく、彼は導かれるままにその一室へとたどり着く。
もはやその部屋へ入れば、あとは彼女と対面するのみだろう。
そこで向き合う重たくてどろどろしたものに比べれば、侍女の放言など本当に何ほどのものでもなかった。
その部屋は、彼女の執務室であった。
人ひとりが一日過ごすには快適すぎる空間と、丁度、それに椅子。大きなカンバスに豆粒のような人を描くような物足りなさ。それが彼女の今の日常である。執務卓に紙切れは数え切れず、しかし誇りは露ほども溜まっておらず、それらが昨今喉も乾かぬうちに溜まったものであることがわかる。
そのなかで、その執務卓から前に6、7歩ほど前に歩いた場所に、彼女のプライベートスペースが僅かにあった。
彼女はすっと立ち上がると、あなたに挨拶をする。
客間に通すのは人の目が気になるが、本当にプライベートな部屋もまた人目に付く。そういう距離感にはきっとうってつけだろう。
マホガニーの机を背に、傍にある来客対応用のソファは彼女のぬくもりを吸い、しかしそれを伝えることはない。
冷たくて哀れで、けれどもふれるとしっとりと濡れたように暖かい。
つまりそれが、クレマァダ=コン=モスカだったのだ。
「……よう来てくださった。
茶はいかがじゃ? 海洋は、茶が美味い。それを飲んだら――
何の用向きか、話すと良い」
そういうと彼女は、貴方の側の椅子を掌で指し示した。
あくまでホストを気取るつもりで、それを当然と思っている。
憐れなれど、それが全てなのだった
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【参加者向け】
あなたは、クレマァダに言いたい事があってここまできました。
クレマァダは、あなたに言いたいことなど何もありません。
クレマァダは、救いを求めてなどいません。
しかし彼女は、他人の言葉を無視などしません。