ＳＳ詳細
神カワ★ミラーカの神ワク生放送！
登場人物一覧
- ミラーカ・マギノ(p3p005124)
森よりの刺客
●PandoraTube通称PanTube！
「今日雑談ネタは夏のお勧めカフェと練達便利グッズ！ あ、服装チェックしとかなきゃ！」
ちらちらと時計を見ながら、バタバタと準備したものを確認していくミラーカ。
普段から可愛らしい服装が多い彼女だが、今日は特に気合が入っている。
フリルがたっぷり着いたシャツに赤い大きなリボン。それからふんわりした黒いスカートにコウモリの翼の飾りのついたカチューシャ！
そう、もうすぐミラーカはPandoraTube通称PanTubeの生放送を始めるのだ！
「ああぁぁぁあと５分で始まる……！」
ミラーカがPanTubeで動画投稿や生配信するPtuberとしてデビューしたのは実は結構最近だ。
それまでは見る専だったのだが、推しPtuberの『アリス』さんに憧れて、ノリと勢いだけでデビューした。
が、何せノリと勢い。発声や活舌の練習をしたわけではないので生配信初投稿で「神カワ★ミラーカ・マッ……マギノよ！」と盛大に噛んでしまい、初回で弄られ、可愛がられるキャラを会得してしまったのだ。
本人的には瀟洒なクールビューティーを目指しているのだが、すでにハイテンションなアッパーツンデレが駄々洩れだ。
「大丈夫。あたしならやれる。だってそう……目指すはあの『アリス』なんだもの！」
祈るように拳を握ると、時計の針が時間を告げた。
ミラーカがボタンを押すと、可愛いカエル柄の背景と共に、吸血鬼コスチュームに身を包んだミラーカが画面に映る。生放送のお知らせをしていたおかげか、すでに結構な人数のリスナーが待機してくれていたようだ。
「お待たせみんな！ 神カワ★ミラーカ・まっ、マギノよ！」
画面に映った吸血鬼コスに身を包んだミラーカが映り、緊張で噛みながらの挨拶が終わるや否や、リスナーたちがコメントを付ける。
『かみかわ★』
『神カワ★待ってた！！』
『ミラーかわいい』
『神かわいい！』
『上川ミラーカｗ』
『マッマギノｗｗｗｗｗ』
『ママギノ……』
『上川ミラーカさんちーっす！！！』
『上川さんんんんんん！！』
『今日も噛みカワ★』
『噛みラーカ』
『噛み可愛いｗｗｗｗ』
それを見て、内心あっちゃー！ 今回も噛んじゃった！！ と焦っていたミラーカの焦りも吹っ飛ぶ。
「ちょっ！ なんで神じゃなくて噛みなの！？ しかも”ん”が多い！！」
早速コメントに反応したミラーカに、リスナーたちも大喜びだ。
『即突っ込みｗそれでこそ俺らの上川さんｗｗｗｗ』
『ママギノの反応待ってました！』
「あたし上川じゃなくて神カワ★だから！ でも褒めてくれて有難う！」
きゃんきゃん怒りながらもお礼を忘れない姿にリスナーたちもほっこり。
コメントしていないけど、画面の向こうで「今日も元気いっぱいで可愛い」なんて声も。
「ところでこの前練達に遊びに行ったんだけど、暑くなってきたからか、扇風機とか沢山あってびっくりしたわ！ しかも最近は持ち運びできるハンディタイプっていうのもあるのね。びっくりして思わず買っちゃった」
さっと取り出したのは扇風機を小さくしたようなタイプ。
「こっちのハンディタイプはもう使ったんだけど、小さいのに結構涼しくてびっくりしちゃった！ 今日も実はこっそり使ってたんだけど、風で髪が靡いて良い感じでしょ？」
少し離れた所に置くと、確かに風で髪が靡く。靡くけど、基本的にミラーカがぴょこぴょこ動き回っているので風で靡いているのか、動きに合わせて髪も動いているのかわからないのだ。
とりあえず、リスナーたちの心は一つ。
『上川さん』
『ミラーカさん』
『マッマギノ』
『噛みカワ★』
『ママギノ』
『『『『『髪カワ★』』』』』
「ちょっとー！ 髪が可愛いじゃなくて、あたしが神レベルで可愛いのよ！？」
良きピッタリなリスナーたちのコメントに、ミラーカは涙目だ！
そんな姿にほっこりしつつ、お姉さまなリスナーたちが『ミラーカちゃん可愛いから大丈夫』と慰める。
それに気を取り直したミラーカは、次の話題に移る。
「暑くなってきたらさっぱりした料理が美味しくなるわよね。そこであたし、神カワ★ミラーカ・マギノが今まで行った店でお勧めのメニュー教えちゃうわ！」
『お、噛まなかった！』
『ママギノがただのマギノにｗ』
「普段から噛んでるわけじゃなわよ！？ マギノが正しいんだから！」
思わず突っ込むミラーカだが、カメラに映らない所に用意しておいたフリップをカメラに向ける。
ちなみにさり気なく噛んでいるのはご愛敬。
フリップにはミラーカが書いた『神カワ★お勧め！ 今年のお勧めカフェ＆メニュー！』というタイトルと共に、何件かの店の名前が書かれてる。
幻想だけでなく、今までミラーカが行った国や場所が満遍なく書かれていることにリスナーたちは感心する。
「まずは幻想にあるお店よ！ ここは大通りから少し離れてるんだけど、スパイシーなカレーは絶品よ」
簡単な地図と共に紹介される店の情報に、リスナーたちも『メモ取るからちょっと待って！』などと一緒に生放送を盛り上げてくれる。
『あ、ここ行ったことあるけど美味しかったよ！』
『ここなら休みの日に行けそう。噛みカワ★お勧めだし行ってみようかな』
『マジかｗ 一昨日行ったわここｗｗｗｗ』
『ここじゃないけど、この近くにある店もお勧めだよ』
賑やかになるコメントを見ながら、ミラーカもお勧めされた情報をメモしておく。
「美味しいわよね！ しかも盛り付けも可愛くてインスタ映えばっちりよ！
え、近くに他にお勧めの店あるの？ 今度行かなきゃ！」
『お勧めの店にママギノ行くってマ？ だったら鉄帝にもお勧めしたい店あるんだ！』
『練達のかき氷専門店もお勧めよ。ちょっと高いけど、みんなで分けて食べるぐらい大きいし、美味しいわ』
わいわいと流れていくコメントに、配信しているミラーカも必死だ。
「鉄帝に練達ね。依頼で行くことがあれば寄ってみるわ！」
リスナーたちからのお勧め情報に、あっという間にフリップの空白部分が埋まっていく。
だけどこれは、ミラーカの配信を見てくれる人達がいるという確かな証拠。自然と口元に笑みが浮かんでくる。
「みんなの情報が凄すぎて、あたしのお勧め情報埋もれちゃったわ」
楽しげに笑うと、リスナーたちのコメントが流れる。
『海洋のお勧めあったら教えてよ』
『天義はお勧めないの？』
『幻想のお勧め他にない？ 近くにあったら行きたいんだけど』
一方的な配信ではなく、ミラーカとリスナーたちの掛け合いややり取りに、何となく見ていて初見も目が離せなくなっていく。
大勢に大人気！ というわけではないけれど、画面の向こうにいるリスナー名しか知らない人たちにも時にノリ突っ込み、時に丁寧にレスポンスを返すミラーカの配信は、「見ていて楽しいし、こっちのコメントにちゃんと返してくれるから嬉しい」と毎回配信を見る、固定ファンがじわじわと増えていく。
「海洋は凄く美味しいアイスクリームのお店があったんだけど、店名覚えてないの」
紹介できなくてごめんね。としょんぼりすると、『大体の場所が分かれば良いよ！』と慰めてくれるリスナーも。
「有難う。確かあれは海鮮焼きの屋台と噴水が近くにあった場所よ」
『両方どこにでもあるｗｗ』
「覚えてないんだから仕方ないでしょ！」
時に賑やかに、時に和やかに進む生配信は、夜が更けるまで続くのだった。
