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美味しいスコーンを食べよう!~ヴァイスの場合~
登場人物一覧
●美味しい紅茶とスコーンを
ふわりと香るバラの香りに、ヴァイス・ブルメホフナ・ストランドの頬が緩む。
「天気が良くて、バラも奇麗で、こんな日は絶好のお茶会日和ね」
暖かな日差しに誘われて外に出れば、庭園に咲くバラは綺麗に咲き誇ってその芳醇な香りを広げている。
こんな日に部屋の中に籠っているのは勿体ない。
綺麗な庭園にティーセットを並べれば、きっとおしゃべりも弾む。
「えぇ、それが良いわ。今日はお茶会をしましょう」
うきうきとお誘いの手紙を書いて、お気に入りのお茶菓子を用意しよう。
クッキー? パイ? マフィン?
ノンノン、今日はきつね色に焼けた美味しいスコーン!
さぁ、粉を篩ってバターを切るように合わせたら、砂糖と塩を足してサクサク混ぜ混ぜ。牛乳だけでも良いけど、今日は贅沢に生クリームも足しちゃおう。
良い感じに纏まったら、均等に伸ばして丸い型でぎゅっぎゅっぎゅ!
仕上げに表面に溶き卵を軽く塗ったら、美味しくなるようにおまじないをしてオーブンへ。
待っている間にお湯を沸かしながら、庭園のテーブルにテーブルクロスをかけてお気に入りの食器をちょっとお洒落に並べてみたり。
やってきた人がどんな表情をするのか楽しみだ。
だけど準備はまだ終わらない。
気に入りのジャムにクロテッドクリームを並べたら、オーブンが「焼けたよ」なんて知らせてくれる。
「美味しく焼けたかしら?」
オーブンを開けたらふわりと香る甘い香りに、きつね色のコロンと可愛いスコーンが沢山!
バラの模様が入った大皿に並べて、庭園のテーブルに置けば後は紅茶を淹れるだけ。
ぽこぽこと沸いたと主張するお湯を宥めれば、今日はどのお茶にしようか悩んじゃう。
折角だし、バラの紅茶にしようかな。
紅茶の準備も出来たら後は時間になるのを待つばかり。
●味見は大事なんですよ?
「約束の時間までちょっとあるわね」
時計を見れば、約束の時間まであと三十分。どうやら少し張り切りすぎたみたいだ。
「……」
本を読んで暇をつぶそうと思ったけど、バラの香りよりも強い、焼き立てスコーンの香りについ惹かれてしまう。
「味見は、大事よね」
お客様に出すものだから、味見をしておかないと。
そんなことを言いながらヴァイスの白い指が一番上のスコーンを摘まむ。
まだ熱々で表面がカリッとしたスコーン。横には良い感じの割れ目が入っていて中々良い。
軽く力を入れると割れ目からふわっと湯気が上がる。
ふわふわとしたこの感触は、まだ温かいからのお楽しみ。
「まずはそのままよね!」
食べやすいように小さめに作ったスコーンは、ヴァイスも二口三口で食べてしまえる。
もぐ。っと口に含めば、温かいスコーンが口の中でほどけていく。
ジャムやクロテッドクリームを乗せることを考慮しているのでかなり甘さは控えめだけど、温かい状態だとこのままでも十分美味しい。
「美味しい……」
口いっぱいに広がる飾らない、素朴で優しい味についほっとしてしまう。
そのまま二口目、と行きたいけど、次はジャムを乗せてみよう。
苺ジャムにブルーベリージャム。レモンを漬け込んだはちみつも良いかもしれない。
苺ジャムを少しだけ乗せてみれば、スコーンの素朴な味わいに苺の甘酸っぱさが華やかさを与えてくれる。
そこにクロテッドクリームをたっぷり乗せたら……――。
「いくらでも食べられるわ……」
口の中でスコーンとジャム、クロテッドクリームが織りなすハーモニーが至福の時を作り出す。
味見だからと紅茶を用意していなかったのが悔しいぐらいだ。
「一杯だけ淹れちゃおうかしら」
幸いお湯はいつでも沸く状態だ。使い慣れたカップに一杯用意するなら数分あれば事足りる。
残り半分を我慢して、ささっと紅茶を用意すると、今度はレモンはちみつとクロテッドクリームに手が伸びる。
レモンの香りでさっぱりとしつつも、はちみつの甘さとクロテッドクリームのハーモニーが堪らない。
どこかうっとりしたまま紅茶を口にすれば、口の中に残っていた甘さが消えて次が欲しくなる。
「次はブルーベリーかしら」
うきうきと次のスコーンに手を伸ばしたヴァイスだったが、その手がスコーンに届く前に視線に気づいて顔を上げた。
ヴァイスが見上げた先には先ほどお茶会のお誘いを渡した相手。
「ち、違うのよ!? これはつまみ食いじゃないの! そう、味見なの!」
焦りながら時計を見れば、時間も約束の時間を過ぎている。どうやら呼んでも返事がないからここまで来たようだ。
「その……美味しくて、つい夢中になったけど、味見なのは本当なの。良かったら、まだあったかいから食べてみて?」
一つ差し出せば、少し不機嫌そうにスコーンを口に放り込む。だけどまだ温かいその美味しさに、目を輝かせたのを見逃さない。
「ね? 美味しいでしょう?」
暖かな日差しと綺麗なバラが庭園の中、賑やかにお茶会が始まった。