PandoraPartyProject

SS詳細

何度だって

登場人物一覧

テアドール(p3n000243)
揺り籠の妖精
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ

 青い空と白い雲、沢山の笑顔に囲まれて、世界一幸せな花嫁になる。
 白いウェディングドレスを着て、皆でケーキを食べることが出来る。
 それは如何にも楽しそうで、ニルは結婚式のパンフレットを見つめ、ワクワクしていた。
 実際のところ、ニルには結婚式がどんなものか分からない。
 キラキラしていて白くて、皆が楽しそうということは分かる。
 クラッカーがパンパンと弾けて、フラワーシャワーが宙を舞い、美味しそうな料理が並ぶのはお祭りみたいだ。
「あ! ベスビアナイトと一緒にしたら、たのしいですね?」
 写真に写っている人達はみんな楽しそうで、それをテアドールとすればもっともっと楽しいが増えるに違いない。
 結婚式のパンフレットはたまたま練達の書店で見つけたものである。
 表紙がキラキラしていて可愛くて、美味しそうな料理の写真もあって、買ってみたくなったのだ。
 結構分厚いその本はパンフレットというより、鈍器に近いものだったけれど、読み応えがあって面白かった。
 結婚式のマナーとかは難しいことが書いてあって良く分からないから読み飛ばしてしまったが、美味しい料理や可愛い衣装には目を輝かせたのだ。
「この雑誌、ベスビアナイトにも見てもらったら、いいですかね」
 良い事を思いついたと言わんばかりにソファから顔を上げたニルは、春のコートをクローゼットから引っ張り出して、大きめのカバンにパンフレットを詰め込む。
「……おやつのクッキーと、お水もいります」
 もしかしたら道中お腹が空いてしまうかも知れない。
 そうなったら、テアドールの家までたどり着けない。
 これは大事なおやつなのだとニルはカバンにクッキーを入れた。
 指輪を握り締めて「ベスビアナイト」と小声で話し掛ける。
『どうしました? ニル』
「えへへ……」
 すぐ返ってきた返事にニルの顔が溶けた。
『ん?』
「あ、えっとですね……今から、ベスビアナイトの所に行っても、いいですか?」
『はい。今日はお仕事はお休みなので自室に居ますよ』
「じゃあ、そっちにむかいます」
 少し重いカバンを持ってニルは玄関を出る。

「いらっしゃい、ニル」
「おじゃまします」
 自室のドアを開けて迎え入れてくれたテアドールは、カジュアルな服を着ていた。
 いつものお洒落な衣装ではない、ブラウスとハーフパンツ、足下は素足にスリッパ。休日の装いにニルは目を細める。
 テアドールの性質からして、きっと、他の友達であればこんな姿は見せてくれない。
 自分にだけ見せてくれるラフな格好にニルはコアの辺りがふわりと温かくなった。
 テアドールが春コートを脱がせてハンガーに掛けてくれる。
「何だか重そうなカバンですね?」
「そうなんです、きょうはこれを一緒にみたかったんです」
 ローテーブルの上に取りだした分厚いパンフレットにテアドールは目を瞠った。
 結婚情報誌というやつである。
 表紙にはウェディングドレス姿の女性と『美味しそうな料理』が載せられていた。
「ニル……この表紙の料理はとても美味しそうですね?」
「えへへ、そうなんです。お肉とお野菜とソースがきれいになべられていて、とてもおいしそうでした」
 その料理特集とやらにつられて買ってしまったのだろう。
 とても可愛いとテアドールはニルの頭を優しく撫でる。
「それで、見てほしいのが、このページなんです」
 ニルはパンフレットをローテーブルの上に開いた。
 覗き込めば新郎新婦の身長より大きなケーキが映っている。
「大きいですね」
「はい! とっても大きいんです。この二人はとてもしあわせそうです。だから、ニルとベスビアナイトのけっこんしきは、もっとおおきなケーキをつくりたいです。そうしたらたくさん、おいしいになって、しあわせです……だから、ベスビアナイト、けっこんしき、してみませんか?
 ソファに並んで座りながら、二人で結婚式に思い馳せる。
「けっこんしきは、おっきなケーキを食べて、ずっと一緒にいようって約束して、みんなにこにこで、たのしくて「おいしい」ものなのだそうです。たくさんの人をよんで、ケーキをたべていっぱいおいしいをわけっこしたいです」
「そうですね。任せてください。ニルの為なら僕はどんなことでも叶えてあげます」
「ほんとう、ですか? ふふ、うれしいです。でも、ニルもベスビアナイトのお願いはかなえてあげたいです」
 ニルは隣のテアドールにそっと寄りかかった。
 こうするとあたたかい気持ちになるのだ。
 美味しくて満腹になるのとは違う、コアがほわほわと温かくなる。
 テアドールはニルの手をぎゅっと握った。
「衣装はどんなものにしましょうか……ニルは可愛いものを着てほしいです」
「ベスビアナイトもかわいいやつがいいです」
 二人で可愛い衣装に身を包み、結婚式をするのは、どんなに楽しいだろう。
「えへへ」と笑うニルにつられてテアドールも笑みを零した。

 ――――
 ――

 澄み渡る青い空を見上げニルとテアドールは「わぁ」と声を上げる。
 白亜の城の中庭に聳え立つはデコレーションされた大きなケーキだった。
 そこは二人の特等席であり、みんなが登れるケーキの城でもあった。
 参列者は一様に、その大きなケーキに驚いた。
 それが楽しくてニルの頬は緩みっぱなしだ。

「……来た」
 こういった人の多い祝いの場に出てくること自体珍しい明煌が挨拶に来てくれる。
 両隣には暁月と廻、それにシジュウも居た。
「いや、テアドールには腕のこととか世話になったし」
 テアドールたちの視線に気付いた明煌は照れくさそうにそっぽを向いた。
 明煌は両側から肘鉄を食らい、改めて二人に向き直った。
「ニル、テアドール。結婚おめでとう」
「二人ともうんと幸せになるんだよ」
「お二人の門出に乾杯です!」
 グラスを鳴らした三人にテアドールたちは「ありがとうございます」と笑顔を向ける。

 お皿に載せられたケーキを一口すくって、テアドールはニルの口に運んだ。
 甘くて美味しくて、空は青くて、皆がたのしそうで。
 パンパンとクラッカーが弾けて、リボンと紙吹雪が空を舞う。
 隣にテアドールが居てくれる幸せで胸がいっぱいになった。

「ねえ、ベスビアナイト……」
 肩を寄せたニルに、テアドールは耳を向ける。
「ニルの全部、あげるから。ベスビアナイトの全部、ニルにください」
「いいんですか? 全部食べてしまいますよ?」
「えっ!? たべますか? かじるじゃだめですか? 全部たべたらニルが無くなってしまいます」
「ふふ……それぐらいニルが大事ということです」
 左手の薬指に嵌められた石にテアドールがそっと口付けを落とした。
 じんと広がる熱にニルは胸が締め付けられる。
 シトリンのコアがうずくようだ。
「ずっとずっと一緒にいましょう。あいしてます、ベスビアナイト」
「ええ。僕も愛していますよ、ニル」
 晴れ渡る青空の元、テアドールとニルの愛の誓いが交わされる。

「けっこんしき、たのしかったですね。また、けっこんしき、したいですね!」
「はい、結婚式は何回でもしていいですし、いっぱいしましょう!」
 たった一度の結婚式なんて勿体ない。
 こんなに楽しいパーティーなのだから毎日でもやりたいぐらいだと二人はくすくすと笑い合った。



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