PandoraPartyProject

SS詳細

誓いを

登場人物一覧

ステラ(p3n000355)
アルム・カンフローレル(p3p007874)
誓星

 『めでたしめでたし』と記される風景に、ひとつのモチーフがある。
 二人は結婚し末永く幸せに暮らしましたとさ。である、
 この混沌世界を平和に導き、文句なしの結末エンディングを迎えたのであれば。
 エピローグに語られるこの一幕があっても、きっといいはずだ。
 少なくとも。
 この場にあつまる多くの参列者仲間たちは、それを認めたということなのだろうから。
 列強諸国の中でもひときわ荘厳で美しい様式といわれる天義の教会で。
 ヴァージンロードを歩く白き衣ウェディングドレスのステラ (p3n000355)を、アルム・カンフローレル (p3p007874)はただ静かに見つめていた。
 赤いカーペットの先に立つのはそう……アルム当人なのである。

 幸せに、物理的な形はない。
 けれど時として、それを切り取って示すことがある。
 たとえばシロツメグサで作った指輪。
 たとえば二人がうつった写真立て。
 たとえば手を繋いで歩く並木道。
 たとえば――教会であげる、結婚式。
「う、うわああああああ……今考えたらどうしてこんな大それたコト考えちゃったんだろう。え、本当に? 本当によかったのかな? それはね、ちゃんとした約束は必要だと思うし、みんなに見届けて貰うのも大事だって思うけど、よかったのかなあ、よかった……んだよね……?」
 きちんとした正装。それもタキシードを纏ったアルムは頭を抱え椅子に腰掛けていた。
 天義の教会。とりわけ結婚式場としての名所。混沌を救ったイレギュラーズとなれば城で式を挙げたって許されそうなものだが、あえてここを選んだのは、ステラがこの教会を見た時『わあ』と目の中の星をキラキラとさせて笑ったからだ。
 あの瞬間、アルムは『ここで挙げよう』と決めたのである。
 が、アルムが今頭を抱えひとりで悶絶しているのはまたべつのワケがあるのだ。

 混沌に『約束された終末』がやってきたとき、これまで手を取り合ってきた世界中のありとあらゆる者たちが立ち向かい、戦った。
 それにはステラも含まれていたし、彼女と『もう一人のステラ』を巡る戦いの中で、アルムはステラと深い絆を結んだひとりであった。
 あれが現実だったのか疑わしいほど平和な毎日がやってきてからも、ステラと仲間達の付き合いは続いているし、アルムもその一人としていくつもの季節を巡ってきた。
 違いがあるとすれば、やっぱり『ステラとアルム』という二人の関係性だろう。
 非人間的な神様からひとり魔法使いへと転じ生きた男、アルム。
 大いなるものの観測端末からひとり人間として生きた女、ステラ。
 アルムはもう青年と呼べないほど成熟しきり、ステラが少女と呼べないほど大人になったころ。
 『ステラとアルム』は、『女と男』として、この先続く長い人生の形を考えていた。
 いつものように手を繋ぎ歩く並木道でも。
 輝かんばかりの夜にも。
 彼等の周囲でいくつも行われた『それ』は、当然認識も意識もしていたのだけれど。本当に形にするまで……『約束』をするまで、時間はずいぶんかかったようにおもう。
「ステラ。これからも一緒に居て欲しい」
 ある星の夜。
 いつものように二人並んで。アルムはステラに切り出した。
「ちゃんと伝えなきゃと思ってたんだ。あー……ずっと一緒に居て……その、今更と……思うかも、しれないけど……」
 沈黙に耐えかねて両手をわちゃわちゃと動かしながらいいわけを重ねるアルム。
 その姿を前に、ステラはくすくすと笑った。
「『きっともうすぐ言ってくれるから待っていて』って、お友達が言ってたの。本当に、今更」
 そして手をとって、アルムの瞳を覗き込んだ。
 星空よりも星の眩しい瞳の奥で、光がぱちんと瞬いた。
「まほうの言葉をいって。魔法使いさん」
 アルムとて。男である。
 女性にここまで言わせておいて、逃げはしない。
「俺と一緒に居てください。結婚しよう、ステラ」
「――」

 あの瞬間を。返事の言葉を思い出していたら、一歩ずつゆっくり進んでいたステラはもうアルムの目の前にいた。
 この世界のルールへの信仰を述べる神父の言葉が遠くきこえていたが、これだけはよくわかった。
「――アルム・カンフローレル。共に支え合うことを誓いますか?」
 ハッとして、背筋を伸ばす。
 自分に集まる視線を感じながら。
「誓います」
 と、口にする。この場の全員が証人だ。
「――ステラ。誓いますか?」
 次に言葉を向けられたステラは、まるで小川のせせらぎみたいに自然な調子で。
「誓います」
 と続けてくれた。
 神父は厳かに頷き。
 教会に流れる音楽が、静かな場を満たしていく。
 キラキラと美しい装飾が、見守る人々の温かさが。
 集まって。
「では、誓いの口づけを――」


PAGETOPPAGEBOTTOM