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決意の朝
登場人物一覧
冷たい朝の気配にヴェルグリーズは目を覚ます。
毛布の中から出るのは苦労するが、今日だけは何か胸騒ぎのようなものがして起き上がった。
リビングへと向かえば、カーテン越しの光を受けて佇む『空』の姿が見える。
「どうしたんだい? 今日は早いじゃないか」
「……父さん。何か変なんだ。すごく嫌な気持ちが膨らんでる」
胸を押さえて眉を寄せる空へ、ヴェルグリーズは駆け寄った。
「何があったんだい?」
「あいつを、灰斗を殺さなきゃって……俺の中で何かが叫んでる」
泣きそうな顔で嫌だと首を振る空をヴェルグリーズは抱きしめる。
空と灰斗は対になる存在である。灰斗の抑止が空の宿命。
つまり、灰斗側に異変が起きようとしている恐れがある。
ヴェルグリーズは空を抱きしめる腕に力を込めた。
彼は『友人』を殺したくないと本能に抗っているのだ。
もしこれが仮に、ヴェルグリーズ達が空を『刀』として扱っていたのだとしたら、本能のまま友人を斬り殺していたに違いない。
空がこんな風になるまで抗っているのは、ヴェルグリーズ達が人として育てたからだ。
人の心を持ち、大切だと思う存在の為に空は自分の力を制御しようとしている。
「いやだ。父さん……」
ぼろぼろと涙を零す空を落ち着かせるため、ヴェルグリーズはソファへ座った。
まだ立っている空の手を引いて隣へ座らせる。
「大丈夫。大丈夫だよ、空。もし、君が本能に逆らえなくなったら俺が止めてあげる。君はとても大きな力を持っているけれど、俺達の子供なんだ。親というものは子供のためなら何だって出来るんだよ」
その言葉に空はほぅと息を吐いた。それは安堵の溜息だ。
強張っていた空の身体から力が抜ける。何よりもヴェルグリーズの言葉は安心できたのだろう。
「うん、ありがとう。父さん……」
一気に力が抜けて眠気が襲ってきた空の身体がぐらりと傾ぐ。
それをしっかりと抱き留めたヴェルグリーズは、空を背負い子供部屋へと運んだ。
ベッドの上で健やかに眠る空を見つめ、ヴェルグリーズは愛おしそうに彼の頭を撫でる。
掌に伝わるぬくもりに心の底から湧き上がる愛情が広がった。
終焉の兆しは空のような精霊達にも影響を与えるのだろう。
「俺達が、守らなきゃ……」
空を起こさないように小さく零れた声には、星の輝きを帯びた決意が込められていた。
- 決意の朝完了
- GM名もみじ
- 種別SS
- 納品日2024年01月05日
- テーマ『蒼雪の舞う空へ』
・ヴェルグリーズ(p3p008566)