PandoraPartyProject

SS詳細

スチル名『雨の日の二人』

登場人物一覧

アベル(p3p003719)
失楽園
シラス(p3p004421)
超える者

タイトル:ぱんどら★ロマンス
対応機種:Pandora Party Project
ジャンル:可能性蒐集ラブコメADV

●ホームページギャラリーよりの抜粋
 雨が。
 雨が降り続いている。


「シラスくん。アベルくん。どこいくの?」

 私はそう声をかけた。
 図書館でテスト勉強をしていた所に二人が偶然通りかかったのだ。
 二人とも図書館の外の紫陽花の花畑に傘をさして出かけるみたい。

「ちょっとした散歩」

 素っ気ない調子でそう云ったシラスくんは何時もよりどこか楽し気だ。
 雨の日に見る紫陽花が美しい事を私も知っている。
 青のボーダーの傘をふりふりと揺らしたシラスくんは早く歩いていきたいとでも言うような調子だ。

【選択肢】
  (1)私もご一緒していいかな?
 >(2)楽しんできてね。

「楽しんできてね」

 その言葉に、アベルが柔らかに微笑んだ。
 飄々としていて、何時も優しいアベルくんは私にも優しくしてくれる。

「『デフォルトネーム(※変更可能※)』さんも一緒に如何ですか?」
「そうだな、『デフォルトネーム』も来いよ」

 そっけない調子でシラスくんも誘ってくれた。
 アベルくんとシラスくんが誘ってくれるなら一緒に……いいかな?

「なんだか今日は少しだけ年相応じゃないですか、シラスくん?」

 かわいいね、と私が言えばシラスくんはそっぽを向いてしまった。
 雨の日もたまにはいいね。

●ノベライズ版あらすじ
 月原・亮子(※ゲームデフォルトネーム)は王立PPP学園に通う1年生。
 幼馴染でクラスメイトのアルテナ・フォルテと共に平和に暮らしていたが、ある日、クラスメイトの山田・雪風とリリファ・ローレンツが『学校の噂』を耳にしたと聞いて。
 オカルト研究会の青雀の助言を受けながら噂を調べていくうちに亮子が持っている月色のネックレスが世界を護る『可能性蒐集装置』だという事に気づいて――!?

 可能性蒐集装置を知りながらヒロインの傍に居る少年シラスとその兄貴分『なんでも屋ローレット』に所属するアベルを始めとした豪華キャラクターで送るラブコメADV。
 果たして、亮子は世界を救えるか!
 世界を救うか、愛を実らせるか。それは貴女の選択次第♪
「私、そんな『可能性蒐集』なんて知りません――!!?」 

●ノベライズ版『雨の日の二人』
 ざあざあと。
 雨が降っている。亮子はその様子を詰まらなさそうに見つめていた。
 普段であれば、クラスメイトのアルテナとの試験勉強を行っているのだが、生憎、今日の彼女は部活動の買い出しがあるそうだ。
「一人はつまらないなあ……」
 ぼやいた亮子のケータイにはクレープを楽しむクラスメイトの雪風やリリファが映っていた。
 私も行けばよかったと呟くが、亮子の学園での成績はあまりよくない。
 無論、それ故に追試の可能性がある以上そうも遊んではいられない。
「あーあ……つまらないなあ……」
 机に伏せた亮子が視線を上げた先。窓の外には、彼女のよく知るアベルとシラスの姿があった。
 ざあざあと雨が降っている中で傘をさして男子二人で散歩というのは何処か不思議だ。
「シラスくんとアベルくんだ……」
 この暇な調子では勉強にもならない。
 鞄に荷物を詰め込んで亮子は図書館の入口へ向かう。
 図書館の向こう側には紫陽花畑がある。二人はきっとそちらに向かうのだろう。
 紫陽花の上の蝸牛を指さして笑っているシラスに普段とは違う一面を見た様な気がして亮子はどきりとした。
 図書館の入口に置いた傘を探すのに手間取っているうちに二人が居なくなってしまわないかと焦る亮子。
「ほら」
 その背中に知らない誰かが声をかけ、赤い傘を差し出した。良く見れば亮子と同じ制服を着ていて――バッチの色からして一つ年上だろうか。
「あ、ありがとうございます」
 自分の傘を知らない人がどうしてわかったのかは分からないけれど。
 今は二人の所に行くのが先決だと頭を下げて亮子は図書館を飛び出した。
「シラスくん。アベルくん。どこいくの?」
 息を切らせて走り寄れば、シラスがちら、と顔を上げる。ボーダーの傘を差した彼の表情は蝸牛に向けられたものよりも大分固い。
 ……やっぱり嫌われているのかな、なんて考えてしまうのは私の心が弱いからだろうか。
 きっと、突然、駆け寄ったから驚いたんだ。現に普段通りのシラスの表情に戻っている。
 深い緑のカーディガンにラフなTシャツ姿。普段のラフな装いの中でも初めて見る姿だなと亮子はシラスを見た。
「亮子か。どうしたの」
「あ、ううん。あの、偶然見かけたから……二人は何してるの?」
 慌てた亮子にシラスは紫陽花とその上の蝸牛を見て傘を傾ける。
「ちょっとした散歩」
 何時もの素っ気ない調子よりもどこか楽し気な声音。
(あ、シラスくんが楽しそうな様子って初めて見たかも……)
 少しどきり、とした気がして亮子は首を振った。
 彼は口にはしないが花が好きな事もあり、雨の日の紫陽花畑に出かけるのを楽しみにしていたようだ。
 それを知っているかは分からないがアベルもシラスの誘いに乗ったというのが今日の散歩なのだろう。
「うんうん。雨の日に見る紫陽花は風流だもんね。雨だけどお散歩にはぴったりかも」
「そうですね。折角の花は見ごろに楽しみたいですし」
 微笑んだアベルに亮子はうんうんと頷いた。
「雨の日の紫陽花って特別な感じがして私、とっても好きだなあ」
「蝸牛も喜んでる」
 蝸牛。その言葉に亮子がぷ、と小さく笑えばシラスは「笑うなよ」とふい、と顔を晒した。
 怒ったわけではなくて戯れるように拗ねたふりをした彼にアベルも「蝸牛への恵みの雨ですし」と冗談を続けている。
 グレーの傘を傾けて、亮子をちらっと見たアベルがいたずらっ子の様に目を細めている。
 その赤い瞳の優しさにどきりとしながら亮子はええっとと続けた。
「お散歩なんだよね? 楽しんできてね」
 二人で散歩だというのだから邪魔しちゃわるいかな――なんて呟いて。
 その言葉にきょとんとしたシラスとアベルが顔を見合わせる。私も行くと言い張られては都合が悪いが、楽しんできてと亮子が言うものだから予想が外れたとでも言う調子か。
「亮子は? 今からどうするんだよ」
「ええっと……勉強かなあ。飽きちゃったけど」
 鞄の中の教科書にも落書きだらけなのだとぶつぶつ呟いた亮子にシラスが「なんだそれ」と小さく笑う。
 普段ならばアルテナ達と一緒に勉強してるだろうというのがシラスとアベルの亮子のイメージだった。
 亮子やアルテナ達は幻想国の王立PPP学園に通っているが、シラスとアベルはまた別だ。
 路地裏でスリにあった亮子を偶然助けたシラスと『なんでも屋ローレット』で働く兄貴分のアベルに年の為にと保護されたことから二人との関係が続いている。
「あーあ、二人と学校が一緒だったらなあ」
「テスト勉強を教えてもらえる、とか思ってませんか?」
「だって、アベルくんって何でも屋でしょ?」
 ちらりと亮子がアベルを見る。その視線にアベルが「それはどうでしょう」と飄々と笑った。
「亮子さんは教えたところで先ず理解できないんじゃないですか? もう駄目ー! って。
 だから、数学が34点だし、国語も23点なんですよ。数学は方程式を覚えてないし、国語も読解が難ありですね」
「な、なんでそれを知ってるの――!?」
 慌て頬を赤くした亮子にアベルは「企業秘密です」と笑った。
「それに、学生という年齢じゃないですよ。シラスくんは――まあ、学生かな?」
「学校なんざ行きたくねぇってば」
 ふん、と顔を逸らしたシラスにアベルがくすくすと笑う。
 学校に通っている時点でそれなりの『イイトコ』の出自なのだが……それもあってか、籠の鳥の様な気がして亮子はアベルとシラスが羨ましくも感じていた。
「うう……そ、それじゃ楽しんでね……」
 がっくりと肩を落とした亮子に「あ、おい!」とシラスが声をかける。
(普段より楽しそうなシラスくんを見てたかったんだけどなあ――……)
 鞄を抱えて勉強に戻ろうとした亮子にアベルが柔らかく微笑む。
 テスト勉強をしたって身に為らない事くらい彼にはお見通しだ。
「亮子さんも一緒に如何ですか?」
 アベルの声は何時だって優しい。巷では女好きと言われているが亮子は実はアベルのそういった所を見たことはない。
 嬉しくなって「えっ!」と明るい声を出してしまったことに気づいて亮子の頬がかあと赤らんでいく。
「そうだな、亮子も来いよ」
 素っ気ない調子だが、確かにシラスの声は楽し気だった。
 彼のその素っ気なさは口調からくるものでその実、気のいい少年なのだが……出会いが出会いだっただけに亮子は未だ、シラスに嫌われていないかとびくびくとしている。
「い、いいの……?」
 ちら、と見遣った亮子に「イヤかよ」とシラスがさらりと返す。
「や、やじゃないよ……!
 だって、勉強してても全くだし、アルテナは今日は来ないし、リリファと雪風なんてクレープ食べてるんだよ!
 それに、さっき先輩だと思うんだけど知らない人に話しかけられたし……シラスくんとアベルくんと一緒がいいな」
 早口で言う亮子にシラスがふっと笑みを浮かべた。
 その顔にドキリとした亮子の前にずい、とアベルが顔を出す。
「亮子さんも一緒だと雨の日も楽しくなりますよ。
 さあ、ご一緒しましょう。ああ、『蝸牛』も一緒ですよ」
 くすくすと笑ったアベルにシラスが「いた?」と目を輝かせる。
「いましたよ。蝸牛」
 ほら、とアベルが指さす先にシラスと亮子が覗き込んだ。
 亮子の首からペンダントが垂れ下がり、シラスは「亮子、それじゃ不用心だろ」と拗ねた様に言う。
「あ、ご、ごめんね。つい……」
「そうですよ。亮子さん。シラスが悪党だったらもうスラれてます」
 その言葉に亮子はそうだよね、と困った様に笑った。
(でも、シラスくんはそう言う事を生業としてるから――きっと、私のペンダントも欲しいはずだよね……?)
 ちらりと横を見てもシラスは蝸牛に夢中だ。
 蝸牛の角がぐいぐいと動く様子にさえ楽し気にその表情を綻ばせている。
 アベルもそんな事を言いながら、全くもって動く素振りも見せてはいない。
(シラスくんはペンダントが盗られそうになった時助けてくれたし、アベルくんだって私を保護してくれた……)
 そのペンダントが危険だという事を二人は知っていた。
 だからこそ、手を差し伸べ助けてくれたのだと亮子は認識している。
 只の学生ひとりで護り切れるものじゃないだろうと告げられた時にはしょんぼりとしたものだが、何だかんだで困った時に助けてくれるのだから――きっと。
(悪い人、じゃないはず……)
 そう、亮子は思いたかった。
「あ、蛙」
 亮子の考えとは余所に見てみろよ、と言わんばかりのシラスに手を引かれて亮子が「わあ」と一歩前へと歩み出す。
 アマガエルが紫陽花の葉に隠れるようにしてげろげろと声を出していた。
 ぱ、と離された手に、亮子は少しだけ残念になる。どうして残念に思ったのはは分からない。
 雨で少し冷えたんだろうか。掌の温もりが遠くなる寂しさを感じながら亮子はふうと息を吐く。
 アベルが亮子さんと手招いたそれに気づき、亮子はそっと彼に近寄った。
「あ、水溜り気を付けてくださいね」
「あ、う、うん」
 足元を気遣う様に言う彼はスマートなエスコートを見せる。
 女性になれているから呼び寄せたのだろう。
 けれど、その視線がネックレスに注がれている気がしてきてしまう。
 アベルも何でも屋だ。もしも、ネックレスを誰かに奪ってきて欲しいと頼まれたら――そう思うと二人も安全ではないのだと分かりながら、どうしてか、亮子は二人の事を信頼していた。
 もしも、ネックレスを見て居たとしても、二人はきっと自分の困ることをしない筈。
 そう思う亮子に「亮子?」と不思議そうな声がかけられた。
「ううん。なんでもないよ」
「ほら、花の中に蛙がいる。見てみろよ」
 雨の日の散歩で花と蝸牛、蛙を見て楽しむシラス。それを微笑まし気に眺めるアベル。
(うん。やっぱり二人が悪い人なわけない)
 ちらりと視線をやればアベルはくすくすと笑っている。
 何となく二人から距離を取った亮子は微笑まし気な二人の様子を見て改めてそう認識した。
「なんだか今日は少しだけ年相応じゃないですか、シラスくん?」
 そうだ、初対面の路地裏と比べれば随分と幼さを感じさせる。
「うん。シラスくん、とってもかわいいね」
 そうシラスに笑い掛ければ、ふい、と恥ずかしがるように彼の視線が逃げる。
 にい、と笑ったシラスの表情は「ほら、早くいくぞ」と言わんばかりのものだった。
「シラスくん、雨はまだまだ止みませんからゆっくり行きましょう」
「はいはい。アベル。見てみろよ、ほら、あの紫陽花、色が違う!」
 雨の日もたまにはいいなあ、なんて思う亮子だったのだ。

 水溜りに気をつけるようにスカートの裾を抑えて歩く亮子を振り返りながらシラスはアベルをちらりと見遣る。
「月色のネックレス……ねえ」
「今、盗む事も出来ましたけど」
 シラスくんなら気付かれないでしょうと囁いたアベルにシラスは肩を竦めた。
 確かにシラスの腕前でれば亮子の様な凡庸な少女では何時盗まれたかは気付かない。
 赤い傘と鞄を手にしてる上に隙だらけな彼女の首からは何時も月色のネックレスが垂れ下がっている。
「まだ、時期じゃないだろ」
「――さあ、どうでしょうね?」
 意味深に笑ったアベルからふい、と顔を逸らしたシラスは「花を楽しみたいんだよ」とぶっきらぼうに呟いた。
 雨は未だ降り続いていた。

 ――To be continued……?

  • スチル名『雨の日の二人』完了
  • GM名夏あかね
  • 種別SS
  • 納品日2019年06月11日
  • ・アベル(p3p003719
    ・シラス(p3p004421

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