PandoraPartyProject

SS詳細

春爛漫に笑顔をふたつ

登場人物一覧

シャルル(p3n000032)
Blue Rose
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

「シャルル嬢ー! こっちだよー!!」
 ぶんぶんと大きく両手を振る『秋の約束』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)に、『Blue Rose』シャルル(p3n000032)はくすりと笑って手を振り返す。
「すっかり春だね」
「そう! だからね、お店で売ってるものも春らしいものが多くて、ワクワクしちゃうんだ!」
 その一言だけであんまりにも嬉しそうに商店街のお店をあれこれ語ってくれるものだから、誰にだってイーハトーヴがこの商店街が大好きな事は明白で。口端に笑みを乗せて聞いていれば、不意に彼が慌てたように弁明し始めた。
「ち、違うんだよ。折角だから色々聞いて貰って、気になるお店に行ってみるのも良いかと思ったんだ」
「別に、イーハトーヴの話を聞いているだけで十分楽しいけれど……ああ、」
 つらつらと言葉を連ねてたシャルルは不意に納得する。多分、オフィーリアが何か釘を刺したのだろう。

 ――あなたばかり喋っていると呆れられちゃうわよ?
 ――いつまでも入口に突っ立っていたら、回りたいお店も閉じてしまうわ、イーハトーヴ。

 ……なんて。
 そんなことを考えている合間にもイーハトーヴがオフィーリアと話しているようだから、あながち間違いでもないのだろう。
 イーハトーヴは仕切り直すように小さく咳ばらいをして、シャルルへ手を差し出す。だって早くいかなくちゃ、閉まってしまうお店もあるのだから!
「まずはどこに?」
「お団子屋さんだよ! タレがたーっぷりで、おはぎもふっくらモチモチしてるんだ!」
 ほんの少しだけ駆け足で。はやる心を示すように2人で連れだって行けば、店主のお婆さんがよっこらしょと椅子を出している。
「お婆さん! お団子もう売れちゃった?」
「おや、イーハトーヴちゃんじゃないの。がぁるふれんどと一緒かい?」
 声をかけられた彼女はころころと笑いながら、まだ残っているよと告げる。丁度みたらし団子が2本だけ余っているそうで、2人はお婆さんの好意で一緒に座り、みたらし団子を食べていくことになった。
「何度食べてもここのお団子は美味しいなぁ……ね、シャルル嬢はどう?」
 ぱくりと一口食べて、幸せに浸るイーハトーヴ。隣を見てみれば、もっもっと咀嚼していたシャルルが暫しの後に飲み込む。
「……こんなに柔らかなお団子、初めて食べた」
「ほっほ。それは嬉しいねぇ。喉に詰まらないように気をつけてねぇ」
 朗らかに笑みを浮かべるお婆さん。するとそこへ元気な子供達の声が遠くから――。
「ばーちゃーん!!」
「あっイーハトーヴがいる!」
「知らないおねーさんもいる!」
 ――あっという間に駆けて来てお婆さんへ挨拶したりイーハトーヴへ遊べとせがんだり、シャルルをまじまじと見たりと忙しい。
「これこれ、そんなにジロジロ見ると失礼だよ」
「はぁーい」
「ごめんなさい」
「え、……いや、別に。皆、この近くに住んでるの?」
 首を振ったシャルルが問うと、彼らは一様に頷いた。どうやら時間が在る時はイーハトーヴも一緒に遊んであげている――遊びに巻き込まれている、かもしれない――らしい。
「皆、また今度遊ぼうね」
「約束だぞー!」
「またねー!」
「ばいばーい」
 現れた時と同じように、風のような速度で去っていく子供達。丁度団子も食べ終わったところだったので、2人は再び商店街を回ることにした。
 八百屋や魚屋などの食料品店を抜けて、総菜屋で特売の総菜を買ってみたり。ふとシャルルがイーハトーヴの袖を引いた。
「あそこ。前はスープの露店だったよね?」
「シャルル嬢が買ってきてくれたスープのお店だよね。あそこは一定期間で入れ替わるんだけど、この前からコロッケを売ってるんだよ」
 サクサクの揚げたてコロッケを売るその屋台では、袋に詰めて持ち帰ることもできるし、食べ歩きできるように紙に包むこともできるらしい。2人は少しなら入る入る、と一つずつ食べ歩きで購入する。
「このお惣菜は後で食べるしね」
「俺の下宿先で食べればいいと思うよ。まだ商店街を沢山歩くだろうし、うっかりお腹がいっぱいになってもすぐ空いちゃうと思うんだ」
 サクサクの衣は出来立てならではで。オフィーリアが『そんなこと言って、後で後悔するわよ』なんて言っていたのだけれど、どうせ止められないのだからと小さな声は風に溶ける。
 暫くの間に露店は大分様変わりしていたようで、シトリンクォーツに先駆けたアクセサリーや雑貨なども売り始めているらしい。ちらちらとそういったものを見ているシャルルに気付いて、イーハトーヴは気になるの? と問うてみる。
「あ、えっと。……そう、だね。似合うものがわからないけど、多少は」
「それなら見に行ってみようよ! 春らしいものも沢山あるみたいだし」
 もしかしたらオフィーリアに合う雑貨もあるかも、なんて行ってみればシャルルはそれならと話に乗った。実際、自身が着飾るより他人を着飾らせるほうが分かりやすく楽しいということは、往々にしてあるのである。
 アクセサリーは金属を使用したものから、繊細な刺繍まで。雑貨も多岐に渡っており、あちこち目移りしてしまう。
「あ、これイーハトーヴに似合いそう。こっちはオフィーリアかな……」
「……シャルル嬢?」
「いやでもこっちの色合いも捨てがたいし……この柄も良さそう」
「シャルル嬢?」
「ねえイーハトーヴ、どっちがいいと思う?」
 自分に、ではなく、2人に。真剣な表情で振り返ったシャルルは、ふふりと笑みをこぼすイーハトーヴにぽかんと目を瞬かせる。
『似た者同士ね』
「オフィーリアったら、そうかもしれないけど!」
 今のシャルルが職人の時のイーハトーヴに似ていたと言えば、ますます目を瞬かせて。それから今しがた迷ってた手元のそれらを見てから小さく笑った。
「イーハトーヴの癖が移っちゃったかな。でも、こういうの、好きみたいだ」
 どんなものが似合うだろうかと他人を想って選ぶのは、楽しい事なのだと。喜ぶ姿が見たいから真剣になるのだとわかる。2人(とオフィーリア)はそれぞれに似合うものを探してみようか、と少しばかり別れて見てみることにした。
 ……が、あまりにも時間がかかりそうなのでオフィーリアから時間制限を与えられた話は、割愛しよう。

「これなに? シャラシャラしてる」
「イヤーカフって言うんだよ」
 シャルルの耳につけてやれば、涼し気な色合いの飾りが彼女の動きに合わせて揺れる。どうにも不思議な心地であるようだが、嫌ではなさそうだ。
「ボクからはこれ、ポーチ」
「あ、オフィーリアだ!」
 ポーチに刺繍されたうさぎはオフィーリアのようで、イーハトーヴはぱぁっと表情を輝かせる。大きさも丁度良い頃合いだから、小さくて無くしそうなものはこれに入れれば良さそうだ。
「あとね、良かったらなんだけど……」
 はい、と彼女が手渡してきたのは根付のようだった。つり下がっているのは四葉のクローバーを模った金属製のチャーム。どうやら鉄帝から流れてきた職人がいるようで、繊細かつお洒落なアクセサリーが沢山あったのだそうだ。
「ありがとう、シャルル嬢!」
 満面の笑みで礼を言って、次の場所へと彼女を誘う。まだまだ行きたい場所は沢山あるのだ。彼女に見せたいものもある。丁度もう少しでその季節だ。
 2人は次の店へ向かってかけ出していく。春の風がその背中を優しく押していった。

  • 春爛漫に笑顔をふたつ完了
  • GM名
  • 種別SS
  • 納品日2022年04月07日
  • ・シャルル(p3n000032
    ・イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934

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