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SS詳細

変わらないあなたが、変わってゆく私の手を引いて

登場人物一覧

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

いつか私は、あなたを置いていってしまうでしょう?
それがすごく、怖いの。
今、この一瞬さえも惜しくてたまらないわ。

ねえ、いつか私がしわくちゃのおばあちゃんになっても……手を引いて連れて行ってね。

  • 変わらないあなたが、変わってゆく私の手を引いて完了
  • NM名りばくる
  • 種別設定委託
  • 納品日2021年12月19日
  • ・アーリア・スピリッツ(p3p004400
    ※ おまけSS『恋と愛』付き

おまけSS『恋と愛』

 また『彼』とお酒を飲んだのですってね。浮気ですか? 
 ……と彼がニッコニコしながら言うものだから、アーリアは即座に首をぶんぶんと振って否定した。

「待って待って、違うわよお……! ホントよ、私は貴方一筋だもの」

 ──じゃあ、どうして。とちょっぴり不機嫌そうに聞く彼に、なんだかちょっと意地悪したくなってしまうのだ。

「ねえ。恋と愛は、違うのよ」

 そう言うと、ずるいですわ、だなんて、きっと彼はふくれて見せるだろう。
 ずるいのかも。でも、彼女の中ではそうなのだ──少なくとも、アーリアの中では。
 ずっと大人で、頼れる背中をしていて、オシャレで、自分の知らないものを良く知っていて、時に強引で、甘えさせてくれる──。
 そんなイイ男に焦がれない少女はきっと居ない、と思う。たぶん。
 目の前の愛するひとは、そういった人たちとは逆かもしれない。
 小さくて、可愛くて、オシャレでカッコよくて……強引なところもあるし……あれ。そんなに変わらないんじゃ?
 なんて夢想を吹き飛ばし、目の前の彼に向きなおった。

「恋って盲目なのよ。お互いに見つめ合ってしまうから。
 でもね、愛は……ふたり一緒の方向へ、未来へと見つめる事なの。戦いに行く私を支えてくれて。慰めてくれて。寄り添ってくれて。一生、一緒に同じ道を歩んでいきたいと思ったのは、貴方だけなの」

 ──恋されるのも、愛されるのも、自分でありたいとつぶやく彼を、なんて愛おしいのだと思う。
 嫉妬と独占欲。それは互いにあるものだ。
 彼がそう思うように、彼女もそうであった。
 沈むように目を伏せる。だって、彼と同じ瞬間を生きたいと願ってしまうから。

「ねえ。いつか私は、あなたを置いていってしまうでしょう? それがすごく、怖いの。今、この一瞬さえも惜しくてたまらないわ」

 ちゃらんぽらんだけど優しくて、気さくで、余裕があって、人情深くて、甘えさせてくれて、誰にでも愛されるお姉さん。
 計算高く、火遊びも楽しんで見せるそんな彼女が、愛するひとの前でだけは、そう不安な気持ちを吐露する。
 そう言えばきっと彼は、怒りや嫉妬をちょっぴり鎮めて、私の頭を撫でてくれる。
 ──彼に見えないよう、計算高く舌を出して。そして、少女のように笑う。
 ずるくて我儘だけど、でも、この情愛はどうしようもなく本物だ!

「いつか私がしわくちゃのおばあちゃんになっても……手を引いて連れて行ってね」
 
 愛する人に、永遠に覚えてほしいという呪いを掛けたいと願うのは、不正義なのでしょうか?
 ──それに答えるひとは、きっと居ないけれど。

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