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変わらないあなたが、変わってゆく私の手を引いて
登場人物一覧
いつか私は、あなたを置いていってしまうでしょう?
それがすごく、怖いの。
今、この一瞬さえも惜しくてたまらないわ。
ねえ、いつか私がしわくちゃのおばあちゃんになっても……手を引いて連れて行ってね。
おまけSS『恋と愛』
また『彼』とお酒を飲んだのですってね。浮気ですか?
……と彼がニッコニコしながら言うものだから、アーリアは即座に首をぶんぶんと振って否定した。
「待って待って、違うわよお……! ホントよ、私は貴方一筋だもの」
──じゃあ、どうして。とちょっぴり不機嫌そうに聞く彼に、なんだかちょっと意地悪したくなってしまうのだ。
「ねえ。恋と愛は、違うのよ」
そう言うと、ずるいですわ、だなんて、きっと彼はふくれて見せるだろう。
ずるいのかも。でも、彼女の中ではそうなのだ──少なくとも、アーリアの中では。
ずっと大人で、頼れる背中をしていて、オシャレで、自分の知らないものを良く知っていて、時に強引で、甘えさせてくれる──。
そんなイイ男に焦がれない少女はきっと居ない、と思う。たぶん。
目の前の愛するひとは、そういった人たちとは逆かもしれない。
小さくて、可愛くて、オシャレでカッコよくて……強引なところもあるし……あれ。そんなに変わらないんじゃ?
なんて夢想を吹き飛ばし、目の前の彼に向きなおった。
「恋って盲目なのよ。お互いに見つめ合ってしまうから。
でもね、愛は……ふたり一緒の方向へ、未来へと見つめる事なの。戦いに行く私を支えてくれて。慰めてくれて。寄り添ってくれて。一生、一緒に同じ道を歩んでいきたいと思ったのは、貴方だけなの」
──恋されるのも、愛されるのも、自分でありたいとつぶやく彼を、なんて愛おしいのだと思う。
嫉妬と独占欲。それは互いにあるものだ。
彼がそう思うように、彼女もそうであった。
沈むように目を伏せる。だって、彼と同じ瞬間を生きたいと願ってしまうから。
「ねえ。いつか私は、あなたを置いていってしまうでしょう? それがすごく、怖いの。今、この一瞬さえも惜しくてたまらないわ」
ちゃらんぽらんだけど優しくて、気さくで、余裕があって、人情深くて、甘えさせてくれて、誰にでも愛されるお姉さん。
計算高く、火遊びも楽しんで見せるそんな彼女が、愛するひとの前でだけは、そう不安な気持ちを吐露する。
そう言えばきっと彼は、怒りや嫉妬をちょっぴり鎮めて、私の頭を撫でてくれる。
──彼に見えないよう、計算高く舌を出して。そして、少女のように笑う。
ずるくて我儘だけど、でも、この情愛はどうしようもなく本物だ!
「いつか私がしわくちゃのおばあちゃんになっても……手を引いて連れて行ってね」
愛する人に、永遠に覚えてほしいという呪いを掛けたいと願うのは、不正義なのでしょうか?
──それに答えるひとは、きっと居ないけれど。