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SS詳細

Glänzende Juwelen

登場人物一覧

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
断片の幻痛
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師

 聖なる夜には誰しも大切な人に喜んでもらいたい。ましてや愛する人へは特別な贈り物をしたい。今宵の話は、愛する人をもつ、そんな二人のお話である。

 ヨタカ・アストラルノヴァは待ち合わせ場所で両手に息を吐きかける。もう12月。空はどんより曇り、雪がしんしんと降り積もっていく。番への贈り物への想いのように雪はだんだん重くなっていく。
「団長、お待たせしましたか」
 ふと、声がかかったと思えば、目の前には青薔薇の花束。こんなことをするのは、今日の待ち人、奇術師の夜乃幻しかいない。ヨタカの率いる旅一座の中で愛する人がいるという共通項をもつのは彼女ぐらいなものだった。だから、誘ったのだ。お互いに、愛する人に最高の贈り物をしたいという気持ちは一緒だから。
「……そんなに待ってない……。……相変わらず見事だね……」
「団長に褒められると嬉しいです。さて団長、参りましょうか」
 幻は女性だが男装しているせいか、エスコートが上手い。俺の番の方が上手いけど……。何を今張りあってるんだ?! そんなこと考えてないで幻と一緒に贈り物を探そう。
「…………うん、行こう」

 華やかに飾られた街中を歩き回る——これは美味しそうだけど、消えてなくなるものより残るものがいい——あれは素敵だけど、前に贈ったことがある——数多の店を見て廻っても、二人の心を揺さぶるモノはなかなか見つからなかった。
 そんななか、古めかしいけれど、優美な曲線で彩られた美しい宝石店があった。その名は『Glänzende Juwelen』。その前には一つの立て看板——『世界でたった一つの贈り物を』——の言葉が二人の心を捉える。
 二人は顔を見合わせて、こくりと頷く。これはいい贈り物がありそうだ。思い切って、その宝石店に入ってみることにした。
 中は、暖炉に赫々とした薪がくべられていて、家具は品のいい調度品が揃っており、老夫婦が丁重にもてなしてくれた。
「お客様、本日はどのような宝石をお求めで?」
 並ぶ宝石は大切にされているのがよく分かるほどに、一つ一つが輝きを放っていた。だが、宝石はあまりに高価で手が届かない。
「……『世界でたった一つの贈り物を』という看板を見たんだが、どういう意味なんだ……?」
「なるほど。お客様のお求めのものは、こちらの粘土——銀粘土を捏ねて、自分自身で自由に形を作り出すことができる贈り物で御座います。銀粘土というのは、ただの粘土のように見えますが、これを捏ねて形を決めてから、暫く焼きますとこのように様々な形の銀細工が作れるのです。当店では、形だけではなく、色、香りも自由に選んでつけていただけるようになっております」
「これはこれは。丁寧な説明ありがとうございます。それは大変面白そうで御座いますね。団長、一緒にこれで贈り物を作りませんか?」
「……俺もこれがぴったりだと思ってたところだ……。……でも、俺、こういうの苦手なんだけど、大丈夫かな……」
「当店では、お客様が気に入るまで万全のサポートをさせて頂いております」
 そう恵比寿顔の店主に言われてしまえば、ヨタカも苦手でも番のために頑張ろうという気になった。

 二人で何を作るか悩んだ末、ヨタカは紫色の銀粘土で月を、幻は通常の銀粘土で弾丸を作ることにした。どちらも愛する人を象徴するものだ。
 香りは二人で鼻がおかしくなるぐらいになって選んだ。ヨタカは番の献身的な愛に感謝という意味でヘリオトロープと自分を思い出してもらえるようにオリエンタルな香りがする金木犀の二つを組み合わせた。幻は自分を思い出してもらえるようにと青薔薇とほんのりスパイシーで甘い旦那のようなシダーの二つを組み合わせることにしたようだ。
 早速、二人で銀粘土を捏ね始める。幻は元々器用なので素早く作業を進めていく。それを横目にヨタカは球を作るのに苦労してしまう。それを見た店主はヨタカのために球を作るコツをゆっくり解説してくれる。ヨタカもそれを一生懸命真似て、綺麗な球が作れるようになった。
 幻は弾丸の溝に細かな紋様を刻み込んでいるようだった。ヨタカも何か、月に模様を描こうと思いたった。ネオ・フロンティア海洋王国に伝わる古い伝承を思い出す。月に腕を掲げた蟹が出た日は豊漁だと。番は商売人だから、きっと豊漁って意味って言ったら喜んでくれるだろう。
 ヨタカはドキドキしながら、綺麗にできた球の上に串をそっとおく。そして、腕を掲げた蟹の姿を描いていく。綺麗な月の上に少し不恰好な蟹が出来上がった。立派に掲げられた腕はきっと商売に豊穣を齎してくれるだろう。

 二人の銀粘土との格闘は終わって、店主は疲れ切った様子の二人に、アップルフレーバーの紅茶と香ばしい焼き菓子を用意してくれた。二人でそれらを楽しみながら、出来上がる銀細工に話が集中した。
「……俺の月、ちゃんと綺麗にできるかな……」
「僕も初めての体験なので、ドキドキしてしまいます」
「……でも、幻は器用だし、すっごくそっくりにできてたし、大丈夫だよ……」
「団長も綺麗な月を作っていたじゃないですか。味のあるイラストも素敵です。きっといいものになって出来上がりますよ」
「……そうかな」
「そうですよ。自信持ってくださいね」
 焼き菓子と会話が途切れた。その時、何かがビロードの上に置かれて運ばれてくる。そして、二人の目の前に置かれる。それは完成品に銀のチェーンがつけられたものだった。
「「……おお……」」
 二人とも目を見開いて、感嘆の声しかあげられなかった。
「……幻の本物の弾丸みたい……!」
「団長の月も味があって世界で一つで素敵で御座いますね」
「お客様、お気に召して頂けましたか」
「ええ、とても」
「……うん、凄く……!」
「お二人ともに満足して頂けて、店主冥利に尽きます。では、こちら2点ラッピングして参りますね」
 二人とも綺麗なラッピングをしてもらって満足して、家路に帰る。シャイネンナハトに互いの愛する人が笑みを浮かべるのを想像しながら。

  • Glänzende Juwelen完了
  • NM名
  • 種別SS
  • 納品日2021年12月15日
  • ・ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155
    ・夜乃 幻(p3p000824

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