星明り、蕺を照らして

登場人物一覧

　此方の私は、血を流せば死ぬ。
　其れは私だけでなく、先生だって、あの人達だって。
　……彼方の私なら、死なない（都合のいい）身体なのに。厄介なものです。

　私が幾ら血を流そうと、肉が削がれようと、そんなもの些細なこと。
　私の手が赤錆に塗れ、其れがこの手の蒼茫を濡羽色に染めたとて――護れるならば、其れで好いのです。

　だから、私は貴方に餞の弾丸を送ります。
　餞は、別れ。
　別れは――きっと、美しいのでしょうね。

おまけSS『宿酔、未だ醒めず』

　……なんですか、その眼は。
　ええ、ええ。解っていますとも。
　凝りもせずこうして酒を飲み、明朝に後悔している姿は滑稽でしょう。
　けれど酒自体は好きなのですから、仕方がないのです。

　……何です、此れは。
　蕺草茶。不思議ですね、名前は『ドクダミ』なのに無毒で身体に良いとは。
　
　……あたたかい、ですね。