PandoraPartyProject

SS詳細

薔薇園殺人事件 Act//:2

登場人物一覧

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵

●3/7day
 屋敷「ヨルキオカニナ」にやってきた車椅子探偵のシャルロッテと、その助手のイーリン。ゆっくりと休暇を満喫するはずだったのにも関わらず、リゾート地で殺人事件が起こってしまう。
 透き通り美しい青と白い砂がくっきり見える海はまだ満喫していないし、山に実った上質な果物がたわわだけを貪った。それらを食らい大きくなった動物達のその肉を食べようとした矢先起こった事件のせいで、食事に味は感じられない。最悪だ。
「まぁ、ここでちんたらしてても助けが来ないのは確かね」
 と、イーリン。
「今日から高波、海は大荒れ、大雨もハッピーセットだそうだ。正真正銘外との連絡手段は絶たれた、ってことかな」
 と、シャルロッテ。
 薄く笑った二人。不謹慎ながらもわくわくしているのは否めない、のでやや肩をすくめざるを得ない。高波、海は大荒れ、大雨もハッピーセット。実際この目で見てみたからこそ言える感想としては、仕組まれているとでもいいたいくらいに完璧な事件だ。まあ、事件はちゃんと起こっているのだが。
 事件なんて起きやしない。
 ましてや、こんなゆったりとした避暑地で。なんて思っていた自分たちに教えてあげたい。結局巻き込まれています、と。
 幾多の冒険を乗り越えてきた彼女たちにとって、こんな些細な(といっても殺人事件が些細な訳では無いが)動乱で死ぬことはないだろう。よほど恨まれていない限りは。
「こういうときは何をするべきだと思う? シャルロッテ」
 華奢な白腕をからかうように指を絡めれば、挑発に乗るかのように探偵は重ねた掌に口づけを落として。ふ、と笑みを浮かべたシャルロッテに、ふぅんと蠱惑的に微笑んだのはイーリンだ。繋いだ手が離れることはない。
「そうだな、調査に決まっている。イーリン、早速聞き込みをと思うのだが、勿論構わないだろう?」
「ええ。なんたって貴方の助手ですもの、私。さ、まずはどこに向かう?」
「此処は古典的に聞き込みと洒落込もうじゃないか。現場は己の足で、というだろう? まぁボクは歩かないが」
「キュートなジョークじゃない、私が車椅子を押してあげるわよ」
 遺体はもう動かされている。
 絶海の孤島となったこの島に警察などといったまともな機関が存在している筈もない。
 やや不格好に回収、寝かされた遺体は真っ黒だった。縛られていたのだからきっと何か打撲痕があってもおかしくはない。男性を気絶させるならば、相当の準備が必要なのだから。
「疑いは全員にかかっているのだからね」
「……やれやれ、厄介なことに巻き込まれちまったみてえだな」
「おや、ジョン君。キミだって一応容疑者候補なのだから、しゃんとしておくべきじゃあないのかな?」
「なんで俺まで! ……いや、まぁしゃーねえもんだよな。とりあえず、遺体は見たほうがいいんじゃねえか」
「ええ、そうね。ジョン、貴方は来ちゃだめよ」
「あ?」
「貴方さっきの話聞いてた? 疑われてるんだから、遺体に小細工をしかねないでしょ」
「俺じゃあねえ! って言っても説得力ねえからな。わかった、嬢ちゃんに任せるぜ」
 シャルロッテのメモを受け取り、イーリンは詳しくメモを記入していく。
 見たところ外傷はなさそうだ。広範囲に及ぶ火傷、服も真っ黒。これではなにがあったかなどわかったものではない。
 人のかたちを保っている部分はなるべく丹念に、とはいってもイーリンも人の子なので簡潔に。
「済まないね、イーリン。ボクには出来ないからさ」
「ま、許してあげるわ」
 するりと頬に伸びる手にわずかに目を細める。褒美だと思えば、悪くはない。
「さて、次はジョン。貴方なのだけれど」
「おう、なんだ?」
 瞬いたジョン。イーリンは煙草を徐に取り出して、笑った。
「貴方のギフト、見せてもらえる?」
「……いや、ニコチンを減らすとかそんな感じだぞ。煙から有毒性を消すだけで、これが毒霧なら一発でお陀仏だ」
「あら、じゃあ健康になるだけ?」
「だけどか言うなっつーの! ああ、そうだ」
「ふぅん。時間の無駄だったかもしれないわね」
「おい!!」
 はぁとため息をついたイーリン。煙草を吸いながらジョンもため息を吐いた。ただの水蒸気と、共に。
 ……彼は、ただの『ジョン』だ。

「『さて』。カナ君、次はキミのことを聞かせてもらいたい」
「ええ、こんにちは、小粋な探偵さんたち」
 流石に殺人事件が起こっているのでは、自身のキャリアにも傷がつく。
 カナは協力的だった。あくまで、己の領域にさえ踏み込まなければ。
「キミはまあ、ご存知のことだろうがアリバイがないんだ」
「ええ、そうね。ギフトも相まって余計に不審だと思うわ」
「ああ。そこで可能ならキミの荷物を見せていただきたいんだが、かまわないかな?」
「……まあ、嫌と言っても仕方がないわよね。どうぞ、上がって。どうせ部屋の前まで来てるんだもの、入るつもりだったんでしょう?」
「おや、ご明察だね」
「これでも女優だもの。……おっと、貴方は禁止よ、男性だから」
「へーへー!!」
 カナはサングラスを下ろし二人を部屋に上げる。
 今のところ不審な点はなさそうだ。
「……それにしても、こんなところで殺人事件だなんてね」
「貴方は案外驚かないのね」
「女優だからかしらね。感情が麻痺しているのよ」
「あら、そう? 最初は私達が話しかけようとするのも嫌そうだったけれど」
「だって、女優だもの。行き過ぎたファンのたぐいかと思うじゃないの!」
 バラの香りの香水。
 大きなメイクポーチに、女優帽。
 彼女はオフでもプライドの高い女優なのだろう。
 アリバイの説明こそできそうにはないが、これからも必要であるならば捜査に協力はすると告げ、カナは部屋で仮眠を取ると告げて三人と分かれた。

●4/7day
「『さて』。……すまない、これもキミの夫の無念を晴らすためだ。捜査に協力して頂けるよね、ローラ君」
「……はい」
 ギルティオに支えられながら、ローラは真っ青な顔をして席に着く。
 そのとなりには寄り添うようにギルティオが腰をかける。二人の仲は良好なのだろう、幼馴染だったのだろうか。
「そうだな。まずはその傷のことを聞かせてもらっても構わないかな?」
「……俺が、代わりに話してもいいですか」
「おや、なぜかな?」
「それは……」
 ぐ、と言葉につまるギルティオ。己が疑われていることも理解しているのだろう、苦しげに。
「……わたしが、彼に相談していたんです」
 と、話すのはローラだ。
 腕に巻かれた包帯をしゅるしゅると解く。
 椅子を支えにしながらめくりあげたスカートやトップス。その全てに、青いあざや赤い打撲痕、切り傷が見えた。
「……痛むかい?」
「はい」
「構わなければ、少し手当をしてもいいかしら。私、少しだけ心得があるのよ」
 嘘である。
 傷跡が嘘であるかを確かめるためだ。
 消毒液やガーゼを持ち、イーリンはローラの傷口に触れる。
 うっすらとティッシュをつけ血を拭き取れば、そのかさぶたはふやけ、うっすらと真新しい血が滲んだ。
「……彼と出会ったのは、いつのことだったかしら。あの頃はたしかに恋愛結婚だったんです」
 ぽつり、ぽつりと語りだしたローラ。
 その表情は昔を愛おしく思うかのように優しくて、それから悲しげで。
「なんどか花畑にも行ったんです。彼はバラがだめだったから、いけるところは限られていたけれど」
「……少々失礼。バラがだめ、とは?」
「……彼は、バラアレルギーなんです」
「イチゴではなく?」
「それもです。バラ科のものはすべてだめなんです」
「なら、此処に来るのもだめじゃないの。どうして来たのかしら」
「わからないんです……」
「え?」
「わたしも止めたんです。彼、薬で抑えていても蕁麻疹が出てしまったりするひとだったから、やめておきましょうっていったのに」
「……ふむ」
「それでも此処に連れてきてくれたんです。……やさしい、ひと、でしょう?」
「……ああ、そうだな。少なくとも、たしかに貴方のことを愛していたのは確かだろうさ」
「探偵さん。火事はどうやって起こったんですか?」
 これ以上ローラが泣いているところを見たくはなかったのだろう、ギルティオが話を変える。
 それに関してもまだ不明点が多いのが現状だ。
「うーん……それもまだ謎が多いんだよね」
「そうね。雨も降ってなかったし、どうしてビニールハウスを濡らしたのかしら。火事を止めようとしたのかしらね?」
 ギルティオは眼鏡を拭きながら話を聞く。
 本日は晴天、ギルティオの眼鏡もきらんと輝く程度には太陽も出ている。
 どうするべきかと首をかしげたイーリンとは裏腹に、シャルロッテはギルティオの眼鏡をじいと見つめていた。
「……イーリン、ボクたちは何か大切なことを見逃しているようだね」
「ええ、それはそうね。だけどちっとも浮かばないわ、探偵さん」
「少し実験をしたいことがあるんだ。イーリン、新聞紙を貰ってきてくれるかい?」

 晴れ。
 濡れたビニールハウス。
 反射する太陽光。
 眼鏡。
 集まった光。

 あと少しでなにかひらめきそうなのに、思い浮かばない。
 頭をこんこんと等間隔でつつきながら、シャルロッテは思案する。
 この事件を解決するためのいとぐち、その在処を。

  • 薔薇園殺人事件 Act//:2完了
  • NM名
  • 種別SS
  • 納品日2022年06月12日
  • ・イーリン・ジョーンズ(p3p000854
    ・シャルロッテ=チェシャ(p3p006490
    ※ おまけSS『シャルロットの手帳 Act//:2』付き

おまけSS『シャルロットの手帳 Act//:2』

●森
 手前には果物狩りができる場所が、奥には放し飼いの牧場がある。
 育ててある果物は、りんご、梨、苺。
 屋敷から近い。

●薔薇園
 小さな小屋がある。薔薇の生垣、迷路などもある。
 近くには川があり、ゆっくり足をつけながらみることもできる。
 一定の時間スイーツ販売をしている(ギルディオ)。
 屋敷からは少し遠い。

●屋敷
 特記事項なし。透視や物質透過やテレパスが使用不可。

●島までの道
 船。しばらくは帰れないし、誰か立ち入ることもできなさそうだ。
 四日経過した。

●ジョン・レピアン 34/男
・カオスシード
・記者
・喫煙者
・176/78
・ギフト:喫煙時の煙をある程度無効化できる。
 これは煙草特有の肺を汚す成分などを除外し、喫煙という行為が身体へと及ぼす悪影響を排除するという効果なのだろう。
 毒煙などはその限りではない。
・アリバイ:ボクたちと居た
・入れ替わりの線はなさそうだ

●カナ 年齢不詳(成人済み)/女
・カオスシードとハーモニアのハーフ
・女優
・多くは語ろうとはしない(まあ当然か?
・調査に協力的ではない
・162/46
・ギフト:気配を消すことが出来る
・アリバイ:なし。果樹園に居た

○レオナルド・アルモンド 27/男 被害者
・カオスシード
・いちご、バラアレルギー(?)
・焼死体
 火傷がひどくて皮膚の観察ができない。
 打撲など殴られたような痕も刺されたような痕もない。
 ただ燃えただけだろうか?
・現場には凶器なし
・172/-
・ギフト:彼の声にある程度の説得力を感じさせることができる

●ローラ・アルモンド 24/女
・ハーモニア
・レオナルドの妻
・DVを受けていた
・憔悴している、話は聞けそうにない
・157/51
・ギフト:欲しいと思った色を作ることができる
・アリバイ:ボクたちと居た

●ギルディオ 25/男
・ブルーブラッド
・ローラの友人
・この島で働いているシェフ
・メガネ
・182/79
・ギフト:料理を失敗しない
・アリバイ:不透明。スイーツ販売前は仕事をしていた。
 スイーツ販売中、以降はボクたちとほぼ一緒。

●セリュア・ミュール 27/女
・ディープシー
・この島で働くメイド
・情報は基本彼女が持つ
・格闘技経験あり
・160/54
・ギフト:夜目が効く
・アリバイ:なし。

●使用人は他にもいるし従業員も他に入るが、特にかかわりはなさそうだ。

●現場
 縄でしばられた被害者が生きたまま燃やされたと想定。火事を装ったとみられる。
 現場付近には薔薇用のビニールハウスがあり、そこで薔薇を育てているのだという。
 昨晩は雨が降っていたが、小屋付近含めそこまで雨のあとはなかった。天気もとても良かった。
 付近には誰も居なかった。一番近かったのが我々。

●状況整理
・被害者の死因は本当に焼死か
→YES
・各登場人物は、本当に本人が名乗った通りの人物か
→YES
→四日目時点で、ジョンはお二人に対して『困惑』の感情を抱きました。
・レオナルド氏の苺アレルギーはどの程度重いものか?
 命に関わる程か? 薔薇園に居ても大丈夫な程度のものなのか? 
→YES 重篤なものです
・カナと交渉して、僅かでも情報を引き出す
→四日目時点で、カナはお二人に対して『興味』の感情を抱きました。
・ローラは本当にDVを受けていたか?
→YES
→四日目時点で、ローラはお二人に対して『恐怖』の感情を抱きました……。

 ねくすとそめずひんと 理科 

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