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モブから見たシフォリィ・シリア・アルテロンド
登場人物一覧
●はじめに
こんにちは。世界を救う『イレギュラーズ』に密着するこの企画。
今回は美しい銀髪を持つ美少女戦士、シフォリィ・シリア・アルテロンドさんについて密着取材です。
──と言っても、ご本人の取材だけでは得られない情報やモノがあるのも事実。
そこで、今回はシフォリィさんに詳しいという三人の方にお話を伺いました。
それでは、ご覧下さい。
●町人・ハンスの話
最初にインタビューを敢行するのはこの方。
ハンス・ジュロー氏、24歳。
なかなかに好青年だ。
──こんにちは。今回はよろしくお願いします。
「はい、こんにちは。あなたが話を聞きたいという……」
──はい。今回はシフォリィ・シリア・アルテロンドさんについてのお話を聞きたく。
「ええ。気高く美しく、それでいて僕らみたいな一般人にも気さくに接してくれる。そりゃあ人気者になりますよ」
──そのようです。
「それに、何と言ってもあの髪ですよ。激しい戦いのあとなのに、一切スタイルが崩れない」
──え?
「いや、これは本当に凄いことなんです。柔らかい風に靡く銀の髪、さらさらした髪質がふわっと、こう……ウウーン触りたい……どうにか……」
──聞く相手間違えたかな。
「失礼しました」
──はい。続けてください。
「ああ、そうそう。こうね、ご友人と待ち合わせしてたのかな。シフォリィ様が後ろからご友人に近づいてって、『だ~れだっ?』なんてやってて」
──意外にお茶目なところもあるのですね。
「うふふ、なんてウインクしながら笑っててね。傍から見ててね、もう天使かな? ってね。僕が変わりたかったですよ。僕にもやってほしかった……ホント……」
──心の声漏れてるぞ。
「もうホント美少女なんですよ。柔らかそうなぷっくりとした桜色のくちびる、白い肌をわずかに染めた赤い頬、吸い込まれるようなアクアマリンの光を湛えた青色の瞳──それにあのスタイル見たでしょう? あの反則的な胸! 胸!! 説明不要ッ!!」
──もうダメだこいつ。
「しかもメッチャいい匂いする」
──あ、もういいです。ありがとうございました。
●花売り・プルミエの話
次はプルミエ氏、18歳。
職業は花売りとのこと。
茶髪をボブにした、「まとも」そうな女性だ。
──こんにちは。今回はよろしくお願いします。
「こんにちは。私で話せることでよければ……」
──シフォリィさんと知り合ったきっかけなどをお聞かせしても?
「シフォリィ様は私の命の恩人なんです。最近、このあたりでたちの悪いごろつきがうろついていて……」
──怖い思いをされたと。思い出すのはお辛くないですか?
「いいえ。シフォリィ様のおかげで私はこの通り何とも。えと、それで絡まれてしまって、裏路地に連れ込まれそうになったところを、シフォリィ様が助けてくれたんです」
──素晴らしい実力者と聞き及んでいます。
「ええ、本当に。すごい剣さばきで、あっという間に3人のごろつきを倒してしまいました」
──3人も。それは凄いですね。
「私はあまり戦いに詳しくありませんが、そうですね……思ったより華やかな戦い方をする方では無かったように見えました」
──と言いますと。
「拳や蹴りも交えた、こう、見た目では想像できないような。実践的な戦い方をしていましたね」
──危険な敵を何度も相手にしてきた中で培われた戦い方に見えた、と。
「そうですね。そういう風に見えました。ごろつきたちも凄く驚いていて──」
──なるほど。そのあとについてお伺いしても?
「それでですね。尻餅をついた私に、あの白い手を伸ばしながら、『大丈夫ですか』と温かい言葉をかけてくださいました。その時のお姿とお顔と言ったら──嗚呼、まるで白馬の王子様、いいえ白馬のお姫様」
──あっ何かヤベエ地雷踏んだわこれ。
「もう私のハートは爆発するしマジもうキュン死ですよね。ハァ~ガチ恋距離ですよホントいい匂いするしあの近さであんな言葉掛けられてみてくださいよ惚れるでしょてかなんて言っても顔がいい。顔! 顔!! 顔!!! 顔が良すぎる!!!!」
──なんて? もう一度言って?
「私……もうシフォリィ様無しでは生きていられない体なんです……」
──語弊ありそうな事言うのやめていただいていいですかね。
「震える私をマントで包んで、『送っていきますよ』、なんて耳元で甘くささやいて」
──そこから先はただの妄想だろこれ。
「ちょ、ちょっといいところなのに! これから! これからがいいところなのに!!」
──もう尺無いから終わりです。ハイ終わり。ありがとうございました。
「まってまだシフォリィ様と私の愛の逃避k」
●シフォリィオタク・ガトーの話
最後はガトー・ペリ氏、30歳。職業は不明。
ふっくらした体躯に、汗びっしょりの姿でインタビュアーの前に現れた。
もうまともなインタビューは期待しないことにした。
──こんにちは、今回は……。
「シフォリィたそ! シフォリィたそおお! ウーン……ペロい!」
──うわ。
「ドゥホホ。失礼しました、拙者、ガトーと申します。立派な魔法使いですぞ! ムアッハ!」
──はい。
「見てくだされ、今年の新刊! その名も『シフォシフォにシフォリィ!』シフォリィたそのウスイ本は大変実用的で、拙者……ウーーンもう辛抱なりませんぞ!!」
──どうするんですか?
「決まっているではないですか。一目だけでも拝みに行くのです。拙者、シフォリィたそのグッズはすべて揃えているシフォリィオタク。やることは一つ──陰ながら彼女を応援することだけですぞ!!」
──貴方が優良オタクで安心しました。
「善は急げ! さあデッパツですぞお~!」
──はい。
インタビュアーとガトー氏は幻想の街を歩く。
しばらく歩くと、今回の密着対象、シフォリィさんがカフェでご友人らしき女性と談笑していた。
ガトー氏はピタリと立ち止まり、壁からこっそりと様子を伺っていた。
「ハアハア……シフォリィたそ~」
──此処だけ見るとホントヤバい人ですね。
「何を言っているのです、不埒な輩が邪魔をするとも限りません。彼女を見守るのはシフォリィクラスタとして当然なのですぞ」
──はあ。
「それに、ああしてご友人との歓談や、心休まる時間は久しぶりだと思います。また明日には戦いに赴くのでしょうし」
──詳しいのですね。
「当然です。私ほどの情報通はシフォリィクラスタ内には居ません」
──それはつまりストーカーなのでは?
「ンハハ、まさか。少々コネクションが利くだけですぞ」
──何のコネだよ。
「……彼女が、ただ心穏やかに過ごしてほしい──そう思うのは悪いことでしょうか?」
ガトー氏の顔つきが変わった。
「シフォリィ様は……あの若さでお家没落という憂き目に合っております。現当主であり、シフォリィ様の兄であるリシャール様がその復興を担っておりますが、一度堕ちた名を引き上げるのは難しい」
──……貴方は一体……?。
「私はアルテロンド領の生まれでした。もう、私の故郷はありません」
ガトー氏から衝撃的な発言がされた。
インタビュアーはしばしの間、絶句してしまった。
「私がこうした活動をするのは、アルテロンド家に少しでもお金が入るように、という願いからです。彼女は家の為にひどく汚れたと聞きます……可哀想だとは思いませんか?」
──……。
「私のしている応援など本当に微々たるもので、もしかすると彼女の為にならないかもしれない。それでもね──私は、挫けずひたむきに頑張っている彼女の力になりたかった」
──……パトロンとして名乗り出れば、きっと彼女も喜ぶのでは。
「いいえ。私は路傍の石でいい。遠目から見ているだけでも幸せなんです」
──貴方は、それでいいのですか?
「……彼女には心に決めていた人が居た。許嫁という間柄のね。仲睦まじいお姿でしたよ」
──……。
「その方は、もうこの世には居ません。憎くない──と言えば嘘でしょう。彼さえ居なければ、と思うこともありました。
何せアルテロンド家を取り潰したのは、彼の家であるアンジェール家でしたから。でもね、その方と寄り添いあって歩く彼女のお姿は──ほかの誰よりも美しかった」
ガトー氏の目は、どこか遠くを見ていた。
「私はシフォリィ様が今、笑顔で居てくれれば、それで良いんです。私は近くにいるべきではない」
──路傍の石……ですか。本当に、どこまでもオタク気質ですね。
「性分ですよ。それにもとより──平民の私には遠い遠い、高嶺の花なのですから」
ピリリリ、と鳴り響く音。
「おっと。もうこんな時間ですか」
──何かご用事でも?
「ええ。これからシフォリィたそファンクラブの第二十三回集会があるのです。あなたも参加されますか?」
──遠慮しておきます。
「それは残念です。陰ながらシフォリィ様を愛で、見守り、ペロペロする神聖な会なのですが」
──せっかくいい話で終わりそうなところをブチ壊しやがって。
「ははは、褒め言葉ですぞ! では、また会いましょう。次はシフォリィたその魅力を文字数いっぱいまで語って差し上げますぞ!」
──遠慮しておきます。ありがとうございました。
●おわりに
いかがでしたか?
シフォリィ・シリア・アルテロンドさんについての詳しい情報は知ることができたでしょうか?
今後も彼女の活躍に目が離せませんね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。