PandoraPartyProject

SS詳細

姿が変わっても愛しさは増すばかり

登場人物一覧

ハイタカ(p3x000155)
誰彼
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)
不明なエラーを検出しました

ㅤまだカーテンもかかっていない大きな窓から朝日の光が差し込み、家具も何もない殺風景な部屋を明るく照らす。硬いフローリングの上で縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧に身を寄せるようにして眠っていたハイタカは大きなあくびをして目を開けた。
「……繝上う繧ソ繧ォ縲√#繧√s縺ュ」
ㅤ横ではまだ縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧が、時折ぽそぽそと寝言を呟きながら寝息を立てているようだ。
「紫月……起きて」
「……縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧……」
ㅤハイタカは揺すりながら愛しい番に優しく声をかける。
「今日は二人で家具を揃えに行く約束でしょ?」
「繧薙s繧薙……」
『あさ?』
「そうだよ」
ㅤもぞもぞとぐったりとした体を起こす縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧にハイタカは微笑んでそっと抱きつく。
『小鳥ㅤおはよ』
「うん、おはよう紫月」
ㅤ縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧はキュウキュウと声にならない音を鳴らしてハイタカに擦り寄る。
『デもㅤ家具の前にㅤお金必要ね』
「そうか。そうだった……」
『クエストㅤいてみる?』
「うん。でもその前に朝ごはんにしよう?」
ㅤ窓を少し開けて、それから二人は硬いフローリングの上に並んで腰を下ろすと、昨日港町で買っておいた魚のパイを頬張った。冷めているけれど、外はサクサクとしていて中には魚の身がぎっしりと詰まっていて美味しい。生地と身との間がしっとりとしていてここが一番美味しかった。
ㅤ二人は軽い朝食を済ませると、どのクエストを受けるのか相談する。
『これあ』
「……ん?」
ㅤ縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は自分の画面をハイタカに見せる。
【簡単な海のお仕事。モンスターから漁船を守ってください。報酬はいっぱい弾みます。】
ㅤどうやら漁の最中にモンスターが襲ってくるから守ってほしいとの事のようだ。クエストの内容に報酬も結構良さそうだったので、二人はこのクエストを受けてみることにした。
ㅤそれから早速クエストへ行く準備を始める。ハイタカが身支度を整えドアノブに手をかけると、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は自身の姿を背景に溶け込ませた。
「紫月……?」
『大丈夫ㅤそばにいるかあㅤ周りおㅤびくりさせないように』
「ん、わかった……でも」
ㅤ少し寂しそうな目をして、ハイタカは縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧に右手を伸ばした。
「手、貸して」
『うン』
ㅤ目には見えない縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の手を掴んでハイタカは外へ出た。見えはしないが掴んでいる感覚はあるようなので不安になることはなかったが、「こんなことしなくてもいいのに」と心の内でポツリと呟く。……でも、自分だけしか今ここに紫月がいるとは分からない。知らない。知りようがない。愛しの番が誰の目にも映らない。自分だけがわかる番の存在。それもまた少し良いかもしれない。そんなことを考え、掴んでいる右手の力を少し強めた。

ーーーー

ㅤ港に着くと、いくつもの漁船が海上に浮かんでいた。その上をカモメがクァークァー鳴きながらクルクルと旋回している。いくつも並ぶ漁船の中に一艘だけ、一際明るい檸檬色の塗装が施されているものがあった。アレがきっと今回の依頼主の漁船だろう。
「俺達はクエストを受けに来た者だが……」
ㅤハイタカが船の上で胡座をかき網の汚れを取っている男に話しかけると、男はそれに気づいたのか手を止めハイタカの方に視線を移す。
「あぁ、君がそうなのか?ㅤんん、確か二人と応募があったはずだが、あとの一人はどこだい?」
「それなら……」
ㅤハイタカが自分の右隣を見ると、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は姿を表し、姿勢を低くする。どうやらお辞儀をしているようだ。
「縺ゥ縺?◇縲√h繧阪@縺」
「こりゃ驚いた」
ㅤ自分の背丈を優に越える背丈の縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧を見上げながら男は仰天した。かと思えば視線を再び作業の最中だった網に戻し。
「でもまぁ、ちゃんと仕事さえしてくれりゃいいさ」
ㅤと、軽い口調で言った。
「よっし」
ㅤ男は作業が終わったのかすくっと立ち上がり、二人に上がってこいよと手招きした。檸檬色の小型漁船は巨躯の縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧が乗るともっと小さく見えた。
「はっはっは、こりゃ参ったな!」
ㅤそれを見た男は大笑いをして手を叩く。
「縺吶∪縺ェ縺??縺遺?ヲ窶ヲ繝偵ヲ繝」
「ん?ㅤなに言ってんのかわからんが、いいってことよ!」
ㅤそれから檸檬色の小型漁船は広い海へと走り出した。頬に当たる海風がなんとも冷たくて心地よい。天気は快晴。上を見ても下を見てもブルーの一色に染まっている。
「俺はこれから仕掛けてた網を引き揚げる。二人の仕事はその引き揚げた獲物を狙ってくるモンスターを退治してくれることだ」
ㅤ男は舵から手を離し船を停め、海上にぷかぷかと浮いてる印の旗を手繰り寄せている。
「わかった」
「繧上°縺」縺溘h」
ㅤ二人はこくんと頷いて、男が網を引き揚げるのを待つ。暫くするとバシャバシャバシャと海を掻き分け、昆虫の様な羽が生えた無数の魚達が海の中から飛び跳ねた……かと思えばまた潜り、また飛び跳ねるを繰り返して、物凄い速さでこちらへと向かってくるのが見えた。飛魚かと思うその魚達の体は濃い緑色で、腹部には歪んだ模様が浮かび上がっている。ギョロリと突き出した目玉はしっかりとこちらを捉えているようだ。どうやら群れで行動しているらしい。軽く20匹はいるだろう。
「来たぞ。奴らだ!」
ㅤハイタカは腰に下げた刀に手をかざし、呼吸を整える。
ㅤバサァン。群れの一匹が飛び出し男に襲いかかろうと、顎まで裂けた口を開き、ギザギザの不規則に生えた刃を剥き出しにする。
「……はぁあっ!」
ㅤハイタカが刀を抜くと、モンスターは真っ二つに割けた。バシャーンと、水飛沫を上げながら海の底へと落ちていく。
『小鳥っㅤ後お!』
ㅤその瞬間、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の振るう大鎌がハイタカの背後から迫っていたモンスターの頭部を砕き、薙ぎ払った。
「ありがとう……紫月」
ㅤ二人は背中を合わせ、襲い来るモンスターに向き直る。モンスター達は数こそ多いが思ったより強くはなく、行動も単調で討伐にさして苦労はかからなかった。奴らを一掃し終えた頃には、網はもう全て引き揚げられており、男は満足そうに「さて帰るかね!」と、舵を取った。


「これはイトシェ貝つってな?ㅤ結構な高級食材なんだわ。だが最近は奴らに襲われてばかりでとる獲る船も減っちまってな、んで更に値が上がるって訳だ」
ㅤ男は「報酬だ」といって、麻袋にたっぷり入った金貨を二人に手渡した。
「こんなにいいのか?」
ㅤ軽く10000goldは入っていそうな麻袋をジャラジャラ鳴らして、ハイタカは首を傾げた。
「あぁ持ってけ持ってけ!」
ㅤ男はハッハッハーと気前よく笑うと、ヒラヒラと片手を振り、市場の方へ消えて行ってしまった。
『こえでㅤ家具が買えうねェ』
「あぁ、そうだな。早速買いに行こう」
ㅤ二人は手を取り少し早歩きで家具屋へと向かうのであった。

ーーーー

【家具屋ㅤfelicità】
ㅤ木製の看板が立てかけられている店に二人は足を踏み入れる。カランカランとベルを鳴らし中に入ると、店内に広がる柔らかな檜の香りが鼻をくすぐる。
「いらっしゃいませー」
ㅤ店の奥から女性店員が出てくる。縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の姿を見て一瞬戸惑った様子だったが、特にそれ以上気にする様子もなく二人に微笑みかけ「お決まりになりましたらお声がけ下さい」と、言いレジの前に立った。
「俺は紫月と寝れるベッドとかあったらいいなって……」
ㅤハイタカはそう言うと、店内をキョロキョロと見渡す。すると、奥の方にキングサイズの大きなベッドが横たわっているのを発見する。
「あれっ!」
ㅤトテトテと大きなベッドに近づくと、試しに寝そべってみる。
「紫月も」
ㅤそうハイタカが自分の横をポンポン叩くので、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧も少しだけ横になってみることにした。二人で寝るには少しだけ狭いかもしれないがいつも体をぴったりとくっつけて眠る二人には十分すぎるくらいの大きさなようで、ハイタカはこのベッドをとても気に入った。縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧が横になっても壊れる気配は全くない。随分と頑丈そうなベッドだ。
「これ、いい!」
『ヒヒヒㅤそうダね』
ㅤ二人はベッドから起き上がると、他にも何かめぼしい物はないかと店内を見回った。
(ベランダに置くテーブルと椅子……それとティーセットがほしいねぇ。小鳥の淹れてくれる紅茶は絶品だからね)
『小鳥ㅤアレ』
ㅤ縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧が指差した先には、ベランダに置くのにぴったりな木製のテーブルと椅子が並んでいる。
「あれも買おう」
ㅤハイタカはこくりと頷き頷いた。
ㅤ家具屋なのでティーセットは置いていないらしく、別の店で買おうかと、ティーセット以外のベッドやテーブルや椅子、その他カーテンやランプ等を店員に声をかけ、購入した。
「随分といっぱい買ったな……」
「お客様。それでしたら……!」
ㅤ流石に全て持ちきれないので、購入した家具はお店のサービスで家まで届けてもらうことに。どうやら今は期間限定サービスとして組み立てから設置まで行ってくれるのだという。なんて素敵なサービスだろうと、二人はルンルンと鼻歌交じりに家具屋を後にする。

ㅤ帰宅途中、ハイタカの目にショーケースに並ぶティーセットが映る。
「紫月、あれはどう?」
ㅤ菫色の装飾がとってもオシャレなティーセット。これはいいと、早速購入する。縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は大事そうにそれを抱えている。それを見たハイタカは満足そうに微笑んだ。紫月が喜んでくれるととっても嬉しい。
ㅤ出かけた時はハイタカや周りに気を遣って姿を消していた縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧だったが、今はそんなことも忘れてハイタカとの時間を楽しんでいるようだった。

ㅤ家に帰ると家具屋のスタッフが既に到着していて、どこにどれを置いたらいいかとあれこれ聞いてくる。「あれはここで、それはここ」と言っただけでスタッフの屈強なお兄さん達は迅速かつ丁寧な作業で家具達を設置していく。数十分の間に全ての作業が終了すると、スタッフのお兄さん達は会釈をして帰って行った。

ㅤ殺風景だったのが一瞬にしてなんとも快適で過ごしやすい理想の家に生まれ変わって一段落したところで、ハイタカが「紅茶でも」と、キッチンへ向かった。縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は早速ベランダに向かい、置かれた椅子の上に腰掛けてハイタカを待つことにした。
ㅤ暫くして、ハイタカがお盆にティーセットとお菓子を載せてやってきた。テーブルの上にお盆を置くと、自分も椅子の上に腰を下ろしコポコポとカップに紅茶を注ぐ。
「紫月、どうぞ」
『ありがとㅤ小鳥』
ㅤ二人は紅茶を口に運ぶ。それからお菓子をつまみながら、ゆったりと流れる時間の中、今日あった出来事や前に起こった面白い話などを交わして過ごしていた。太陽がすっかり傾き、空が紫色に染まった頃。
『そろそろㅤ中に入ろかね』
ㅤと、テーブルの上を片して部屋の中へ戻る。それから広い浴槽に二人で浸かり、今日一日の疲れを洗い流す。ずっと濡れているのは良くないからと、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧がハイタカの長くなった髪を乾かす。ハイタカの髪を乾かしたあとは、アロマを塗って、綺麗に櫛で梳かしていく。
『痛くないㅤかい?』
「ううん。とっても気持ちいい……」
ㅤハイタカはウトウトとしながら応える。
『そろそろㅤ寝よか』
「……ん」
ㅤ縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は今にも眠ってしまいそうなハイタカを抱き抱えると、ベッドに寝かせる。自分もその隣に横になると、ハイタカをそっと抱き寄せる。
(あぁ、愛しの小鳥。 アタシの小鳥。こんな姿になっても愛してくれる健気な小鳥。一生離しはしない。ずっとずっと、これから先も愛しているよ……誰よりも)

「……繧「繧ソ繧キ縺?縺代?蟆城ウ・」

ㅤそう、ハイタカの耳元で囁いて、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧も深い深い眠りに落ちていくのであった。

  • 姿が変わっても愛しさは増すばかり完了
  • NM名伊与太
  • 種別SS
  • 納品日2021年06月06日
  • ・縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107
    ・ハイタカ(p3x000155
    ※ おまけSS『愛しの番』付き

おまけSS『愛しの番』

「キャー!ㅤモンスターよ!ㅤ誰か、誰かァ!!」
「どうしてこんなところにいるんだ、このバケモノ!」
「違っ、紫月は!」
ㅤ紫月の姿を見た村人達は紫月を恐れ、罵り、傷つけた。
「ごめん、紫月……俺が出かけようって言ったばかりに」
『気にしないでㅤ小鳥ㅤ悪くない』
「ごめん、紫月……ごめん」
ㅤ俺は紫月に縋るように泣きついた。本当に泣きたいのはきっと紫月の方だけど、紫月は黙って俺を優しく抱きしめてくれた。
『アタシの方こそㅤ家具ㅤ買えなくて』
「そんなことどうだっていい!ㅤ紫月が、紫月さえいてくれたら……俺は……俺は……。何もいらないんだっ」
ㅤ嗚咽を漏らしながら俺は硬い床に何度も拳をぶつける。すると。
『ダメㅤ小鳥』
ㅤと、紫月は俺の握りしめた拳をそっと掴んだ。その声はどこか震えているようで、この世界に来て初めて聞いた紫月の声だった。
『小鳥ㅤ傷つくㅤダメ』
「……紫月…………ごめんよ……俺、どうしても悔しくて。紫月はどんな姿になっても紫月は変わらないのに。本当の紫月を知らないから皆ああやって好き勝手言いやがって……」
『ううん』
ㅤそう言って紫月は俺の頬に流れる涙を拭った。
『小鳥がこんなアタシㅤでもㅤ愛してくれるㅤそれだけㅤ嬉しい』
「紫月……。……そんなの当たり前だ。紫月がどんな姿になっても、俺は紫月を心から愛してる!ㅤ……紫月……愛してる…………俺の愛しい番」
『アタシもㅤ愛ㅤテルㅤ小鳥』
ㅤ俺は紫月の体にそっと唇を落とす。


ㅤそうだ。俺だけが紫月を愛してる。俺だけが紫月のことを愛してる。紫月も俺を愛してる。紫月が俺の番なら一生俺だけ愛せばいい。俺が紫月の番なら一生俺だけが愛せばいい。そうだ。……そうだそうだそうだ。このまま二人でここにいればいい。二人だけで愛し合える絶好の場所じゃないか。だから少し街から離れた場所にしたんじゃないか。そうだ。そうだ。俺だけの紫月。俺だけの愛する番。愛してる。愛してる……愛してる。愛してる。

「愛してるよ……紫月。俺の番。…………永遠に……」


ーーーー


ㅤこの世界で時々起こる異常事態(ERROR)まさか、我がこんな姿になるなんてね……ヒヒヒ。困ったものだよ。とはいえ面白がってはいられないね。この姿じゃろくに外出もできやしない。先程試しに街へ買い物に出てみれば「バケモノ」だ「怪物」と恐れられる始末……。これじゃあ小鳥にも迷惑をかけてしまうね。本当に困った。困った。
「ごめん紫月……ごめん。俺のせいで」
ㅤ小鳥は我を傷つかせてしまったと心を病んでしまったけれど、全然そんなことない……と言えば少し嘘になるけど、小鳥がこの姿を受け入れてくれたから他はどうだっていいと思っているんだよねぇ。
「紫月がどんな姿になっても、俺は紫月を心から愛してる!ㅤ……紫月……愛してる…………俺の愛しい番」
ㅤあぁ、そんなことをこんな姿になっても尚言ってくれる小鳥は本当に愛おしいね。こんなにも愛おしい小鳥が見られて逆にこの姿になってラッキー……だったかもしれないね。…………これは小鳥を騙しているようで少し心苦しいのだけど、暫く傷ついたフリでもしていようかね?ㅤなんて。でもそれで小鳥が自分の身を傷つけるのは許せないけど……けど、我のことを想っての傷だと思うとそれはそれでたまらなく興奮してしまうねえ。本当に困った。困った。この姿になってからより一層小鳥を我だけのものにしたくて堪らない。我だけの小鳥。我だけの番……あぁ、なんて良い響きだろう。こうして我が部屋の隅で縮こまっていれば小鳥は心配して寄り添ってくれるのだろう?ㅤもし、我に愛想を尽かして出ていこうものならこの巨体で小鳥の脚をもいでやればいい。歩けぬようにして一生ここで暮らせばいい。巣の近くはもう海だ。食料くらいどうとだってなるさ。……ねぇ小鳥。ここで一生二人だけで暮らすのは最高に幸せだろう…………ねぇ?

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