シナリオ詳細
書架の迷い子
オープニング
●
クレカは秘宝種の娘である。果ての迷宮で出会い、イレギュラーズとして混沌に受け入れられた存在である。
R.O.Oで観測した限りでは自らはどこか別の世界線から産み出され、そして其の儘『受け入れられた』のだと認識していた。
(本当の世界はどこなんだろう)
クレカはぼんやりと無数の本(ライブノベル)を眺めて居た。
(……私は、誰なんだろう)
クレカ。そう呼んだのは偶然彼女を発見した境界案内人(ホライゾンシーカー)だった。
その外見は誰かに似せて作られていた。それが果ての迷宮の『穴掘り』名人だと聞いたときには妙な因果だと感じたものだ。
(あの人と、私は家族ではないから)
ペリカ・ロズィーアンは幻想種だ。ずっと長いこと穴を掘っているらしい土木関係者――改め冒険家である。
愛らしい彼女は幻想王家に雇われた果ての迷宮踏破の総隊長であり、最も『境界』に近かった存在であった。
だからこそ、何かの折に接触した世界が彼女の外見を知り得たのだろう。
もしかすれば『天使様』か何かと勘違いされたのだろうか。神託や神の降臨と勘違いした者がクレカの外見をデザインしたならば。
(……なんて)
そんなくだらない冗談を言える程に少女は『人間』になっていた。
――K-00カ号。
内股にひっそりと刻まれている製造番号。それが本来のクレカを表す記号だった。
境界案内人はそれに気付いてから「クレカ」と呼んでくれたのだ。それでも、自身が『無数に居る一つ』で有る可能性が恐ろしくて、外にではなかった。
余りに外に出ない生活をしたからこそ、埃を被ってしまいそうだと揶揄われるほどの――
「あ」
クレカは一冊の本(ライブノベル)を拾い上げた。
境界図書館の中は静けさが漂っている。
「……え?」
何かが視界の端にちらついた。
勢い良く走り抜けていく。
「あ、待って」
長い尾だ。ゆらゆら、と揺れている。あれは知識の上では『猫』と行ったのでは無いだろうか。
追掛けていく内に余り整理されていない書架へと辿り着いた。
「君」
クレカは、何と声を掛けるべきか迷ってからゆっくりと手を伸ばす。
「何処に行くの?」
『猫』はにゃあと鳴いた。数匹の猫と、それから奥には眠るように丸くなっている何かが居る。
桃色の体をした――竜、だろうか。未だ幼い姿をしている。それは怪我をしているようだった。
「……その子を、どうすればいいの?」
『猫』はクレカの前に座って「にゃあ」と鳴いた。
どうやら手当てをして欲しいと言うことだろうか。どうすれば良いか分からず、クレカは取りあえずローレットに依頼を齎したのであった。
●
「猫、数匹。ドラゴン、おねむちゃん。境界図書館に、落ちてた。
この子達を、一日、お世話して欲しい。一日で、良いらしい。おねむちゃんが言ってた」
「おねむちゃんだ」
桃色の竜はうっすらと体の内側が透けて見えているかのようだった。丸まった竜がくあと欠伸をする。
「われは微睡みの竜、おねむちゃんである」
「らしい」
「どうやら、異なる場所に迷い混んだ。繋がっていたようだ。
プーレルジールに帰りたいのだけれど、渡航費用が足りていない。だから、きさまたちに思う存分遊んでほしいのだ」
渡航費用。
聞き慣れない言葉にイレギュラーズはクレカを見た。
「境界深度。R.O.Oで世界を、渡ったから、現実とリンクした、らしい。
プーレルジールっていうのは、多分……幻想の、もっと昔の地名。
けど、この子の話を聞いたら『異なる世界線』、みたい。アイオンって男の子は、勇者じゃない」
クレカは何処か困ったようにそう言った。『おねむちゃん』と数匹の猫は異なる世界から遣ってきた所謂世界渡航者である。
最早、混沌に飲み込まれ消え失せる可能性のある世界であるのか。それとも『分離したもう一つの世界』なのかは定かではないが、この竜には空間を行き来する能力があるらしい。と、言っても何か条件があるようだ。万能ではないのは確かである。
「K-00がいたから、プーレルジールかとおもった。違った」
「……知ってるの?」
「知ってるも何も、きさまたちは、プーレルジール街道の片隅の、プリエの回廊(ギャルリ・ド・プリエ)で産まれたゼロ・クールだろ?」
「……わからない」
「ふうん?」
おねむちゃんはそう言ってから欠伸をした。
「兎に角、遊べ。遊べば、われと関わりが出来て、帰る為の『費用』になる。つながりは、世界を渡るには重要だ。
それに、きさまらはいずれは来るだろうから、われと遊んでおくと良いことがあるかも知れないぞ。
所詮はこれは、夢なのだから――」
- 書架の迷い子完了
- GM名夏あかね
- 種別 通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年07月29日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談0日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
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境界図書館――その最奥に位置する書架には古びた椅子が置かれていた。
そこにちょこりと座っていたのは『境界図書館館長』クレカ(p3n000118)である。ふわふわとしたラベンダー色の髪を揺らす秘宝種の『少女』だ。
便宜上、彼女の事は少女と称するべきだろう。女性体として作られたボディに乗せられた精神性も少女染みている。
だからだろうか。目の前に突如として現れた子猫サイズの『竜』――本当に竜であるかは定かではないが、少なくとも何らかの影響で小さくなっているのは確かだ――を愛らしいと感じたのも。その竜が連れていた子猫たちが可愛らしかったのも。
世話をして欲しいとローレットを訪ねたクレカの依頼を受けて『赤い頭巾の魔砲狼』Я・E・D(p3p009532)は驚愕と、僅かな期待を胸に図書館へとやって来たのである。
「えっ?」
目の前に居たのは『あの時』に見た竜が随分とコンパクトなサイズになったものと言うしかない。
あの時とは、Я・E・Dではない。R.O.Oの『妹』であるルージュが覇竜領域を踏破する際に相対した微睡みの竜『オルドネウム』である。
「オルにぃなの? どう言うこと?」
オルにぃと呼んで親しんでいた。大切で愛おしい『兄』であったのは確かである。だが、現実(こっち)ではオルドネウムの子孫を名乗るオーリアティアが居たほどだ。
勇者と共に冒険をしたとされる伝承の竜オルドネウム。それは二度とは会うことの出来ない存在だと考えて居たのに。
「きさまはわれをしっているのか?」
辿々しく押さない話し口調であった。黒い髪に黒い翼。桃色の眸を有している幼い子供の姿に変化をしてオルドネウムは問うた。
「ひ、人の姿に……」
「われもなれるが、すきではない。あのままで良いなら、あのままにさせてもらう!」
踏ん反り返った竜は「おねむちゃんだ」と名乗った。おねむちゃんという呼び名はR.O.Oでも『プレイヤー』たちが名付けていたが、目の前の竜は「マナセがつけた」と唇を尖らせてそう言った。
「マナセ、か……」
『運命砕き』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)は呟いた。その名は深緑でも聞いた事のある勇者王のパーティーメンバーであった『魔法使い』だ。
「まさに、別の世界から遣ってきたって話なんだろうな。俺達は『おねむ』から見れば有り得るかも知れない未来の存在か。
もしくは似通った人間がいるにもかかわらず別物の世界であるか――は、定かではないが」
「えっ、並行世界って事?」
ぱちくりと瞬いたЯ・E・Dにルカはそうなのだろうと頷いた。おねむちゃんと名乗ったその竜から聞きたい話は無数に存在して居る。
魔法使いマナセが居たのならば勇者王――否、『勇者アイオン』も共に居るのだろう。『恋揺れる天華』零・K・メルヴィル(p3p000277)にとっては伝承を聞かせて貰うのと同様だ。
「えっと、話をしたいけど大丈夫か? 俺は零。零・K・メルヴィル。よろしく、おねむちゃん」
「うむ」
お近づきの印だと取り出したパンを子供の姿の儘でぱくりとひとくち噛み付いた後「ふごふご」と言い始める。竜である頃と同じような食べ方を人間は出来ないという事をそこで初めて学んだ『伝承の竜』(と伝えられている存在)なのであった――
●
「遊ぶぞ! ……いや、いいのか? その、竜。竜種(ドラゴン)だよな……?」
『空の王』カイト・シャルラハ(p3p000684)は海洋王国の近海で信仰されている『水竜さま』を脳裏に思い浮かべた。
あの美しい竜を思えばこそ、竜種と言えば上位存在の一片であり、神にも値することがある存在である筈なのだ。
カイトがとっかかりに怯えたのはそんな竜が「あそべ」と踏ん反り返っているからである。姿こそ人間の子供をもしているが話を聞く限り『恐ろしい程に凄い存在』なのである。
「そうだが、われは勝手に外に飛び出したのだ。怪我をしていたところをアイオンが猫だと勘違いして手当てをしたほどだ」
「そ、そうなのか……?」
「うむ。だからあそべ」
尊大な態度をとったオルドネウムにカイトは頷いた。最初ばかりは緊張しているが、数分経てば直ぐに「おねむー!」と呼び掛ける距離感になるのがカイトの良い所である。
「おねむちゃんはなにやりたい事はあるかい? 夏だからね、一緒に水遊びをするのもどうかと思ったんだ。
疲れたら昼寝をすれば良いしね。遊ぶ時間は限られているかも知れないけれど、思う存分一緒に過ごせたら嬉しいよ」
穏やかな声音で語りかける『奈落の虹』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)におねむちゃんは「わかった」と大きく頷いた。
「あ、図書館で水はダメかな?」
「ううん。ここは大丈夫」
境界図書館は特別な場所だからとクレカは空室となって居た場所での水遊びを提案した。流石に屋外に、というのは難しいがクレカが判断した場所程度であればおねむちゃんを連れて行けるらしい。
「猫はどうする?」
「よければ猫はおれっちが遊ぶぜ! おねむちゃんのともだちなんだろ?」名前は?」
「ない」
『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)はぱちくりと瞬いた。名付けられていない野良猫たちなのだという。この猫たちもアイオンが拾ってきておねむちゃんが一緒に過ごしている友人と言うことか。
「うーん。するならシロ、クロ、ブチ……デップ……?」
「にゃあ……」
でっぷと呼ばれた丸々とよく肥えている猫が反論した。どうやら『お前、今、外見で決めただろう?』と言っているらしい。
人間の言葉を話す事が出来るそうだが、猫たちは警戒してか普通の猫になりきっている。クレカ曰く「話す事が出来るのも境界図書館に迷い混んでいるからかも」とそういった。元の世界では動物疎通などがないと会話が成り立っていないのだろう。
「デップ、だめか」
「いいのだ」
でっぷりと太った猫は了承するように短い手をリックの腹へと押し付けた。ぷにゃりとしたその感覚が何とも言えず心地良い。
「ジーク、来てくれ。猫たちと遊ぶ仕事なんだ」
ふわふわ羊のジークに声を掛けた『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は四匹の猫たちを見詰めてどこか心が躍っていた。
かわいいジークとかわいい猫が共に遊ぶ場面など、癒やしでしかない。もふもふとした動物を好んでいるゲオルグにとっては猫と遊んで欲しいというクレカの依頼は特別な響きを有していたようにさえ思えた。
「シロ、クロ、ブチ、デップだね。よろしくね! 猫ー! 可愛い! ふふ、遊ぶんだよね?」
歓喜に溢れたように眼を細めた『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)に小さなシロが「うん」と頷いた。こくりと頭を下げて応じる様子も愛らしい。
「一緒に沢山遊べば『費用』になるんだよね? お家に帰るために必要なら、一緒に沢山遊ぶぞー!」
「おー」
小さな手を天井へ伸ばすように持ち上げたクロに反応したブチが「おお」とのろのろと腕を上げた。どうやら猫たちにも性格はあるらしい。
リーダーシップをとるのはでっぷりと太っており落ち着き払っているデップ。警戒心は薄いが人間の事を好んでいるような素振りをとるのが小さな白猫のシロだ。
天真爛漫で可愛らしいのは黒猫のクロであり、ぼんやりとしていて眠たげなぶちねこのブチは微睡みの竜と名乗った『おねむちゃん』と一番気が合うようである。
「竜と一緒に遊んでたんだろ? どんな感じなんだ? どう言う遊びが好きなのか教えてくれよな。ちちち。ちちちち。ほらほら、こっちこっち」
鮫ではあるが魚類的な外見を活かして遊ぶことを決めたうずうずと体を揺らしていたシロとクロを甘えさせながらリックはからからと笑う。
「ほら、こっちだ」
ゲオルグが呼べばデップはぽてぽてと歩いてきてその膝の上に乗った。穏やかな心地でゲオルグはデップの頭を撫でる。
優しく微笑みかければ、その笑みを見てからジークがつんとその鼻先でデップを突いた。
「あはは、友達になりたいみたいだね」
沢山の玩具を取り出したヨゾラに反応するブチはコッチへ寄越せと言わんばかりに手を伸ばしている。
「ほらほら、こっちだよ」
「とれない」
「あはは、ほら、頑張って?」
「とれた」
えらいえらいと頭を撫でればブチは自慢げな顔をして尾を揺らす。猫じゃらしや鼠の玩具は大の猫好きのヨゾラが猫たちのために用意した品である。
ふかふかとしたジークの背に埋もれていたデップは「動くのはしんどい」と猫らしからぬ事を言った。
「ならのんびりとすればいい。昼寝もしやすいだろう?」
「こいつ、ふわふわだ」
そうだろうともゲオルグは自慢げに頷いた。ふかふかしたジークは猫たちに大人気だ。ふわふわ羊と猫が戯れる様子を眺めるだけでヨゾラの心もきゅんとする。
先程までの猫じゃらしと勘違いしたようにリックを捕えようと手を伸ばす猫たちに「おれっちは食べられないぜ!」とリックは揶揄うようにからからと笑った。
「それにしても、シロたちも別の世界から来たんだろ? ココは違うか?」
「ちがう。ぼくたちの世界は、魔王が滅ぼしちゃうから」
「魔王……」
ヨゾラはぽつりと呟いた。悲痛な表情を見せたリックに猫たちは「でも、おねむが守ってくれてる」と。そう嬉しそうに笑ったのだ。
空中ドッチボールを楽しむおねむちゃん(竜の姿)とカイトの審判をしていた零は「お腹空いてないか?」と問うた。
「パンとやらをもらう」
「はいはい、毛繕いだってするぜ? かくれんぼでもいいかもな」
「プールとやらもいい。水は好む」
尊大な態度のおねむちゃんに零は「オーケー」と笑いかけた。ウィリアムが準備しているプールに入ることを楽しみにしているのだろう。
ウィリアムは兎に角力尽きるまで遊び、ごろりと横になったままおねむちゃんの話を聞こうと提案した。
おねむちゃんも思い切り遊べば横になると納得しているのだろう。
「竜と遊ぶ機会なんて中々ねぇからな、水遊びだってんなら一緒にやろうぜ」
「さきいか、食べる? プールも楽しもう」
Я・E・Dのさきいかを囓りながらルカに「こっちへこい」とおねむちゃんは呼んだ。竜という存在を好ましく思うルカも年甲斐もなく燥いでいるような自覚があった。それだけ心が躍っているという事だ。
「水が好きなんだったな。水球なら相手になるぜ」
「じゃあ、試合にしてもいいかもね」
ウィリアムが笑いかければおねむちゃんは「われのかちだが」と胸を張った。結果としてはおねむちゃんの惨敗である(ルールを理解していない)。
Я・E・Dが敷き詰めた布団へとおねむちゃんがコロリと転がった。子猫程度のサイズの鳥に姿を変化させたカイトも眠たげに共に横になる。
ブラシセットでおねむちゃんを撫でながらЯ・E・Dは「きもちいい?」と問うた。
「うむ」
「さきいかも気に入ってたね」
「あれはすきだ」
まるで弟のようだ。現実世界では逆転してしまった。Я・E・Dはくすりと笑った。
皆が用意した玩具で思う存分に遊んだ。それだけでも心が躍ったのに。Я・E・D自身もうとうとと眠気がやってきたことに気付く。
「無理すんなよ」
ブランケットを手にしていたルカがそっと体へ被せてくれたことに気付いてからレッドはゆるゆると瞼を降ろした。
●
「プーレルジールにもいずれ行ってみたいね……!」
ヨゾラが嬉しそうに告げればおねむちゃんは「そこのがいれば渡れるだろう」と指差した。
指を差された側のクレカは驚いた様子で目を瞠る。K-00とその竜は自分のことを呼んだ。クレカと名乗って居た自分を『本来の名称』で。
「K-00、じゃない、クレカはプーレルジールの人形師の作品だろう」
「わからないの。……じゃあ、私は、並行世界からやってきた旅人?」
不思議そうな顔をしたクレカにおねむちゃんは少しばかり難しい顔をして――「そうであって、そうじゃないのかもしれない」とそう言った。
境界深度が高まることで『本来的には向かう事の出来ない異世界』に渡ることが出来ていた。どうした原理であるかは分からないが、R.O.O側ではそうした事例が見えていたのだ。
斯うしておねむちゃんと猫たちがやって来て元の世界に帰る事が出来るというのは特例中の特例だ。しかし、それには様々な『特例』が重なっているとしか言い切れない。
「クレカの場合は、生き物としてではない漂流物が混沌に行き着いて、混沌のモノとなった後に生命を得たって事だよな?」
「うむ」
「だから、クレカは秘宝種って事か。製造元が何処であったって」
「うむ」
ルカはまじまじとクレカを見た。世界に飲み込まれて混沌世界の存在となったクレカは秘宝種という人間として認められた訳である。
彼女達はコアが本体であり、その体は無機物そのものものだ。人のように繁殖することはなく、一代限りである為に眠っている間にその身柄が異世界から漂流したとて旅人として扱われては居ないのだろう。
少女の存在と、果ての迷宮を進むことで得られた『境界への干渉』が秘宝種という人種を受け入れる事を認めたことで混沌全土に存在して居た無機物が『一人の人間』として認められたというのは妙に擽ったい話でもあった。
「……私は、おねむちゃんたちと一緒に行った方が良い?」
「われの世界に秘宝種は居ない」
「そうなの?」
ぱちくりとЯ・E・Dは瞬いた。ふかふかの布団で共に眠っていたからだろうか少しばかり髪がひょこりと跳ねている。眠たげなЯ・E・Dに代わってリックは「じゃあ、クレカは逆輸入されて旅人になるんだな?」と問うた。
「分からないが、そうかもしれない。ただ、クレカやきさまたちがプーレルジールに来ることを世界は受け入れるはずだ」
「へえ?」
ルカは不思議そうな顔をしておねむちゃんを見た。受け入れられるには理由がある筈だ。『旅人』が召喚されるには何か――
「われの世界のアイオンは勇者ではない。魔王だって倒せない。其の儘世界は滅びるだろう。
だから、われがココの世界に辿り着いたのだろう。きさまらに魔王を倒して貰う為に」
おねむちゃんの無茶振りではあるがЯ・E・Dは彼のためならばそれも為せると認識したことだろう。
ルカは「プーレルジールは、此の辺り周辺……元々の幻想の地名だろう。プリエの廻廊っていうのはコッチで言うところの果ての迷宮であってるな?」と問う。
「うむ。だから、そこから違うのだ。きさまらの世界では前人未踏のダンジョンだが、われらの世界は人形師がゼロ・クールを生み出す場所だ」
「……ゼロ・クールって?」
零は不思議そうな表情をした。ゼロ・クールとして差されたのはクレカである。つまり、知性を有する球体関節人形の事なのだろう。
「それらは、人の言うことをよく聞いて働く。きさまがしたような、食事の世話もゼロ・クールがしてくれるのだ」
「……何か、寂しいな」
「だから、勇者は勇者として育たなかったのだろう。
古代文明と魔法が発展しすぎた世界線は、魔王と呼ばれた生き物は世界を統べるために尽力し、勇者と呼ばれた少年は剣を握る術がなかった」
妙な話だと零は呟いた。大あくびをしたおねむちゃんは「すんだか」と猫たちに問うた。
ヨゾラの猫じゃらしに甘えていたシロが「すんだあ」と手を上げる。ジークの背中に乗っかっていたクロが欠伸をする。
「そろそろ時間か?」と零は妙な寂しさを感じながら問うた。
「われらはかえる。別世界線の遠い未来のものたち。
また会えた時にはふかふかのふとんと、おいしいごはんをもってくるのだ。わかったな」
のそのそと歩き出したおねむちゃんは部屋の端に置き去りになって居た鏡に触れた。途端、それは光を帯びる。
光り輝く鏡に飛び込んでいく猫たちを見届けてから『おねむちゃん』がくるりと振り返った。
「Я・E・Dが言う通り、われは『オルドネウム』だ。微睡みの竜。
転た寝をしていたら、たまたま夢見のせいでこの世界線に『おっこちた』だけのこと――これもあちらのわれは夢だと思うだろうが」
屹度覚えて居よう。
そう囁いてから竜は元の世界へと帰って行った――
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
プーレルジールは生身で参りましょうね。
それでは、ご機嫌よう!
GMコメント
不思議なライトシナリオです。
クレカちゃんと境界図書館で猫と『おねむちゃん』を愛でましょう。
●場所情報
境界図書館です。本(ライブノベル)を閲覧することも出来ます。
クレカがおねむちゃんと猫と一緒に居るのは奥まった埃被った書架です。誰も立ち入ることが少ない様子です。
●NPC
・クレカ
ペリカ・ロズィーアンに良く似ている秘宝種。境界図書館の館長。
少しばかり人付きが苦手ではありますが、皆さんと一緒に過ごす事は嬉しいようです。
自らの生まれについて、何か考えることがあるようです。一緒に考えて上げても良いかも知れませんね。
・『おねむちゃん』
微睡みの竜、おねむちゃん。幼竜です。桃色の体をしています。人の姿をとることも出来るようです。
何故か人の姿になると黒髪の子供になります。どうしてだろう……?
プーレルジールというところからやってきており、アイオンという友達が居るそうです。
お昼寝が好きです。仲良くなれば勝手にお話ししてくれます。好きなことは昼寝と毛繕いとさきいか。
・猫たち
4匹居ます。実はお話が出来ます。にゃあと鳴いているのは警戒しているときだけです。
おねむちゃんのお友達らしく、竜形態の時は何時も翼にへばり付いているのだそうです。どうやら普通の猫ではありません。
プーレルジールからこちらも遣ってきており、おねむちゃんが大好きなようです。
●参考:プーレルジールって?
R.O.Oで行ける『ORphan』の先で知った『アイオン』と呼ばれた青年がいるという場所です。
どうやら現実世界の勇者王ではなく勇者と呼ばれていない青年旅をしている最中のようですが……。
その世界からおねむちゃんたちはやってきました。おねむちゃんの本名は別にあります。お……ねむ……おるどね……む……。
●プレイングには何を書く?
簡単にやりたいことを書いてください。特に、聞きたいことなどが有ればご記載ください。
なくても適当にご飯を食べたり、ボール遊びをしたりできます。猫とおねむちゃんと遊びたいんだ!でも構いません。
遊んでくださることが彼等にとっての『渡航費用』になるようです。
何する?
当シナリオにおけるキャラクターの動機や意気込みを、以下のうち近いものからお選び下さい。
【1】おねむちゃんと遊ぶ
おねむちゃんと遊びます。不遜だな、このドラゴン。
【2】猫たちと遊ぶ。
4匹居ます。お名前を着けて上げても構いません。
白い猫、黒い猫、ぶち猫、それからでっぷりと太った猫です。
【3】クレカと話す
遠巻きに猫とおねむちゃんを見ながらクレカとお話をします。
どうする?
当シナリオにおける皆さんの行動で最も近いものをセレクトして下さい。
【1】プーレルジールについて知りたいのでもっと聞いてみる
何が知りたいのか端的に書いてみても良いかも知れません。
聞かなくてもお話ししてくれそうではありますが……。
【2】取りあえず遊びたいんだ!
昼寝します?ボールで遊ぶ?それとも餌やり!?
メチャクチャ遊びます。メチャクチャにしてやる。
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