シナリオ詳細
<孤樹の微睡み>影に覆われし森の守護者
オープニング
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――仔羊よ、偽の預言者よ。我らは真なる遂行者である。
――主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ。
天義に降りた新たな神託は、国内はもちろんのこと国外にまで余波を広げており、迅速なる対策が必要な状況だ。
遂行者を名乗る者達はこの神託に従い、歴史の修正を行うべく活動している。
各地へと影の一隊を差し向け、触媒となる聖遺物を設置、帳を下ろす。
――ルスト・シファー(冠位傲慢)の力を得て、『神の国』を築く為に。
ある時、深緑の迷宮森林内に遂行者ナーワルの姿はあった。
先日、豊穣を訪れた際、呪詛を使っていた彼女だが、呪詛返しをまともに食らっていたことで、苦しんでいたようだ。
「安易に知らない物を使うものではありませんね……」
元は「碧熾の魔導書(ブレイジング・ブルー)と呼ばれる魔導術式であるナーワルは口から血を垂らして小さくむせる。
呪詛を返されたおかげで自らの一部を切り離す必要があり、力を多少失いはした。
だが、その分、知識として得る物も大きかった。
それを活かせるかどうかはまだわからない……が、今は。
「さあ、今回は何が起こるでしょうか」
ナーワルは連れていた終焉獣の力を借りつつ、集落を含む森の一区画に闇の帳を下ろしていく。
しばらくして、その闇の帳の展開を確認したのは、迷宮森林警備隊所属の幻想種達。
「何が起こった……?」
ここ数年、深緑は外部からの働き掛けもあって様々な異変に見舞われているが、小隊長であるラウルはいずれとも異なる新たな異変に戸惑う。
いつもの森が包まれた黒い帳は少しずつ、現実から切り離されているような。
ともあれ、迅速にツリーハウスから集落民を避難させていた警備隊だったが……。
「気を付けろ。何か来る」
ラウルの呼びかけを受けて周囲を警戒していた小隊員達は、暗がりから一気に距離を詰めてくる敵に身構える……が。
砲撃主体の武装をした人影が発砲してくる。
合わせて頭上から飛来してくる影の天使。
これまで相手にしたことのない異様な敵に警備隊も対処が遅れてしまう。
目立つ敵に気を取られ、背後から近づいてきた敵の発する瘴気に警備隊半数が捕らわれてしまう。
抵抗していた小隊員達を助けようとするラウルらだが、先に攻めてくる砲撃武装の人影や影の天使に押され、救出に向かうことができない。
程なく、捕らわれた小隊員は黒く染まって。
「「poihhtfgerhypghetgoiagieahgp9irhgosi……」」
「お前達……何を言っているんだ……?」
ラウルは部下達の異常に険しい表情をする。
こちらを侵食してくる恐ろしい敵に、ラウルを始め、無事な小隊員が青ざめてしまうのだった。
●
大樹ファルカウへとやってきたイレギュラーズ。
深緑にも、影の侵攻が始まっているという事実に、驚く者もいたようだ。
「遂行者達の活動はもはや世界中で確認されるほどになっていますね……」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)はあちらこちらで聞くその目撃談、形跡、そして事件に神妙な表情をする。
遂行者が神の国を作る為に闇の帳を下ろすなら、それらを全て振り払っていくしかない。
イレギュラーズがその場所、敵情報などを求めるとアクアベルは小さく頷く。
現場は、迷宮森林内にある幻想種達の集落。
異変に気付いて駆けつけた迷宮森林警備隊のラウル小隊が集落民数十名を集落から退避させていた。
なんでも、集落には闇の帳が下りてきていたのだという。
アクアベルの予知は簡単なものしか見えないが、間違いなくイレギュラーズが向かうまでの間に起こると伝えて。
「健闘むなしく、小隊の半数が『異言を話すもの』とされてしまいます」
この為、小隊員を救出しつつ、敵と対する必要がある。
敵は遂行者ナーワルが残した終焉獣一隊。
終焉獣は人間の胴体を思わせる巨体と翼を生やした影の天使5体。
そして、影の艦隊と総称される存在が1体のみ、これに加わっている。
「数が少ないこともあり、遂行者サマエルから戦力を提供しているものと見られます」
元々、ナーワルはアドラステイアにて潜水部隊という子供たちを率いていた。
致命者ジョエルの姿がこのところ見えないが、もしかするとその部隊の再編も目論んでいるのかもしれない。
敵は7体と要救出者5名。
戦力が半減した迷宮森林警備隊と協力しながら、この事態を収拾したい。
「致命者の所業が気になるところですが、まずは目の前の事件を解決していきましょう」
アクアベルはそう話を締めくくり、依頼に臨むメンバー達を送り出すのである。
- <孤樹の微睡み>影に覆われし森の守護者完了
- 影の手は深緑の幻想種達にまで……
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年08月12日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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迷宮森林内を行くイレギュラーズ。
「くっ……ここにも闇の帳が……」
「こんな所にまでナーワルの息がかかってんのかよ」
『漂流者』アルム・カンフローレル(p3p007874)は深緑にも降り始めた闇の帳に表情を陰らせ、『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)も遂行者がここまで勢力を伸ばしていたことに眉根を寄せる。
「こっちの遂行者……は、もう現場にはいないみたいだけど……」
ただ、アルムはそのナーワルがすでに姿を消していることを察して。
「彼らの言う『神の国』の思想、今を生きる人達みんなを踏みにじる考え方だから、俺には許せない」
「……あいつが何を企もうが、絶対に阻み続ける」
アルムに引き続き、ナーワルと因縁の深い『『蒼熾の魔導書』後継者』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)が決意を語る。
今はそれしかできないと悟りながらも、何度だって、遂行者となったナーワルの所業を食い止める為に。
そんなリドニアにベルナルドも心底同情していたが。
(どうやら、労わりの言葉をかける時間は無さそうだ)
ハイセンスを駆使していた『タコ助の母』岩倉・鈴音(p3p006119)が弓矢の飛ぶ音や異言を聞き分け、救助対象の居場所を特定していたのだ。
「ラウル隊~。助けに来たぞ~」
「けーび隊の人がこわい人たちにおそわれて大変なんだよね!」
『( ‘ᾥ’ )』みたいな怒った顔をして、鈴音は『ふわふわ』えくれあ(p3p009062)含む仲間と現場に急行する。
幻想種の集落。
樹上のツリーハウスからは、一切の気配を感じない。
「集落民の避難が完了していてよかった。ラウルさん達のおかげだね」
一般人が被害に遭う現場は珍しくないが、すでにそれを食い止めている辺り、森林警備隊も優秀だと『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は感じていた。
しかし、そんな警備隊も終焉獣や影の天使相手では分が悪かったようだ。
「手法はわかりませんが、敵の手駒にされてる人達がいるようです」
「ナーワルが使役しているにしては見かけないタイプの終焉獣と影の艦隊と影の天使5体……オマケにゼノグロシアン化したラウル小隊の警備隊員と……なかなかに多いねぇ……」
やや目覚めが遅かったと自認しつつも初依頼に臨む『鋼鉄の冒険者』アルティアーロ(p3p011108)の指摘に頷く『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)が敵勢力の詳細を列挙する。
「影の侵攻が続くけど、どんだけ戦力があるんだか」
遂行者達の戦力に底が見えないのは鈴音だけではないはず。
もっとも、鈴音はサーチアンドデストロイで叩き潰すのみと全て倒す気でいたが。
「その遂行者達は、やはりいないみたいだね」
「早急にラウル達を助け出してやらんとな」
遂行者達は許すまじと意気込むヨゾラもまずはベルナルドの主張通り、警備隊救出へと動く。
「ラウル小隊の人達もだけど、ゼノグロシアンにされた人達も何とか助けたい所」
「迎撃と救出やるべき事は多い……迎撃と救出とで二手に分かれ手分けして撃破して事にあたるとしようか」
ヨゾラが口にした要望は皆望むところ。一行はラムダが言うように、2班に分かれて対することになる。
「救出までの時間稼ぎをしなくてはならないですね」
アルティアーロの言葉通り、まずは迎撃班が前に出て、敵戦力を牽制する。
真っ先に飛び込んだリドニアは終焉獣を中心に敵意があることをアピールしていた。
元より、高速戦闘を考えていたリドニアだ。
相手が自身に注意を払えばこちらのもの。
「此れは力を温存なんてことは言ってたら逆にこちらがまずくなるかもね……さて、飛ばして征くよ?」
「急いでラウル隊の人たちを助けて、終焉獣と影の天使たちを倒そう」
「ローレットか……!」
ラムダとアルムもそれに続くと、劣勢のラウル小隊もイレギュラーズに気づいて歓喜の声を上げる。
「迎撃をしましょう。あ、殺れるのなら殺ってしまってもかまわないでしょ?」
そこで、「アルティアーロくん、ぼくも」とえくれあが手を挙げて。
「ぼく、こわいことは苦手だけど困ってる人たちはたすけたいからがんばるね!」
ただ、同じ隊員が敵陣に取り込まれた現状をどうしたものかと、ラウル達には迷いもあったようだ。
その警備隊へと直接接触をはかるのが救出班となる3人。
ベルナルドは幻影を使い、敵の周囲を木々による幻で包む。
「木の葉を隠すなら森の中。人を隠すのだって、緑で魅せてもいいもんさ」
合わせて、ベルナルドは集落に戦闘の余波が及ばぬよう配慮し、オルド・クロニクルを展開する。
鈴音が救助に当たる中、傍にいたのは今回の要請に応じた彼女の姉、真礼だ。
元の世界より共に召喚されてきた者達と鈴音は仕事を融通しているそうだが、真礼もその一人。
「いいわ。乗ってあげる」
「お願いね。姉さん」
自身より強い姉にこうした頼みをするのも気が引けたが、ここは持ちつ持たれつといったところ。
「……頑張った彼等は絶対殺させないし、回復も頑張る。ゼノグロシアンにされた人達も助ける!」
静かに、それでいて強くヨゾラが決意するその場で、影の軍勢との戦いは火蓋を切るのだった。
●
まずは、警備隊の救援、及び救出。
「ローレットの者だ。仲間を助けてぇなら援護しな」
低空飛行して異言を話すもの達を牽制するベルナルドがラウル小隊へと簡潔に自分達のことを説明し、さらにえくれあも続けて呼びかける。
「無事な警備隊の人たちに助けにきました! ……それと、グロシアンになっちゃった警備隊の人たちを元に戻そうね」
えくれあは合わせて、ギフト『はなまるー!』によって彼らを前向きにさせる。
「だいじょうぶ! けーび隊の人たち、つよいんでしょう? きっとたすけられるよ!」
「……そうだな」
励まされた警備隊は仲間を救出しようと決意を漲らせる。
(ゼノグロシアンとなった5名は気絶させてどうにかしたいが)
口には出さぬが、最悪、その5名の救出が叶わぬ場合についても想定する鈴音。
彼女は最低限現状無事なラウル達を救出すべく、彼らと合流してすぐ聖体頌歌を口ずさみ、その傷を塞いでいくのである。
「住民の避難、頑張ったね……絶対生かして助けるから!」
一方で、ヨゾラは全力で異言を紡ぐ小隊員まで助けると言い切り、煌めく星空の願望器を発動させていた。
その傍らで、迎撃班が影の一隊を引き付けていて。
「退け」
鋭い眼光を放ち、リドニアが敵を睨みつける。
とはいえ、それで退くような敵なら、警備隊も苦戦してはいないだろう。
素早く駆けだした影の艦隊は高機動で移動する。
砲撃を得意とする性質上、距離をとろうとする敵を食い止めるべく、リドニアは影の艦隊をマークし、魔力で空中へと跳ね上げて態勢を崩していた。
それ以外のメンバーはというと。
「ラウル隊がおかしくなっちゃったのは、終焉獣が原因なのかな?」
そう考えるアルムは、それなら先に終焉獣に対処することで、ラウル隊救出組の負担を減らればベストと判断する。
終焉獣……初めて確認された怠惰の胴体。
「能力は未知数……」
ラムダはまだその能力が全容解明していないその敵を気にかける。
気分を高めるラムダは仕掛けるタイミングを計りながらも、後続の仲間とアイコンタクトを取る。
応じたアルムは終焉獣を捉え、神気閃光を発して影の天使複数を灼く。
翼を羽ばたかせる天使は身悶えし、アルムも手応えを感じはするものの、元々はえくれあと共に支援担当だ。
そのえくれあは初手から支援に動き、エスプリに2種の武装、太陽の加護を得た鎧の力でこの場のメンバーの能力を底上げしていた。
元々用意していたそれらに加え、彼女はオールハンデッドを発して命中強化する。
「これ以上、深緑の美しい自然を汚されてたまるもんか……!」
その支援を受けたアルティアーロが自らにバリアーを張って前に出た。
そして、アルティアーロは感覚を研ぎ澄まして敵能力を分析する。
すでに敵陣へと一撃与えている状況もあったが、アルティアーロは体力減った影の天使から確実に狩っていくべく3連装スーパーメーサーキャノンを放ち、動きを止めていた。
戦いながら、ラムダは敵……特に終焉獣の能力を分析して。
「……ざっと見、質量攻撃とかかな……」
こちらの体格の倍以上の体躯を持つ怠惰の胴体は動きが鈍い分、その巨体を活かして攻撃するだろうとラムダは見る。
「生命力も高め? 如何にもな感じで護りも硬い?」
今のところリドニアが食い止めているが、多少の攻撃ではビクともしていないように見える。
秘宝種として、超越個体として発達した五感をフル活用し、ラムダはその能力を探って。
「まぁ、あの鈍さから考えるとなにかしら隠し玉とかもあるか……といったところかな?」
ともあれ、最大限に警戒しつつ、ラムダは仲間とは逆側へと回り込んでから握る魔導機刀から繰り出す刹那の剣閃でその巨躯を攻め込む。
ラムダの連撃は守りの堅そうな終焉獣の体をやすやすと切り裂いていた。
異言を話すものとなった者達を救出すべく、3人のメンバーがラウル小隊と協力して立ち回る。
ラウル達が小隊員救出にと彼らの抑えに当たるのを見て、鈴音は向かってくる異言を話すもののみへと閃光を瞬かせた。
光に灼かれた異言を話すものは、風の魔法や弓を使って抵抗してくる。
ベルナルドは内より出る炎を彼らに浴びせ、自身へと攻撃を引き付けつつ、無事な小隊員から少しずつ引き離そうとした。
(他の敵からも引き離さんとな)
救出の為、仲間が纏めて相手取り、気絶されられるようにとの配慮だ。
実際、ヨゾラが根源たる力を星空のような泥に変え、異言を紡ぐ小隊員へと浴びせかける。
「異変があったら知らせて、僕等で対処するから!」
「ああ……」
彼らは何とかして部下を、同僚を元に戻そうと、その足止めに当たる。
やや必死な感じが前のめりになって態度に現れており、鈴音は危険を感じて。
(今は確実に正気な者を生還させるのが大切なんだ。ここでみんな終わってはいけないな)
ラウル小隊が仲間を本気で助け出したいという気持ちはわかる。わかるのだが……。
「ラウル君、君らだけでも戦場から離れて欲しい……」
「そんな、我々だけで離脱するなど……!」
確実にラウル達だけでも助けたいと主張する鈴音だったが、小隊員は皆、狂気ともとれる何かにとりつかれた仲間と対し続けていたのだった。
●
影の一隊は思った以上にタフさを見せ、イレギュラーズと警備隊……とくに焦りも感じさせる。
それでも、メンバーは敵を上回る戦略をもってこの戦況を少しずつ切り崩す。
えくれあと手分けしてクェーサーアナライズを使い、戦線維持に努めるアルムは徐々に傷つく仲間達を癒す。
とりわけ、影の艦隊を抑えるリドニアや多くの影の天使を引き付けるアルティアーロの負担の大きい。
影の艦隊は隙あらば距離をとって高射砲を使ってくる。
リドニアは逐一動きを止めるべく、空中へと跳ね上げて高火力を封じていた。
「ご自慢の移動能力を封じてタイマン張らせてもらいましてよ」
「…………」
黙したまま、艦隊は1人で直接リドニアへと砲弾を撃ち込んでくる。
終焉獣は非常に動きは遅いが、発する黒い瘴気が恐ろしい。
なにせ、こちらの体力気力を奪う他、戦意を奪う。
質量を伴って攻撃してくるとみていたラムダは、仲間の号令を受けて戦闘態勢を維持しながら、間合いを詰めて鋭き剣閃で鈍重な体を切り裂いていく。
それら強敵を相手する2人を優先し、アルムは大天使の祝福をもたらす。
効率的に動けたならば、アルムはすかさず影の天使複数を捉えて先行を瞬かせる。
すると、槍を突き出した態勢のまま、影の天使が空中で塵と化していく。
個別に集中して攻撃していたアルティアーロも足止めした天使へとギガント・ライフ・ブラスターで一気に攻め立て、倒してしまう。
えくれあはアルムと距離をとり、主に異言を話すようになった警備隊と対する面々の支援を続ける。
そちらのメンバーはラウルとの共闘、離脱と対応にやや足並みが揃わぬ部分はあるが、救出さえ叶えばと奮戦して。
ラウルらの守りに当たりながら、ヨゾラが発した星空の泥を浴びた2人が倒れる。
スターライトエンブレムの効果もあり、気絶に留めたヨゾラだ。
鈴音の要請を受けた真礼がすかさず彼らを抱えて一気に距離をとり、野戦築城によってツリーハウス内へと立てこもる。
ベルナルドもま不殺の伝説の力を借り、異言を発する小隊員にのみ終焉の帳を下ろす。
意識を失う小隊員達を横目で見ていたラウル自身も、直接部下を助けるべく素早く弓を射て昏倒させていた。
「これで、警備隊は救出できたね」
安堵の息を漏らすアルムは救出した5人を中心に回復に当たる。
「これでいいよね。後は……」
「ああ」
警備隊全員の救出後、ラウルは鈴音の説得に応じてツリーハウスまで身を退く。
その際、鈴音はハッピィ・トゥーンで援護し、歯を食いしばって一気に移動距離を稼いでいた。
救出さえ完了すれば、イレギュラーズも影の一隊の相当に集中できる。
アルティ―アーロが1体目同様3連装のキャノンを叩き込んでから、ギガント・ライフ・ブラスターで消し去ってしまう。
警備隊救出を終えてヨゾラも残る敵の殲滅に加わり、星空の泥を起こして天使1体を呑み込む。
更に鈴音がステラテジーを駆使して戦況把握し、敵陣を纏めて捉える。
すでに交戦中の仲間達の能力を底上げしてから、鈴音は巻き起こした熱砂の嵐で終焉獣と合わせて影の天使を巻き上げ、後者を地面へと叩きつけて消し去った。
「…………」
ほぼ動かぬ怠惰の胴体は声も発さぬが、挙動はけだるげにも感じさせる。
ただ、敵意は非常に強く、瘴気を発して攻撃し、その全てを奪い去ろうとムーヴする。
存在すらも浸食し、全てを奪いつくそうとする恐ろしい相手。
えくれあが号令を発したことで瘴気によって不調をきたすメンバーが一気に攻勢に出る。
「今回現れた新しい終焉獣は胴体か」
相手の情報を探ろうとも考えるベルナルドだが、ここは一気に攻めるべきと判断した仲間と共闘し、フルルーンブラスターを絵筆で叩きつける。
ここまでイレギュラーズの攻撃が集中していた終焉獣が態勢を崩す。
すかさず、間合いを詰めたラムダが魔導機刀で再度その体を一閃し、見事に切り裂き、霧散してみせた。
「後は、影の艦隊かな」
ラムダが切っ先を向けた先は、薔薇黒鳥を使うリドニアが抑え続ける影の艦隊が。
こちらが不利と見ていたアルティアーロがすでに加わっており、接近して毒手を突き入れ、タイミングを見て悪夢へと呑み込む。
そうして、アルティアーロは体力、エネルギーの両面から圧力をかけていたのだ。
「…………」
ここまでも時折火力をリドニアに向けて放っていた影の艦隊だが、不意に明後日の方向へと大砲を発射する。
その先にいたえくれあにクリーンヒットし、体力を奪ってしまう。
パンドラに縋ったえくれあは自らの傷を塞ぎ、アルムも仲間全員がカバーできるよう位置取りつつ彼女の癒しに当たっていた。
難敵ではあるが、1体のみの艦隊だ。
連携に分があるイレギュラーズは一気に畳みかけて。
間合いを取ったままのラムダが虚空をも断ち切る人達を浴びせかければ、ヨゾラが颯爽と近づいて。
「貴様等なんかお呼びじゃない! この地から……消え去れーーー!!」
敵は全てぶちのめすと意気込んでいたヨゾラだ。
ここぞと魔術紋を輝かせ、彼は影の艦隊の胴体へと渾身の一打を見舞う。
「…………!」
それでも、倒れぬ影の艦隊。
一度踏ん張った敵はさらに機動力を生かして戦場を動き回ろうとしたが、近場にいたアルティアーロが迫り、キルデスバンカーを打ち込む。
続けざまに、リドニアが蒼熾の魔導書を起動させて。
「見てるんでしょ。ナーワル。もうこの火は、貴方でも止められない」
意地でも消し飛ばしてみせると、ここまで術式の仕込みをしていたリドニアだ。
荒れ狂う炎と雷はリドニアによって意思を持ち、影の艦隊目掛けて集中的に襲い掛かる。
さすがの艦隊も砲台が破壊され、その体が焦げ付けば戦えるはずもなく。
音を立てて草の上に崩れ、その姿を消し去っていったのだった。
●
影の一隊を殲滅し、イレギュラーズは救出した警備隊の治療に当たる。
えくれあが天使の歌を響かせ、警備隊の人々へと癒しをもたらす。
「良かった……元に戻った……!」
別作業をしていたヨゾラも異言を話すものとなっていた隊員が正気に戻っていたのを知り、安堵の息を漏らす。
その別作業とは、核となった聖遺物の捜索、及び破壊だ。
帳が下りたままの森にて、ラムダは仲間と共にそれを見つけ出し、壊すことで帳を晴らそうとする。
何せ、このままだと再び集落民を呼び戻しても、神の国へと転移してしまいかねないからだ。
ベルナルドはナーワル絡みの報告書に目を通しつつ、極彩嗅覚を働かせる。
ここまで、ナーワルは聖遺物として骨らしきものを放置しているという。
「骨のような聖遺物……遺骨、かな」
本来なら、教会などで保管すべきものなのだろうが……。
そう考えながらも、ヨゾラは感覚と自らのギフト「興味への道しるべ」も使って。
「聖遺物って、本来は深緑を脅かす為の物じゃないはずなんだけどね……」
深緑がこれ以上浸食されてしまう前に破壊せねばならない。
ヨゾラは草をかき分けて……、それらしき物を発見する。
やはり、今回も核となっていたのは小さな骨だった。
「これ、持ち帰ってもかまいませんこと?」
リドニアは興味を示すが、壊さない限り帳も晴れない為、アルムがヨゾラと共にその骨を砕く。
程なく、帳は晴れ、元の森の様相を取り戻したことで、改めてラウル小隊の状態を確認に向かおうとしたヨゾラは鈴音に呼び止められて。
「集落の猫に餌でもやって帰ろうぜ」
この先の気苦労を考え、鈴音は集落民と一緒に戻ってくる猫に、ヨゾラの持っていた餌を与えることに。
人々や猫と交流する仲間達を尻目に、リドニアは骨の破片を見下ろして。
「多分、聖遺物を辿っていけば……何かが掴めると思いますわ」
遂行者として活動するナーワルを捕捉する為、リドニアはそれを拾い上げていた。
加えて、ベルナルドが気にかけていたのは、人体の部位の姿をしたナーワルの従える終焉獣達。
パーツが集まれば、1体の終焉獣になるのではないかと見ていた彼はエネミー情報が探れないかとイラストを描いていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは戦闘での活躍と合わせ、核を発見したあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<孤樹の微睡み>のシナリオをお届けします。
影の侵攻は深緑にもその手を伸ばしています。
そして、その間に、色々な準備を進めているようです。
●概要
今回は現実の深緑、迷宮森林の一区画、闇の帳に包まれたツリーハウスを中心とした集落が舞台です。
集落民の避難は迷宮森林警備隊ラウル小隊が完了させており、襲撃する影の一団を迎え撃っていましたが、半数が異言を話すものに変えられて劣勢に追い込まれています。
彼らを救出しつつ、影の一団の討伐を願います。
事後は触媒……核を発見し、破壊してくださいませ。
以前のシナリオで、ナーワルは骨のような聖遺物を現場に残しているのが確認されています。
●敵
〇終焉獣:怠惰の胴体×1体
全長5~6m。頭と四肢がぼやけており、地面をホバリングするように移動します。見たところ、動きは鈍いようです。
終焉獣である以上、周囲を浸食してくるのも間違いなさそうですが、新たに確認されたタイプの為、戦闘能力は未知数です。
〇影の艦隊(マリグナント・フリート)×1体
影の天使の内、遂行者サマエルの客人、狂気の旅人(ウォーカー)マリグナントの影響で生み出された者達の総称です。
ナーワルはその1体を借りて力を見ているようです。
人型をしており、翼は持ちませんが、戦艦の大砲や高射砲で武装し、高機動で動き回って火力を撃ち込んできます。
○影の天使×5体
身長3m程もある人型に、大きな翼が生えた姿をした影でできた存在です。飛翔しながら、祈りを捧げる姿が特徴的です。
大きな槍を所持し、急降下しての突き、接近しての連続突き、全身から闇の波動を発することもあります。
〇異言を話すもの(ゼノグロシアン)×5体
隊長、弓の名手であるラウルをメインに、弓、風魔法、風精霊を操る幻想種で構成された警備隊です。後方、樹上からの攻撃を得意としています。
〇遂行者:ティーチャー・ナーワル
修道服を纏った旅人女性。目立つ容姿を隠すべく鋼鉄の鎧を纏うことも。
アドラステイアにて、下層の子供達にファルマコンの教えを説く一方で、潜水部隊を率いてスパイ活動をさせていました。
この場にナーワルの姿はありませんが、彼女が連れてきた終焉獣によって、今回の事件は発生しています。
残念ながら、イレギュラーズが駆けつけた地点でその姿はありません。
●NPC
〇迷宮森林警備隊×ラウル+4人(+5人)
隊長、弓の名手であるラウルをメインに、弓、風魔法、風精霊を操る幻想種で構成された警備隊です。後方、樹上からの攻撃を得意としています。
半数が異言を話すものへと変えられており、戦力は半減。
自分達もまた変異させられる可能性に加え、同胞の救出と策を巡らせ、思うように動けずにいます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いします。
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