PandoraPartyProject

シナリオ詳細

癒しの丘のふわひえひつじ

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

⚫︎
「暑いよ〜寝苦しいよぉ、うぅぅ……」
『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)はぐったりしていた。いつも調子よくて元気なところが取り柄の彼が、これ程に疲弊しているのは珍しい。
『境界案内人』仲間であるロベリア・カーネイジが訝しがって理由を聞くと、ここ最近の暑さで十分な睡眠が取れていないようだ。
「暑いのが寝苦しさの原因なら、冥界のライブノベル向かうのはどうかしら?」
「確かに涼しそ〜…って、僕まだ死にたくないよ!?」
「ライブノベルであれば生者だって、死後の世界には遊びに行けるわ。それに案外、冥界にだって安らかに眠れる素敵な場所はあるものよ?」

⚫︎
 ふわふわひやひや、めえめえめえ。
 ここは冥界、雲の上。苦しみと無縁の魂が安らげる場所。ここで暮らすひつじ達は、手触りふんわり、体はひんやり。抱きしめれば幸せになれる気持ちよさの不思議な生き物だ。
 愛くるしい仕草でちょこまか駆け回るひつじ達だが、生きているうちに可愛いものと縁がなかった"その男"にとっては、全てが理解しがたい行動で。
「おいコラ、てめぇら! 俺の言う事に従え!」
 場にそぐわぬ荒々しい声をあげたのは、ピンクの毛並みに凶暴フェイスの狼獣人。彼の名はレプシー。生前に悪行の限りを尽くした山賊で、その罪を償うために冥府の王から羊飼いの仕事を任された極悪人だ。
「さっさと集まらねぇと、食っちまうぞ!」
 レプシーが苛立って歯を噛み鳴らすと、ひつじ達は蜘蛛の子を散らす様に逃げてしまう。追いかければ追いかけるほど、ひつじ達は離れてしまう。我慢ならなくなったレプシーは、強硬手段に踏み出した。
「おらッ!」
 鉄網が空を覆い、めええぇ! とひつじ達の悲鳴が上がる。
「暴れんじゃねぇ! ったくよぉ、テメェらが大人しく眠らねぇと、俺が休めねぇんだよ…ッ」
 引きずって一箇所に固めて、早く眠れと威圧する。愛された記憶のない狼には、ひつじを恐怖で縛りつける事しかできないのだ。
「ちょっと、ストップ!」
 あまりにも強引な管理方法に、異世界を訪れたばかりの蒼矢もびっくりだ。
「やめなよ、ひつじ達が可哀想じゃないか!」
「あぁん? また面倒くせぇのが増えやがったな。不満があんなら俺を従わせてみせろやァ!」
 レプシーの体が憤怒の炎で燃え上がる。熱気と気迫に、ひつじ達が鳴き叫ぶ。
「ちょっとロベリア、これのどこが『安らかに眠れる素敵な場所』なワケ?!」
「あんな獣人がいるなんて予想外よ。でも、こっちにだって奴らにとっての"予想外"が用意できてるでしょう」
 特異運命座標へとロベリアが目配せする。
「じゃ、後は任せたわよ!」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 毎日暑くて寝苦しいので、特異運命座標には快適に眠って欲しい…!

⚫︎目標
 レプシーの撃退
 パジャマパーティーを楽しむ

⚫︎ドレスコード
 今回は寝巻きで戦います! お気に入りのナイトウェア(寝やすい服装)でご参加ください。
(プレイングに書いていただければ反映します。勿論、装備品として着てきてもオッケーです!)
 生まれたままの姿派の皆さんにはロベリアが何か用意して着せちゃいます。
 服装お任せもできますので、思いつかなかったらぜひ境界案内人にコーデしてもらってくださいね!

⚫︎フィールド
ライブノベル『黄昏の果て』
 冥府だけで構成された異世界。今回はその中でも比較的平和なエリア「癒しの丘」は、ふわふわの雲の床のファンシーな場所です。エリアによるペナルティは特にありません。
 場所によっては、音を覚えて再生できる『レコードリリィ』という不思議な花が咲いているようです。

 この異世界ではキャラクターの性質的に「眠る」「夢をみる」ことが出来ない人物でも、眠ったりいい夢をみることが出来るとか。

⚫︎エネミー
『冥府の羊飼い』ナルコール・レプシー
 山賊として悪行を重ね、生前の罪を精算するために冥府の羊飼いをする事になった男。ピンク色狼の獣種で、手荒な事しか知らずに生きてきました。
 死神の特性を持つので【不殺】しなくてもしぶとく行きます。遠慮なくお灸をすえましょう。
 冥府の炎を使った【火傷】付与の近扇神秘攻撃や、遠距離物理のボウガン攻撃を行います。

『羊飼いの手下』人魂×10
 レプシーに生前、忠誠を誓った山賊の魂達。遠近ともに各々の武器で物理攻撃を行います。時々【麻痺】毒の攻撃が飛んでくる事も?!

⚫︎味方
『境界案内人』ロベリア=カーネイジ
 足を束縛した謎多き境界案内人。皆さんの味方です。黒のナイトドレスを纏い、足元はいつも通りベルトが絡まっています。
 戦闘中は指示があれば従いますが、それ以外は回復でサポートするようです。
 開放的な睡眠より束縛がお好み(?)なら喜んで協力するとの事。また、調香技術も持っているとか。

『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
 いつもは元気な境界案内人…なのですが、今日はちょっと疲れてそう。信号機のポップなデザインを取り入れた緑のパジャマを着ています。普段はカフェ店員をしているため、飲食の準備が得意。不眠解決のお悩み相談も受け付けています。
 戦闘時は神秘攻撃での支援が可能です。

ふわひやシープ
 ふわふわひんやりで抱き心地抜群の冥府のひつじ。沢山います。のんびりやで懐きやすい性質です。非戦闘員。

⚫︎おやすみタイム
 レプシー達を倒したら、お礼にひつじ達が一緒に眠ってくれます。抱きしめたり寄せ集めてお布団代わりにしたり、好きな眠り方で楽しみましょう。
 アロマなどの快眠グッズや、眠りやすくするためのほっとする飲み物、ヒーリングミュージックの準備など、いろいろな工夫をしてみるのも楽しいかもしれません。

 説明は以上となります。それでは、よい旅路を!

  • 癒しの丘のふわひえひつじ完了
  • 暑くて寝苦しい時期に、すてきな眠りを。 担当案内人:ロベリア、蒼矢
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年08月11日 22時10分
  • 参加人数6/6人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
杜里 ちぐさ(p3p010035)
明日を希う猫又情報屋
レイン・レイン(p3p010586)
玉響

リプレイ


 境界図書館から異世界へ一歩踏み出せば、もふっと足元に柔らかな感触が返る。ふわふわの雲に足がうずまり、『玉響』
レイン・レイン(p3p010586)は虚ろな目をゆっくりと瞬かせた。そして、その些細な行動から表情の変化を読み取ったのは、同じく感情が表に出にくい『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)である。
「レイン殿も雲の床は珍しいか?」
「…うん…。夢っていうのも…珍しくて…」
 夢とはどんな物だろう、とレインは想いをはせる。何が起きるのか想像がつかない。映画の様な物なのか、不思議の国に迷い込むのか。
(タコは夢を「見る」っていうけど…)
 聞いておけばよかったかな、なんてヒトデのクッションを抱えて小首を傾げた。普段の彼は着のみ着のままの格好で寝ているが、今日は境界案内人の見立てで少し大きめの薄紫のパジャマを着ている。コーデ主曰く、萌え袖がkawaiiポイントだとか。
「わー! アーマデルとゲオルグが猫になってるのにゃ!」
 お魚模様の青いパジャマに猫耳キャップを着けた『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)が、黒猫ぬいぐるみパジャマのアーマデルと、白毛に灰色菱形ワンポイントのぬいぐるみパジャマの『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)を交互に見る。
「私のこれは、蒼矢の見立てだ。にゃんたまの一匹と似せてくれて――」
「にゃんたま! ショウから聞いた事あるにゃ!」
「ショウといえば、先日――」
 ちぐさとゲオルグが共通の話題で盛り上がるのを遠目に、『狂言回し』回言 世界(p3p007315)は内心で冷や汗をかいていた。
(危ねぇ、自前で用意しておいて正解だったぜ)
 モフ好きなゲオルグはともかく、自分がファンシーな寝間着を用意されたら、戦う前から心に重症を負う事まちがい無しだ。
 戦慄している彼の服装は普段通り。正確には、白衣を脱いでいるという差があるが。

――ちなみに、今回の参加者の半数は、寝る時にZENRA★も辞さない派だった。裸族多いな!

「誤解だ。どこからそんな説が流布したのか」
 調査結果に異を唱えるアーマデル。
「寝ている最中に対応が必要になると困るだろう?…仕事でも防御の薄い格好で寝ていた標的はよく見てきたからな」
「つまり有事の際は、その格好で駆けつけるんですか?…あいたた」
 普段は的確なツッコミを入れる『秋縛』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)も、今日ばかりは酷暑のせいで偏頭痛気味だ。くらくらする頭でaphoneを握り、ぱしゃりとアーマデルの姿をスマホに収める。
「にゃっ、睦月殿なにを…!」
「可愛いから弾正さんに送っておこうかな、って」
「それなら俺も、秘儀・撮影返しで史之殿にパジャマ姿をプレゼントにゃ」
 パシャパシャと連射された睦月は、恥ずかしそうに腕を抱いた。ロベリアに寝間着を選んで貰ったら、もこもこファンシーパジャマを着せられたのだ。可愛くはあるのだが、膝丈が短くて大丈夫かななんて少し困った様に微笑む。
「みんな気持ちよさそうだねぇ…ぐぅ」
「おい蒼矢、立ったまま器用に寝るな」
 世界が呆れた顔で蒼矢の肩を叩くも、蒼矢の返事は何とも覇気のない「あれぇ?」だった。これはいけない、とちぐさはふらつく彼を支える。
「蒼矢、大丈夫にゃ?」
「だいじょばないにゃ~」
「最近暑いからよく眠れないのも分かるのにゃ。今日はお兄ちゃんの僕と一緒にゆっくり休むのにゃ」

 ハッ!と嘲笑う様な声がして、ピンクの毛並みが丘の上に現れる。それが誰なのか、世界には容易に検討がついた。
「アンタがレプシーか。1対6でボコるとかちょっと可哀想だなとか思っていたが、人魂までちゃっかり加勢してやがるな」
「何なんだテメェら、俺を知ってて喧嘩を売るつもりかァ?」
 好戦的な笑みを浮かべるレプシー。その足元では網に捕まって、めぇめぇ悲しそうな鳴き声をあげる羊達がいた。痛々しい姿にゲオルグは心を痛め、レプシーへ歩み寄る。
「彼らを離してやってくれ」
「うるせぇ、コイツらが言う事を聞かねェから悪いんだよ!」
「愛情をもって接してやれば、そんな事もなくなるはずだ」
 ゲオルグがふわもこフレンズの羊さんを手元に召喚すると、羊さんは人懐っこくゲオルグの掌にすり寄る。その様子をレプシーは理解できないといった様子で歯を剥き出し威嚇した。
「グルルゥ…!知らねぇよ、んなモン!かかれ手下ども、奴らを蹴散らせ!」
「説得はむずかしい…みたいだね…」
 クッションを脇に抱え直したレインが身構える。
「ちぐさ…戦えそう…?」
「だ、大丈夫にゃ!」
 異変に気付かれ、ハッと我に返ったちぐさだが、心の中に僅かばかりのわだかまりが残っていた。
(愛を知らない、にゃ?僕とは真逆なのにゃ…)
 パパ、ママ、坊ちゃん。穏やかな家族の事を思い出す。そこには確かに愛情と温もりがあった。

 家族も味方も――何も、ない。狼はずる賢いからと、虐げられて爪はじき。
 愛を知らない哀しき獣は、特異運命座標に牙をむき――


「ちっくしょー!何でだよぉ!!」
 決着は秒だった。ただでさえ此方側は猛者ぞろい。ちぐさが事前情報を収集していたため、弱点も看破されていた。もたつく間に囲い込まれ、レプシーも魂も攻撃の餌食となった。
 睦月のピューピルシールで封印されまくり(ロベリア曰く「睦月は束縛の才能あるわ」)もがくレプシーの首を、ひょいと目隠れイケメンが掴み上げる。アーマデルが戦闘中に呼び出した霊だ。
『首を寄越せ…』
「待つんだ冬夜の裔。ピンク狼は羊達との関わり方を誤っただけだ」
 俺が説得しよう、と解放されたレプシーの前へ歩み寄るアーマデル。
「『真っ当に』生き、努めることは決して恥ずかしい事ではない。あんたを慕い、死後も付き従う可愛い手下共もいるじゃないか」
『生まれ変わった』つもりでやり直すのだな。そう説き伏せるアーマデルの声は穏やかで耳に心地よく、レプシーは尻尾を揺らしながらも、ふいとそっぽを向いた。
「今さら、生まれ変わるなんざ…」
「ついでに毛も刈ってリフレッシュしよう」
「!?」
「大丈夫だ胸毛と腹毛は残してやるかr」『首を寄越せぇえええ!!』
 ブイイィン、と駆動音を立てるバリカン片手に狼へ迫りかけたアーマデルへ冬夜の裔がバーサクして襲い掛かる。追いかけっこを始めた二人を遠目に「何なんだコイツら」と半眼になるレプシーだったが、その身体の封印が解かれ、癒しの光が降り注ぐ。
「レプシーさん。少しは頭が冷えましたか?」
「はぁ?何言ってる。俺はお前らの敵…」
 ぽん、と頭に手を置かれ、レプシーは全身の毛を逆立てた…が、睦月があまりにも優しく撫でるので、少しずつ警戒が解けていく。
「よしよし、ちょっといらだっちゃっただけですよね」
 暑いですものね。しかたがないですよ。
 春の日めいた穏やかな笑顔に慣れなくて、レプシーは口を開いた――が、声を出す前にぐぎゅるる、と大きく腹の虫が鳴る。
「~っ、クソ! 腹いっぱいになってりゃお前らなんざッ…」
「お腹…空いてるの…?」
 レインがかくんと首を傾げ、手にしていたバスケットを掲げた。
「これ…食べる…? 此処に来た人達や…居る人達と食べようかな…って思ったんだけど…」
 掛け布を取ると、現れたのはベッツィータルトだ。幸か不幸かレプシー達がすぐに倒れた為、まだ温かい。
「名案だな。腹を満たしてから寝るのも悪くない」
 甘い物を食べるチャンスとあらば世界も前向きである。それならと蒼矢がハーブティーの準備を進め、ちぐさと睦月がすかさずそれをサポートする。
「ハーブティーのいい匂いがしてきたのにゃ」
「いい手際ね。睦月も上手くなってるじゃない」
「蒼矢さんの手伝いをし続けたおかげですかね」
 呈茶の腕をちぐさとロベリアに褒められ、睦月がはにかむ。その頃レプシーはというと――
 バシッ!
「いってーー!」
 罰として座禅を組まされていた。
「このZAZEN、ての?本当に効果あんのかよ」
「僕達はキミ達に勝ったから…キミ達のボスは僕達…。ボスの命令は…ぜったい…」
「…ぐぅ」
 レプシーは不満たらたらだが、ゲオルグとレインが付き合ってくれている手前、逃げ出すのは忍びないと思ったらしい。口を尖らせながら付き合っているのは良い変化と言えるだろう。真面目に精神統一をしようとしたところで……
『喝ーッ!』
「ヒェッ!?」
 バシーン!
「いてーー!」
 棒で肩を叩かれ、ひっくり返るレプシー。気絶したレプシーの傍では、雄しべが特徴的な形の百合を持った世界が「やべぇ」って顔で棒立ちになっていた。助け起こしてやりながら、ゲオルグが怪訝な目を花に向ける。
「世界、それは何だ?」
「『レコードリリィ』という面白い花があると聞いてだな…」
 まさかあんなに大音量になるとは。寝る時に使わなくて正解だったと内心胸を撫でおろしたところで、背後からぬっと現れた二つのもぞもぞした塊に方々から悲鳴が上がる。
「世界殿」
「!? もこもこの山が喋っ…アーマデルか!?」
「冬夜の裔の攻撃を避けたら、羊の群れに突っ込んでしまってな。彼らは恐ろしく人懐っこいぞ」
 どうやら羊達も、レプシーがひどい事をしなくなったと早々に察して緊張を解いたらしい。早くもひえもこ達に包まれながら、一行はお茶菓子を楽しみ癒しの時間を過ごしたのだった。


「うきうきね、睦月」
「ふふ。パジャマで寝るのが新鮮なんです」
 睦月は快適そうに伸びをした。浴衣で寝る時に感じていた締め付け感が無いし、ぎゅーっと抱きしめた羊からは、ほんわり心が円くなれそうな手触りが返ってくる。気持ちよさに、思わず口元を綻ばせた。夢の中で夫さんに会えるかな――ふわふわ浮ついた頭で寝返りをうつと、すぐ隣にロベリアが眠っている。
「そういえば、ロベリアさんには助けて貰ってばかりですね。僕から何かできることはありませんか?」
 彼女の提案が意外だったのだろう。ロベリアは微かに目を見開いた後、すぐに妖しげな笑みを返す。
「丁度、新しい呪いの非検体を探していたの」

 もこもこ、めぇめぇ。
 羊達はレインを気に入った様で、下から上からもこもこと体に寄り添う様に包んでくれる。
(この羊…不思議な感触…。ふわふわしてるのに…冷たい…)
 雪ともわたあめとも違う手触り。なのに不思議と懐かしい。この心地よさは海に近い物だと、レインはゆっくり目を閉じた。
 ほら、不思議と波の音まで聞こえて来た様な。
(キラキラ…ゆらゆら…気持ちよくて…ずっとこうしてたい様な…そんな感じ…)
(るの…少し勿体ない…)
 うとうとしているレインの傍には、一輪のレコードリリィ。波の音を上手くループ再生できたと分かれば、レインの安眠を見守ってから世界も寝場所を探そうと歩き出し…羊達に頭を下げるレプシーが視界に入った。
「何やってんだ」
「ちゃんとひつじ達にごめんなさいしてるのにゃ。そこはちゃんとしてるのにゃ」
「るせー、俺だってマトモに働けてたらこんな事…ま、悪かったよ。アンタらにも」
 どんどん声量が小さくなるレプシー。ちぐさは耳をぴこぴこさせて最後まで聞き取った。
「悪い事をしなければ皆、レプシーに愛をくれるのにゃ! 少なくとも人魂さん達はレプシーを慕うから、一緒にいると思うのにゃ」
「つってもよ…」
 言いかけたレプシーをゲオルグが抱き込んだ。
「私達に力でねじ伏せられた時、嫌な気持ちになっただろう? 羊さん達だってそれは同じなのだ」
 適したやり方は、これから学べばいい。父性的な優しさを感じ取るのが初めてで、狼は戸惑った。
(死んで全部終わって、今更だと思ったのに。コイツらのせいだ…頑張ろう、なんて)

「良かった。レプシーも少しは丸くなりそうだね」
 様子を見ていた蒼矢が眠気の限界で、羊に身体をうずめた。
「ちぐさ~、アーマデル~、一緒に寝てもいい?僕、あまり寝相が良くないけど」
「お兄ちゃんは蹴られても許すにゃ!」
「俺の寝相はまあ普通だろう、特に寝床が荒れていた事もないしな」
 三人で川の字になって眠ったその晩、アーマデルは気づかず過ごした。
 床が乱れていなかったのは、保護者達が直している事を。
「ちょ、何…ぐえぇ!?」
 ちょっと変わった寝相(コブラツイスト)が決まり悲鳴をあげた蒼矢だったが、最終的に意識がオチて熟睡できたものだから、
 まったく眠るという行為は難しい。

成否

成功

状態異常

なし

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