シナリオ詳細
<烈日の焦土>大穴に待つもの
オープニング
●
ある古代遺跡探索チームが全滅したというニュースは、記憶に新しい。
時期にして鉄帝の皇帝が敗れ国が動乱したそのさなか、プロジェクトの中止を迫られていた探索チームは夢をとりあげられるくらいならと、数少ないチームで遺跡に挑むこととなったのである。
それは『大穴』と呼ばれる遺跡で、浅層はともかく深い層ともなれば死は当然といったありさまで、これまで組織されたいくつかの探索チームはそのまま帰ってこなかった。
人によっては、これを海洋の大遠征と同じだと述べる者までいる始末である。確かに、鉄帝国がこの調査に割いてくれる僅かすぎる支援と古代遺跡探索にロマンを感じられるような人員の少なさを見れば、相対的に大遠征並の無茶をやっているとも言えるかもしれない。
そんな無茶を、よりによって少人数で挑んだがため、このチームはそのまま死出の旅になるのだと誰にも思われていた……のだが。
ここで、ある陰謀が混ざり込むのであった。
「鉄帝にまた『神の国』が発生しそうなのは知っているかい?」
情報屋にそう尋ねられ、セララ (p3p000273)はきょとんと目を瞬かせた。
鉄帝国でリニューアルオープンしたドーナツ屋さんでイチゴチョコ白ドーナツを食べていた最中である。タピオカ粉を用いたという生地はやわらかく、コーティングされたピンク色のストロベリーチョコレートと相まって甘くもちもちとした食感が魅力的だ。
「神の国って確か……」
ドーナツを呑み込んで、牛乳をこくこくと口にしてから、セララは記憶を探るように上を見る。
天義のルスト派遂行者たちがいま世界のあちこちに作り出しているという異空間。それが通称『神の国』。そのせいしつは現実の上書き改変であり、放っておけば帳がおりて現実を彼らがおもう在るべき世界に書き換えてしまうというものだ。
おそらく、鉄帝国で行われているような『幻想へ侵略を行う野蛮な鉄帝国』という彼ら基準での歴史に修正しようというハラだろう。
だがこんな事件はなにも今初めて関わったわけではない。百戦錬磨のセララは対処法も知っていた。
「大丈夫! 触媒を破壊してくればいいんでしょ? どこの聖遺物? それとも誰かが触媒にされてるのかな?」
「その二択でいえば後者なんだけど」
情報屋は、なにか言いたげな様子だ。
「触媒があるのは、あの『大穴』なんだよ」
経緯を、ついに説明するときが来た。
大穴遺跡探索チームは少人数で遺跡に挑んだものの、その少ないリソース故に浅層にて早々にリタイア。何人かの仲間を残した状態で一部の探索者だけが帰還したが、問題はそこからだった。
鉄帝での騒動は終わりを迎えており、国の復興が既に始まっていたのだ。ある意味世情から取り残された形となった彼らに、復興に追われる国家や近隣領主たちが手を貸すはずはない。
そんな中で助けの手を差し伸べたのが天義のルスト派であった。
多くの資材と人員を探索者に提供し、まずは大穴に残された仲間の救出を行うことになったのである。
その際、探索者に持たせたものが今回の触媒であるという。
「『大穴』はいわゆる危険なダンジョンだ。異空間が広がっていて、狂暴なモンスターが跋扈し独自の生態系を築いている。人間なんて最下層のエサさ」
そんな場所に飛び込んで『調査チーム』を追いかけ、触媒を奪い破壊する。そうそう容易なことではない。
更に言えば、残された探索チームの救援という目的をもった彼らを倒すことはそのまま探索の中止に繋がるかもしれないのだ。
大穴に取り残され、生きているかもわからない仲間を助けに行く彼を、追いかけて捕まえる。そんなことが……。
「ううん。やらなきゃ、いけないんだよね」
セララはこくんと頷いて、依頼書を手に取った。
依頼内容は『触媒の破壊』。
- <烈日の焦土>大穴に待つもの完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年08月01日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●大穴へと挑む
まるで巨大な怪物が大口をあけたかのようなダンジョンを、八人のローレット・イレギュラーズは着実に進んでいた。
途中に出現するデミゴブリンや泥スライムなど敵ですらなく、それまでの探索者が残した目印やキャンプの痕跡を辿ることで攻略は順調なのである。
「ルスト派の協力者殿が素直に救援してくださると良いのですが」
そうした、冒険面での活躍が著しい『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)が探索者の痕跡を探しながら呟く。
「このロマン溢れる遺跡に神の国などという偶像の上書きを目論むならば、それは未知への探求者達とこの遺跡を築いたもの達への冒涜!未知を愛する冒険者の一人として、それは断固阻止ですぞ!」
「だ、な……正直、人助け目的って時点で胡散臭い。」
『Star[K]night』ファニー(p3p010255)が苦々しい表情で肩をすくめる。
ルスト派がこれまで世界中で何をしてきたのかを考えれば、彼らの目的が『神の国』の生成であることは明白だ。
大穴への探索を助けているというのは、単に『攻略しづらい場所に触媒を置く』ことが目的であるように思えた。
あるいは、例の探索者とやらが触媒そのものなのか。
「いずれにせよ――助けるべき人は必ず助けるのだわ、そして為すべき事も必ず為す」
『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が泥スライムを弓の一撃で屠ると、若干の疲労を浮かべて肩を落とした。
(楽な事じゃないし、愉快な展開にはならない可能性もある。少しずつ、少しずつ、そういう仕事も飲み込めるようになっていかなくてはならない……)
第一として、探索者が救助に向かっているという、『取り残された探索者たち』が生きているのかどうかすら現状不明なのだ。
証拠は勿論ないし、確信するだけの間柄ですらない。
もし無事でなかったと仮定したら、例の『探索者』は一体どのような反応を示すのだろうか。
いや。
「いえ、私達が諦めてはいけませんわね。大穴に残っている人達がまだ無事だと、まずは信じて進むのですわ」
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が積み上がった岩をよじ登りながらピックを突き立てる。
そうだ。助けに来ておいて諦めているでは本末転倒だ。たどり着くその瞬間までは、信じて進まねば話にならない。
「救助を成功させ、神の国の出現も防ぐ。全てが良い結果になるように、頑張りましょう」
「うん!」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)がおやつにしていたドーナツを囓って、岩の上へと浮遊した。
「大穴に取り残されてる探索チームはきっと心細い思いをしてるよ。早く見つけてあげないと!」
その一方で、『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)は大穴というダンジョンの探索にもワクワクしている様子だった。
「助けを呼ぶ人がいたら急がなきゃ! もちろん企みも潰してね」
「その通り。それに不謹慎だが、冒険家の端くれとしてこんな素敵な遺跡に入る機会がもらえるなんて望外だね」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)もそれは同じであるようだった。
「なんでも構わないが……まずは着実に進もうか。急いて事を仕損じるわけにもいかんしね」
『記憶に刻め』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)はそう囁き、目の前にいた巨大な怪物がのそりと身を起こしたことを告げた。
●
以前にも説明されたが、この大穴において人間は最下層のエサだ。
目の前の怪物にとってもそれは例外ではない。
全長にしておよそ9メートル。身体は鋼鉄のような外殻に覆われ、光を反射するさまはどこか蠱惑的な深い紫模様をしていた。
特徴的なのはその巨大な蠍めいた鋏で、繰り出されたそれをセララが真っ先にとびつく形で防御した。
「皆、隊列を整えて! 油断してたら負けちゃうよ!」
そういえばこの先、強力な敵がいくつも出続けた場合の対策をろくにとっていなかったなと思い出しはしたものの、マニエラたちがいれば平気かと思い直す。
セララは縦と剣でクロウラー(仮)の鋏をガチンと受け止めると、そのまま上手に力を受け流して鋏の外へと逃れた。
つぎの瞬間、セララめがけて溶解液が吐き出される。溶解液だとわかったのは、彼女が回避した直後に地面の岩を溶かしたがためである。
どうやら防御殺しの強敵らしい。なかなかハードな戦いになりそうだ。
と思っていると、クロウラーはセララから完全に興味を無くしすぐ後ろに控えていたゼフィラへと襲いかかる。
「させない!」
次に割り込みを駆けたのはレイリーだった。
腕部のアームドコンテナからダブルシールドを展開した彼女は脚部からも増加装甲を展開。巨大な殻のような状態を作るとクロウラーの鋏を受け止めた。はきだした溶解液が盾を溶かすも、すぐにレイリーに届くというわけではない。
「そのまま抑えておいてもらえるかな」
クロウラーの側面へ回り込み、義手に光を集め聖王封魔の力を解放するゼフィラ。
要するに魔法を込めた渾身のパンチなのだが、クロウラーはそれによって思い切り吹き飛んだ。
このまま責め立てよう――と思った矢先、破壊した岩の下から小さなクロウラーの群れが沸きだし襲いかかってくる。
「ああもう、次から次へときりがないのだわ!」
華蓮は自己と味方の強化を終えると神罰の一矢を発射。迫り来る小型クロウラーを一撃のもとに葬る。
「体力は大したことないのだわ! 範囲攻撃で吹き飛ばして!」
「そういうことなら任せな!」
ファニーはパチンと指を鳴らすと空中に無数の獣の頭蓋骨を召喚した。
ガパッと口を開いたそれらが一斉に光線を発射。
クロウラーの群れを吹き飛ばし、時にはその移動能力すらも奪っていく。
絶妙なのは、攻撃に転じようと走るレイリーたちを巻き込まずギリギリのラインを丁度良く狙っているという所だ。
華蓮の付与してくれた『稀久理媛神の追い風』の効果もあって、砲撃は更に続く。
「癒し手は多いから安心はしていいだろうが……その点殲滅力はそこまでないのが不安だな」
マニエラはAPの枯渇を気にしながらも治癒の魔法を展開。
「回復はしてやる。突っ込め」
「了解ですぞ!」
マニエラが手をかざすその前に、ヴェルミリオが剣をすらりと抜いて身構えた。
「狙う葉大物!」
小型のクロウラーたちの間をぴょんぴょんと飛び越えながら、岩壁に叩きつけられなんとか体勢を立て直そうとしているクロウラーめがけて走る。
やっと壁から身を引っこ抜いたその瞬間に、ヴェルミリオは相手の外殻の隙間を狙う形で剣を滑り込ませた。
「ぬんっ!」
思い切り踏ん張り、もし彼に筋肉があったらぐっともりあがったであろう力を込めててこの原理で外殻部分を引っぺがす。
「今ですぞ!」
「『主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え』」
詠唱を丁度終えたヴァレーリヤが、メイスから炎を吹き上げさせる。
それはまるで天をつく竜のようで、地を這う蛇のようで、果たしてクロウラーたちを呑み込む炎の渦となるのであった。
――このような戦闘が、幾度もあった。
ヒーラーに事欠かないメンバーであったために体力は充分に保ったが、APの枯渇はいかんともしがたい問題である。(AP回復手段もあってので)流石にすぐ枯渇するなんてことはなかったが、そこそこ深いところまで訪れた頃にはあまり大技を連発できない状態になっていたのだった。
「おーい! 誰かそこにいるのかー?」
声がかかったのは、そんなタイミングであった。
●名も無き探索者とルスト派の男
ランタンを掲げ歩いてくるのは、情報にあった探索者だ。
大きなネズミのような印象を抱かせる性別不詳。ハンマーのような道具をもっており、それが武器だと造形からもよくわかる。
「よかった! 無事だったのね! 上の方で救助隊が出発したって聞いて、合流しに来たの!」
「はあ?」
探索者は疑いの眼差しをまずレイリーに向けた。
「そんな話きいてねーぞ?」
「私も知りませんねえ」
振り返った先にいたのは仮面の男だ。中央に深いスリットの入った仮面を被り、表情はまるで伺い知れない。服装からしてルスト派の遂行者であることは確実であるようだが……。
「ですがこれ以上助けが来ないという話も聞いていません。一度彼らの話を聞いてみては?」
仮面の男の視線がセララと交差した、気がした。
セララたちは世界的にもかなりの名声持ちだ。セララ自身に至っては自分を物凄くアピールして回っている。なので気付かないというのも不自然な話だったが、もしかしたら世情にひどく疎い男なのかもしれない。
……あるいは、こちらをローレットの人間だと知った上で知らぬ振りをしているのか。
考えを探り出す手段の一つでも持っておけばよかったな、と頭の片隅でふと思った。
「ボクはセララ! 君とは友達になりたいな! 名前を教えて?」
セララがそう言ってドーナツを差し出すと、探索者はありがとよと言って受け取りもごもごとしはじめた。
「あー、悪いな。名前はねえんだ。ネズミとでも呼んでくれよ」
「? じゃあそうするね」
セララのファーストコンタクトに対してこの淡泊さ。マニエラはなんとなくだがこのネズミという人物が軽度の人間不信に陥っているのだと察することが出来た。
無理もないだろう。なにせ命からがら戻ってきたら探索隊をまるで誰も派遣してくれなかったというのだから。それで見ず知らずのルスト派の助けを借りてしまうというのだから。
逆に言えば、このネズミはルスト派のこともそこまで信用していないということかもしれない。
ならばとファニーを肘で小突く。
ああと頷き、ファニーはハイテレパスをネズミと接続した。
『おい、言っておくがそいつらはロクなもんじゃねえぞ。『神の国』とやらをつかって世界を滅茶苦茶にするような連中だ。俺たちはその触媒を破壊するのが目的でここまで来たんだ。勿論、救助も最後まですると約束するが――』
『おいおい、ばかにすんなよな。こいつらが胡散臭いのなんて見て分かるぜ。他に手がないからこうしてるんだ。手伝ってくれるなら歓迎だぜ? けど、こいつらを触発するようなことはやめてくれよな。大穴で喧嘩なんて馬鹿のすることだ』
『オーケー、わかった』
ファニーが話し合ったことを他の仲間たちにも念話で伝えると、ヴェルミリオがビッと親指を立てた。
「冒険には心得がありますぞ! 先導はお任せを!」
「お、そいつは頼もしいな」
ネズミがじゃあ頼むぜと言うその一方で、ゼフィラがヴァレーリヤと華蓮の背をとんと叩く。タイミングだ。
「荷物を持つのだわ」
華蓮がルスト派とおぼしき仮面の男に接触を始めた。あくまで協力的な姿勢を示すつもりのようだ。
仮面の男も『これはご丁寧に』と頷き、なにやら話し込んでいる。
「我々は星灯聖典。失ったものを取り戻すため集った同志たちなのです。
あなたも大切なものを失ったことはありませんか? 家族、友人、故郷、あるいは財産を。我々はそれをあなたの目の前に取り戻させることを約束しますよ」
「それは……」
華蓮は目を細めた。欲しいものがないなんて言わない。けれど、あまりにそれは都合が良すぎる話じゃあないか……と。
するとヴァレーリヤが声をあげた。
「あっ! 今声がしたような……複数の箇所から声がしますわ。ここは手分けをしてさがしませんこと?」
「それは反対ですね」
最初に反対してきたのは仮面の男だ。
「ここは大穴。我々は救助隊。救助隊がはぐれてしまうなどあってはならない話ではありませんか」
「まー、仮面のヤツの言うとおりだな」
ネズミもそれに賛成したようだ。
むう、とヴァレーリヤは内心で頬を膨らませたが、ゴリ押しすべきところではない。なにせ『ルスト派との分断』がそもそもの目的なのだ。でもって、内緒話だけならファニーの力を使えばできる。
そこから先の探索は順調だった。
ルスト派の用意した影の天使は消耗が激しいということで温存することを提案されたが、協力姿勢を互いに示すためとしてそれは断った。
が、結局の所主力は自分達であり、仮面の男は後ろで回復支援を行う場合が殆どであった。
目を見張ったのはネズミの戦闘力である。
小型のハンマーをぐるぐると振り回し、巨大な相手でさえも粉砕する。
パワープレイが得意かと思いきやマジックアイテムを使って細かい魔法も併用する器用っぷりだ。
名前がないなどと言っては居るが、どうやらダンジョン探索においてはかなり有能な人物であるらしい。
そんな中。
「タスケテー。タスケテー」
声が、聞こえた。
「あいつらの声だ!」
ネズミが真っ先に反応し、走り出す。
先行は危険ですぞとヴェルミリオが追いかけ――ていなければ、最悪の事態になっていたかもしれない。
なぜなら。
「『タスケテー』」
人間の生首だけがぶら下がり、そう叫んでいた。
触手のようなものが生首に絡みつき、そのさきにあるのは巨大な猛禽類のような怪物だ。
「あ……」
ネズミの視線が動く。
生首の下には、おそらく『持ち主』とおぼしき死体が転がり、それは骨を部分的に残した状態で今まさに小型の怪物たちについばまれている。
他にも数名分、同じようについばまれている死体が転がっていた。
一目瞭然だ。探索チームは、大穴の怪物たちに食われてしまっていたのだ。
「……くそっ」
歯噛みするネズミ。
セララがその肩を叩こうとした……その手を、そっと払う。
「なあ、星灯聖典って言ったよな。なくした物を取り戻せるって」
「ネズミ?」
「あいつらも、取り戻せるのか? 生きてた頃みたいに、一緒に笑い合ったり、一緒に冒険したり、できるのかよ」
ネズミの目に、若干の狂気が宿っているのが見える。
そして取り出したのは……情報屋の資料で見た聖痕が刻まれたプレートであった。そう、触媒だ!
「それをこっちに渡して! 触媒をつかってはだめ!」
レイリーが叫ぶが、ネズミは動きを止めなかった。
「ぬう……!」
ヴェルミリオが触媒をとりあげようと飛びかかるが、それを仮面の男が差し止める。影の天使たちが展開し、ネズミを守るようにも展開した。
「そこを退きなさい!」
「神の国なんてもんをまた作る気かよ!」
ヴェルミリオの剣が、そしてファニーの拳が影の天使を破壊する。
レイリーが飛びかかり、仮面の男に突撃槍を突き立てた。
「ごふっ……!?」
仮面の下から血を吐く男。
華蓮は隙を逃さない。素早く弓矢を放ち、仮面の男の心臓部へと命中させた。
込められた魔力が爆発し、仮面の男がその場に崩れおちる。
「願うのです……友が、過去が、必ず、あなたのものになると。それこそ、が――」
「チッ」
マニエラが舌打ちしながら治癒の能力を展開。というのも、影の天使たちが一斉攻撃を仕掛けてきたからだ。
ゼフィラはそれをうけながらも『天上のエンテレケイア』を自らを中心にかけることで治癒。なんとか戦闘不能を免れる。
ヴァレーリヤがメイスを振り抜き炎を放ったその道を、セララは駆け抜ける。
「触媒を使ってはだめ!」
セララの剣が、ネズミの手から触媒を跳ね上げた。
「やめろ」
そう呟いたネズミの言葉を、けれどセララは聞かなかった。
「ギガセララブレイク!」
触媒が破壊されたことで、眩い光が走る。
目がくらんだセララたちが振り返ると、ネズミはその場を撤退しようとしているところだった。
「待って、ボクは友達に――」
「悪いな。友達には絶対になれねー」
逃げるネズミを追いかけることはできない。間に影の天使たちが割り込んだからだ。
「あいつらとの日々を、とりもどしてーんだ。だから、星灯聖典の仲間になる」
さよならだ。
そう呟いたネズミの言葉が、どこまでも遠く感じた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――イレギュラーズたちは影の天使たちを倒し、無事大穴を脱出しました。
――名称不明の探索者『ネズミ』は星灯聖典に加わり、イレギュラーズの敵となりました……
GMコメント
●シチュエーション
古代遺跡深部に取り残された探索チームを救援すべく、天義ルスト派を味方に付けた探索者。彼らに追いつき、持っている触媒を破壊しなければなりません。
触媒の破壊そのものはそう難しいことではないでしょう。
ですが、「どのように接触するか」は今後の運命を分けることになるはずです。
●大穴
大量のモンスターがおり、進むのはとても難しいダンジョン。
途中でかなり厳しい戦闘が起こる可能性があり、リソースを温存しながら厳しい戦闘をくぐり抜けるというミッションが要求される。
●探索者『????』
仲間の探索チームを救助すべく『大穴』へ挑んだ探索者。
●ルスト派の協力者影の天使群
大穴の探索のために派遣された協力者と影の天使による武装集団。
正体は不明ながら、大穴の探索に充分な程度の戦力を備えている。
触媒を持っているのは彼らか探索者のどちらか。どちらであるかは不明なまま。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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