完璧なるブルーベリー、此処にあり

オープニング

●ブルーベリーの季節
　ブルーベリー。それは丁度この季節に出回る濃い紫色のフルーツである。
　小粒で丸く、もう凄く紫色だ。濃すぎて黒っぽくすら見えるほどであり、味は甘さ強めで酸味もある。
　ブルーベリーを食べれば目に良いとか、いやそんなもの根拠はない俗説なんだとか。
　色々としゃらくさい議論も多いが、大切なのはブルーベリーは美味しいということだ。
　適度な硬さがあり皮ごと食べられるブルーベリー。
　１個ずつ大切に食べてもいいし、数個一気に口の中に放り込んでもいい。
　その芳醇な味は、口の中で弾けて夏とはなんたるかを教えてくれるだろう。
　さて、そんなブルーベリーだが、通常は２～３ｍの大きさの木に生るとされている。
　あまり手間いらずで強く、ご家庭でも育てやすいと幻想貴族にも人気だ。
　まあ、幻想だの鉄帝だのはどうでもいい。問題は、覇竜ではどうであるかだ。
　実のところ、ラサに覇竜産のブルーベリーが僅か数粒出回ったことがあるらしい。
　その際、覇竜のブルーベリーは実がしっかりしていて味もぼやけておらず、１つ食べればシャッキリするような感覚すらあったと伝えられている。
　ブルーベリーとはかくあるべき、これこそ完璧なブルーベリーであると食べた者が膝を叩いたとされている。
　そう、覇竜のブルーベリーこそ「完璧なるブルーベリー」であるとされているのだ。
　言ってみれば、世界一のブルーベリー。
　そんなものを食べる機会があるとしたら……貴方は、どうするだろうか？

●ブルーベリー食べたい
「また相賀さんと冒険したいです。「確かそろそろ」何ですか？？」
「おお、よくそんな言葉を覚えとったのう。儂は忘れとったが」
　『相賀の弟子』ユーフォニー（p3p010323）に『フリアノンの酒職人』黒鉄・相賀（p3n000250）が感心したように頷く。
　そう、確かそろそろ。その言葉に続くのは、結構な確率で食材だろうとユーフォニーは考えていた。
　そしてそれは……正解であったのだ。
「うむ。実はの、ブルーベリーが今丁度旬なんじゃよ」
「ブルーベリー……それは美味しそうですね♪」
「美味いぞー。儂も去年食ったが、アレは美味かった……」
　そう、覇竜ブルーベリー。それは外の世界では完璧なるブルーベリーと呼ばれるほどには美味いものなのだ。
　しかしながら、簡単には手に入らない。
　美味いものには相応の苦労がある。それこそが覇竜の法則なのだから。
　では、覇竜ブルーベリーにはどのような苦難が待っているのか？
　幸いにも、そこまで難しいものではない。どっちかというと体力勝負である。
「覇竜ブルーベリーの木はな……走るんじゃよ」
「え？」
　そう、丁度この時期覇竜では覇竜ブルーベリーの木が走り出し「より栄養を得られる場所」を求めて移動するのだ。
　その際に実を色んな生き物に与えたりもするのだが……すぐ死ぬような弱い生き物には覇竜ブルーベリーの木も要は無い。ならばどうするか。
「覇竜ブルーベリーの木に壁役が立ち塞がり、好き放題されている間に収穫役が実を収穫する……！　それが唯一の正しい方法なんじゃ」
　なんという厳しい方法だろうか。やはり覇竜で美味しいものを食べるには普通ではいけないらしい……！

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

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リプレイ

●ブルーベリーをゲットしよう
「……なんだろうな。最近覇竜という国が『びっくりどっきり食材モンスターの国』みたいになってる気がする」
「そうだな。なんだかもう、覇竜領域にない食材ってないんじゃないかってくらい色んな食材があるのだな」
「ああ……それはそれで別に悪いことじゃないし、観光名所的にスポットができるのは大事だ。食糧確保は言うに及ばず、な」
「確かにな」
　『特異運命座標』エーレン・キリエ（p3p009844）と『優穏の聲』ゲオルグ＝レオンハート（p3p001983）が、そう頷きあう。
「まぁ、ちょっと私が知っていたのとは違うようだが。ともあれ、完璧なブルーベリーと呼ばれていると聞けば食べたくなってしまうのも仕方がないというもの。木を傷つけないように気をつけてしっかり収穫していこう」
　そう、覇竜のブルーベリーの木は自走式だ。この時点で色々違うのだが、まあ覇竜なので仕方ない。
　ゲオルグは収穫したブルーベリーを運搬する為の馬車を用意して持ち込んできてもいた。
「走ってきた木は殴る蹴るの暴行を加えてくるらしいからちゃんと保管しておかないとブルーベリーが潰れたり傷んだりして台無しになってしまうからな」
「ああ、保険をかけておくのは大事なことだ」
　エーレンも風花を連れてきていて、採取している間に万が一逃げられるようなことがあれば、即座に風花に飛び乗るつもりだった。
「攻撃をしてしまうと木を傷つけてしまうから、私達にできることは回復しながらひたすら耐えつつ、協力して収穫することくらいだな。流石に相賀に壁役をさせるわけにはいかないので除外するとして後はこう、必要数が集まるまで持ち回りでやっていくしかあるまい」
「そうなるか」
「ほっほっほ。若者が苦労する姿は眩しいのう」
　『フリアノンの酒職人』黒鉄・相賀（p3n000250）がそんなとんでもないことを言っているが、それはさておいて。
「地響きさせながら群れで走ってくる……？　相賀さん、それ本当に繊細な木なんですか？」
「繊細じゃよ。殴ったら折れるしのう」
「基準が……！」
　『相賀の弟子』ユーフォニー（p3p010323）が相賀の言う基準に改めて覇竜を感じているが、さておいて。
「相賀さん含めて9人、つまり最大36本の木からブルーベリーが採れるかもしれないんですね♪」
　ちなみに囮……もとい役は希望者のみである。
「試練くらい耐えますよ！　これも修行ですねっ。相賀さん、上手く試練を乗り越えるコツってありますか？　予想では無さそうなんですけど念のため」
「うむ、根性じゃな」
「わあ、ゼロ回答……！」
「ブルーベリーは美味しいので、いっぱい食べられるように頑張るぞ。おー♪」
「お、おー♪」
　想像通りの相賀の答えにユーフォニーは分かっていても驚いてしまうが、『ささやかな祈り』Lily Aileen Lane（p3p002187）が小さく手を上げて気合を入れるのでそこにはのっていく。
「完璧なるブルーベリーと聞くと、沢山取って食べてみたくなるよ。2mの高さがあって凄い沢山走ってるのは迫力満点だね。立ちふさがる壁役が必要ということなら私もやるよ！　 耐久力には自信があるからね！」
「覇竜ブルーベリー……美味しく楽しく食べたいから沢山収穫できるよう頑張るね！」
　『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア（p3p009512）に『初めてのネコ探し』曉・銘恵（p3p010376）もそう頷き、気合を入れる。
「何はともあれ、まずは身体を張らないといけないってことね。説得は通じるかしら……」
　『ライブキッチン』アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル（p3p010486）がそう悩んでいる近くでは、『海妖』エーギル・フレーセイ（p3p011030）も周囲を見回している。
「歩き回るブルーベリーかあ。陸には面白いものがたくさんあるね」
　まだまだ不慣れな部分は多いが、他のみんなとはぐれないように足並みを揃えて行動しようとしていた。
（ヒトは皆と同じようにするのが基本だったはず）
　きょろきょろしているエーギルだが、今回はどうやら問題なさそうだ。
（試練を受ける気は満々だけど一人ずつ試練を受けるなら順番は後の方が良いかな。大怪我してブルーベリー採取の足手まといになっても嫌だし）
　そんなことを考えるエーギルに銘恵の声が響く。
「覇竜ブルーベリーの木、あんなに沢山……！　盾役が多く必要だししゃおみーも後で盾になるよ！」
　そう、こちらに向かってくる覇竜ブルーベリーの木の群れ。いよいよ始まりである……！
「わたしたちが、安全に、一番陽当りの良いところに、送ってあげる。その代わり、実をわけてもらえないかしら？」
　アルフィオーネも植物疎通でそう交渉してみたが……ダメだったらしいので仕方ない。

●ブルーベリーをゲットしたぞ！
「少しでも皆が収穫時間を延ばせれる様に耐えるの、です」
「頑張ろうね！」
　Lilyとフォルトゥナリアがボッコボコに覇竜ブルーベリーの木に蹴られているが、所詮木なのか然程強くない。
「とにかく効率よく収穫出来る手伝いが出来れば満足なのです。何度も壁役(囮)になるのも大丈夫、頑張るですよ？」
　Lilyもそう言える程に頑張っているが、その間に仲間たちがどんどん収穫していく。
「収穫はあくまでも前座、本命は帰ってからのブルーベリーパーティーなのだから仲間に負傷者が出ないようにしっかりと回復していかねばな」
　ゲオルグも、問題なさそうとはいえ万が一を考えていつでも回復できるようにしながらブルーベリーを収穫していく。
　フォルトゥナリアたちが蹴られている間はブルーベリーを収穫されていても全く気にしないようで、どんどんブルーベリーを収穫できている。
「それにしても……集団で囲んで殴る蹴るの暴行を加えてくる上時々樹液も吐きかけてくるとは……まるで噂に聞くヤンキーみたいだな。一体どういう環境で育てばそんな性質を持つようになるんだろう？　う〜む、覇竜領域は本当に奥が深いな」
「確かに「樹液を吐いてくるの、育ち（？）が伺えるね。でもブルーベリー色のカブトムシが飛んでくるのは楽しいね！」
　ブルーベリー色のカブトムシを頭にくっつけたフォルトゥナリアがそう笑うが、２匹くっついて角のようになっている。
「まあ、おかげで収穫しやすくはあるな」
　エーレンも跳躍なども駆使しつつ、できるだけ仲間の手が届きづらい高い所の実を迅速かつ丁寧に採るようにしていく。
「リリーさん、交代しましょう！」
　そしてスイッチするようにLilyとユーフォニーが交代すると、何故か覇竜ブルーベリーの木も交代する。
　実際、ユーフォニーは番美味しそうな実をたくさんつけている４本を相手にしようとしていたので丁度いい。
「正々堂々、よろしくお願いします！」
　ユーフォニーはドラネコのリーちゃん召喚で、五感共有して上空へ行ってもらい、俯瞰視点を確保する。
　更にで勇気を灯す色を付与することで、準備は完了だ。
「リーちゃん越しの視点と合わせて、木の動作をしっかり見て……今ですっ、躱す！　えっあっ4本同時？？？　うぐっ！　いたっ！　いたた！　いたいです！！　ダメージはそんなでもないのになんか的確に痛いとこをっ！　重傷の身にこれはなかなか……くっ、でも耐え切るんです……！　きっとみんなが繋いでくれます！全ては美味しいブルーベリーのため……！　相賀さん、これ本当に繊細な木なんですか？」
「うむ。環境の変化にあんまり強くないしのう」
「そういう繊細さ⁉」
「ひゃああ、ツバ攻撃……！　ほんとヤンキーみたいな……ヤンキーってよく知らないですけど相賀さん、これ本当に繊細な木なんですか？」
「うむ。土の状態で花の色も変わったりするしのう」
「さっきから繊細さの方向性が……！」
「ご、ごめんね……沢山収穫するから、もう少しだけ耐えて……！」
「はい、頑張ります……！」
　銘恵も飛行しながらブルーベリーを摘んで、ギフト「ひろくてふしぎなそでのなか」を使用し入れていく。
「覇竜ブルーベリー……おいしいものを収穫するのは大変なんだね……」
　思わず銘恵がそう呟いてしまう程度には大変である。肉体的ダメージはともかく、精神的ダメージが凄い。
　そしてアルフィオーネはドラネコたちにも、ブルーベリー狩りをさせてあげるべくマリーネ、クローネ、ミケーネを解き放つ。
「さあ、取り放題、食べ放題よ？　思い存分、いってらっしゃい」
　一方のエーギルも、フォルトゥナリアやユーフォニーたちとは反対側、つまり木の後ろからそっと近づいてブルーベリーを採取していた。どうやるかは、仲間たちという見本があるから楽なものだ。
（木を傷つけないように素早くそーっと……）
　一本から取りつくすよりはとりやすい所を取って残りは見送る気持ちでやっていた。
　木の動きをよく見て新たな試練を発生させないように気をつけて動くその姿は、大分慣れてきたものの動きだった。
「陽も当たりやすいし、上の方は収穫し辛い場所だから良いブルーベリーがありそうなの、です。沢山採るぞー」
　Lilyも飛行しながらブルーベリーをとっていく。この作業は地味ながら、中々に楽しいものだ。
　そうして何度か交代しながらやっていくと、充分なブルーベリーが集まっていた。
「いたた、ブルーベリーみたいなあざができちゃったな。これも収穫のうちかな。パーティ楽しみだね、僕は生で食べるのが一番好き。他にも食べ方があるなら色々試してみたいな」
　エーギルの言う通り……フリアノンに戻れば、試食の時間である。
　まずはエーギルが食べてみるが、大きな覇竜ブルーベリーは果汁がたっぷりで歯ごたえも丁度良く、甘みと酸味のバランスが絶妙だ。恐らくブルーベリーに求められる要素が此処にはすべて詰まっているだろう。
　そんな完璧な覇竜ブルーベリーを楽しむべく、ゲオルグはギフトでふわふわ羊のジークを呼び出して一緒にブルーベリーパーティーを楽しもうとしていた。
「う〜む、何を作ろうか。まず、この暑い時期だとやはりブルーベリーヨーグルトアイスは欠かせないだろう。他にもジャムを作っておけば色々なものに使えるしジュースなんかも作れそうだな。後は……ふんわりと焼き上げたパンケーキに甘いホイップクリームと一緒に添えれば甘味と酸味が丁度いいアクセントになるんじゃなかろうか」
　言いながらゲオルグの調理は進んでいくが、Lilyもまずは一口食べてみる。
「とても美味しい……流石覇竜ブルーベリー……」
　つまみ食いを我慢したのでお腹が減っていたが、これは、まさにその甲斐がある。
　普通これだけ大粒であれば味も大味になりそうなものだが、そんなこともない。
　というか、完璧だ。ヨーグルトに入れて食べても美味しいだろう。
「時間があるならジャムも作って食べてみたいです」
「出来たのなら此処にあるぞい」
「わあ」
　相賀から渡されたジャムをなめてみれば、甘さの増した幸福の味だ。
「このスッキリとした酸味と甘み！ 　本当に美味しいね！」
　フォルトゥナリアはまずは生で、次は凍らせて食べてみたが……これが実に素晴らしい。
「あとクリームチーズと混ぜてブルーベリークリームチーズを作ってもみたいところ。パンとの組み合わせもいいよね！」
　どれも素晴らしいだろう。幸いにもパンもあるので当然試すしかない。
　フォルトゥナリアが混ぜ始めた横ではエーレンもジャム作りを進めていた。
「さて、しっかり身体を動かしたことだししっかり美味しいブルーベリーを堪能しようじゃないか。生のブルーベリーがおいしいのはもちろん。しっかり冷やしてそのままいただく用もたっぷりあるぞ」
　とはいえ、やはりそれだけでは物足りない。
「外せないのはブルーベリージャムだな。お土産にもぴったりだ。弱火で丁寧に煮たブルーベリーに砂糖とレモン汁を加えてとろみがつくまでさらに煮る。アクを取るのも忘れずにな。ああ、パウンドケーキも忘れてはいけない。バターに粉砂糖を合わせて溶き卵も加え、小麦粉を篩い入れたらよく混ぜる。ブルーベリーをごろっと入れたら型に流し込んで焼き上げる。おやつにぴったりだ」
　エーレンはあっという間に料理を並行して調理していくが、まだそれでは終わらない。
「あとはお茶の友にスコーンもいけるぞ。クリームチーズに牛乳と蜂蜜を混ぜて柔らかくしたら、そこに小麦粉、砂糖にベーキングパウダーを合わせて捏ねる。この生地にごろっとブルーベリーを練り込んだら、8分の1にカットして焼き上げる。簡単な割に美味しいぞ。さて、皆はどれが好きかな。どんどん作っていこうじゃないか」
　エーレン無双。そんな状況だがユーフォニーも負けてはいない。
　まずは覇竜ブルーベリーをそのまま食べてみるが、採れたては何でも絶品という不変の真理に基づくものだ。実際美味しい。
　フリアノンの住人へのおすそ分けも忘れてはいない、が。エーレンとは違う視点でユーフォニーも作業を進めていた。
「せっかくですからお砂糖に漬けて、ドライフルーツにもしてみましょうか。保存もできますし、ヨーグルトにもお菓子作りにも使えますし時間はかかりますけど、美味しさを長く楽しめますから♪　ふふ、出来上がりが楽しみですね……♪　お家でお留守番しているドラネコさんたちも気に入ってくれたら嬉しいです」
　きっと気に入ってくれるだろう。銘恵も、覇竜ブルーベリーをまず生で食べてみて驚いていた。
「こ、これは……とってもおいしい……！」
　ならば当然、他の食べ方も試してみたくなるというものだ。
「ヨーグルトに入れると美味しいのかな……？　ブルーベリーのジャムを作ったりジャムを使ったレアチーズケーキを作ったりしてみようっと。おいしくできるかな……？　できたら皆にしゃおみーのケーキもあげるね」
「ブルーベリー……青いベリー…　どこかにはレッドベリーやオレンジベリーもあるのかな？」
「覇竜イチゴは、ありましたよね？」
「ああ、懐かしいな」
「あるんだ……！」
　頷くユーフォニーとゲオルグに銘恵は頷くが……エーレンの言う通り、『びっくりどっきり食材モンスターの国』なのは間違いないのかもしれない。
　ああ、それでも愛しき覇竜よ。この暑い夏の日に食べるブルーベリーは、とても絶品だったのである。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました！
ブルーベリー、美味しいですよね！