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シナリオ詳細

ブラックラックと無限回廊館

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ブラックラック
「ある宝石を手に入れて欲しい。ブラックラックという名の宝石だ」
 幻想貴族ケヴィン氏は無類の宝石コレクターで知られている。
 幻想国内のみならずラサから天義から練達にいたるまであらゆる地域に伝わる貴重な宝石をコレクションし、会員制博物館に保管している。
 ここでいう博物館とは貴族が自らのコレクションを同志に見せ合うためのものであり、一般的にいう図書館美術館博物館のたぐいとは実質的に異なるものである。
 さておき……。
 金と交渉術で多くのものを手に入れることができるケヴィン氏が何でも屋であるところのイレギュラーズに依頼してきたのには理由がある。
 それなりの実力を持った八人チームでこなすべき理由だ。
「ブラックラックは別名悲しみの瞳。非業の死を遂げた魂がとらわれる『無限回廊館』にひっそりと存在しているという。
 無限回廊館については知っているかな? ならば良い。くれぐれも命に気をつけることだ。
 奴らの道連れにされぬようにな……」

●無限回廊館
 情報は情報屋から手に入れるもの。
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)は無限回廊館についてこんな風に話した。
「ああ、調べてきたよ。無限回廊館というのは多くの死者の魂がとらわれているという異空間さ。
 通行の手段は限られていて、特定の時間特定の方法でのみその扉は開くという」
 ショウがテーブルに並べた資料の中に、ある古い館があった。
 もし『ドクターHHHの殺人ホテル』という言葉に覚えがあるなら、このスケッチ画でピンとくるだろう。
「おっと、分からなくてもいいんだ。問題はこの館によって封印されていた異空間への扉だからね」
 ホテルの中にあるという隠された扉。
 これを通じて異空間である『無限回廊館』へと入ることができるという。
「無限回廊館はトラップとゴーストだらけの危険地帯だ。
 殺して魂を奪おうとするゴーストとの戦闘が頻繁に起こるし、精神をかき乱す幻覚性トラップがあちこちに仕掛けられているという話だ。
 あくまで噂なんだけれど、内部はまるで通路がぐねぐねとどこまでも続くような不思議な館だという話だよ。
 内部は分かれ道が沢山あって、道順を覚えていなければ元の場所に戻るのも難しい。
 この中を探索して、ブラックラックを見つけてくるんだ。
 全員でまとまって動くかバラバラに動くかは、技能や好みで決めていいんじゃないかな?
 守らなきゃいけないのは二つだけだからね。
 つまり……自分の命と、ブラックラックの確保さ」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:無限回廊館からブラックラックを持ち帰る

【探索とメンバー構成】
 無限回廊館は異空間に広がるゴーストだらけの不可思議ダンジョンです。
 ゴーストとの戦闘が頻繁におこるほか、幻覚によって侵入者を狂わせるトラップがあちこちに仕掛けられています。

・メンバー構成
 探索が主な目的となります。
 全員一塊になって移動するかバラバラに移動するかを相談して決めてください。
 極端に言うと、8人全員で動く場合総合戦闘回数が引き上がり戦力とスタミナでごり押しするスタイルになります。
 逆に1人ずつでバラバラに動いた場合探索時間が大幅に短縮されるかわりに戦闘が厳しくなります。
 その間で4人チームや2人チームでの行動も勿論可能です。

 ゴーストとの戦闘などで傷ついて戦闘不能になる場合、その直前で逃走・自力で帰還し、館の外でばたんと倒れるものとします。中に残されると死ぬので。

・トラップについて
 館の中にはあちこちにトラップがあります。
 発動トリガーは様々で、ものに触る特定箇所を通過する何かを考える語る聞くその他諸々……と、ちょっと警戒が難しいタイプのトラップです。
 これにひっかかると物事の認識がおかしくなったり、記憶がとんだり、敵味方の区別がおかしくなったりします。

 魔術トラップに近いものなので、『罠対処』を持っていると罠を発見しやすく、解除して進むことが可能になります。
 その他発見に役立つスキルがちらほらありますが、五感を使うタイプのものはちょっと分が悪そうです。
 余談ですがスキル『平常心』があるとトラップを受けても平気でいられる確率があがります。
(トラップの効果はBSではないので『精神耐性』は適用されません)

・ゴーストとの戦闘
 道中、ゴーストとの戦闘が頻繁に起こります。
 ゴーストは近接戦闘タイプと射撃戦闘タイプに分かれておりぱっと見では判断しづらいかもしれません。

・霊魂疎通について
 相手がゴーストなだけあって、霊魂疎通をもっていれば戦闘に勝利した後でなら話を聞くことが出来ます。
 ただしブラックラックのありかを聞こうとすると大体が口をつぐみます。その理由はひみつです。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • ブラックラックと無限回廊館完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月14日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー(p3p000244)
盗賊ゴブリン
桐野 浩美(p3p001062)
なんでも狩ります
琴葉・結(p3p001166)
魔剣使い
七鳥・天十里(p3p001668)
ガンスリンガー
エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)
ShadowRecon
ハロルド(p3p004465)
聖断刃
しだれ(p3p005204)
特異運命座標
ピット(p3p006439)
小さな雷光

リプレイ

●ブラックラックと無限回廊館
 ドクターHHHの殺人ホテルの地下に封印されたゲート。
 この先には無限回廊館という異空間が広がっていた。
 非業の死を遂げた魂をとらえ亡霊だらけのダンジョンとなった館へ挑むのはイレギュラーズ。
 この場所で手に入る宝石ブラックラックをめざし、ゲート開放の儀式を完了させていた。
「呪い! お宝! 心が燃えるっす!」
 『特異運命座標』桐野 浩美(p3p001062)は長くはみでた犬歯をきらりと光らせ、マジックガントレットを装着した。
「にしてもここ、聞いた限りじゃ侵入者避けというより侵入者を帰れなくしてゴーストを増やそうって感じに見えるっすけど、寂しがり屋のヌシでもいるんすかね?」
「さあ、な」
 『ShadowRecon』エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)が組み立てた対物ライフルをいつでも撃てるように調整して背中に担いだ。
「言葉だけではまるで遊園地のアトラクションだが……まあ、少々スリリングすぎるアトラクションをこなして依頼人に宝石をお届けするとしようか」
 ゴーグルのレンズを布でぬぐう『小さな雷光』ピット(p3p006439)。
「トラップだらけのダンジョンで大冒険ってのはいいんだけどなあ。幽霊だろ……? 苦手だなぁ……」
「え、そう? こわい~?」
 『幽霊……?』しだれ(p3p005204)が幽霊ですよとでもいわんばかりのシャープなポーズをしてみせた。
「浅草寺の六時の鐘が陰に籠もってものすごく、ぼ~ん」
 これだけ聞いて落語の野ざらしだって分かる人いるかな。
 さておき。幽霊っていうよりほぼ蟷螂拳の構えになっているしだれに、ピットは黙って頬をかいた。
「あんまり恐くないな……」
 まあ幽霊なんて言いましても語る口が違えば味も違いますってんで、『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は剣とククリナイフを交互にしゃらしゃらとこすり合わせて研ぎ味を出しますとどこか陰気ににやりと笑う。
「悲しみの瞳・ブラックブラック。いいねえ、一度はお目にかかりたいと思ってたんだ。こういう値打ちモンは目で見て手で触れて形を覚えねえと盗むに易いってもんだ。なんつってなあ」
 途中まで乗ってみた落語のテンションを途中で切り上げ、ナイフと剣をそれぞれホルダーに納めた。
「しっかし、非業の死を遂げた魂が囚われる無限回廊館か。ゴーストどもにとっては居心地がいいんじゃねえの? ブラックブラック目当てに新鮮な魂がノコノコやってくるんだからよ! ありかの言わねえのも案外そういう理屈かもしれねえぞ?」
「ううむ……」
 『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)が普段から難しい顔をさらに難しくしていた。
「どうした聖剣使い」
「いやな、ゴブリン。この無限回廊館という場所は最近まで封印されていたんだろう? そこにブラックラックという宝石があると分かっているのは、封印される前かその後に誰かが実物かもしくは確たる証拠を持ち帰ったということだよな」
「そうなるな」
「この館自体が巨大な罠のように思えてならん」
「ま、半分同感ね」
 『魔剣使い』琴葉・結(p3p001166)が靴のひもを結び直し、魔剣の抜き具合を半分まで確かめてじゃきんと鞘に戻した。
「第一ブラックラックって名前からして呪われそうじゃない。そんなものをコレクターっていうのも業が深いわよね」
『なんだァ? 魔剣使いもカースド装備が恐いってか? あイテッ』
 軽口を叩くズィーガーの鞘を拳で叩いて、結は振り返った。
「実際お宝目当てに潜り込んで帰ってこない人もいるんだろうし、二の舞にならないように注意しないとね」
「そうだね。ブラックラック――悲しみの瞳、かあ」
 七鳥・天十里(p3p001668)がパーカーのフードを少し荒っぽく整え、愛用の拳銃を抜いてくるくると回してみる。
「その宝石だって、こんな陰気なところにあるから良くないんだよ。ぱぱっと見つけて、外に持ち出してあげよう!」
 銃を顔の位置に持ち上げると、手首に巻いたブレスレットを撫でるように回転させる。すみれ色の輝きが多重反転の円環となり、天十里の腕にエネルギーラインを展開させる。
 準備万端。
 ホテルの地下室に作られた巨大な魔方陣を入り口にして、八人は無限回廊館へと飛び込んでいった。

●忘れられた館
 曲がり角に背をつけて、小さな鏡を使って角の向こうをのぞき見る。
 こちらの気配に気づいて突き進んでくるゴーストたちを視認すると、エイヴは角から飛び出してコンパクトに組み立てたライフルを発射。
 先頭の一人を存在ごと破壊すると、直後にピットが角から飛び出した。
「それ、どんどんいくぜ!」
 肩に担いだ大きなレールガンをデスペラード姿勢で発射するピット。
「進行方向クリア!」
「よし――」
 ハロルドは集団の後ろについて、後方から迫るゴーストの群れをにらみ付けた。
 無数の扉がやかましく開閉を繰り返し、漏れ出る煙のごとく廊下に集まってくるゴーストたち。
 ハロルドは聖剣リーゼロットを強く握りしめると、ゴーストたちめがけて突撃した。
「はははっ! おら、死にたい奴から掛かってこいよ! 対魔の光で消し飛ばしてやるぜ!」
 ゴーストの伸ばす腕がハロルドに触れるたび、彼から発する聖なる光にちりちりと焼かれ、剣に光を集めて切りつければゴーストはたちまちのうちに消滅していった。
「後方クリア」
「よし……」
 キドーがゆっくりと廊下を歩き、突如開いた扉に向けてククリナイフを投擲した。
 奇襲をしかけようとしたゴーストの額にナイフが刺さり、ばったりと倒れる。
 先を歩かせていた式神のプチゴブリンはなんかひどい死に方をして藁の人形に戻っている。ゴーストに遭遇した瞬間にくたばったらしい。まあそんなもんだ。
 キドーは人形を拾い上げ、部屋の中をゆっくりと見回す。
 薄暗い部屋だ。廊下から入った光でかろうじて寝室であることは分かるのだが……。
「おい、誰か明かりもってないか」
「ああ……これでいいか」
 ハロルドが指輪の飾りを180度回すと、赤い宝石からぼわりと火の玉が上がり周囲を照らし出した。
 部屋を左から順に見回していくとこうだ。
 ベッド。
 肖像画。
 化粧箪笥。
 大きな鏡。
「どうにも怪しいな。見てくれ」
「……」
 エイヴが黙って部屋に入り周囲を探索しはじめる。
 手際よく確認したところで、チケット状の携帯マジックキャンセラーを鏡にはしらせた。
 ばちばちと魔術の火花があがり、鏡だった場所が通路に変わる。
「ピット。道順は覚えているか」
「ん? あー、やっぱメモしないと無理かも」
 ピットはキドーのメモをちらちらと見ながら道順を確認した。
 ここまでの風景をばしばし写真みたいに記憶してきたが、総合記憶容量が増えるかっつーと別にそういうわけでもないらしく途中でわやくちゃになっていた。むしろ写真記憶個別の情報量が多いせいで余計混乱しそうだった。
 もっというと、道が道に見えなくなったりそこまでの記憶がとんだりするトラップが仕掛けられているので相当勝手が悪い。
 そんなわけで、覚えるべきはキドーの書いた手書きマップの道順ということになった。
「にしても、変なトラップばっかりだな。落とし穴とか飛び出す槍とかのほうがずっと楽なんだけどなぁ」
「魔術が一般に普及し銃器も爆薬もある世界で、それはあまりに原始的すぎる」
 エイヴは深く息をついた。
 地雷原とか無人攻撃機とかないだけいい、とは言わない。
 エイヴは一旦球形し、トラップの探索をピットとハロルドに任せた。
 奇妙にうねった廊下を振り返り、首を傾げるキドー。
「まるでモンスターの腹ン中だ。とっとと見つけて帰りてえな」

「前方に敵、後方からも来てる。展開してっ」
 結は魔剣を抜くと、廊下を斜めに駆けだした。
 包丁を握って飛び込んでくるゴーストをかわして廊下の壁を僅かに駆け上がり、身をひねって切りつける。
 挑発的な手招きをしてから、周囲のゴーストが伸ばす腕を剣で次々に払いのけていく。
『オイオイ、未練がましいゴースト共が随分と沢山いるじゃねぇか、とっとと成仏させてやるから掛かってきな!』
「後ろは任せて~」
 しだれは卒塔婆をよいしょといって振りかざすと、飛びかかってくるゴーストたちに叩き付けた。
「豪腕粉砕しだれちゃんくらっしゅ!」
 宗教観の違いかもしれないが、卒塔婆でゴーストを殴り殺す絵のすさまじさ。
 それでも熱心に突っ込んでくるゴーストたちを水平に構えた卒塔婆で押さえ込むと、天十里の呼びかけに振り返った。
「爆弾投げるから飛び退いて!」
 スティックタイプのルージュの蓋をきゅぽんと外す天十里。
 先端を捻るとネコの頭みたいなルージュスティックが飛び出し、天十里はそれをゴーストたちへと放り投げた。
 一秒待って、大爆発。
 慌てて飛び退いたしだれが頭を抱えてうひゃーと言った。
「ギリギリだね~」
「うまくいって良かったよ。そっちは?」
 呼びかけられ、浩美はゴーストたちに放っていた魔術をとめた。
「こっちの敵は片づいたっすね。残りはー……お?」
 柱時計の影に子供のゴーストが隠れているのが見えた。
 どうやら戦闘の意志はないらしい。
 浩美は霊魂疎通を使って子供のゴーストと意思疎通を試みた。
「この館について知ってる事、いろいろと教えてほしいっす。たとえば……」
 指折り数えて質問をしていく。
 館の構造は?
 館の居心地は?
 住人の数は?
 罠は?
 その解除方法は?
 尋ねる内容にすべて正直に事細かに応える子供のゴーストがティーカップを置く音が柱時計の針の音に重なり浩美は目の前に置かれたショートケーキに揚々とフォークを突き立てた。イチゴのジャムが吹き出していく。さあもっとお食べと子供のゴーストが穏やかな祖父母のごとき声でいう。祖父母? なんだそれは。柱時計が天をつくように伸び上がり満点の星空が降ってくる音がシャワーのようで浩美は思わず踊り出――。
「そりゃ~!」
 浩美の顔面に叩き付けられた卒塔婆。
 予想外のダメージにもんどりうって倒れた浩美は、自分がナイフ片手に広間の真ん中に寝転んでいた事実に気がついた。
「え……え? え?」
 トラップは警戒していた筈。道中仕掛けられた認識阻害トラップも解除して歩いていた筈だが、いつかかった?
 記憶をたぐると子供のゴーストに質問を沢山重ね――ようとした時点でノイズがかかった。
「あ、あー……わかったっす。欲張るとダメなんだ」
 ゴーストから全部聞き出せば探索が楽ちんだ。そんな思考が、トラップのトリガーになっていたようだ。折角獲得したゴーストからの情報も、その記憶ごとノイズのかなたに飛んでしまっている。
 しかし、なぜ? なぜこんなトラップを?

●ブラックラックは君を見ている
 無数のトラップをくぐり抜け、ついにハロルドたちは目的の場所へとたどり着いた。
「これがブラックラックか」
「情報の通りの宝石だな」
 たどり着いたのだが……。
「え、でもさ」
 エイヴが、帽子のつばをつまんで目を伏せた。
 頭を抱えるピット。
「めっちゃいっぱいあるじゃん!」
 それは宝石部屋とでも呼ぶべき場所だった。
 ルビーサファイアダイアモンド。ありとあらゆる宝石や金銀の装飾品。金目のものが山ほど積まれ、その中に混ざるようにしてブラックラックの宝石が置かれている。
 それもピラミッド状に積まれていた。
「……なあ、これ全部持って帰ったらボーナス出るのか?」
「指定された数は一つだからなあ。まあ、そうでなくても売りさばいたらとんでもねえ額になるだろ」
 キドーはゆっくりと手を伸ばし、はたと停止した。
「『妖精の家』」
「何?」
「おとぎ話だよ。山で迷った男がハープの音色に誘われて山小屋へ入ると、部屋中の金銀財宝の中から好きなものを一つだけ持って帰っていいと言われる」
「ラッキーじゃん」
「しかし持ち帰った財宝はすぐに醜い土の塊に変わるってオチだ」
「俺も似たような話を知ってるが、欲張って複数持ち帰った奴が家から永遠に出られなくなったオチじゃなかったか?」
 ハロルドが財宝にあえて触れないように顔をしかめた。
「…………」
 エイヴはただただ慎重に、入り口付近で警戒を強めている。選択はそちらがしてくれという目で、ハロルドたちを見ていた。
 頷くハロルド。
「依頼されたのは一つだけだ。その報酬も約束されてる。俺たちは、一つだけ持ち帰ろう」
 ハロルドはブラックラックをひとつだけ手に取り、部屋を出た。

 時を同じくして浩美たちもまた、ブラックラックを発見していた。
 大広間に長いテーブル。涎が出そうなごちそうが並び、どうぞ食べてくださいとばかりに食器が並べられている。
 浩美は『どうみても罠だよなあ』と思うものの、その中央にただ一個だけ置かれたブラックラックの存在に注目していた。
 天十里がいぶかしげに周囲を伺っている。
「変だよねえ。『悲しみの瞳』なんて異名の宝石がこんな場所に置かれてるなんて。悲しみとは無縁って空気だけど……」
「確か俺っちが罠にかかったのって、ゴーストに根掘り葉掘り聞こうとしたからっすよね。つまり、欲張ったから」
「欲張るといえば……うーん……」
 再びごちそうの山を見る天十里。見るだけでお腹がすいてきそうなステーキや果物や、フライドポテトやハンバーガーや、チョコレートフォンデュのタワーやホールケーキのバイキングや……。
「マヨイガって聞いたことある~?」
 しだれが卒塔婆をぽんぽん叩いて言った。
「昔話っていうか~、童話? 旅人が迷い込んだ豪華な宿の話なんだけど~、たくさんごちそうが出てきてそれを食べると帰れなくなるって話なのね~。お茶碗だけ持ち帰ったら幸福になったってオチもあるけど~……」
「その理屈で言えば、ここに並んでるごちそうはモロにトラップよね」
 結はつかつかとテーブルの中央へ歩いて行くと、ブラックラックだけをつまみあげてポケットに入れた。
「私たちの役目はこれだけよ。さ、よそ見せずに帰りましょうか」

 ……かくして、八人は記した地図をたどってぐねぐねと複雑に入り組んだ館を歩き、なんとかもとの入り口まで戻ってくることが出来た……のだが。
「…………えっと」
「…………そうだな」
 結とハロルドはそれぞれ持ってきたブラックラックを見せ合い、お互いの顔を見合った。
 ローレットが(割と気軽な)何でも屋であることを差し引いても、コレクターの貴族が外の部隊を八人雇って取りに行かせるほどのシロモノ。
 山分けしてもかなりの利益になるだろう。
 ……が。
 キドーも。
「別にいらねえよ。欲の皮張って死ぬのはゴメンだぜ」
 浩美も。
「ま、一度痛い目見てるっすもんね」
 天十里も。
「暗くて陰気な所だったら出してあげようと思ったけど、別にそうでもなかったし」
 エイヴも。
「任務外の行動に興味は無い」
 しだれも。
「いぎな~し」
 ピットも。
「ズルして得しようなんて思ってねえって」
 満場一致で、欲を張ることはなかった。
『いいのか?』
「それこそ呪われそうでしょ」
 結は二つ目のブラックラックを床に置き、ハロルドは一つだけを握って、入り口のゲートを潜った。

●後日談ならぬ
 ゲートを順番に潜ったはずの八人。
 彼らはいつのまにかホテルの前に立っていた。
 ドクターHHHの殺人ホテル。今は封鎖され地下ゲートの探索が行なわれていた場所……の筈だが。
「なあ、おい」
 振り返ると、そこにホテルなどなかった。
 雑草の生えた空き地が広がるばかりで、地下室など勿論ありはしない。
 ハロルドはポケットから一つだけのブラックラックを取り出して見た。
 宝石は確かにそこにある。八人全員、そろっている。

 もし、誰かが二つ以上を持ち帰ろうとしていたら……。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete
 ――good end

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