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シナリオ詳細

<黄泉桎梏>狂わざる血刀

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<黄泉桎梏>狂わざる血刀
 視界一面を埋めるかの如く、広く拡がる海洋の海。
 『静寂の青』と呼ばれた地は、過去の血潮が拭われて、今や蒼天の空の如き青き海だけが拡がっている。
 ……そして、そんな海を越えた先にあるのは……他の国には無い独特な世界観を持つ国、『豊穣』。
 イレギュラーズ達の来訪からかなりの時が経過するも、その風習は殆ど変わる事は無く……和なる世界は日を重ね、平穏なる日々が経過していく。
 だが……そんな平穏な『豊穣』の国で、昨今。
『……う、うわぁああ!! な、何だ何だぁあああ!!?』
 恐怖の表情で、町人の男が走る。
 周りの人々は、何だ何だと驚き、彼が逃げ来た方向へ視界を向ける。
 ……すると。
『……ウゥゥ……グアアア……』
 呻き声を上げて、血濡れの刀を持った『武士』の様な男が歩いてくる。
 ……明らかに正気を失っているのは分かる。
 だが、それ以上に不可解な所は……彼の身から、黒い靄の様な『何か』が湧き出ている事。
『……ひ、ひぃっ……!!』
 その黒い靄に、風の流れにより触れたものは悲鳴を上げて、腰が抜けたかの如く、その場から動けなくなる。
 そして……。
『……死ネ、シネシネシネェ……!!』
 武士の様な男は……躊躇する事無く、刀を振り落とす。
 噴き出す血飛沫を浴びると……その刀の柄元辺りで、鈍く輝く『翼』の様な紋様。
 無論、周りの街の人々はそんなことに気付いている余裕は無く。
『ひ、人殺しぃぃぃ……!!』
 悲鳴を上げて、散りじりに逃げ去っていく町人達。
 それにクックックと低く笑い声を上げながら、彼の者は人の居る方向を嗅ぎ付けて、進んで行った。


「……そうでしたか……豊穣の国にも……姿を表し始めたのですね……」
 天義首都、『深緑の声』ルリア=ルミナス(p3n000174)は瞑目し、項垂れる。
 彼女が耳にしたのは、豊穣の国において『刻印』を持つ者が、まるで狂気に包まれたかの如く暴れ回っているという話だった。
 思い返せばつい少し前において、刻印が刻まれた『海洋生物』が海洋の人々を苦しめていた事件がある。
 恐らく……今回の事件は、『刻印』を持つ者が侵略の手を『豊穣』にも伸ばした証左であろう。
 そしてルリアは皆の方に頭を下げると共に。
「皆様……恐らく今回暴れている方は、カムイグラで『聖遺物』に触れた方だと思われます。そして……その聖遺物に身を乗っ取られてしまい、人々を殺して回っているのでしょう……」
「彼の持つ聖遺物を破壊すれば、恐らく……その影響を断ち切ることは出来るかも知れません。ですが……聖遺物を自分から手放すようなことは無いでしょうから……力尽くで彼を気絶させ、聖遺物を破壊する必要があるでしょう……」
「……当然の事ではありますが……彼は容赦する事無く刀を振るいます。生半可な方法では、返り討ちに遭いかねません。ですが……聖遺物が生み出す悲しみの連鎖を止める為には、ここで対処しなければなりません……どうか、力を貸して下さい……宜しくお願いします……」
 そう、申し訳無さそうに、ルリアは頭を下げるのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 現実のカムイグラに現れた、狂気なる『聖遺物』持ちの男。
 彼を放置すれば、次々と被害が出るのは間違い無いでしょう。

 ●成功条件
  カムイグラの下町(少し貧乏な人達が住む長屋街みたいな所)に現れる、『聖遺物』持ちの『武士』を倒すことです。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
   重ね手になりますが、舞台はカムイグラの、長屋が連なる街並みです。
   人々は逃げ惑い、恐怖に戦いている状態です。
   逃げ遅れている人も居るでしょうし……其れを見つけて殺そうとする『武士』がいます。
   長屋街の人達を逃がしつつも、聖遺物持ちの武士を倒し、聖遺物を破壊しなければなりません。
   ただ聖遺物は、『武士』が意識ある間は絶対に手放そうとしません。
   又、武器だけの破壊を狙おうとしても、何故か武器は壊れることはありません。
   つまりは『武士』を倒さない限り、聖遺物を倒すことが出来ないという事になります。

 ●討伐目標
 ・『翼』刻まれた聖遺物を持つ『呪詛』持ちの武士の男
   刀で人々を斬り付け、己に瘴気の様な気を纏いし者です。
   その瘴気に触れると、一般人は力が抜けて一切その場から動けなくなり、又、瘴気は風に乗って拡散します。
   刀については血濡れの刀となっており、『血を吸う』力があり、ダメージを与える事で自分の体力を回復する効果があります。
   たった一体のみではありますが、攻撃=回復という力を持っているので、攻撃一辺倒で皆様と相対しますのでご注意下さい。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <黄泉桎梏>狂わざる血刀完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年07月17日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルチェロ=ナタリー=バレーヌ(p3p001584)
優しきおばあちゃん
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
フーガ・リリオ(p3p010595)
君を護る黄金百合
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺

リプレイ

●豊かさとの背反
 海洋王国の先に拡がる国、『豊穣』。
 イレギュラーズ達の来訪から既に時はかなり経過しており、街は平穏。
 ……だが、そんな平穏な街に突如姿を表したのが『刻印』を持ちし武士の男。
 彼はまるで狂気に触れたかの如く、その手に握った血濡れの刀を振り回し、街の人々を死へと至らしめようと言う行動を繰り広げているという。
「今度は武士に聖遺物と来たか……」
「その様だねぇ……その聖遺物には翼の紋様があると言うし。でもまぁ、壊せば良いのか」
「そうだな。壊せばいいと言っても一手間かけないとダメだしなぁ……」
「うん。どういうものだったか多少気になりはすれど、所詮は聖遺物だからね! 生憎と祝福やら恩寵やらは相性が悪いし、キレイさっぱり壊してスッキリ帰るとしましょうか」
「そうだな……この手のアイテムは、ルーキスが嫌いな物の一つだし、さっさと壊してしまうに限るか」
 『片翼の守護者』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)と『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)夫妻の会話。
 二人の言うが通り、今回の武士が持つ『刀』が聖遺物であろうというのは、予測の範疇ではある物の、ほぼ間違い無い。
 更にそんな聖遺物に刻まれた『翼』の紋様……という事は、それが遂行者の影響を受けたモノである、というのも如実に示している。
 とは言えど、聖遺物に身体を乗っ取られてしまい悪事に手を染めている彼の事を考えると……複雑な心境も沸き起こる。
「聖遺物に身体を乗っ取られる……ですか」
 と『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)が悲しげにぽつりと呟くと、それに『君を護る黄金百合』フーガ・リリオ(p3p010595)が。
「そうだな。本当に遂行者達は何を企んでるんだろうな?」
「ええ。むしろこれは、聖遺物そのものに何らかの意思が宿っているのかもしれません。それを壊せば元には戻るのでしょうね……」
 瞑目するフルールに、『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は。
「全くだ。暴走させたり呪詛を撒き散らしたり……聖遺物などと言われながらも、その実結果だけを見てるとこいつは呪いの道具って印象しか受けない。天義の信仰には詳しくはないが、少なくとも瑞神や四神たちが好む類ではないことは確かだろう」
 そんな錬の言葉に、真摯な表情を浮かべた『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が。
「この諸悪の根源は『聖遺物』、そしてそれを撒いている奴等だ。この武士も被害者……彼を救わなければならない」
 静かに怒りの炎を燃え上がらせるモカにフルールも。
「そうね……今迄殺して来たヒトのためにも、何らかの形で償わなければならないでしょう。可哀想ですが、死者も浮かばれないです。この聖遺物はそれだけ、他人の人生を滅茶苦茶にしたのですから、とことん破壊しましょう」
 それを受けた『静観の蝶』アルチェロ=ナタリー=バレーヌ(p3p001584)が。
「ええ、……武士の子に罪はないわ。聖遺物さえ壊せば救えるのなら、私は何度でも手を伸ばしましょう……ルーキス、ルナール。そして孫たちも、皆とても強い子達。私はおばあちゃんらしく、成すべきことをなしましょう。これ以上、被害を広め罪なき子等を傷付けぬように」
 静かなアルチェロの言葉に、ルーキスが。
「そうだね……しかし天使は居ないのか。惜しい、合法的に狩れるチャンスなのに、ね」
 影の軍勢にも様々居るが……今の所影の天使が現れた、という話は聞き及んではいない。
 勿論、だからといって出て来ないという可能性は捨てきれないので、油断は出来ない。
 ともあれ、致命者により人生を狂わされた武士を救わねばならない。
 そんな仲間達の覚悟に、『放逐されし頭首候補』火野・彩陽(p3p010663)も。
「そやね……持ってる武士も犠牲者なんやろうけど……うん。まずは周囲の人を逃がしてからやね。そっちからやね」
 と言うと、錬も。
「ああ。これ以上カムイグラに被害を出す訳にもいかない。素早く制圧するとしよう」
 と、仲間達を促すと共に、豊穣の国を駆けるのであった。

●空蝉の刻
 そして豊穣の国を駆けるイレギュラーズ達。
 時の頃は既に丑三つ時を回る頃で、本来であれば人々が寝静まっている時間帯。
 それ故に、いつもであれば声もなくただただ静寂が支配している時。
「さて、と……先ずは刀を持つ武士が何処に居るか、やね?」
「そうだな。取りあえず……空から監視の目を飛ばすとしよう」
 彩陽の言葉に頷き、錬が式神を召喚し、空から広い視界で捜索を開始する。
 ……そしてその静寂の中、暫し捜索と共に長屋街を掛けていくと……その静寂を割り開くが如く。
『殺ス……コロスコロスコロスゥゥ!!』
『人殺しィィィ、来るな来るんじゃねええ!!』
 死を求める声と、恐怖の前に逃げ惑う叫びの狂宴。
「早速現れたみたい……あっちの方、ですか?」
「ああ……急ごう」
 フルールに頷く錬……そしてイレギュラーズ達は死を求むる声がした方角へと急行。
 そこへ近づけば近づく程、悲鳴の数は更に多くなり、恐怖を露わにしながら逃げ惑う人々。
 そして……その後方よりは、目を血走らせて血濡れの刀を振り上げて追い立てている、一回り巨躯の男。
『逃ガスカァ!!』
 と、その刀を振るうと、その刀に纏わり付いた『漆黒』の『何か』が周りへと発散。
 ……そして、その漆黒に追い立てられ、巻き込まれた町人は……まるで走る力を失ってしまったかの様に、突如目から光を失い、その場に崩れ墜ちてしまう。
 勿論、その後方から迫り来る武士の男……刀を振り上げられ。
『……ひ、ひ……ひぃぃぃ……』
 明らかなる恐怖を湛え、命乞いを願うが……その刀は止まる事は無い。
 振り落とされた刀は、人を脆くも一刀両断にし、その血飛沫を迸らせ、彼は嬉々として浴びる。
『足リネェ……モット、モットダ。モット血ヲォ……!』
 臆すること無く、嬉しそうに声を上げる刀を持つ武士……そして、更にそれに恐怖を抱き、混乱と共に逃げ惑う町人達。
 混乱に窮する町人達に向けて声高らかにモカは。
「お前達、安心せよ! 我々はローレットより派遣されたイレギュラーズ、神使いである! この狂いし武士を止めるために来た! あなた達は皆で協力して、より多くの人々が避難出来るよう努めて欲しい!!」
 威風堂々たる声で、町人達に避難を呼びかけつつも、そんな町人達の中で比較的落ちついていそうな人を捕まえ、彼を通じて逃げる方角の指示を与える。
『わ……解った。みんな、こっちだ!!』
 そんなモカの号令と、冷静な町人の呼びかけにより、取りあえずは武士から離れている所の人々の避難誘導は取りあえずは問題なさそうではある。
 とは言え武士の近くに居る人々は、彼の放つ『漆黒』の『瘴気』に蝕まれており、満足に動けない状況に置かれている。
「動けない様ね……ルーキス、ルナール。共に坊や達の保護を進めましょう」
「ああ……任せておいてくれ」
 アルチェロの言葉に頷くと共に、ルーキスは武士の方へ、ルナールはその目前で動けないで居る町人達の下へ。
『……あ、ぁああ……』
 ただ呻くことしか出来ない人々……それを喰らおうとする武士。
「よーっし、一般人んの対応御願いね、二人共。火力型の真髄を見せてあげるよ!!」
 そうルーキスは張り切りながら、初っ端から攻撃一辺倒の魔力を凝縮した一閃を叩きつける。
 爆裂的に強力な一閃が武士の身を傷付ける……だが、目を血走らせたまま、依然として立ち続ける。
 むしろ攻撃為てきたルーキスを邪魔な存在だ、と認識した様で、一般人達に向いていた攻撃のターゲットが彼女へと向けられる。
 ……そうルーキスがそのターゲットを惹きつけてくれている間に、ルナールとアルチェロの二人は逃げ遅れていた一般人の下へと降り立つ。
『あ……あぁ……あああ……』
 声を何とか絞り出している様な彼ら……それにルーキスは。
「動けない一般人ん、何時でも使える敵専用の回復剤が道端にこうゴロゴロと転がってるって訳か」
 と視線を配ばすと、アルチェロは。
「そうね、おばあちゃんなりにオシゴトをしましょうか」
 静かに頷き、武士のターゲットから外れた人の目を見て落ちつかせる。
 ……だが、それでも中々落ち着かない様で。
「そんなモンを地面に転がしたままの方が面倒臭い。多少手荒いが、敵の射程からご退場願おう」
 と言うと、ひょいっと町人達を持ち上げては、仲間達の居る遥か後方に向けて投げ放つ。
『う……うわぁああ!?』
 殺される恐怖から、投げ飛ばされる恐怖。
 勿論投げ飛ばされたのをフーガらが受け止め、傷無き様に保護し、自分達の背後に保護する。
 ただ、そんなルナールの強引な行動に、アルチェロは。
「……あまりやりすぎてはダメよ?」
 と、息子を窘めるような言葉を投げかけるが、ルナールは掴んで、飛ばして……を止める事は無い。
 それに、更にアルチェロが。
「……ねぇルナール? おばあちゃん。もう少しヒトの子には優しくした方が良いと思うの」
「……アルチェロはそんな顔で俺を見るんじゃない。回復剤にされて殺されるよりは、生きてるだけマシだろ」
 まぁ……確かにルナールの言う通りではある。
 ともあれ瘴気に当てられた人々を強引に避難させる事で、武士の周りから町人達を全て、排除していく。
 そして武士の手の届く範囲から、町人達を全て排除し終わった所で。
「……うん。避難は取りあえず完了だな。みんな、絶対に前に出てこない様にね?」
『う……わ、解った……』
 フーガの注意喚起に頷く町人達……そして。
「良し……んじゃぁ行くとしましょか」
 後方に居た彩陽の言葉に従い、フーガ、錬、フルールらが前進し、敵に攻撃が届く中距離へと移動。
 更にモカとルナールは、ルーキスと攻撃を分散させる様に最前線に立ち塞がる。
「回復手段は封じさせて貰った……後はお前を逃さずにここで仕留めれば全て決着だ」
『ウル……セエ!!』
 ルーキスの言葉ににらみ返し、その刀を叩きつける。
 町人達とは違い、丈夫なイレギュラーズ達を一刀両断するには至らないが、とは言えかなりの傷を負わせるものであるのは間違い無い。
 そして攻撃した結果、返り血を浴びればそれを糧にする彼は、攻撃し、回復し……を繰り返していく。
 その怪我を見定め、後方から前線を上げたアルチェロとフーガの二人は。
「坊や達の傷は、私に任せておくれ」
「おいらも負けられないな……みんなは攻撃だけに集中してくれ」
 各々、三人を分散して回復し、決して前線が突破されない様にする。
 そして、フルール、錬、彩陽の三人は後方から援護する様に攻撃を行い、敵の行動を制限したり、自分達を強化したり……と立ち回る。
 1対8というのに、最初は『呪詛』を持つ彼の方が勢い付いていた。
 だが、冷静かつバックアップ態勢をしっかり敷いたイレギュラーズ達は、決して焦る事無く敵をジリジリと追い詰めていく。
 ……そして、両陣合流して十数刻。
『クソ……殺サネバ……殺サネバァ……!!』
 目を一際血走らせ、怒りの瘴気を更に燃え上がらせる武士。
 一方で落ちついた雰囲気の儘でルーキスは。
「単体相手ならこいつが適任ってね!」
 と何処か嬉しげに攻撃を放ち、彼の回復ペースを上回る強烈な攻撃を叩きつける。
 すると。
『……グゥッ……!』
 流石に耐えきれずに、地面に叩きつけられる彼。
 そこに、強力無比な一撃を叩きつければ容易に命を奪うことは出来たであろう。
 だが……彼も又、被害者。
「さて、さっっさと落ちて貰おうか! キミが起きてると、ろくでもない事が続くからさ!」
「そうだな……」
 ルーキス、ルナールが意識を合わせての、連携攻撃。
 命を奪うのではなく、その手の武器を離させるが為の、不殺の一閃。
 それでもなお、しぶとく生き残る彼の命。
「……すまないな。これで……トドメだ」
 そしてモカが蒼き一閃を叩き込むと……彼は苦悶の叫びを上げるのであった。

●命解かれ
 ……そして。
「はい、オシゴト終わりぃー。流石に疲れたー!」
 息を吐き、両手振り上げ空を見上げるルーキス。
 そんな彼女の言葉に苦笑しながらルナールも。
「ああ、お疲れ様……と、聖遺物はどれか解るか?」
「んー……あ、これだろうね」
 ルーキスは倒れた彼の全身から、刀を見渡す。
 すると刀の柄の所に、輝きを失い、鈍く、薄く光る『翼』の紋様。
「ここを狙って……これで、よしっ!」
 木っ端微塵にその刀を破壊すると……今迄彼を包み込んでいたドス黒い瘴気が晴れていく。
「破壊チェックは終わったか?」
「うん。全くさ、どこまで増えるんだろうねえ、この騒動」
 肩を竦めるルーキスに苦笑するルナール。
 ともあれ聖遺物を破壊し終わり、瘴気も失われた武士の下へフルールが駆け寄る。
『……ぅ……ぅぅ……』
「取りあえず呼吸はある様ね? 武士さん、大丈夫ですか?」
 とフルールが優しく声を掛ける……だが、すぐに目を覚ましそうにはない。
「取りあえずこっちは私と……アルチェロさんで対応しましょう。大丈夫だとは思いますが、避難した人達の様子を見に行って頂けますか?」
「ん、了解。んじゃ俺達はそっちの方に行くとしよう」
 そしてフルールとアルチェロに気絶為た彼を任せ、フーガ、モカ、彩陽の三人で避難した人々の下へ。
『……あ……だ、大丈夫……なのか……?』
 と不安そうに問い掛けてくる町人達。
「うん、もう大丈夫だ……安心してくれ。怖かったよな」
 そうモカが、人々を安心させるように笑顔で話しかける。
 更にフーガが。
「ああ、みんなもう大丈夫……傷のあるのはいるか? 申し出てくれ」
 と呼びかけ、傷を負った人々を手分けして治療。
 治療しながら、あの武士がどうしてこんな状態になったのか……をヒアリングする。
 ただ……ここに居る全員から聞けたのは、元々はこんなような事をする人ではなかった……という程度で、彼が何処からあの刀を手に入れたのか、は解らない。
 昨日の夜までは特に変な所もなかったというから……あの刀を手に入れて即座にああなった、と考えるのが自然だろう。
 ……そうしているうちに時間も経過し……生死の境を微睡んでいた武士の男が。
『……う……ぅ……ん……?』
 ぼんやりと目を開く彼。
 左へ、右へと視線を揺らし……自分が倒れているのが理解出来て居ない様で。
「……武士さん、大丈夫ですか?」
「ええ……武士の子、気分はどうかしら?」
 フルールとアルチェロの言葉に彼は。
『……? ……な……んだ……ったん……だ?』
 まだ、やはり理解出来て居ない風な彼。
「そう……殆ど覚えていなさそうね……良く聞いて。あなたは刀に支配されてたのよ」
 とフルールが事実を説明。
 静かに説明を聞く彼は……段々と、目を伏し……自分のしてしまった罪を背負う。
 そんな彼の沈む表情にアルチェロは。
「……貴方も、よく頑張ったわ。頑張らなければ、私達の声も届かなかったでしょう?」
 と労りの言葉を掛け、更にフルールも。
「ええ……自分の意思ではなかったのは解る。でも……きちんと償わなければならないわ。だから……一緒に弔いましょう?」
 彼の背負う罪を理解し、共に弔う様に進言するフルール。
 それに……静かに頷き……彼が手掛けてしまった遺体を一つ一つ丁重に弔い行くのであった。

成否

成功

MVP

ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者

状態異常

なし

あとがき

ご参加頂きまして、ありがとうございました。
聖痕を残す遂行者……尻尾を掴むのは中々難しい様ですが、少しずつ近づいているのは間違いありません。
別なる事件も起きているようですし……ね。

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