シナリオ詳細
<0と1の裏側>不審な店に殴り込め!
オープニング
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――仔羊よ、偽の預言者よ。我らは真なる遂行者である。
――主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ。
天義に降りた新たな神託は、国内はもちろんのこと国外にまで余波を広げており、迅速なる対策が必要な状況だ。
遂行者を名乗る者達はこの神託に従い、歴史の修正を行うべく活動している。
各地へと影の一隊を差し向け、触媒となる聖遺物を設置、帳を下ろす。
――ルスト・シファー(冠位傲慢)の力を得て、『神の国』を築く為に。
それは、幻想や海洋でも確認されていたが、遂行者が次なる標的として見定めていたのは、練達であった。
再現性東京202X:希望ヶ浜市。
その一角で、『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)はイレギュラーズの来訪を待っていた。
「どうにも、この地は落ち着かないね」
オリヴィアはコンクリートジャングルとも言える街を見回し、そう告げる。
彼女にとっては異空間とさえ感じられる練達だが、そこもまた混沌の一部。
多くは混沌で元の世界と同じように生活したい、あるいは元の世界に戻ることを求めた旅人が多く集まり、過ごしている場所。
「だが、その場所にすら遂行者は自分達の主張を振りかざしているよ」
なんでも、練達は無遠慮に神の領域へと踏み込もうとしたのだとか。
遂行者にとって『未来』の邪魔になると判断され、彼らはこの地にも帳を下ろすことに決めたようだ。
他国と同じように触媒による『神の国』を作り出そうとしているが、他にもあやしい団体が練達内部へと入り込み、根を張ろうとしている。
「WCTHSっていうらしいね。胡散臭い団体だよ」
『健康と環境の持続可能性を科学するウェルネス・クラフト・テクノロジー・ハートフル・ソリューションズ株式会社』。その『希望ヶ浜支店』らしいが、練達の人々へとセミナーを開き、多くの会員を集めているのだとか。
健康食品販売、自己啓発セミナー、ストレッチ教室を行うこの団体は、言葉巧みにカルト教団の入信を誘うのだという。
「健康食品と銘打った薬剤による洗脳もするらしい。タチの悪い連中だよ」
このWCTHSに拘束された人々の解放こそが今回の依頼だ。
希望ヶ浜の街中にある雑居ビルの一角。
10階建ての建物の中層階にWCTHSショップの支店がある。
4階はショップ、5階はイベントスペース、6階は事務所らしい。ショップは一般客も利用可能だが、5階はイベント時のみで、それ以外は6階と合わせてスタッフ以外立ち入り禁止らしい。
ショップはバイトを思わせる少年少女が仕事をしており、事務所には店長ナゼール・ルドゥー以下、スタッフが詰めている。窓からは得体のしれない化け物が見えたという一般市民の証言も……。
職員らがどう動くかは読めない部分も大きいが、最優先は捕らえられた人々の解放だ。彼らは5階にいるとみられる。
「踏み込むなら一気に行かないと、逃げられる危険もあるよ」
例え、確保してもトカゲの尻尾切りをされる可能性も大きいが、それらの身柄を確保することで得られる情報もあるだろう。
ある程度、説明を終えたオリヴィアは依頼に臨むメンバーを一人一人見つめて。
「何が起こるか分からないから、注意するんだよ」
最後にそう釘を刺し、オリヴィアはメンバーを送り出すのである。
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問題の雑居ビルは繁華街から少し外れた場所にあった。
とはいえ、そのビルや周辺には他の企業も入居しており、人通りは少なくはない。
ビルへと入り、エレベーターで4階へと向かえば、そこには『WCTHSショップ』の文字が。
「いらっしゃいませ」
そこには5人の少年少女がスタッフとして応対してくれる。
彼らは元々アドラステイアに属しており、そこからナーワルの伝手でWCTHSに所属しているそうだが……。
フロアには様々な健康食品や、自己啓発の書籍、ストレッチの為の器具なども並んでいる。
定期的に5階でセミナーやストレッチ教室などが開かれるそうだが、今は行われておらず、この上は現状staff onlyとなっている。
踏み込むなら一気に行わねば怪しまれるが……。
イレギュラーズは下見をしながら、どう作戦を展開させるか改めて考えるのである。
- <0と1の裏側>不審な店に殴り込め!完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年07月07日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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練達、希望ヶ浜、再現性東京。
イレギュラーズ一行は目的地に向かう途中、今回の事態について語り合う。
「この街にも帳が、ね……」
『堕ちた死神』天之空・ミーナ(p3p005003)は街中を見回す。
一見すれば平穏な街だが、何かあちらにとって不都合なものがあるのか……。
「……ま、それはこの後調べましょうか」
まずは、今回の事態を解決することが先決とミーナも心得る。
攻略対象は、『WCTHS』という団体が運営するショップの支店とのこと。
「カルト教団が隠れ蓑にする胡散臭い企業……よくあるやつ。私たちの世界にもあった」
『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)はかつていた世界を思い返す。
「希望ヶ浜の住民は現実逃避気味なのは知ってたけど其処をつくとはね……さぞかし心に響いたのじゃないかな?」
『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)は混沌への召喚を受け入れられぬ者の心情を慮るも、多少の皮肉を込めて想いを語る。
「……挙句に監禁されてたら世話ないけど」
ただ、それは秘宝種としての一意見だが、同じ秘宝種でもこの事態を見過ごせぬメンバーが。
「再現性東京に店を構える私にとって、此度の件は他人事ではありません」
『ホストクラブ・シャーマナイト店長』鵜来巣 冥夜(p3p008218)も自らの店があるこの場へと踏み込んできた敵に少なからず怒りを覚えていて。
「他所のシマ荒らしたツケ取らせてやろうじゃねぇか」
「ここを叩いたところで氷山の一角だろうけど……。被害を増やさないためにも少しずつでも叩いていかないとだね」
決起を促す冥夜にオニキスが同意し、まずは今回の相手に専念する気概を見せる。
「……それじゃあ、お仕事と征こうか」
ラムダもそんな仲間達同調し、この依頼へと当たるのである。
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問題の雑居ビルへと辿り着いたメンバー達はまず、事前準備を始める。
見たところ、再現性東京によるあるビルの一つという印象だが。
「一般的なビルのテナントの方が偽装をしやすいのでしょうか……それ故に、防御に穴も生まれます」
『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の言葉に頷く『闇之雲』武器商人(p3p001107)、オニキスは早速透視と超視力でビル内部を見通す。
4階に店舗スタッフとして少年少女が配備、5階に囚われた市民がスタッフ監視のもと作業を行う。
6階は事務仕事をしている店長と残りのスタッフがおり、傍に3体の天使が有事に備えて控えている……。
合わせて、オニキスは階段やバックヤードの位置も把握し、増援を警戒すべき方向もチェックしていた。
そして、寛治。
「新田先輩の交渉も見れそうで楽しみっすねぇ……」
自らを慕う『持ち帰る狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)を連れ、寛治は上層フロアに入居する企業から非常階段を使って5階へと降りる許可を得るべく交渉する。
「何もしていただく必要はありません。ただほんの少し、我々が通り過ぎる間だけ、余所見をしてくださればいい」
ファンドマネージャとして各所で顔の広い寛治。
理詰めな部分は頭の良い彼に任せるウルズは今後の参考にするべくその手腕を見ていた。
「先輩の言う通りにしてほしいっす!」
ウルズが口車をぶん回し、交渉術を活かしながらも相手を言いくるめる。
そこで、寛治は白紙の小切手を使って念押しする。
「我々は訪問記録も証拠も残さない。階下で何かあっても『此処には何も残らない』のです」
彼の頼みであればと、7階に入る会計事務所の所長は快く了承してくれた。
同じタイミング、冥夜は下層階にあるディスカウントショップの従業員として入り、フロアの間取りと合わせて従業員や客からWCTHSの情報を得る。
スタッフは接しづらいが、一応自我のある人間とのこと。
冥夜はゴミ箱に捨てられてあった『自己啓発の書籍』に軽く目を通す。
如何に、自分達の教義が素晴らしいかを長々記した本で、さすがに見るに堪えた冥夜はどう説得すべきかと考えていたようだ。
また、休憩時間に冥夜はaPhoneを使って関連情報を集め、情報制度を高める。
「我々が『WCTHS』に突入している間、奴らが他のテナントへちょっかいを出さないとも限りません」
さらに、彼は呼び寄せた『黒雷帝王』鵜来巣 夕雅ら退魔師達に、WCTHSショップより上層フロアの監視を願う。
「牽制かよぉ。……しかたねぇなぁ」
悪態づきながらも、夕雅らは冥夜の要望に応えてくれるようだった。
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入念な準備を重ねる間に日は暮れかけ、突入は日暮れ近くになる。
一行は正面からの突入班と非常階段から攻める潜入班に分かれ、作戦に当たる。
監視カメラを避けるにも最適と、寛治は闇の帳で身を潜めて。
「準備出来ました」
pPhoneを使い、彼は突入班と連絡を取る。
なお、5Fの非常階段外等に待機しているのは、寛治、冥夜、ラムダと……。
「店へのカチコミは得意っすよー!」
活路さえ切り拓いてくれれば、必ず一般市民を全員回収して離脱して見せるっすと、ウルズが突入班となる4人に豪語していた。
応じる突入班は、武器商人、ミーナ、オニキス、そして、飛ばしたファミリアーで資格共有し、警戒する『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)だ。
不意打ちはミーナも視界を広く持ち、敵探知も欠かさない。
エレベーターで4階まで上がるまでは、突入班も問題なく進んで。
「たのもう」
4階ショップへと突入したオニキスが店内に呼び掛ける。
「ハローこんにちはカルト教団の皆々様! イレギュラーズの抜き打ち検査のお時間だぞー」
ルーキスの叫びを受け、店に詰めていた少年少女が警戒心むき出しで現れる。
見た目はエプロンをつけた店員仕様だが、簡易武装がアドラステイアで子供達がつけていたものそのままだ。
「やれ、何かと縁があるね、ティーチャー・ナーワルとは」
「何の用だ」
説明時、まさか練達でもその名を聞くとは思わなかったと武器商人は口にしたものだが、露骨に子供達が警戒心を高めたことに微笑を浮かべた。
潜入班からは気を引いてほしいと要望されている。
それが叶うなら、武器商人としてもしてやったりといったところだ。
「……天使隠してるでしょうキミ達、個人的な意見で申し訳ないけど嫌いなんだよねぇ」
「客じゃないなら、お帰り願おう」
ルーキスの更なる言葉に、子供達は刃を抜く。
やり取りの間、オニキスは他テナント、事務所に迷惑が掛からぬよう保護結界を展開する。
「という訳だから、まとめてしょっ引くね☆」
「「覚悟しろ……!」」
オッドアイをウインクして見せるルーキスは精々派手に暴れようとやる気十分。
対する子供達はいきり立ち、武器を振り上げてきた。
下のショップから聞こえてくる音。
pPhoneと合わせ、突入班がショップでの交戦を始めたことを潜入班も知る。
(セパード。5,6Fに敵が残っているよ)
武器商人からのハイテレパスによる情報もあり、セパードこと冥夜ら隠密班は突入をはかる。
6階事務所から、スタッフ数名がビル内階段を使って4階へ向かうのがわかったが、5Fの4名は見張りなのか動く様子がない。
また、店長ナゼールは仕事に追われているらしく、天使共々動く様子すらない。
「これ以上は状況の変化に期待は持てないでしょう」
寛治はそう語るできる限り監視カメラの死角から進むしかなさそうだ。
ラムダの物質透過等も駆使し、メンバーはできる限り気配を消して5Fへ突入。
ゆっくりとメンバーは囚われた市民の元へと進む。
「救助に来ました! 皆さん落ち着いて!」
呼びかける寛治はこの場の市民達の中で、顔見知りとおぼしき者へと特に訴えかける。
「……はっ、私は何を」
我に返る市民。他の人達はなおも作業を進めているが、さすがに見張りをしていたWCTHS職員に気づかれてしまう。
「「なんだ、てめぇら!?」」
職員にしては明らかにヤンキー風の男達が潜入班へと因縁を吹っかけてくる。
冥夜がオルド・クロニクルを展開する傍らで、破滅の魔眼を開く寛治もまた臨戦態勢に入っていて。
「さあ、仕事するっすよ!」
ここぞとウルズが前に飛び出し、WCTHS職員だけを捉えて手当たり次第に己の強さを示すべく手甲をつけた拳や蹴りを叩き込んでいくのである。
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5階では、ナイフを抜いたWCTHS職員がガンを飛ばしてくる。
「っけんな、ボケがぁ!」
とても接客している者とは思えぬ容姿に口調の職員がナイフを振り回してイレギュラーズを抑え込もうとする。
ただ、所詮は一般人の域を出ない小物ばかり。それらはあっさりとイレギュラーズに抑え込まれることとなる。
ウルズがフロア内でこれでもかと暴れ、冥夜が神気閃光で職員達を強く照らす。
強い力に気圧される職員らはそれでも苛立ちげに向かってくるが、ラムダは終始涼しい顔をして。
「……情報さえ得られれば、ボクはこの手の輩は多少痛めつけても良いと思うのだけどね?」
事もなげに、ラムダは己の影より伸ばす数多の鎖で2人を縛り付けて無力化すると、
残る敵を捕捉した寛治は自動拳銃から鉛を掃射し、残る2人を倒してしまった。
一息つき、冥夜はチェンジボイスを使って。
「大人しく保護されろ」
ガラの悪い職員だ。多少威圧するような口調の方がそれらしいと冥夜が言い聞かせようとすれば、市民達は無言で頷いてこちらに従う素振りを見せる。
「よーし、ゆっくり降りるっすよー」
ウルズは市民を言いくるめ、扇動しつつ非常階段を下りていく。
ラムダは店長らがこちらにやってこないのを確認し、市民の安全確保に努めていた。
同じとき、ショップではアドラステイアの滞在歴のある子供達がイレギュラーズを排除しようと攻めてきていて。
健康食品、書籍、ストレッチ器具と商品が並んでいるにもかかわらず、子供達は一切それらを気にすることなく、メンバーへと切りかかってきた。
「こっちだよ」
己の姿へと釘付けになるよう子供達に呼び掛ける武器商人へ、子供達が斬撃を浴びせかける。
「こんにちは初めまして。ちょっと遊んでよ」
そこへ、ルーキスが巻き起こした泥を一気に敵陣へと浴びせかけて。
「キミ達も懲りないね、まさかこんな国にまで出張とは」
子供達を逃がす気などさらさらないルーキスだ。
動きを止めて気を良くするルーキスの横から飛び出したミーナが片手剣で敵陣を薙ぎ、更なる攻撃を刻み込む。
市民の避難状況はpPhoneを通じて聞こえてくる。
とにかく敵の目を引こうと、オニキスは子供達に向け、弾体に魔術を込めて……弾頭を投射する。
着弾すると同時に、重力術式を展開し、子供達の足を止めるのだ。
イニシアチブをとることはできたが、敵もこちらに気づいて駆けつけてくる
「「んだ、てめーらぁ!?」」
因縁を吹っかけてくる職員4名。
突入班の戦いもさらに激しくなりそうだ。
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職員はどうやら単なるチンピラでしかない様子。
どちらかというと少年少女の方が戦い慣れしていて面倒な相手だが、その子供達もだいぶ疲弊していて。
「手加減できるうちに抵抗はやめて欲しいんだけど……聞いてくれないか」
やむを得ず、ミーナは1人、また1人と蹴り伏せる。
子供達の剣戟を受け止める武器商人も閃光を瞬かせ、残る子供3人を纏めて倒す。
「しっかり耳を澄ませて異界の声を聴くと良い」
新手の職員だけになったところで、ルーキスは深淵より発せられる呼び声を聞かせ、職員を苦しめる。
すでに他メンバーの攻撃も重なり、職員2体が崩れ落ちたところへ、ようやく駆けつける店長ナゼール。そして、不気味な影の天使達。
「全く、この忙しい中、余計な仕事を……」
ぶつくさ文句を言う店長の横から飛び出す天使らを、イレギュラーズは問答無用で叩く。
階段側へと位置していたオニキスが迎撃に当たり、砲身4基を展開して。
「――発射」
オニキスが発射した魔力砲に天使達がのまれる。
この間に市民避難が進めばと考えていた突入班だが、潜入班はすでにうまく事を運んでおり、3人がこの場へと駆けつける。
「遂行者が此処まで入り込んでいるとは、随分と根が深そうだ」
冥夜の紡ぐ黙示録を耳にし、寛治が岩石を操ろうとするナゼールを狙撃して牽制する。
ラムダも死角から呼び動作もなく襲い掛かり、三連撃を天使へと見舞っていった。
なお、不在のウルズは戦いに参加せず、市民と行動する。
足腰の悪い年配の市民を抱えて非常階段を下りるウルズは、まだ完全には催眠が解けぬ市民のケアと護衛に注力していたのだ。
また、上層階を中心に、冥夜の関係者夕雅ら退魔師がフロアを注視する。
彼らは一時、ナゼールの牽制も行い、頃合いを見てショップへと敵を誘導していた。
「く……」
つい先ほどまで……、いや、ある意味では今も仕事に追われているナゼール。
一時、退魔師から牽制を受け、天使と迎撃していたが、店が襲撃を受けていることにようやく気付いて降りてきた……のだが。
思った以上に遂行者としては無能だったということだろう。
だが、岩を出現させ、操るその力はかなりのもの。こうした裏方業務よりは前に出て力を発揮するタイプに見える。
武器商人は蒼き槍を一射し、天使を追い込むところへ、ルーキスが笑いかける。
「あっはは、天使は嫌いなんだー、ということで荒っぽくね!」
槍を振るって応戦してくる天使へとルーキスは宝石を核とした魔力の剣を一閃させ、天使の体を寸断してしまう。
傍ではラムダも仲間と合わせて天使の背後から詰め寄り、再度連撃を浴びせかけて最後の一振りで天使の活動を完全に止める。
残る天使の強襲をラムダが避けると、イレギュラーズはそいつへと攻撃を集中させて。
「お前達天使は……気兼ねしなくていいから楽だね!」
子供や職員の後とあって、ミーナは全力で攻める。
先程、紅で仕掛け、天使を恍惚とさせていたミーナは、相手が呆けた間に残像を生じながら一気にその体を切り裂いて霧散させた。
しかしながら、メンバー達には息つく暇もない。
戦略眼で戦況を把握していたはずのミーナだったが、頭上から落ちてくるナゼールの岩石に対処できず、パンドラを砕く羽目になってしまったのだ。
「折角、名を上げるチャンスを、よくも……」
どうやら、ナゼールは思うように功を立てられぬ所、練達へと飛ばされた様子。
ナーワルの息がかかった子供達が全員倒れるまで姿を現さなかったのも、自らの戦功としたかったのではないかと、メンバーは勘ぐってしまう。
(何れにせよ、相応の実力者)
相手の動きを注意深く見て狙撃する寛治が思っているように、やはり致命者となるだけの力量はある男だ。
油断なきよう、メンバーは攻撃を集中させて。
これ以上は好きにさせぬと、武器商人が呼び声で押さえつける中、冥夜も掌握魔術でナゼールの体を傷つけ、体制を崩そうとする。
だが、ナゼールもいまなお応戦を続ける2人の職員の前で維持を見せ、多数の岩を散弾として飛ばしてくる。
その威力は侮れないが、応えたルーキスが再度魔力剣で、立て直したミーナが残像を伴ってほぼ同時に襲い掛かり、新たな岩石を生み出させない。
しばらく、激しい戦いが繰り広げられるが、人数で勝るイレギュラーズに分があった。
敢えて身を晒して躍りかかるラムダが確殺の殺人剣でナゼールを切り裂けば、オニキスが再度砲身を展開して。
「マジカル☆アハトアハト・クアドラプルバースト―――発射!」
もろに掃射を浴びたナゼールは、全身を焦がして。
「くそ、終焉獣をナーワルに持っていかれなければ……」
そう漏らし、ショップの店長……遂行者ナゼールはゆっくりと崩れ落ちる。
そして、今なお応戦を続けていた職員らも及び腰になっていたが、冥夜が迫ってメンチを切る。
「お前ら、行き場がねぇなら足洗ってウチに来いや」
気が済むまで殴る冥夜に職員らもすぐ完全に戦意を失う。
ただ、その言葉に感銘した数名が彼についていくことにしたようだった。
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WCTHSショップ内を制圧し、イレギュラーズは事後処理へと当たる頃には日が暮れてしまっていた。
ミーナが透視、物質透過とバックヤードや事務所も含めてくまなくビル内の探索を行う。
ミーナは僅かに顔を顰めたのは、事務所の資料。
健康食品などと銘打った商品に効果など一切なく、それら全てに洗脳効果のある薬剤が使われているらしい。
ストレッチやセミナーは参加することで、やはり薬品の投与を受けつつ、カルト宗教への勧誘を行うようだ。
「綜結教会……?」
寛治はそれらの資料について調べるが、量が多いこともあって一旦は持ち帰ることに。
不明な点はいまだ多く、更なる調査が必要だ。
さて、ウルズが保護した市民は徐々に洗脳から解放されていたが、スタッフである子供達は自発的に協力しており、頑として語らろうとしない。
「……彼らは洗脳されているようなものだしね」
ラムダが彼らを入れる更生施設はあるのだろうか、あるいは、拘束して放り込むべきかと唸る。
その捕らえた子供達やスタッフを含め、武器商人が事情聴取に当たっていて。
「ふむ……」
さほど有用な情報は得られないが、子供達はやはり遂行者ナーワルの息がかかっており、彼女の指示で仕事しながら店に動きがないか見張っていたとのこと。
「やはり、末端の使い捨てだったのかね」
ナゼールは遂行者のはずだが、さほど位が高くないと見える。
できるなら本人から話を聞きたいが、目覚める様子がない。
ともあれ、救出した市民には問題がなさそうだと、ルーキスは確認して。
「長居は無用だ。撤退と行こうか」
仲間と示し合わせ、ルーキスはこの雑居ビルから撤収するのである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは随所で存在感を示した貴方へお送りします。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
今回は練達で遂行者と思われる敵の活動が確認されておりますので、対処を願います。
●概要
練達、再現性東京202X:希望ヶ浜市の雑居ビルの一角が舞台です。
『WCTHSショップ』に監禁された希望ヶ浜一般市民数名の解放が目的です。
相手は普通のショップ店員ではありません。油断なきよう対処に当たってくださいませ。
●状況
希望ヶ浜某所、10階建て雑居ビルの4~6階。その上下は別の一般企業などが入っております。
ビルは階段、エレベーター、非常階段で昇降可。
4階がショップ、5階がイベントなど行うフリースペース、6階が事務所となっています。5、6階は「staff only」となっています。
下記の敵は3フロアに分かれています。敵も移動する為、初期位置と遭遇場所が異なる場合があります。
また、囚われた市民は5階に捕らわれているとみられています。
●敵:『WCTHS』スタッフ+α
○店長:ナゼール・ルドゥー
30代。人間種男性、天義出身。白髪短髪で紳士然とした態度が印象的です。
最近、天義に出店してきた店舗の運営を任された男です。
その正体は、遂行者の一人。神の使徒の配下ではありますが、なかなかの実力者です。
従える終焉獣やスタッフと共に敵対する者を排除すべく、空中へと出現させた岩石の叩きつけ、岩の散弾を発してくるなどして攻撃してきます。
○スタッフ×13人
いずれも天義から派遣された者のようですが……。
・WCTHS職員×8人
ナゼールの部下達。いずれもガラの悪いチンピラです。
ナイフを所持、ガンを飛ばし、威圧して相手の動きを止めてきます。
・少年少女×5人
遂行者ナーワルの息がかかった10代前半の子供達。
どうやら、アドラステイアの生き残りの一部をナーワルが囲い込んだものと見られます。
剣の技量はなかなかのもので、一度抜けば相応の力量を発揮して襲ってきます。
○量産型天使×3体
全長2m超。
何者かによってつくられた、つぎはぎだらけの邪悪で歪な生物。
嫌悪感をもよおす見た目ですが、見ようによっては天使にも見えます。
手にする大きな刃を振るい、襲ってきます。
〇遂行者:ティーチャー・ナーワル
修道服を纏った旅人女性。目立つ容姿を隠すべく鋼鉄の鎧を纏うことも。
アドラステイアにて、下層の子供達にファルマコンの教えを説く一方で、潜水部隊を率いてスパイ活動を行わせていました。
この場にナーワルの姿はありませんが、彼女の息がこの組織にもかかっていることが窺えます。
●NPC:希望ヶ浜市民×8名
WCTHSによって拘束された人々。20代から、主婦、サラリーマンと様々です。
薬剤によって催眠をかけられているようです。
スタッフの指示を優先するようですので、保護に当たってはそちらの対処も同時に行う必要があるでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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