シナリオ詳細
<0と1の裏側>灰色のこころ
オープニング
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天義に信託降されり。
――仔羊よ、偽の預言者よ。我らは真なる遂行者である。
主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ。
其れは『現在の天義はまやかし』であり、正しき歴史に修復すべく『使徒』が訪れることを予告する内容であった。
事実、神の意志を遂行すると名乗る者たち――『遂行者』等は活動を始め、天義の各地に姿を現すようになった。
聖教会、そして騎士団はこれに対抗すべく、『神の使徒』を名乗る不敬の輩を断罪すべく、刃を抜いた。
――信仰正しき騎士達よ、『純粋なる黒衣』を纏え。此処に聖戦の意を示さん。
黒衣とは、神が為に行なう断罪の時に被る穢れ(返り血)より、敬虔なる者の身を守るための、何もにも染まらぬ色。
そしてイレギュラーズたちも騎士団に協力の意思を示して黒衣を纏い、天義の困難にともに立ち向かう。
●
「暫く前から天義以外でも活動が見られるようになった訳だけれど」
「幻想に、それから海洋でしょう?」
劉・雨泽(p3n000218)が話しだしたからとプルーに手を振ってから視線を向けたジルーシャ・グレイ(p3p002246)が「ホント迷惑よねぇ」と眉を寄せた。天義内だけでも困る行いを、敵は天義から枝葉を広げるように各地で行おうとしているらしい。
先日はありがとうと幻想に降りた『帳』の対処に当たってくれた面々にいつも通りの笑みを向けると、「まあ想像はついてるだろうけどね……」と雨泽が口を開こう……とした時だった。
「たいへんです……!」
珍しく慌てた様子で、ニル(p3p009185)がローレットへと飛び込んできた。
雨泽はニルに対しておっとりした子という印象を抱いているため、彼が慌てている姿に『もしかして』の気持ちを抱いた。
「落ち着くでござるよ、ニル殿。ささ、これを飲んで……それから状況説明を」
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)が差し出したコップを両手で受け取って――ニルは魔力を得られれば飲食をする必要はないのだが――言われた通り素直にこくりと一口水を口にする。
「ニル。降りたのを見たんだね?」
「……はい。練達に帳がおりました。それで、ナヴァン様が――」
コップがキュッと鳴いた。ニルの指先が白くなっている。
言葉が途切れた。けれどその続きは、この場に居る者たちが察するのは容易だ。
「消息が掴めないのね……」
「……はい」
つまり、『巻き込まれた』可能性が高い。
帳は『神の国』を定着させるために降りる。神の国に作った存在を高次レイヤーで現実世界にも定着させようとしているのだが――その際のイレギュラーに巻き込まれる形で現実世界の人が神の国に行ってしまう案件も起きているのだ。
そして、神の国は決して安全な場所とは言い切れない。
何せ遂行者と名乗る敵が作った場所。訪ってみなければどうなっているかなぞ解らない場所なのだ。
「どうか皆様、ナヴァン様を」
「大丈夫だよ、ニル。皆がきっと見つけてくれる。――ね。そうだよね?」
ニルの肩に触れて告げた雨泽が向ける視線に、ジルーシャと咲耶が頼りになる笑みで応じた。
――勿論、と。
- <0と1の裏側>灰色のこころ完了
- GM名壱花
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年07月06日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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大きな研究施設と思われる神の国内部へと到着したイレギュラーズたちは速やかに白壁だけが伸びていく廊下を駆け、探索を行った。
「おや、見てください大きな兎です。モフモフして可愛いですね」
「お待ちくだしゃんせ。……何やら物騒ではありんせん?」
白い廊下にぴょこりと黒い存在が現れれば、とても目立つ。愛らしい女性体の『アルミュール』ボディ・ダクレ(p3p008384)が無表情のまま愛でるような瞳を向ければ、『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)が油断なく瞳を細めた。
「あれは敵性存在よ……!」
調査を開始してすぐに強めの香りと竪琴の音色を奏でて自分たちの存在をアピールした『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)が鋭く注意を促した。残念ながら香りはすぐに空気清浄機にスゥと吸い込まれてしまったが、少し耳障りになるように奏でた竪琴の音は敵へと届いたらしい。
「なるほど、道理で此方を見て涎を垂らして居るわけですね」
ボディは静かに周囲にイレギュラーズ以外の人が居ないことを確認し、まだ距離のある大きな黒兎へと《AGⅡ》を当て、引き寄せた。
時折遭遇する黒兎は、一体でもかなり強い。が、8対1の状態でならば3回行動する間に仕留める事が叶った。出来るだけ一体一体相手にした方が良いとの結論に至り、ジルーシャは精霊の気配を感ぜられないこの場に寂しさを覚えながらも敵の気配に注意を払った。
時折遭遇するのは、黒兎だけではない。
「ああよかった。気付いたら知らないところにいて驚いていたんだ」
練達の研究者たちだ。ふとした瞬間に自分の研究室じゃないことに気がついたらしい彼等は書き途中の論文や研究中のフラスコを大事そうに抱え、『運良く』黒兎に会わなかった者だけがイレギュラーズたちに会った。……運が悪かった者等の血溜まりは、既に幾つか確認済みだ。
「良い子ですね、リーちゃん」
神秘を秘匿せねばならない練達であるため、『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)のリーちゃんは通常の猫として召喚されている。人助けセンサーの感知した方向を頼りに先行してもらっていたら「あ、猫だ」と研究者が姿を見せ、ピンと立った尻尾を旗印についてきてくれたのだ。
「凶暴な動物と強盗に入られてて緊急事態なんだ」
それらしい理由を述べた『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が転んで怪我をした研究者を背から降ろし、秘宝種も受け付けられない研究者も居るかもしれないことを懸念してロボットらしく振る舞う『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)が応急手当を施していく。
「ココナラ安全。フリック 罠設置済ミ」
「この部屋に隠れていて下され。危ないので絶対に部屋の外には出られませぬ様に」
透視して見つけた安全で、それでいてしっかりとしたロックの掛かる部屋を一時の避難場所にしようと提案した『夜砕き』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)が、研究者たちへ安全のために絶対に出ないようにと告げながらどら焼きを手渡していく。空腹は不安を助長させるが、甘いものがあれば少しはマシだろう。
「ナヴァン様……!」
「……っ、……?」
意識がない状態でこの部屋へと運び込まれたナヴァンの瞳が薄っすらと開き、彼に寄り添っていた『あたたかな声』ニル(p3p009185)の瞳から綺麗な雫が零れ落ちた。
ニル、と掠れた声がニルの名を呼んだ。
「はい、ナヴァン様」
「……何故泣いている?」
「っ、ナヴァン様が、ごはんをたべずにたおれたからです」
表向きの理由と、他の研究者にもした理由を告げ、そうして持参したアップルパイを押し付けた。
「ニルはおしごとをしてきます」
帰ったら、おいしいごはんを一緒にたべましょうね。
研究者たちとて、我が身は惜しい。命が無ければ研究は続けられないし、強盗に自分たちの研究を奪われるのも困る。イレギュラーズたちがその危機を取り払って安全を齎してくれると言うのだから、信じて待つと誓ってくれた。
罠やロックがあったって絶対の安全かどうかはわからないため、何かあった時用のファミリアーを部屋へと残し、イレギュラーズたちは研究施設内の奥へと向かっていった。
●
一際大きな扉の前へと辿り着いた。
今までの部屋よりも重圧そうな扉は中と外とを隔てる役割を充分に果たしており、それだけ重要な研究をしているのだろうかと思わせてくる扉だった。
開閉センサーの横に手をおいたエマとボディが仲間たちを見た。扉を挟んで左右にあるそれは同時に作動させねばならないようで、早く動くことに自信のないふたりがその役目を担う。仲間たちが浅く顎を引き、ふたりの手がセンサーへと掲げられると、シュッと重さを感じさせぬ音を響かせて扉が開いた。
「あれ。思ったより遅かったね?」
ユーフォニーと咲耶を先頭に素早く室内へと身を滑り込ませれば、ニルよりも幼い見た目の少年が「寄り道でもしていたの?」と首を傾げ、腰掛けている黒豹――ひと目でわかる――ワールドイーターの背を優しく撫でた。
「君ハ誰?」
フリークライは問うたが、彼の正体は一目瞭然だ。
(先ほどの兎に……子供と豹。彼らが遂行者ですか。あんな子供でも活動しているのですね)
ボディにとって遂行者という存在は、まだ話に聞く存在でしかなかった。神の使徒を名乗るなんてどんな傲慢な存在かと思っていれば、眼前に居るのはただの幼い子供のように見えた。
「遂行者さん、初めまして。ユーフォニーです。お名前を聞いても……?」
「こんにちは! 初めまして、異端者のお姉さん。僕はハーミル。神の使徒だよ!」
先に敵性存在が来たということをジルーシャが知らしめているから、ハーミルも元より敵として接してくる。笑顔も声も明るいが、油断なく大きな鎌を握っていた。
「この子はコーラス。『先生』が作ってくれた僕の家族だよ」
「ハーミル様……先生の、信者?」
もしかしてとニルが口を開けば、ハーミルはパッと笑顔を浮かべた。
「わ。先生に会ったことがある人?」
「はい、お会いしました。……氷聖様に言われて練達に来たのですか?」
「ううん。僕にしたいことがあって、先生にお願いしたんだよ。先生は優しいから、大抵のことは『いいよ、好きにしなさい』って言ってくれるんだ。ね、コーラス」
ハーミルが背を撫でると、グルルルと気持ちよさそうにワールドイーター――コーラスが喉を鳴らす。
「お主も氷聖の手の者でござるか。あの男、随分と仲間に慕われている様でござるな。良ければ彼について行く理由を教えて貰っても?」
「理由……? 先生は皆を救ってくれる存在だよ。それ以上の理由ってある? 先生を心から信じている人は『絶対に』先生が救ってくれるんだ」
きっと少年は、確かに救われたのだろう。『先生』と言葉を紡ぐ声がとても柔らかくて、信者たちにとって氷聖の存在は神に等しい存在なのかもしれないと咲耶は思った。
「ここでは何の研究をしているんだ? あの機械は何だ……?」
イズマの視線がハーミルから少しずれ、彼の後方へと向けられた。
そこには大きな試験管のようなものが嵌った機械があり、中には胎児のようなものが浮かんでいる。あれが研究だとしたら、随分と悪趣味だ。
「うーん、お兄さんたち悪い人でしょ? 教えてあげる義理はないかなー」
「見たところ胎児と宝石のようだけど、人体錬成の研究でもしてるのか?」
「うーん……」
「……秘宝種ナノカモ」
「ふふ!」
フリークライを見て、グルルとコーラスが喉を鳴らした。どうしたのとハーミルがフリークライを見て、「そう」とコーラスに声を掛けた。あれはご飯だね、と。
「あれが核か?」
イズマの問いに、コーラスを撫でながら素直に「そうだよ」と返す。
「あれは生きているのですか?」
ボディの問いにも、「そうだよ」と返る。
「生命を核に……悪趣味でござるな」
核の在処は知れた。もう問答は必要ないだろうと咲耶は絡繰り手甲を操った。大人しく鼻をひくつかせていた黒兎たちが即座にハーミルの前へと出て、その身で通さじと阻み、そして侵入者を排除せんと動き出す。
「ハーミルさんの望みは何ですか? これからの未来に取り込んで、共に歩むことは出来ないものですか?」
ユーフォニーはいつだって、解り合える道を探している。相手に意思と主張がある以上、どちらかが悪でどちらかが善であることは絶対的にありえない。互いの正義のためにぶつかるからこそ、争いは起きるのだから。
ユーフォニーの言葉とともに(実はずっと一緒に居た)謎の成人男性『今井さん』が銃を撃った。狙いは黒兎だ。試験管をともに狙うのは、角度的に難しい。
「僕の望みは先生が叶えてくれるよ。人の秘密を暴こうとするだけで先に教えてくれないお姉さんには教えないけど」
コーラスの背からぴょんっと降りたハーミルが大鎌を軽く振るい、今井さんが放った名刺を切り捨てる。
「コーラス、ご飯の時間にしようか。ご飯は……『居る』もんね?」
「アラ。その子のご飯は特殊なのかしら?」
自身へ防御の術を施したジルーシャが前へと出る。
「うん。君と君――秘宝種だよね? コーラスが教えてくれたよ」
ハーミルの指先がニルとフリークライへと向けられる。よしが出るのを待っていたコーラスは、その途端黒兎を飛び越え、ニルへと襲いかかった。
「あッ――」
自身へと術を施したばかりのジルーシャも、他の面々も反応が間に合わない。
ダンッと床に叩きつけられたニルのコアにコーラスの吐息が掛かる。
ぞわりと背筋が泡立つような感覚と、純粋な恐怖がニルを支配した。
「ニル、は」
コアが食べられるということは、もう『おいしい』も『たのしい』もない。悲しくて、いやなことだ。
「食べもの、じゃ、ない! です!」
ギュッと握りしめた杖を思いっきり振った。
体が軽くなる。
跳躍したコーラスはハーミルの元へと戻っていた。
「研究 何故シタ?」
「効率的にコーラスのご飯が確保出来ないかなと思って」
フリークライがハーミルの意識を向けさせる。けれどコーラスはニルを見ている。ご飯にしやすそうなのはフリークライではなくニルで――
(……?)
ふと、ニルは気がついた。
コーラスは、ニル自身すら見ていなかった。
じっと見つめるのは、ニルの持つ杖。
正確には、そこに嵌っている美しいアメトリン。
――むき出しのコアの方が、食べやすいに決まっている。
(ニルがブンッてしたから……?)
杖に嵌ったアメトリンが秘宝種のコアだと知らないニルには武器を壊そう狙われているように思え、ぎゅっと大切な杖を抱きしめた。
「……でもね。人にコアを埋めたって、それ以上にはならないんだ」
ハーミルの言葉は続いていた。
人間が秘宝種化することはない。最近――R.O.O.を経て電子生命体をコアに定着させた秘宝種が生まれるようになったが、人間は電子生命体ではないからそうはできない。
「養殖出来たら良かったのになぁ」
ぽつりと小さくハーミルは呟いた。人が家畜を喰らうように、コーラスには秘宝種のコアが必要だ。
核の在処を知ったからか、イレギュラーズたちは試験管を巻き込んだ攻撃を放つ――が、その全てが通らない。
「わ、びっくりした。異端者って赤ちゃんでも殺せるんだね? さっすがー」
「……硬い? いえ、プロテクトですか」
仲間ごと巻き込んで《AGⅡ》を放ったボディの周囲には気を引くことが叶った黒兎たちが数体集まっている。高レベルイレギュラーズ一人分の強さを有している黒兎を複数引き寄せ、尚且つ全員が単体攻撃での各個撃破を狙っていないとくれば、直に地面に倒れ込むのはボディだろう。コーラスとハーミルに掛からなかったことが幸いし、状況確認が何とか出来ている。
「装置とかあっても全部壊しちゃえば勝ちですきっと!」
室内という限られたスペースでは、識別のついていない範囲攻撃で仲間を巻き込まないのは無理に等しい。特に前衛たる黒兎を狙っているのだ、ユーフォニーから《彩波揺籃の万華鏡》の選択は失われ、出来る限り貫けるようにと井上さんに頑張ってもらう他ない。
「壊せれば、だけれどね」
「アタシと同じみたいね」
「おね……お兄さんは頭がいいね」
BSは通ってしまうが、物無と神無が扱えるジルーシャだ。イレギュラーズが行えることは当然敵も行える。それにここは『神の国である』。遂行者たちにとって都合の良い世界であり、遂行者の能力も、彼等の下にあるものも、今までの神の国同様に性能が上がっている。
「一体でも大変でごぜーましたが……」
エマがくっと息を呑む。
コーラスとハーミルへ攻撃を通すどころか、黒兎を減らすだけでも難しい。
(ハーミル様は……敵対する意志はあまりないようだが)
けれども今後の障害となる可能性を考えれば少しでも打撃を与えておきたいところだが――難しい。
(ハーミル殿は前へ出ぬのか)
ハーミルはコーラスが意識を向けているニルとフリークライへと意識を向けていた。今日のこの場で、ハーミルが動かねばならない事態にはならないと踏んでいるのだろう。――彼の地雷を踏まなければ、別だろうが。
兎たちと周辺の機械を巻き込みながら鉛の集団を奏でる咲耶の一撃が、黒兎の一体へと止めをさした。そのついでのように、機械を巻き込む攻撃をするイレギュラーズたちの行動により、ハーミルの後方でボンッと機械が音を立てた。周辺の機械が壊れたのだろう。
「あーあ」
振り返りもせず、ハーミルが呆れたような声を上げる。
「お兄さんたちって……まあいっか。コーラス、帰ろ。僕やる気なくなっちゃった」
杖の宝石を噛み砕かんとニルへと口を開けて迫っていたコーラスは、その一言で軽く床を蹴ってハーミルの元へと戻った。
「お兄さんもお姉さんも、もう帰ったほうがいいよ。もうそれ、僕でも手を出せないから」
ハーミルは善意で、素直に教えてくれる。これまでの会話でもひとつも嘘は伝えていなかった。ただ『装置で解除しないとプロテクトは外せない』と教えなかっただけで――勿論、彼等の神の敵であるイレギュラーズたちへ教えてあげる義理もなく、イレギュラーズたちが破壊すれば大丈夫などと言った安易な考えに走らなければ済んだ話であった。壊れたものは、戻らない。防護機能はエネルギーが尽きるまで核を守り続けるのみだ。
それじゃあまたねと笑ったハーミルを背に載せたコーラスが地と壁を蹴り、イレギュラーズたちを飛び越えていく。
「……このコアは君の友達?」
ニルの頭上を通り過ぎる時、ハーミルの指先がそっと杖の宝石を撫ぜた。
「今度会ったら教えてね」
「っ、ニル、は」
ニルが振り返る。イレギュラーズ等が入ってきた扉を抜けて廊下を駆け去ったハーミルの姿は……もう、見えなかった。
コーラスを抑える必要が無くなったフリークライやジルーシャが黒兎への対処へと加わり、ハーミルの言葉の正しさをイズマとエマが黒兎を含めた範囲攻撃で確認した。核の胎児が浮かぶ試験管には傷ひとつつかない。
「アタシたちも撤退しましょう……!」
「殿は私が」
ジルーシャの声にボディが応じる。
これ以上はもう、此処に居ても仕方がない。
撤退できるだけの体力と精神力を残し、巻き込まれた人々を回収し――見逃している人も探し出し、入ってきた場所から出なくてはいけないのだ。この場に居続けては、イレギュラーズたちも研究者たちも定着に巻き込まれる。悔しいが、気持ちを切り替える必要がある。
黒兎等を最後まで倒し切るのを諦めると素早く部屋を抜け出して扉をロックし、救える命を救うべく、イレギュラーズたちは廊下を駆けたのだった。
成否
失敗
MVP
なし
状態異常
あとがき
理由は明白かと思いますので特に記しはしません。
保護できた人たちとともに脱出しました。
お疲れ様でした、イレギュラーズ。
GMコメント
ごきげんよう、壱花です。
練達にも帳が降りました。神の国へと向かいましょう。
ここにあるのは全てPL情報です。
●成功条件
核の破壊
遂行者を撤退させる
●シナリオについて
練達は様々な観測をしてきました。それは遂行者たちにとって『無遠慮に神の領域に踏み込む』行為です。『神様』に手が届いたわけではないが、『未来』の邪魔となりえる存在と認識されました。
テセラ・ニバスの帳(リンバス・シティ)の内部に存在していた『アリスティーデ大聖堂』より『神の国』へと向かうと、どこかの研究所と思われる建物内に居ます。研究所内を探索し、神の国の核とナヴァンを探しましょう。
遂行者ハーミルはある程度の時間経過と満足度で撤退しますが、その際に核が破壊出来る状態であるか、それまでに皆さんが全滅していないか、が成功か否かの別れ目となるでしょう。
●フィールド:神の国・練達
どこかの研究所と思われる建物内。侵入者対策なのか白い壁と分かりづらい構造をしており、同じ部屋に何度も来ているような気持ちになります。
この研究所では何かの研究をしているようです。レガシーゼロさんは『なんか嫌だな』と漠然とした恐怖を覚えるかも知れません。おばけは居ないのでジルーシャさんの心の平穏は守られています。
行くのが困難という意味での最深部の研究室に遂行者が居ます。道中の廊下は3人並んで歩けるけれど、武器を振るうなら1人……もしくはリーチを考えねば壁にぶつかるくらいの普通の廊下幅。一般的な部屋も5人も入れば狭いと感じるくらいでしょうが、最深部の研究室はかなり広く20m四方はありそうです。
●エネミー
・『遂行者』ハーミル・ロット
遂行者『氷聖』を先生と慕う信者のひとりです。見た目はニルさんよりも少し幼いくらいの少年で、身長よりも大きな鎌を持ち、『コーラス』の背に乗っています。
神の国に来た人を見ると仲間なのかなと友好的に接します。が、『黒衣』を見ると敵だと判断します。
無邪気な少年なので、核が欲しいと言えば「いいよ」と言います。
「ただし、君(ニル)のコアと交換ね。コーラスのご飯にしたいんだ!」
その他攻撃方法等は不明。遂行者であることから魔種相応の実力があると見て良いでしょう。
・『ワールドイーター』コーラス
レガシーゼロのコアを好んで食べる豹型ワールドイーター。そのため、コアを隠していてもレガシーゼロであることに気付けます。
戦わねばならないと判断するとハーミルを背から降ろして前に立ちます。1体でかなり強い終焉獣で、滅びのアークから作り出された塊です。
・『ワールドイーター』黒兎 10体
大型犬くらいの大きさの兎型ワールドイーター。ご飯は人肉。
半数は施設内をウロウロしており、人を見つけると噛み殺します。半数はハーミルの側に居ます。コーラスほど強くはありませんが、高レベルイレギュラーズ一人分程の強さを有します。
攻撃のために噛みつくのではなく、喰らうために、咀嚼するために噛みつきます。または命を奪ってから喰らうために。
●核
ハーミルの後方にある巨大な試験管……のような機械の中にあります。強力なプロテクトが掛かっており、簡単には機械を壊せません。一応制御装置のようなものもついていますが――。
それは胎児の姿をしており、身体には何かの模様、そして額にコアがあります。コアを破壊することで死に至り『核』は破壊されます。
●ナヴァン
どこかで倒れています。意識も外傷もありません。……空腹です。
ニルさんは練達で彼の様子を定期的に見に行っており、今回の消息不明に気が付きました。
皆さんの到着が早ければ倒れていますが、遅ければ這って「研究の続きを……」と思っています。寝食を忘れて研究に没頭するタイプなので、まだ異変に気付いていないと思います。状況を理解すると早く帰って研究の続きをしたがります。
●巻き込まれた人
ナヴァンのように巻き込まれてしまった研究者と思しき人々が数名いるようです。練達は『神秘的事象を受け入れない』土壌です。イレギュラーズが神秘の力を振るう姿てしまうとあなた方も『受け入れられない神秘』となります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●EXプレイング
開放してあります。文字数が欲しい時に活用ください。
関係者は、練建で活動していて『巻き込まれた』状態であれば可能です。
それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。
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