シナリオ詳細
再現性東京202X:井さんの誕生日(二日目)
オープニング
●井さんの誕生日(二日目)
「なんかいいことないかなぁ~~~~!」
と、今日もローレットの片隅で管をまいているのが、最近『井』みたいな形から『アライグマの獣種』みたいな姿になぜか変身できるようになった洗井落雲……じゃないや、井(p3n000292)である。
井さんは、ちょうど六月七日に誕生日を迎えたばかりである。年齢は不詳。永遠の24歳である。なんで24歳かというと、紳士たる振る舞いをするためには子供ではならず、そしてそれなりにお金も必要だよね、という微妙なこだわりの妥協点がこの年齢だったからだ。
さておき。
「昨日は皆にバニーさんで祝福してもらったからなぁ。それはうれしかったっ!
でもこう、もう一日くらいなんか……欲を言えば……もう一日……」
今日も欲望駄々漏れの井さんである。まぁ、言ってることは最低だが、この人、悪いひとではないが変な人だ、ということは、ローレットの皆さんも理解しているかもしれない。その辺が、この奇妙な生き物が、ローレットで情報屋ヅラをしているられる所以な気もするが。
「うーん……そういえば、ローレットへの依頼もたまっていましたね。
今日は素直に、真面目にお仕事しましょうか」
はぁ、と嘆息し、机に摘まれた依頼書をチェックする。ローレットへの依頼は多いが、情報の裏をとるのは必須であり、それこそが情報屋の仕事だ。例えば、ローレットを罠にはめる、あるいは報酬を踏み倒そうとしている……なんて依頼者もいるかもしれず、そういうものは、(逆にその意図を利用してやる、といった作戦でもななければ)こうして情報屋の精査の上、弾かれるわけなのだ。井も情報屋なので、そういった仕事をちゃんとしているのである! 決して、イレギュラーズたちにエッチな姿をさせるのが仕事なわけではないよ、ほんとだよ。
「やはり最近は覇竜領域や、神の国に関するお仕事が多いですねぇ。しっかり働いてる皆さんも貴いものです。心の栄養のために、今度依頼映像流しながら仕事しますかね……」
ぺらぺらと依頼書をめくりながら、そうつぶやく。映像が保存される容易になって、ながら見ができながら仕事ができるのが大変ありがたい。技術の進歩ありがとう。と。
「おや、夜妖退治のお仕事だ」
と、井が声を上げた。そこには、再現性東京での仕事を依頼するものだった。希望ヶ浜学園の調査チームからもたらされたその依頼は、シンプルな夜妖退治のはずである。
「ふむふむ。対象の夜妖は、人間にとりつくタイプの夜妖である」
ぺらり、とページをめくる。
「対象の夜妖は、『裸エプロンギャルメイドにめちゃくちゃ癒されてぇなぁ……』という思いを抱いて死んだ悪霊、という設定の夜妖である。
この夜妖を退治するるためには、人間に憑依させたうえで、裸エプロンギャルメイドにめちゃくちゃ癒された後、磔にされて裸エプロンギャルメイドにパイ投げされなければならない……!?」
井が目を丸くした。
「すごくダメな奴だなぁ……」
井さんに言われたらおしまいである。だが、井さんは頷いた。
「この依頼……僕が生贄となり、憑依されれば、皆さんの力で解決できる……!」
ぐ、と手を握り。
「僕が! みなさんに! 裸エプロンギャルメイドに! めちゃくちゃ癒されて! その後磔になってパイ投げされればいいんですね! よし! 全部ご褒美だ!」
そう、叫んだ。
井さんはそういう人です。
●というわけで
君たちは再現性東京にある、和風温泉風撮影スタジオにお邪魔することになりました。こんな危険なショーを、世間様に見せるわけにはいかないからね!
さて、そこにはあなたをはじめ、多くのイレギュラーズたちの姿がありました。特に以下三名、
フラーゴラ・トラモント (p3p008825)
ココロ=Bliss=Solitude (p3p000323)
ルシア・アイリス・アップルトン (p3p009869)
この三名はリクエスト者なので絶対に逃げられないものとする!
「事情はお分かりですね?」
と、井が言うので、フラーゴラは心底嫌そうな顔をした。
「帰っていい……?」
「駄目ですー! ハイルール違反ですー!」
おそらく、作中で最もハイルール違反を脅し文句に使った男、井。彼がハイルール違反というときは、大体「なんてことだ、もう助からないぞ」の意である。
「えっと……裸エプロンギャルメイドになって、井さんをすごくもてなしたあと、磔にしてパイ投げをするのよね……?」
ココロちゃんが依頼書を読み上げて、
「前世でどんな業を背負ったら、そういう性癖を植え付けられるの?」
「甘いですね。今にこの性癖がスタンダードになりますよ。見ててください」
強気で井がうなづいた。これがスタンダードになる未来はたぶん来ないと思う。
「でも、井さんにしては、有情でして」
ルシアが言う。
「一応、流石に裸は……という人のために、水着を着ていてもいいということになっているのですね」
「ええ、昨今はコンプライアンスが厳しいので」
「……コンプライアンスが厳しいなら、こんな依頼を持ってきちゃいけないのでは……?」
フラーゴラが嫌そうな顔をしたが、井は無視した。
「なんにしても、夜妖を倒すためです! あと、昨日僕の誕生日だったので、なんやかんや甘やかして祝ってください」
『ええ……』
みんないやそうな顔をした。欲望駄々漏れだったが、こうなってしまったら仕方ない。
やるしかないのだ!
さあ、ローレット・イレギュラーズよ!
今すぐ裸エプロンギャルメイドに扮し、井を甘やかした後、あとで磔にしてパイ投げをしてうっ憤を晴らしたまえ!
- 再現性東京202X:井さんの誕生日(二日目)完了
- GM名洗井落雲
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2023年06月26日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
(サポートPC2人)参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●今回のシナリオは
メインの皆様八名様、
『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)様、
『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)様、
『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)様、
『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)様、
『春色の砲撃』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)様、
『開幕を告げる星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)様、
『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)様、
『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)様、
そしてサポートの二名様、
『あたたかな声』ニル(p3p009185)様、
『ひだまり猫』もこねこ みーお(p3p009481)様、
以上の裸エプロンギャルメイドの皆様によってお送りいたします――。
●ほんぺん
「なんでわたし此処にいるのかしら」
遠い目をしたセレナが言う。
「なんで! わたし! 此処に! いるの! かしら!?」
じろり、とルシアに視線を送るが、当のルシアといえばどこ吹く風である。
「まったくこころあたりがないのでして!!!」
ぴゅーぷー、と適当な口笛を吹きつつ、推薦の結果帰ってきた感じのRCを勘定する。うむ、よし。
「どうしてなのかはルシアにはわからないのですけれども、それはそれとしてセレナさんの裸エプロンメイド、とっても似合っているのですよ!」
にかー、と満面の笑顔でルシアが言う。そう、前述したとおり、皆さんは裸エプロンギャルメイドです。ギャルの定義はよくわからないので、とりあえず裸エプロンメイドなのは確かです。もちろん、ここはリクエスト主の温情の結果、水着を着ていてもOKということにします。いろんな人に参加してほしいからね。男女問わず。
「あんまりうれしくないのよ!」
顔を真っ赤にして、両手で覆った。一応、温情を受けてワンピースタイプの水着を着ているが、それはそれで恥ずかしい。というか、水着エプロンってそれはそれで癖っぽくないですか。僕はビキニも好きなのですが、ワンピースタイプの水着も好きなのです……まぁ、水着なら何でもいけるといっても過言ではないのですが。でも、ワンピースタイプの水着、結構体のラインもしっかり出ていいではないですか。古くは、一世代前のスクール水着もワンピースタイプであったといいます。つまり、ワンピースタイプの水着だからこそへっちを回避できるというのは、まだまだ甘いのではないでしょうか。そこに加えて、エプロンという組み合わせは実に非日常的。ワンダー。そこから生み出されるのは、「この子日常的にワンピースタイプの水着来てるのかな?」というありえないシチュエーションへの妄想。わかりますか? セレナさんはかわいいのです。
「きっしょい! かえらせて!!!!」
ぎゃーん、と虚空を指さして大泣きするセレナ。一方、井は困ったような顔をした。
「あの……僕はここなのですが」
きしょいといわれることには慣れているらしい。井は井の形状でぐるりと回転すると、
「というか皆さん、どこを見ているのですか。僕はここです。あと、洗井落雲って誰ですか? 僕は井です。なんかみんな、僕を通して洗井落雲という存在と対話をしようとしていませんか?」
「え、そこから?」
華蓮ちゃんが目を丸くした。
「そこは……納得のずくでいてほしいのだわ。
私たちにとって、合法的に洗井さんを殴る手段って、これくらいしかないのに。
そもそも、井さんの誕生日で誤魔化してるけど、これってただの洗井落雲の誕生日なのよね?」
「僕には何のことやら」
井が回転した。
「わかりませんが――気持ちはわかります。時々、自分は大きな存在に支配されているのではないか、という妄想に近い確信。
僕は紳士ですが、紳士たれ、と僕に語り掛けるのは、そう、創造主とでも言うべき存在なのかもしれません。
それを皆さんが洗井落雲と呼称するのであれば、僕もまた、僕の創造主を洗井落雲と呼称しましょう――」
「壮大にけむに巻こうとしている」
ココロちゃんが、井の意図に気付いて、うう、と唸った。
「なんにしても、このかっこうで」
と、ココロちゃんが自分の体に視線を落とした。すらっとした体。裸エプロン。水着を着てこなかったのは、きっと自分の体で水着を着てしまっては、依頼主(というか、夜妖だが)を満足させることができないだろうという、ローレットのプロフェッショナルとしての考えからだ。ま、水着を着ていても僕はサティスファクションなんですけどね。
「井さんと夜妖を満足させる――それはやらなきゃいけないこと。仕事ですから。し・ご・と、だから。
わたしは清純派なのですけれど。それでも、し・ご・と、だから、やるんです。
……こんなかっこう、あの人は見せられない……」
「いえーい、あの人見てる~? これからココロちゃんにASMRしてもらいまーす」
井がぐるぐると回った。
「ころす!!!!」
がるる、とココロちゃんが唸る。さておき。
「えーと、この怪しい温泉宿で」
ノアが言った。ちなみに描写が遅れたが、ここは再現性東京の温泉宿である。厳密には、そう言うシチュエーションの映像がとれる和風撮影スタジオである。
「井さんと洗井さんを満足させる。頭が痛くなりそうですが、確かに仕事です」
そういうノアは、既にこう https://rev1.reversion.jp/illust/illust/79336 いうかっこうをしている。その上からエプロン着てくれれば完璧だし、「ごめんねー、あらいっち! きょうは弟と妹にご飯作ってあげなきゃなの~! え? 一緒に買い出ししてくれるの? マジ助かる~!」って言ってくれれば結婚まで考えます。
「これはアトさん」
フラーゴラがぶつぶつといった。
「これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これはアトさん。これは」
じぃ、と井をにらみつけるように見ながら、ぶつぶつとつぶやく裸エプロンフラーゴラ。
「大丈夫か? リクエスト主が一番壊れているが」
モカが言う。ちなみに、モカは金髪のかつらをつけた、アメリカンギャル裸エプロンメイドである。助かる~~~。
「あれじゃろ、実際裸エプロンになって井の目の前に来たら、走馬灯が見えちゃったんじゃろ」
ニャンタルが、にゅふふ、と苦笑した。
「まぁ、世の中の男女には裸というのはちときついのじゃろうな。我、幼いころは野原を駆けまわったもんじゃから平気じゃが。お尻を出した我がナンバーワン。再現性東京の民話にもあったじゃろ。腹掛けだけ付けて熊を鉞でぼこぼこにした露出狂幼児の話」
「金太郎の話をそう解釈する人はじめて見た」
流石のモカも苦笑する。
「その理屈で行けば我々は金太郎であるがゆえに。井など相撲でばちこりしてしまえばよいのじゃ」
「なんか裸エプロンのことを金太郎ファッションっていうと途端に悲しみが増しますね」
井が逆回転した。
「それはそれとして相撲はばっちこいです」
「アトさんと相撲……!?」
夢見る少女のような瞳でフラーゴラが壊れた。
「もう、収拾がつかないから、早く始めてしまうのだわ」
華蓮が言った。
「あとは流れで井さんを労って終わりにしましょ。
じゃあ、皆、真面目な会話はここでおしまい。お疲れ様なのだわ」
疲れた顔で華蓮がそういうので、皆は疲れた顔で「お疲れ様でした」と言った。
●前半
「洗井さん、お誕生日おめでとうございます!」
そう、輝かんばかりの笑顔でココロちゃんがそういった。もうみんな当然のように井と夜妖のことを洗井落雲と呼んでいるが、たぶん事実なので今後は洗井落雲で統一します。
そんなわけで、ココロちゃんは洗井落雲(健全度を増すためにアライグマの形をしている)を後ろから抱きしめ……後ろから抱きしめ!? いいの!? マジでプレイングにそう書いてある!? じゃあ、後ろから抱きしめてもらいます。それから、肩に顎をのせて、ぐりぐり、ってしてくれました。それから上半身と背中をぴったりくっつけて……くっつけて!? いいの!? マジでプレイングにそう書いてある!!
「何か悩み事抱えてませんか? 上司は性格悪くて困ってませんか? 大丈夫ですよ、洗井さんならぜんぶ大丈夫……」
「ありがとうございます……みんないいひとです……みんないいひとです……」
なんか洗井落雲がそういった。ここからプレイングに書かれていないことをやらせるけど、ココロちゃんがみみもとで、ふー、と優しく息を吹きかけてくれた。
「じゃあ、今日はずーっと、ぴたってしてましょうね。二人で」
これはプレイングで言ってないけど、言ってほしいので言ったことにします。
「じゃ、じゃあ、つぎはあーしが膝枕してあげるのだわ!」
と、次なる選手は華蓮ちゃんである。洗井落雲を膝枕してあげるのだ!
「これはマジ恥ずかしいのだわ……あーしも覚悟決めるから、早くお膝に頭乗せろし……なのだわ……!」
もしかしたら、この経験も将来レオン相手に通じるかもしれない。そう思っているがたぶん通じないと思う。なんにしても、洗井落雲を膝枕して、見下ろす形で視線を合わせる。僕はこの状態で、髪の毛がこちらにさわぁ、って流れ落ちてる感じのイラストが好きです。結婚してください。
「マジ良い子良い子……ほら、大きく吸って……吐いて……吸って……吐いて……ちゃんと体の力抜けし……なのだわ」
そういって、頭をなでてくれるのでたぶん洗井落雲はすぐ華蓮ちゃんのことを好きになると思います。
「ほら、撫でてあげるし……よしよし……。頭も良いし……お腹や肩を撫でるのも落ち着くし……撫でて欲しい所を言うのだわよ……」
ちなみにここまではサンプルなので、続きはPPPダウンロード販売サイトでこちら https://rev1.reversion.jp/voice/voice/1647 の音声を購入して楽しんでください。
さて、人が変わればシチュも変わる。ここは台所。キッチンでもよい。いや、アメリカンなのでキッチンにしよう。モカは裸エプロンのまま、キッチンに立っている。背中で魅せる運命蒐集RPG。
「もうちょっとで出来上がるからね、ダーリン♡」
ちらり、とこちらを見てモカはぺろりと舌を出した。じゃあ僕はリビングとかお茶の間で待ってます。そうしてすぐに、モカは様々な料理を作って、テーブルとかちゃぶ台の上に並べた。僕は唐揚げが好きです。
「もう、じゃあ、食べさせてあげる♡」
そういって、フォークでから揚げを一刺し、あーん、と洗井落雲の口元に運ぶ。かりかりの衣と、肉汁たっぷりの鳥の味。そこに愛情というスパイス。最高だった。結婚してください。
「ニルも、あーん、ってしてあげたいです」
と、ニルもお料理で参戦である。ニルももちろん裸エプロンで……裸エプロンで!? いいの!? よし!
テンションが上がった洗井落雲に、ニルがきょとんとしている。ニルは裸エプロンがよくわからない。だから羞恥心的なものはないが、それはそれとして、コアを観られてしまうと、ちょっとそわそわする……持って帰っていい?
だめです、と天の声が言ったのでダメだった。
「ニルのしあわせは、ごはんをたべることです」
ニルがそういって、唐揚げをフォークで刺して、口元に運んでくれる。
「はい、あーん♡」
にぱぁ、と幸せそうに笑った。もう結婚するか……。
ご飯を食べて満足したので、洗井落雲がお部屋でうとうとしていると、
「起きろーーーーー井たろう!!!!」
ガンガン、とニャンタルがお鍋とお玉で目覚ましのアラームを鳴らす。
「はよせんと遅刻するぞい!
ホレ、朝飯のご飯に卵焼き、納豆、秋刀魚の塩焼き(大根おろし付き)、肝臓に優しいしじみの味噌汁じゃ!(味噌汁ドン!!指入り)
何? 朝食が夕食メニューじゃと?! そんなん言っとると今日の夕食は無しにするぞい?!
あ、ギャルを忘れとった!
そんなん言うたら我MK5じゃぞ?!
チョベリグで最&高な朝の始まりじゃ!
とっとと学校に行ってこい! 気をつけてなー! 寄り道するんでないぞー!」
一息で怒涛のマシンガントークをかまされたのちに、ぴょい、と部屋を追い出される。母は強い。裸エプロン母か……いいかもしれない……。
新たな性癖に目覚めそうになり、販売サイトでお母さんものを探そうとお出かけした(撮影スタジオ内で)洗井落雲は、
「あー、洗井っちじゃーん。やっはろー♪
なんかテンション低くなーい? ノアさん元気な洗井っちが好きだから元気になれるようにいろいろしてあげるからねぇー?」
と、ちらりと下着の腰のあたりのひもを見せてくれるノアさん。もうこれはこちらに好意を寄せているに間違いない。それからノアは瞬間的に裸エプロンに着替えると、
「じゃーん♡ 裸エプロン♡
まぁローレットに派遣されてる身だし、何よりなんか過激なことするとお叱り受けそうだしぃ? パンツだけ履いてるけど許してねぇ?
その分ぎゅうってしてあげるからさぁ♪ ふふ、いい子いい子。いつも頑張っててえらいねぇ」
と、そのままぎゅぅ、と洗井落雲を抱きしめるのである。
そんなやり取りを見ていたのは、ニャンタルママである。
「なるほど……ギャルってあんな感じが……豊満じゃな?」
ふむふむと感心するニャンタルママであった。
「お帰りなさいませ! ご主人様っ、ですよ!」
さて、販売サイトから帰ってきた洗井落雲、玄関開けたら秒で裸エプロンルシアである! 裸エプロンでも元気一杯! 今日もかわいらしいその姿は、いつもそばにいてほしい裸エプロンメイドナンバーワンである。
「今日はー、何がしたいのです?
あっ、でもまずはお茶を用意しなきゃでして!」
と、洗井落雲の手を握って、お茶の間に連れていく。洗井落雲はちょろいので、手を握られただけで好きになるから、この瞬間にルシアにガチぼれしていた。
「いーっぱい! おいしくなーれの魔法も一緒に合わせてー、(少しかがむ姿勢で注ぐ、裸エプロン故に、見え、見え……)
出来上がりでして!(見えない!)」
見えない! いや、何が……見えてはならない。でも見えてほしいような、そういうアレである。
「お茶を飲んだら、マッサージしてあげるのです! セレナちゃん! あとみーおさん!」
「はいはい……えっと、ギャルとかはわからないから、変でも文句言わないでよね?」
と、セレナが少しだけ顔を赤らめながら、そう言った。
「ほら、うつぶせになって。で、肩を……肩ってどこなの? いや、アライグマの肩……? 前足の……?」
困惑したようにセレナが言う。こういう所が可愛い。
「えっと、まぁ、背中とか押せば大丈夫よね……?
あと、ストレッチとかしてる? 井とかアライグマの骨格で意味があるかわからないけど、いつもパソコンでかたかた文章打ってるなら、たまにやらなきゃだめよ?
あ、みーお、背中に乗ってあげて」
「わかりましたにゃ」
と、みーおが背中に、ぴょんと飛び乗った。
「『裸エプロンギャルマッサージ』ですにゃ。
井さんの背中を踏み踏みしますにゃ~」
と、肉球の足でぷにぷにと踏んでくれる。最高か? それから、のどをごろごろと鳴らして見せた。猫のごろごろはストレス解消に良い。一勝効いていたい。頼む聞かせてくれ。
後セレナさんにも踏んでほしい。
「え、わたしも……? そういうの、好きなの……? へんたい……っ」
ちょっと顔を赤らめていうセレナ。そういうのカワイイ。
「……い、いいけど。
……まぁ、情報屋って書類仕事多そうだし……あなた達も頑張ってるのよね。
普段わたし達が戦えるのは情報屋のお陰だし、そういう意味では感謝もしてるのよ。
……いつもお疲れ様」
それは、耳元で囁くように、小さく。でも、確実に、届くように。
「……ヘンな依頼はゴメンだけどね!
ルシア! あなたもこっち来て踏んであげたら?」
「まかせるのでしてー!」
ルシアもにこにことやってきて、えーい、と背中に乗ってくれた。
「この後はお風呂に入るとよいのでして! その前に、しっかりほぐしてあげますね!」
と、一生懸命ふみ踏みしてくれる。このまま圧死してもいいや。そう思った。
さて、お風呂である。お風呂では裸エプロンメイドのフラーゴラが、シャンプーをわしゃわしゃとい泡立ててアライグマの毛並みにつけてくれていた。
「ワタシね、美容師目指してるんだ。
だからシャンプーしてあげる……!
井っち毛むくじゃらだからトリミングのほうがあってるのかな……?
ま、まあとにかくシャンプーするよ!」
わしゃわしゃと、アライグマの毛並みをうぉっしゅする。誰かに頭を洗ってもらうなんて、いつ以来だろうか……最近行きつけの美容室チェーンは自動洗髪機械が導入された……あれはあれで気持ちいけど、やはり人に洗ってもらうのはとても良い。
「おかゆいとこはございませんかー? なんて。
井っち頭こってるね。
ストレスたまってるのかも……。
ゆっくり癒されていってね。
んっしょ、ここぐりぐりすると痛気持ちいいと思う……。
井っちの疲れ、全部どこかに飛んで行きますように」
心地よい。すべて忘れて、このまま泡に包まれて流れていってしまいたいように――。
その時、スマホの着信音が鳴った。フラーゴラが、慌ててそれを確認して、
「アトさん!!
えっとねえ、同じ美容専門学校のダンジョン部の先輩でねえ……えへへ」
脳が爆発した。
●終わり
「パイ投げで使用されるパイは通常紙などのパイ皿にクリームを大量に盛った物である事が多く食用のクリームパイとは違うのだわー! てりゃー!!!」
ばしーん! 華蓮が投げたパイが磔にされた洗井落雲に着弾する!
「グワーーーッ!!」
「クリームは後程衛生面に注意を払いつつスタッフが美味しく頂きましたのだわぁー!!! とりゃー!!」
「グワーーーーッ!!」
「えーと、磔ですから」
ココロが言う。
「両手両足をくぎで打ちつけて。そうそう、そう言う感じです。
それからえーと、あ、ギャルっぽい要素がありませんでしたね! んー……。
うわ、なにそれ! なんて情けない顔! 雑魚雑魚ざぁこ!」
ばしーん!
「ありがとうございますッ!!」
「なんなのかしらこれ」
セレナがあきれたように言う。依頼としては、洗井落雲を甘やかし、そのあとパイ投げをすることで夜妖を浄化するまでがお仕事である。変なことをやっていることは変わりがない。
「この後は、ペイルで市中引き回しの刑だっけ?」
フラーゴラがキラキラした瞳で言うので、
「いえ、そこまでしなくても」
ルシアが困惑した表情をする。
「うむ。良い思いだけではないのじゃな。とはいえ、誕生日。良い思い出になるよう、ちゃんと歌ってやろう。
happybirthday井たろう〜♪ happybirthday井たろう〜♪ happybirthday井たろ〜う〜〜♪ happybirthday井たろう〜〜♪
おめでとうじゃ。
生まれてきてくれて、ありがとうな」
「そういってくれるのは君だけだよ。結婚しよう」
たわごとを言う洗井落雲へ、
「パスで」
ニャンタルが満面の笑顔でそう返した。
「えーと、ルシアも一応、感謝のパイ投げをしまして!
いつも変な依頼有難うでしてーっ!」
ばしーん!
「ぐわーっ!」
「じゃあ、わたしも……!
わたしは! こういうキャラじゃ! ないんだからーーーっ!!」
セレナがパイを放り投げる! ばしーん!
「ぐわーーっ!!」
「ノアさん、おっぱいストリームアタックだ♡!」
「───────着弾まで3、2、1、
──────ゼロ♡0♡零♡」
せまる、モカとノア! 両手にパイを持ち、真ん中にパイを配置し! パイとともにパイがぶつかる――!
刹那! 井の体から何かが噴き出した! 夜妖である! 夜妖はそのまま昇天し、いずこかへと消え去った。もう現れることはないだろう……!
「んー、おわった!」
ノアが笑う。
「ギャルとか私の柄じゃないからかなり無理してたし、ギャルっぽくできてるか不安なのがギフトに感知されて胸は大きくなるし! 大変だったんだから!! へっちな人って感じで売ってるけどギフトで胸が膨らむの実は恥ずかしいのよ!」
「そうなんですね……あ、せっかく再現性東京まで来たんですから、お疲れ様会でどこかのカフェに行きませんか?」
ココロが言うのへ、華蓮が頷いた。
「いいのだわ! みんな、行きましょ!」
そういって、皆はにこにこしながら、スタジオから去っていく。
あとは、磔から零れ落ちて、床に転がっているパイ塗れの井だけが残った。
立ち上がった。
「結構気持ちよかった」
そういった。
だめだこの人。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ありがとうございましたッッッ!!
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
これはリクエストシナリオなので、洗井落雲の意思は30%くらいしか反映されていないはずなので僕は無実です。
●成功条件
裸エプロンギャルメイドに扮して、井を甘やかしたりもてなしたりした後、井を磔にしてパイ投げをして夜妖を倒す。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●状況
井がまたなんか変な依頼を持ってきました。
というのも、『裸エプロンギャルメイドにもてなされたり甘やかされたりしたかったのを無念に死んだ亡霊』という設定の夜妖が出たらしいのですが、この夜妖を倒すためには、この夜妖を実際に憑依させる必要があるのです。
その憑依先を買って出た井。そして、夜妖を倒すために、まず『裸エプロンギャルメイドに扮して、井をめちゃくちゃ甘やかしたりもてなしたりする』→『それから井を磔にして、皆でパイ投げをして井にぶつけて夜妖を倒す』という隙を生じぬ二段構えが必要になります。
つまり――。
『あとは流れでよろしくお願いします。』っていうやつです。
ちなみに、裸エプロンギャルメイド、ですが、中に水着を着ていてもいいものとします。強気な人はちゃんと裸エプロンに扮してください。なお、男も女も全員等しく裸エプロンになってもらいます。もはや逃れられると思うな。
●もてなし
思うがままにもてなせばよいのですが、例えば――
1.裸エプロンギャルマッサージ
肩こりがひどい井さんの肩をもんであげたり、背中を踏んであげたりしてマッサージします。
2.裸エプロンギャルASMR
耳かきとか、耳をふーってしたりとかして、井さんを安眠させます。
3.裸エプロンギャルあまやかし
甘えたいので甘やかしてください……頭をなでてくれたりとか……がんばれがんばれってして……
などでどうでしょうか。
とはいえ、これはあくまで一例。これに乗る必要はないので、思うが儘自由に井を甘やかしてください。
●パイ投げ
最終的に井を磔にして、ひたすらパイをぶつけて夜妖を除霊します。
日ごろの恨みとかいろいろ、井にぶつけるといいと思います。
●エネミーデータ
裸エプロンギャルメイドに甘やかされたかった亡霊という設定の夜妖 ×1
井と融合しているため、井を甘やかしてパイ投げすると死にます。
以上、よろしくお願いします。
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