PandoraPartyProject

シナリオ詳細

V・Hな甘い味

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●V・Hな依頼
 この日、デザストルはフリアノン近辺の集落に召集されたイレギュラーズたちは緊張の面持ちのまま依頼人を待っていた――。
 構成メンバーは以下の8名!
 ユーフォニー (p3p010323)!
 エーレン・キリエ (p3p009844)!
 皿倉 咲良 (p3p009816)!
 綾辻・愛奈 (p3p010320)!
 セレナ・夜月 (p3p010688)!
 フォルトゥナリア・ヴェルーリア (p3p009512)!
 バクルド・アルティア・ホルスウィング (p3p001219)!
 ルシア・アイリス・アップルトン (p3p009869)!
 以上です!
 というわけで、集落に存在するローレットの出張所、その一角にて、むむむ、という顔をしていた八人です。
「……ついに来ましたね、この日が……」 
 ユーフォニーがゴクリ、とつばを飲み込んだ。緊張の面持ちは、これから挑む仕事が、大変な難易度のそれであることを示唆している。
「V・H依頼……!」
 ごくり、とセレナがつばを飲み込んだ。V・H! つまり、ベリー・ハードに間違いないのである!
 ベリーハード。それは、ローレットの依頼難易度の中でも難関中の難関といってもいい。通常発生することすらまれと思われるそれに、ついに挑む日が来た――。
「まさか、ユーフォニーがVH依頼を持ってくるとはな」
 バクルドが言う。
「どこからの伝手なんだ?」
「えっと、フリアノンに滞在していた時に、依頼を見つけたんです」
 そういって、依頼書をテーブルの上に広げた。
 V・H依頼――確かに書かれている。
「こんなところにぽろっとVHな依頼があるなんて」
 ルシアが、額の汗をぬぐいながら言った。
「おそろしいはなしでして……!」
「そうですね。本来は、とてつもない大事件を扱うときの難易度のはずです」
 愛奈が頷く。
「それが、こんなところにぽろっと……」
「……えっと、ほんとにあるのか?」
 エーレンが小首をかしげる。
「その、本当に? ベリーハード?」
「でも、確かにV・Hだし、ベリーハードって書いてるんだよね」
 咲良が、依頼書を指さした。V・H。ベリーハード。確かに……。
「いや、でも、なんかドの所かすれてない?」
 フォルトゥナリアが指さした。ド、の所。確かに、なんかかすれてる。
「……あの、疑うわけじゃないんだけど、これほんとにベリーハード……」
「いやぁ、お待たせしました皆さん」
 と、声のした方に目を向ければ、そこには亜竜種の老人と、井みたいな形をした変な物体がいた。
「……井さん!?」
 ユーフォニーが目を丸くする。井(p3n000292)がグルんと回転しながら言った。
「はいそうですよ、井ですよ」
「まって」
 セレナがいやそうな顔をする。
「なんで井がいるの?」
「なんでと言われても」
 井が回った。
「専門家だからですかね……?」
「ベリーハードの?」
 愛奈が小首をかしげる。
「絶対嘘ですよね?」
「……というか、皆さん何を言ってるんです?」
 井が小首をかしげた。
「ベリーハード? この依頼はどっちかというとノーマルくらいの難易度ですけど」
「ちょっと待ってほしいのでして」
 ルシアが、むむむ、とうなる。
「この、VHというのは?」
「ベリーハートですねぇ」
 と、亜竜種の老人が言った。
「えっ」
 フォルトゥナリアが声を上げる。
「ベリー……ハート!?」
「そうですよ。ベリーハート。略してV・H依頼」
 依頼主がこともなげに言うのへ、ユーフォニーが顔を真っ赤にしてうつむいた。
「……見間違え……」
「えっ、その表情良いですね、ピン作って?」
 井が回転したので、バクルドがとりあえず手で制した。
「やめとけやめとけ、ほんとに怒られるぞ。
 さておき、まぁ、そういうことだな、という気はしてたよ」
 けらけらとバクルドが笑う。「なんだぁ」、と咲良が椅子に座り込んだ。
「緊張して損した……」
「うう、ごめんなさい……」
 ユーフォニーがしゅん、となるのへ、セレナが肩を叩いた。
「まぁ、気にしないでいいわよ。結局お仕事なんだからね。
 それで、どういうお仕事なの?」
「それは簡単です」
 亜竜種の老人が言う。
「この辺りに、ベリーハートという木の実がなる樹木を植えたのです。井さんの提案で」
「絶対ろくなことにならないやつだぞ」
 エーレンが言った。
「絶対。ろくなことに。ならないやつだぞ」
「そんな強調しなくても」
 井が折れ曲がった。
「実はこのベリーハートというのはとてもおいしい。その上、環境変化にも強い――どんな場所でも収穫が見込めるのです」
 なるほど、と皆はうなづいた。デザストルでの生活は、大体が洞窟の中などの集落での生活となる。ならば、そのような洞窟の中でも生産できる食べ物は、多くあるにこしたことはないのだろう。
「ですが、このベリーを植えたあたりのエリアが、地中に住むワームタイプの亜竜の巣とつながってしまいまして」
「なるほど。その、ワームタイプの亜竜を撃破してほしい、ということだね!」
 フォルトゥナリアがそういうのへ、亜竜種の老人が頷いた。
「ええ。ついでに収穫も行ってほしいのです。ですが、ベリーハートの収穫を行う際には、この」
 そういって、亜竜種の老人が、衣装を取り出した。
 魔法少女みたいな衣装だった。
 日曜朝にやってる、ああいうやつ。
「聖なる衣装を着て、聖句を唱えないと」
『井の仕業かッ!!』
 全員が異口同音に叫ぶのへ、井が回転する!
「ハハッ! リクシナで『井も出していいですよ!』とか言われたらこうなるに決まってるでしょう!?
 僕はね! 皆さんが日曜朝にやってるような魔法少女の格好をしながら、かわいく格好良く名乗りを上げるシーンが見たくてしょうがないんですよね!」
「なんて奴ですか!」
 愛奈がマジの顔で憤慨した。
「えっと、つまり」
 ルシアが声を上げる。
「ワームをやっつけて、この恥ずかしい衣装を着て、かわいくかっこよく変身ポーズと名乗りをあげて、ベリーハートを採取して帰ってくる、という流れなのです?」
「そう言う流れですね」
 と、亜竜種の老人が言った。
 そういうことらしい。
「では、よろしくお願いしますね」
 と、亜竜種の老人が言った。
 と、亜竜種の老人が言った。
 なんてことだ、もう逃げられないぞ。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 これはリクシナなので僕は何も悪くないです。

●成功条件
 ワームタイプの亜竜を全滅させた後、
 日曜朝にやってる感じの可愛らしい魔法少女服を着て、かっこよくorかわいらしく名乗りを上げてから←超重要、
 ベリーハートを採取して帰ってくる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 なんてことだ、もう逃げられないぞ。
 というわけで、ベリー・ハート採取依頼を、ベリーハード依頼だと思って参加した皆さん。当然リクシナでベリーハード依頼なんてやるわけがないでしょう! ということです。
 話によれば、ベリー・ハートを植えたあたりが、土中に生息するワームタイプの亜竜の巣につながってしまった様子。このままでは、ベリー・ハートの採取作業が行えません。というわけで、皆さんには、ワーム亜竜の撃破……と、ついでにベリー・ハートの採取も依頼されました。
 しかしベリー・ハートは神聖なる果実。採取するのにも聖なる衣を身にまとい、聖なる儀式を行わなければなりません。
 具体的には、魔法少女みたいな恰好をして、かわいく可愛らしく名乗りを上げてください。そうすることで、聖なる儀式が完成します。あと写真撮ります。これは僕の趣味です。いっぱい写真撮りましょうね。
 作戦決行タイミングは昼。作戦エリアは亜竜種の洞窟集落の一角です。
 特にペナルティなどは発生しないので、どんな魔法少女服を着るか、どんな名乗りを上げるか、顔は真っ赤か涙目か、意外とノリノリ化。そういうのをプレイングにいっぱい書くといいと思います。

●エネミーデータ
 ワーム亜竜 ×5
  ワームタイプの亜竜です。見た目は蛇のような感じです。
  特筆すべき能力はありませんが、オールラウンダーであるとも言います。遠近バランスよく攻撃してくるでしょう。
  基本的なところを抑えておけば、負けることはありません。僕はこんなやつとの戦闘よりも、魔法少女服の方にプレイングを割いてほしい。そう思うんだ。

●同行者
 井
  います。

 それでは、皆様のプレイングを楽しみにしております。

  • V・Hな甘い味完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年06月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
終わらない途
※参加確定済み※
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
※参加確定済み※
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方
※参加確定済み※
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
※参加確定済み※
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星
※参加確定済み※
綾辻・愛奈(p3p010320)
綺羅星の守護者
※参加確定済み※
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
※参加確定済み※
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女
※参加確定済み※

サポートNPC一覧(1人)

井(p3n000292)
絶対紳士

リプレイ

●VH依頼スタート
 戦場に、銃声が鳴り響く。亜竜種たちの集落、その一角。いわゆる洞窟状に広がる集落の奥には、地下水を湛える『川』と比較的豊かな土壌があり、そこではハートの形をしたベリー(果実)がたわわに実った木々が並んでいる。
 その傍らで、ワームタイプの亜竜が鳴き声を上げた。ずあぁあ、とその巨体をうねらせ、吹き出した赤い血は、先ほどの銃声によるもの。
 放たれた銃弾は、ワームの体に突き刺さった。先ほどの鳴き声も、それによる悲鳴だ。『蛇喰らい』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)の銃は、狙った獲物は決して逃がさない。
「とどめだ! エーレン!」
 バクルドが叫ぶ。同時、飛び込むのは『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)だ!
「刃に籠めた魂の青いキラメキ♡ 鳴神抜刀☆エーレン・キリエ! いけないワームたちにオシオキしちゃうぞ♪」
 手首・足首まである黒インナーの上から膝上までのハート装飾つきブーツ、肩には羽飾り、胸元にハート型の水色クリスタル、首にはチョーカー、腰元は青グラデーションスカート、ロンググローブはラメ入りキラキラ、とどめに頭に胸元とお揃いのクリスタルつきティアラ。プレイング原文ママのそんな恰好で飛び込む、エーレン!
「くらえっ! ハート・クラッシュ・ブレイド!」
 すらり、と輝く一閃絶刀。放たれた斬撃が、ワームの体を文字通りの一刀両断。ぎゅあ、と悲鳴を上げて、ワームの体が転がり落ちる!
「いまよ! ルシア♡」
 叫ぶエーレンの言葉に、『開幕を告げる星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)がゆっくりとうなづいた。
「ずどーんでしてっ!!」
 構える狙撃銃から、放たれる強烈な魔砲(ずどーん)。光芒がワームの体を飲み込み、その肉体を光の中でチリへと変える。やがてその光が洞窟の暗がりを照らし終えたころ、ワームたちは見事、この場から撃退されていたのだ!
「あなたのハート、抜刀しちゃうぞ♡」
 エーレンが、ぴっ、とポーズをとった。ルシアが困ったような顔をする。
「そこまでする必要があるのです……?」
「いや、なんか……毒を食らわば皿までっていうか……」
 エーレンが感情を殺した目でそういった。
 エーレンであるが、何も狂ったわけではない。
 そういう依頼なのである。
 そもそもの話をしよう。ベリー・ハートが鳴る木がある。これは、どんな所でも育つ、とされるほど生命力の強い樹木であり、過酷な地である覇龍領域でも、一定の収穫が見込めそうなのである。もちろん、これを植えた程度で亜竜種たちの状況が即改善されるわけではないが、いろいろなものがあるにこしたことはない。というわけで、さっそく試験栽培を行ったわけだが、ここである問題が発生した。栽培地に、ワームタイプの亜竜が入り込んでしまったのである。
 イレギュラーズたちは、その討伐を依頼さ入れた。なので、今ここで討伐している。
 魔法少女みたいなかっこうして。
「このあらすじでは、エーレンさんが狂ったようにしか思えないのですけど」
 ルシアが虚空に向かってそういう。バクルドが、本当に、嫌なものを見るような眼でエーレンを見た。
「俺もこうなるのか……」
 そうつぶやいて、空を(ここは洞窟なので空はないが、天を)見上げた。
「  不     腹
   服 ︵ 身 括
   な 魔 に り
 度 れ 法 纏
 胸 ど ︶ う
 か も 少 の
 な   女 は
     服

 放浪者~不服の一首~字足ラズ」
 なんか一句詠んだ。
「なんというか……恥ずかしいのはさっさと終わらせて帰りたくてな……」
 エーレンが言う。うんうん、とうなづくその姿は、もう何の感情も抱いていない。
 改めて話をすると、ついでにベリーh・ハートの収穫も依頼されたわけなのだが、このベリー・ハートは聖なる果実。聖なる衣装を着て、聖句を唱えないと収穫できないのである。なぜそうなのかは、そうやって誰かが決めたからだ。
「井じゃねぇのか」
 バクルドが言う。
「井が! 決めたんじゃ! ねぇのか!」
「いえいえ、そんな」
 井がぐるぐると回った。
「偶然っていうか、なんっていうか。こんな面白植物があるとは、混沌って面白いですね」
「他人事だと思って……」
 ルシアがそういうが、こほん、と咳払い。
「ですけど! ほら、ルシアはすでに魔砲少女でして!」
 ぴっ、と自分の衣装を指してみる。確かに、かわいらしいフリル満載のその服は、魔砲少女と呼ぶのにふさわしいといえるだろう。
「それに! 名乗りも全然、できるのですよ! いきますよ~!」
 くるり、と回って、ポーズを決める。
「きらりきらりと輝く星は 助けを求めるみんなの為!
 この手で描く虹の魔砲は 悪い心を吹き飛ばす為!
 星と虹の魔砲少女 ルシア・アイリス・アップルトン、今ここに参上でして!
 相手が何であろうとも! ルシアが全部ずどーんって、してあ・げ・る♡」
 ぴっ、と人差し指で、ずどーん、のポーズ。完璧。完璧である。完璧な魔砲少女であった。
「というわけで! ルシアはミッションコンプリートでして!
 甘かったのですね、井さん! そして洗井落雲!
 洗井落雲はこういう時、どうせ雑に『全員心に傷を負ったからパンドラ復活ね』とかやってパンドラを地味に削ってくるのですよ!
 でーすーがー! ルシアはこのとおり、魔砲少女としての活動に一点の後悔も曇りもなし! でして!
 ゆえに! 今回ルシアのパンドラは一つも減らない! むしろプラス! と! 宣言させていただくのでして!」
 と、勝ち誇ったようにどこかを見るルシア。でも戦闘はしたので、戦闘分のパンドラ増減はさせていただく。
「洗井落雲ンンンンンンンンンンーーーーーーーッ!!!!!」
 ルシアがうなだれてだんだんと地面を叩いた。
「ほんとに……その……ごめんなさい……」
 と、『特殊効果スタッフ』ユーフォニー(p3p010323)が申し訳なさそうにそういう。基本的に、今回の主犯はユーフォニーさんなので、責めるならユーフォニーさんを責めてほしい。
「ユーフォニーを責めたら、わたしが井と洗井落雲を合同会社Re:versionから追い出すわ」
 がるる、と『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)が井と洗井落雲を威嚇した。どうしてどうして。
「わたしは本気よ!
 ……じゃなくて。
 間違いなんて誰にでもあること。ユーフォニーは気にしないで」
 優しく慰めるセレナ。だが、この後セレナにも魔法少女で名乗りを上げるという拷問が待っているのである。
「そうだよね。うん、人生いろいろだから、気にしちゃだめだよ」
 『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)が苦笑しならそういう。確かに人生いろいろ。何があるかわからないものである。大丈夫、いつかきっと、この依頼も素敵な思い出に代わるから――。
「いい感じで話をうやむやにしようとしている洗井落雲と井は後でお話があるからね?」
 と、仏のような笑顔で言う咲良。あ、はい。
「それから! もう、なっちゃったものはしかたない、ってことで。バクルドも、いい加減覚悟決めようね?」
 そういう咲良に、バクルドが、うえぇ、と唸った。
「そうはいうがな……俺ももう六十過ぎだぞ。
 60代の爺に何求めてんだ、せめて数年前のファントムナイト状態ならまだ見れたものを」
 ちなみにこれの事ですかね? https://rev1.reversion.jp/illust/illust/3191 ありがとうございます。
「いや、僕は大丈夫です」
 井がそういったので、バクルドがつらそうな顔をした。
「業が深いな……」
「何を言いますか。かわいい、を歳や性別であきらめてはいけません。人間思い立ったが吉日、やろうと思えば、何歳でもいつからでもかわいくなれます。僕はそう信じています」
 井がぐるぐる回転しながら言うので、バクルドが目を細めた。
「俺がなりたいって言ったんじゃなくて、お前さんに強制されてるわけだが――」
「誤差みたいなものです」
 井が適当なことを言うので、バクルドが嘆息した。
「誤差かなぁ……」
 『ネゴシエーター』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)が遠い目をする。
「でも、私も恥ずかしくはない……かも。まぁ、確かに気恥ずかしさはあるけど、男性陣よりはましかな、って」
 ヴェルーリアが苦笑しながらそう言う。確かに男性陣の尊厳破壊レベルに比べたらましだろう。
「それで、えーと。ワームは倒したから、あとは名乗りを上げるだけ? になるのかな?」
 小首をかしげるヴェルーリアへ、ルシアがうなづいた。
「そうでして。
 ルシアはもう名乗りを終えたので、VHをとってきてもいいのです?」
「大丈夫ですよ。めっちゃ写真も撮ったので、あとでプリントしますね」
 そう井が言うので、ルシアが嫌そうな顔をした。そういえば、写真も取られるのである。
「えっと、それじゃ」
 ルシアがこほん、と咳払い。気を取り直しつつ、VHの果実を一つ、採取して見せた。その名の通り、ハートの形をした、赤や黄色、みどりの果物である。
「食べてみてもいいのです?」
「一つや二つくらいなら、どうぞ」
 井が言うので、ルシアが一つ、VHをかじってみた。するとどうだろう、穏やかな甘さの中に、それをひきたてるような僅かな酸味のある、みずみずしい風味が、口いっぱいに広がるではないか!
「わ、おいしいのでして!」
 にこにこでルシアが言う。
「え? ほんとに? 私も食べてみたい!」
 と、ヴェルーリアが言う。が、井はそれを制して、
「だめです~、聖なる儀式と写真撮影をお願いします~」
 とか言い出したから、ヴェルーリアはぶぅ、とほほを膨らませた。
「しょうがないな……えっと」
 と、ヴェルーリアは、くるっ、と回ってみせた。ヴェルーリアは、普段の服装に近かったが、それをアレンジしたようなデザインの『聖服』を着ている。胸に、瑠璃色の宝石をあしらった蝶の意匠のアクセサリー。まさに、朝にやっている井魔法少女の戦闘ドレスといったイメージだ。
「空に輝くみんなの希望! フォルトゥナリア・ヴェルーリア!」
 くるっとまわって、ぴっ、と手を振って見せる。可愛らしいポーズに、ぱしゃぱしゃとうんざりするようなシャッター音が聞こえた。
「あー、いいですね、いいですよー。とってもいいッ! よし、採取に行ってください」
 ぐっ、と井が親指を立てたので、ヴェルーリアが嫌そうな顔をした。
「なんだか、本当に井さんに利用されてる感じする……」
 とは言いつつ、VHの味は気になるところだ。早速採取作業をしつつ、一つかじってみれば、これまでの苦労も報われるような味がするかもしれない。
「じゃ、次の方ー」
 井がそういうので、『航空猟兵』綾辻・愛奈(p3p010320)が一歩前に出た。
「……」
 愛奈が、無言で、井を見る。フリフリを付けつつ、しかし体にぴったりとしたイメージの衣装。
「……歌いながら戦ったりします? 生き恥とか」
 イメージはアレ。
「歌いませんし戦いませんがッ! あと生き恥って何ですかッ!? ですが、これで行きますッ!」
 愛奈がすぅ、と息を吸い込んだ瞬間、ユーフォニーが手を上げた。
「あの」
「はい」
「私は、愛奈さんのプロデュース役で、いいですか?」
「うーん」
 井が一回回転して。
「おっけー!」
 ぐっ、と親指を立てた。
「あ、じゃあ、わたし録画するから」
 セレナが言った。
「免除にならない?」
「うーん、面白いからOK!」
 井が回転した。
 それから、ゆっくりと、ユーフォニーがBGMを流す。具体的に言うとBPM≠150、4/4くらいのやつらしい。洗井落雲に音楽用語はわからぬ。
 ライティングされる、愛奈。ぐっ、と親指を立てる、ユーフォニー。セレナが、カメラを覗きながら、ぐって親指を立てた。それから、愛奈は、顔を真っ赤にしながら、くるっと回った。
「♪おねがい⭐︎Shining blue sky
 (A3 A3 A3 D3E3-F#3G3-F#3
 (お・ね・がい しゃいーにんぶるーすかぃ

 ♪夢みる魔法と
 (A3-A3-A3-D4 C#4-B3-A3-G3
 (ゆーめーみーる まーほーうーと

 ♪心をかさねて
 (A3 D3-A3 D3 A3-G3-F#3D3-
 (こ ころ を かーさーねてー

 ♪まもってみせるの
 (B2D3-C#3E3-D3B3-A3-
 (まもってみーせるーのー

 ♪隠した不安も
 (A3-A3-A3-D3 E3-F#3G3-F#3
 (かーくーしーた ふーあんーもー

 ♪きのうの涙も
 (F#3A3-A3-A3 G3-F#3D3-E3
 (きのーおーの なーみだーも

 ♪抱きしめ羽撃く
 (D4-C#4-B3A3 A3B3-D4-A3
 (だーきーしめ はばーたーく

 ♪ひかりの明日へ!
 (D3E3F#3-G3 F#3A3-E4D4
 (ひかりーの あしーたへ

 ♪Twinkle☆My Love
 (G3F#3-D3 E3 D3
 (とぅいんく まぃ らー」
 じゃーん、とキラキラしたエフェクトが舞う。愛奈が顔真っ赤にしながら裏声交じりで歌う。
 





 生き恥。






 歌い終わったところで、セレナがうんうんとうなづきながらぱちぱちと拍手をした。
「御三方、お通りください」
 井がうん、とうなづいてから通行を促す。
「せめてなんか感想を!!」
 愛奈が言うのへ、井が澄んだ瞳で答えた。
「僕は好きです」
「それはそれで嫌ッ!!」
「満足したわ。あとでいろんな人にみせましょ~!」
「ふふ、頑張った甲斐がありました」
 自分に被害が及ばないので強気なセレナとユーフォニーがにこにこ笑顔で通過していく。
「さて、残りは咲良さんとバクルドさんとエーレンさんですけど、誰から死にます?」
「死ぬっていうなよ……」
 バクルドが嫌そうな顔をした。
「うーん、こういうのって、後に残れば残るほど嫌になりそう」
 咲良が、こほん、と咳払い。
「それに、アタシもいろんな写真撮ったからねぇ」
 と、一眼レフカメラに視線を落とした。ここまで書いてないが、咲良は一眼レフカメラで皆の名乗りをパシャパシャととっていた。それはもうすごい勢いで取っていた。
「……素敵な時間だった……」
 うん、とうなづく咲良。エーレンがつらそうな顔をした。
「どうしてどうして……」
「さておき、アタシから行くね!」
 にこり、と笑う咲良。それから、青色基調の、大きなリボンのついた衣装に着替えると、
「悪しき者への正義の拳!! 正義の魔法少女皿倉咲良、ここに見参!」
 ぐっ、と拳を構えて、ポーズ! ちょっとカッコイイ寄りだが、これはこれでとても良い。
「いいですよ~! ささ、収穫作業へどうぞ~!」
 と、井がそういうので、咲良がにこにこと進んでいった。
 バクルドとエーレンが残った。
「……じゃあ、俺、行くわ……」
 バクルドが、死んだ魚みたいな目で言った。
 それから、ゆっくりと、着替える。着替える。着替えた。
 流れるような、ストーレトの銀の髪。
 義手と、体のラインを隠すような、ふわふわラインの魔法少女服は、フリルとリボン一杯で、夢と希望と可愛らしさを演出している。
 少女というには高すぎる身長。
「あ、でも、僕背のおっきい女の人も好きです」
 って洗井落雲が言った。バクルドがつらそうな顔をした。
「じゃあ、やるわ……」
 後ろを向く。ポーズを決める。
「貴方のハート見事にキャッチ、熱いパトスがスプラッシュ」
 それから、くるっと回る。ポーズを決める。
「迸る鉄拳でクラッシュクラッシュ! ハッピーワンダラーバクルド! 参上!」











 ――生き恥――。









「あ、どうぞ、とおってください!」
 にこにこと井が笑ったので、バクルドは虚無のような顔ですたすたと進んでいく。目の前に、VHの果実の木があった。これのために、俺はこんな目にあったのだ。なぜだろう。なぜ、こんなことになったのだろう。ベリーハード依頼で腕試しをするつもりだった。もちろん、死を覚悟して、この依頼に臨んだ……いや、それでこんな状況になるとは思わんやろ普通。なんだこれは。一体どうなっているのだ。確かに、死を覚悟している。死を、覚悟させられている。でもそれは、こんなものではないはずだ……。
「じゃ、収穫しまーす」
 もう、其れしか言えなかった。その言葉が言出てこなかった。バクルドが、虚無の顔で、VHの果実をもぎ取った。かごに入れる。もぎ取った。かごに入れる。もうそれだけしか考えたくなかった。
「これで終わりか」
 エーレンがそういった。
「じゃあ、あとは、収穫して帰るだけだな」
 そういって、先に進もうとしたエーレンを、井が制した。
「あ、エーレンさんまだです」
「えっ?」
 怪訝な顔をする。
「だって、俺は名乗りを上げたじゃないか?」
「戦闘中にですよね?」
 井が、真面目な顔で言った。
「依頼の成功条件、読みました?

 ワームタイプの亜竜を全滅させた後、
 日曜朝にやってる感じの可愛らしい魔法少女服を着て、かっこよくorかわいらしく名乗りを上げてから←超重要、
 ベリーハートを採取して帰ってくる。

 戦闘が終わった後、です。
 エーレンさんはノーカンです」
 あ、とエーレンが声を上げた。


 それからちょっとして、エーレンの名乗り二週目が始まることとなる。
 おわり。


 おまけ。
「というわけで、ノリノリで名乗りまで入れさせてもらったわけだけど」
 ヴェルーリアがにっこりと笑った。
「井さん。貴方にも着てもらうよ。この5人のシリーズで六人目の追加戦士として出てきた妖精さんが変身する、青い薔薇をモチーフとした魔法少女服を。
 薔薇のサークレット、胸元も青い薔薇、フリル付きの衣装でへそを出したり二の腕あたりに隙間もあって、太もも半分くらいのスカートで、肩のあたりは花弁をイメージして段階になってる感じの衣装! を!」
「あ、では、ハートたくさんのバニー魔法少女服、これも着てください♡」
 ユーフォニーもそういった。

 全部着た。

 おしまい。

成否

成功

MVP

綾辻・愛奈(p3p010320)
綺羅星の守護者

状態異常

なし

あとがき

 いやぁ、聖なる儀式は神聖でしたね……。

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