シナリオ詳細
<黄昏の園>潮騒のメモリーズ
オープニング
●潮騒の貝殻
ヘスペリデスは美しい場所だ。
どのように作ったものか、それとも元々存在するのか。
それについては不明だが、滝と、それが流れ落ちる泉のような場所も存在する。
どうどうと流れる水の音。静寂を湛えた泉の美しさ。
この2つの織りなす光景は、恐らくは多くの者が心癒されるものであるだろう。
勿論、此処に名前などない。名無しの滝と、名無しの泉だ。
この光景が良いモノであることを理解しているのだろう。
荒くれ者の多い亜竜たちも、この場所ではあまり大きく暴れないことが多い。
しかし、この泉だが……何故か貝が生息していた。
淡水でも生きられる類の貝なのだろう、どのみち名無しの貝ではあるが、恐らくは適当に獲ってきてばらまかれたのであろう。その貝に統一性といったものは一切ない。
本当にどうでもよい、そんな代物ではあるが……現在、その中には意味のあるものも混ざっている。
女神の欠片。そう呼ばれるものの1つであり、耳に当てると何故か潮騒の音が聞こえる不思議な貝だった。
●女神の欠片
ラドネスチタによる『選別』をうけ、イレギュラーズが辿り着いたのは『ヘスペリデス』と竜種達の呼ぶ緑豊かな場所であった。
この場所は『冠位暴食』ベルゼー・グラトニオスが竜種と人の架け橋となるべく作り上げたらしい。
人の営みを真似して作った遺跡は不格好。咲く花はデザストルの特有の名も知らぬ花。
覇竜とはこのような未知だと再度突き付けるようなこの場所はされど、不器用で不可解な感情を形にしたかのようでもあった。
いつか滅びに向かうのだというこの場所において……やるべきことは、幾つも存在する。
「それがまあ、女神の欠片というわけじゃの」
【フリアノンの酒職人】 黒鉄・相賀 (p3n000250)は『花護竜』テロニュクスと『魔種・白堊』がベルゼー・グラトニオスの苦しみを少しでも和らげるためにイレギュラーズに協力を要請したというモノの名前を口にする。
勿論、何処まで信じていいものかは分からないが……女神の欠片は様々なものに形を変えているという。
たとえばそれは亜竜の卵にであったり、あるいは竜種の鱗にくっついていたり。
勿論そのようなもの、命懸けになることは確かだが……多少ではあるがもう少し生き残れる確率が高いものもある。
それがヘスペリデスの滝と池、それを合わせた水場の何処かにある「潮騒の貝殻」だ。
見た目には普通の貝に見えるらしいのだが、耳に当てると不思議なことに「何処かで聞いたような気がする潮騒の音」が聞こえるのだという。
しかし見た目自体の情報は残念なことに存在しない。水場には他にも貝がたくさんあるようなので、実際に耳に当ててみなければ分からないだろう。
今回は竜種はいないようだが、どうやら邪魔をしてくる亜竜はいるようだ。
彼等にとってみればこちらの事情など、知ったことではない。
なんとか妨害をどうにかしながら「潮騒の貝殻」を見つけるしかないだろう。
- <黄昏の園>潮騒のメモリーズ完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年05月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●ヘスペリデスの滝へ
どうどう、と滝が泉に流れ落ちる音が聞こえる。
ヘスペリデスの滝と、泉。一見美しいこの場所だが……それなりの危険と、女神の欠片が存在している。
そう、女神の欠片「潮騒の貝殻」。ロマンあふれる名前のそれを思い浮かべ、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は楽しそうに声をあげる。
「潮騒の貝殻……興味深いしわくわくする、絶対ゲットしたい! でも、ヤドカリ亜竜は厄介だね……殲滅しようとすると戦闘音で他の敵も来そうだし」
戦闘の影響で潮騒の貝殻が壊れないように保護結界も張っているが、実に細やかな配慮と言えるだろう。
他に敵が来る可能性も考え、ハイセンスと鳥のファミリアーで周囲の警戒も怠らない。
ファミリアーと五感共有し超視力や超嗅覚でヤドカリいる貝を見分けられないか試してみるが……此方に関しては、どうにも同じだ。
そうして最終的な判断としては「水に潜って耳に当てるしかないかも」というものだった。
「よし……覚悟を決めよう。大丈夫、サポート体制は出来てる」
そう、全員がどうにかならないようにサポートのための人員も設定している。
だから、問題はない。ヨゾラは早速貝を1つ耳に当てて……そして、聞こえてくる。
これは、そう……超音波。
「あっ……」
ぷかぁ、とヨゾラが水に浮かんだのを、ロレイン(p3p006293)が引っ張って水辺まで回収していく。
「この流れで女神の欠片を? 流石に骨が折れそうね」
そう、色々と策を弄しても最後は体当たり。中々に面倒なのは確かだろう。
「木を隠すなら森の中とは言うけれど……。そういえば、古来より女神と貝殻は密接な関係があった気がするわね……?」
まあ、女神の欠片の示す「女神」との関係についてはさておき、そうした対象としては親和性があるのだろう。
そういう意味では女神の欠片が貝殻の形をとっているのはロレインとしても納得のいく部分が多い。
「とりあえず手当たり次第探すしかないわね」
ロレインの役目としては、仲間が気絶した際に貝殻を落としてどれがハズレかわからなくなったら困るので、ヤバイヤドカリだった貝殻は回収して集めておくことだ。
(ヤドカリ同士をくっつけたらどうなるのかしら……ね。ヤドカリの耳がどこかは知らないけど。別にこれらは倒す必要は無さそうだし……)
なんなら集まってきた亜竜の耳に押し付けてもいいかも? などとロレインは言っているが、「そういえば、ヤドカリはヤドカリでどうやって耳を区別してるのかしらね?」という疑問も出てきているようだ。
「潮騒の貝殻……たくさんの貝殻から、見つけなきゃなのですね。とってもとっても大変そうなのです。スゴイヤドカリでぷかぁは困っちゃいますね、がんばらなきゃ!」
「うん、頑張ろう! あっ」
ロレインに再び回収されていくヨゾラを見ながら、『あたたかな声』ニル(p3p009185)も貝殻を探す。
ニルも保護結界とオルド・クロニクルを発動させているが、余計な被害を抑えることで戦闘音とか抑えられないかという試みもある。
貝殻探しにはファミリアーである2羽の水鳥とハイセンスを組み合わせていた。
気を付けるべき点としては、あまり高度を上げすぎず。ファミリアーで目立ちすぎるのには気をつけていく。
(他の人とかぶらないようにして、早く探していかないと)
一応動物知識で何か見分けがつかないか考えてみてはいるが、流石によく分からん貝の亜竜については少々難しい。
それでも実際の貝の知識と比べることで多少の生態は理解できてもいた。
「中に生き物がいますか?」
無機疎通で貝殻そのものにも聞いてみるニルだが、覇竜の貝のせいか、それとも「ヤドカリ」という生き物扱いなのか、女神の欠片だからなのか……返事はない。
「女神の欠片の中に生き物はいないです、よね?」
つまり中身の居る貝は女神の欠片ではない。
ひとまずニルは水中で貝同士を合わせてみる。そうすれば、相打ちになるかもしれないと考えたのだ。
「……大丈夫、でしょうか?」
反応は、ない。ただの貝なのだろうか? それともスゴイヤドカリなのだろうか?
分からないのであれば、最終的には聞いてみるしかない。ニルは仕方ないと覚悟を決める。
「……ぷかぁしたら、よろしくお願いします。えいっ」
結果。ぷかぁと浮いたニルをロレインが回収していく。
「次々と被害が……! でも負けません!」
『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)も頷き、ドラネコさんのリーちゃん召喚かつ感覚世界使用で五感共有し、水辺周囲を巡回して貰い周囲を警戒していく。
「フリアノンさんの力の欠片……フリアノン集落が出来てから何百年過ぎたんでしょう。それほど長い時間、欠片はヘスペリデスに在り続けていたのかな……でも今はしっかり探さなきゃ」
ユーフォニーはニルと同じような、しかし違うアプローチを試していた。
つまり動物疎通で話しかけ、反応の有無で見極めようとしていたのだ。
「お返事しないと大変なことになりますよ……!」
本当に返事があったら謝ろうと思っていたが、返事はない。
貝殻同士を合わせたら耳と勘違いして超音波を発しないかも試してみたが……此方も反応は無し。
けれど、ニルもやってダメだったので念のためである。だから、ユーフォニーはしっかりと現在位置を確認する。
実行するのは騒音予防に仲間の保護結界内で、かつ水の中。
耳を当てるしかないなら大きく息を吸い込み水中で、全員ぷかぁしないようにローテーション。
「……いきます!」
ぷかぁ、と浮かんだユーフォニーをロレインが回収する。
どうやらもう少し頑張らなければならないようだった。
●回収せよ、女神の欠片
「超音波って硬い物質をほとんど透過できないっスけど……耳に当てないとだめだったら完全に防ぐこと自体は難しそうっス」
しかも結構エグいっス、と『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)は溜息をつく。
結構な数のヤドカリを隔離したはずだが、まだまだ女神の欠片の特定には至っていない。
「出来れば耳を当てずに判別できるようにしたいっスね」
そう言っていたライオリットは目的の貝殻に中身が入っていないという前提で、動物疎通を使ってみる。
ヤドカリなら何かしらの反応は得られれば、耳を当てずに済む……が、やはり無反応。ヤドカリだからだろうか?
ならばとライオリットが次に試したのは物質透過だ。
中身がないなら貝殻自体を透過できるはずだが、ヤドカリが入っていたら貫通はできない。
これは実際、良い方法であるはずだった。しかし……どうやらヤドカリの貝がまとめて生物扱いなのか、それとも女神の欠片だからなのか。透過できなかったのだ。
「まさか本気で判断できないとは……とんでもないっス」
腹をくくって直接やるしかない。そう理解しながら、ライオリットは周囲を見回す。
一応、他の人の様子も見ながら、全員水面に浮かぶような状況は避けるようなタイミングを選んでいるのだが……今なら「ぷかぁ」しても問題はない。そう判断したライオリットは無事に「ぷかぁ」して。そんなライオリットを『ずっと、キミの傍に』フーガ・リリオ(p3p010595)が引き上げる。
「思ったよりずっと大変だな」
言いながらも、フーガは周囲の警戒を欠かさない。こうしているうちに何が出るかも分かったものではないからだ。
積極的に水に潜っていないのはそういった見張りもあるが……耳が敏感なこともあって、真っ先に「ぷかぁ…」しちまうかもしれないと思ったからだし、それで足を引っ張りたくないという思惑もあった。
スキルを発動する際も、派手な音で増援が来てしまわないように、トランペットの音をなるべく使わず、小声での口頭の詠唱程度に留める配慮も出来れいて、フーガはまさに理想的なサポートとして機能している。
更には少しでも手伝うために耳に直接当てなくても聞こえるかどうか、確かめるべく超聴力で耳を澄ましてみたり、すでに調べ終えた貝殻には文房具で目印をつけていたが……こうして地道にでもやっていけば、必ず女神の欠片は見つかるはずだ。
懸念点としては他の亜竜や竜種に目をつけられないかだが、その対策もしっかりとしている。
「できることはやった。あとは信じるしかないな」
「だな」
フーガと一緒に警戒をしていた『あいいろのおもい』クウハ(p3p010695)もそう頷く。
結局のところ、ヤドカリたちは防衛反応として超音波は発射するが、それ以上積極的に攻撃してくるつもりもないようだ。
となれば、攻撃に類するものはしないのが一番良い。
だからこそクウハもフーガと協力してオラクルとエネミーサーチ、広域俯瞰の組み合わせによる周囲警戒や状況把握を行っていた。
そうして分かるのは、他の亜竜もこちらに気付いてはいるが、スゴイヤドカリを刺激したくないといった様子が見て取れるということだ。数は力とは言うが、亜竜スゴイヤドカリの数は尋常ではない。
となると……平和的にやるのが一番いい。竜宮イルカのフィーネの力も借り、貝の分別もやっていく。
「この状況を見るに……ヤドカリを敵に回さない限りは此処はある程度平和ってことだな」
「確かに。討伐しに来たのでなく、『女神の欠片』探しに来ただけだからな」
フーガもクウハに頷き、ぷかぁしたり救出されたりする仲間に視線を向ける。
その中には『玉響』レイン・レイン(p3p010586)の姿もあった。
「キラキラして……海みたいだね……女神の欠片も……キラキラしてるのかな……話に聞いてると……あちこちに隠れてる「幸せ」みたい……見つかるといいな……」
広域俯瞰を併用しファミリアーで小鳥を飛ばして泉の周りを飛ばせて万が一、他の亜竜が来た時にすぐ分かる様にしておいてもいるが、他の面々のファミリアーとも合わせればかなり厳重な警戒態勢になっている。
更には広域俯瞰でヤドカリとそうではないもの……つまり女神の欠片を広い範囲で判別しようともしていた。
作戦としてはどんどん避けていく作戦といったところだが、そうしていると本で読んだ笛吹き男みたいな気分にレインはなっていた。
(僕がぷかあってされるのは、海の眷属として何かが壊れる気がするし……そうなったら少しムッとなるかも知れないけど……落ち着いて……事に当たらないと……)
とはいえ、これは水の生き物同士の争いでもあるので、そこまでの話でもない……かもしれない。
「欠片……潮騒の音が聞こえるっていう……海にいた頃は……波間の音は聞いてきたけど……浜辺の音は…あまりいい記憶がない……凄く怖かった印象しかないから……」
そう、音というものは人によって様々な姿を見せる。
「見つけました!」
やがて、ニルがそんな声をあげる。耳に当てると聞こえてくる、潮騒の音。
何処で聞いたような、遠い望郷を思い起こさせるような、そんな音だ。
「貝の中に本当にあるみたいで、不思議ですね」
ロレインもニルから受け取ると「どこかで聞いた音色……きっと天義の海の潮騒だと思うわ」と呟く。
何故か湧き上がる懐かしい気持ちは、女神の欠片としての力なのだろうか?
続けて受け取ったユーフォニーも、貝を耳に当ててみる。
それはやはり何処か記憶にあるような、そんな音で。目を瞑りその音に集中して。
「潮騒……波の音……? なん、だろう。ずっと微かに聴こえる音に、色に、似ているような……ううん、違う。でも背中合わせで傍にいてくれるような、安心する音……私の、鍵……?」
何かに届きそうな、そんな予感はしたが……届かない。似ているがどこか違うのだと。そう、感じてしまったからだろうか?
少し残念そうに思いながらもヨゾラにユーフォニーが渡すと、なんだかヨゾラは今日の苦労を思い感動してしまっていた。
「超音波じゃない、潮騒の音だ……女神の欠片だ……!」
そう、これこそが女神の欠片だ。
(女神の欠片……フリアノンの力の欠片)
耳に当てながら、ヨゾラは思う。
「素敵な不思議な効果を持ちこの貝は、何処かで聞いたような気がする潮騒の音を聴かせてくれる……僕は元世界で海に行った事も潮騒の音を聴いた事もない。きっと、混沌世界の潮騒の音だね」
だからだろうか、なんとも不思議な感覚であった。
(何処かの海の、潮の音。ここの竜種は聞いた事あるのかな? 友でなくても、並んで潮騒の音を聴ける日が来るよう今を頑張らないと)
そしてフーガもまた、不可思議な……けれど優しい気持ちになっていた。
(何処かで聞いたような気がする潮騒の音。きっと素敵な音に違いない……まるで、故郷の海を思い出すかのような)
そんなフーガを見ていたからだろうか。クウハもとある提案をする。
「多少危険な場所ではあるが、少しのんびりしていくのもいいかもな。折角綺麗な場所に来たんだ。すぐに帰るのも勿体無いだろう?」
「そうっスね。今日は大変だったし……ちょっと休んでから帰るのには賛成っス!」
ライオリットもそう賛成して……他の皆も、反対する理由はない。
綺麗な滝と泉。貝から聞こえる潮騒の音と、たくさんのヤドカリ。
淡水のはずなのに強く海を感じながら……僅かに平穏な時間を過ごすのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
女神の欠片「潮騒の貝殻」を手に入れました!
GMコメント
ヘスペリデスの滝と泉を合わせた水場で女神の欠片「潮騒の貝殻」を見つけましょう!
他にも貝がたくさんありますが、どれがそうなのかは耳に当ててみるまで分かりません。
妨害を避けて頑張りましょう!
●出てくる敵
・亜竜スゴイヤドカリ×不明
ヤドカリ型亜竜。
どのように凄いかというと、自分を耳に当てた相手に超音波を放ちます。
まともに受けると短い時間気絶します。つまり水にぷかあって浮きますね。
その他、戦闘音に反応し他の亜竜が集まってくる可能性もあるでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はDです。
多くの情報は断片的であるか、あてにならないものです。
様々な情報を疑い、不測の事態に備えて下さい。
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