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シナリオ詳細

<廃滅の海色>テンペスト・サクリファイス

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●想起せよ、廃滅の海色を

 過ちはあってはならない。過ちとは罪であり、捨て去るべきものである。
 正しき国に住まう者らに罪はあってはならず、神もまた罪を望まぬ。
 わたしたちは純白たる身と衣によって自らを証明すべきだ。
 魂が清純であると。魂が純白であると。
 神がそう望まれる。

               ――――聖ロマスの書 5章 8節

 ……幻想王国。本来腐敗しうる筈だった王国の未来は、変わった。
 いつからだ? いつから我々の導はズレたのだ?
 あの国は本当は腐敗の極みに達する筈だった。
 だというのに――完全解決はしていないが――些か清い状態になっている。
 おかしい。それはおかしいのだ。我々の導にない。
「ならば修正せねばならない」
 私は正しい。我々は正しい。
 故に同胞たる聖女ルルが幻想王国に神の国を降ろさんとしている。
 ならば、私は『こちら』へと赴こう。
 海へ。本来何人をも通さぬ絶対の領域であった――海洋王国の東へ。
 ……遂行者マスティマは降り立つ。この海の国にも帳を下す為。
 あぁこの国も間違っているから。
 この国の大号令などという出来事は成功せぬはずだったのに。
 ましてやその果てに新境地を見つけるだと――?
「開かれた海。開かれた世界。
 ――あり得ない。認めない。そんな世界は在ってはいけない。
 この海の先に国があるだと? 知った事か。
 そんなものは我々の導の中にないのだ。
 『存在しない』のだ。
 この海の果てにどれだけの命があろうが、そんなモノは塵芥にも満たん。
 連中の命と人生は間違っている。それが正しいのだ」
 生きているだけで間違っている。
 ――だからまずは、かの国が開かれてしまった『元』を正そう。
 静寂の海を絶望の青へ。
 引き戻すのだ。
 ――遂行者達が進めている『神の国』とは、現実世界に侵食する特殊領域。それはまるで既定の世界を、遂行者達にとって都合の良い新たなるベールで包むかのように――いずれは現実世界へと降りて来る。
 虚は現へ至るのだ。
 つまり。遂行者達の狙いが果たされれば……
 この『静寂の青』を『絶望の青』へ再び引き戻す事も可能なのではないか。
「ルルは今頃、クソサマエルと戯れている頃か。私も動かねばな」
 故に動く。故に歩を進める。
 遂行者達の歩みは天義だけに留まらぬ。
 海の王国にすら轟こう。
 思い出せ。この地がなんと呼ばれていた事か。

 想起せよ絶望を。


 ――『神の国』が海洋王国にも顕現した。
 その一報は遂行者の調査を行っていた天義より齎される。
 しかし国外たる領域ならば流石に天義が戦力を派遣する、とはいかない。故に――
「イレギュラーズに依頼が舞い込んだ、と」
 呟くのはイリス・アトラクトス(p3p000883)だ。海洋王国に縁深く――更には今回の『神の国』の現場がアクエリア・フェデリア間の海域に近い場所と言う事もあって声が掛かったのか。そも、この地に達するにはテセラ・ニバスの帳(異言都市(リンバス・シティ))の内部に存在していた『アリスティーデ大聖堂』を通る必要性があるが故、余人は容易には立ち入れぬ面もあった。
 ともあれ彼女が見据えた先には……あぁ確かに見知った海が広がっていた。
 ――だが同時に、見慣れぬ要素も存在もしている。
 船だ。大量の船の残骸が、ひしめき合っている。
 まるで船の墓場だ。異常海流によって運ばれてきた船の数々がまるで島の様である。
 ……いやそれだけではない、これは。
「大号令の……軍船?」
 船体の一部に刻まれていたのはイリス達が経験した海洋王国大号令……
 の、『次の回』の数字が刻まれていた。
 ――あり得ない数字だ。海洋王国大号令は成功した。『次』などあろうはずがない。
 成功したのだから。もしも『次』などという事があるのなら。
 それは、あの大号令が失敗していた時の話。
 ……まさか『そう』なのか? この地は。

 大号令が失敗し、絶望の青が続いている――前提の世界?

 思考を巡らせた、しかしその時。
 足元が大きく揺れる――なんだ、と思えば。彼方に『影』が見えた。
 何かが暴れている、がアレは。
「ねぇ美咲さん、あれリヴァイアサンじゃない!?」
「……確かに。でも姿は似ているけれど、どこか違う」
 続けて目線を巡らせたのはヒィロ=エヒト(p3p002503)に美咲・マクスウェル(p3p005192)だ。二人は天義で起きた遂行者の事件を追って、彼らの動く情報を得ていた――その矢先の出来事が、これか。
 巨大な竜の様な姿。あれはまるで、リヴァイアサンだ。
 しかしおかしい事がある。その姿は『二つ』あるのだ。
 リヴァイアサンを模したという事か――? 海域はおろか、神威まで。
 ……だが流石に神代種と謳われる存在の模倣は無理があったのだろうか。
 何やら暴走している様に感じる。手当たり次第に暴れているが如く。

「屑蛇め。やはり不遜にも『神』の名を冠する輩など使えんな――」

 と、その時だ。その傍に何やら人影が見えた。
 白き衣を身に纏ったものだ。顔は……マスク? いや機械の如き面であり窺えぬが。
 しかしアレが所謂天義で暗躍している遂行者には違いあるまい。
 奴、か。或いはこの地を形成している『触媒』を破壊すれば、この地に降りた『神の国』は破壊出来るだろうか。
 が。向こうもそう甘くはないようだ。
 イレギュラーズの接近を感知したようで尖兵を繰り出しつつある――
 まだ此方の正確な位置までは気付いていない様だが、どうしたものか。
 奇襲できるか、模倣リヴァイアサンにもう少し暴れさせるか。勝手に自滅してくれればそれが一番だが、流石にそこまではいかないか? だが奇襲ではなく、時間をかけて攻め上がるのも一つの手かと思考して――
 だけど。同時に嫌な気配をも感じる。
 この空間は、この領域は。
 かつて七罪冠位が一角、アルバニアが生きていた頃に蔓延っていた――

 廃滅病の気配が、するのだ。

GMコメント

●依頼達成条件
・『触媒』の破壊。

●フィールド
 『絶望の青』――を模した海域です。
 神の国と呼ばれる特殊な空間であり、なんらかの触媒を核にして形成されています。
 そして現場となるのは数多の船の残骸が海流により集っている地で、位置的にはアクエリア・フェデリア間の海域です。

 難破船、破損した船などなどが無数に存在しています。
 飛び移ったりして移動する事は十分可能でしょう。しかし問題は天候であり、まるで未だ『絶望の青』が続いているかのように暴風暴雨が吹き荒れています。その為、やや反応や機動力に影響があったりするかもしれません。
 敵は海域中央にある大型船(の残骸)の甲板上、もしくはその周辺に存在している様です。

 なお。この地では長く滞在していると『廃滅病』に似た病(BS)に掛かる事があります。
 あくまで『神の国』にいる間だけの特殊BS扱いです。
 出れば解除されますが、BS解除スキルでは解除する事が出来ません。

 このBSが付与されると徐々に『最大HP』が減少していきます。この効果でHPが0になる事はありません。また廃滅病と似た症状が身体に発生する事もあるようです。
(異臭が生じる、体の一部が溶けるかのような感覚を味わうなど。これらの要素はステータスの数値には影響しません。またこれらも神の国を出ると解除されます)

●敵戦力
●『??』マスティマ
 天義で暗躍している『遂行者』の一人です。
 やや尊大な物言いの多い男。今の世界を『間違っている』と称しています。
 海洋は大号令なんか成功するべきじゃなかったし、豊穣は生きている事が間違ってると。
 戦闘能力の類は不明ですが、強大な力を感じえます。戦闘が始まると最初は主に影の天使やワールドイーターに攻勢を任せるようです。
 武器は所持していない様に見えますが……?

●『ワールドイーター:リヴァイアサン』×2体
 滅海竜リヴァイアサン……に近しい姿を持っているワールドイーターです。
 しかしあまりの神威を模そうとしたためか、やや暴走気味です。
 思い思いに動き、時に互いに喰らい合うように争っています。その余波は主にイレギュラーズ側に向きます――が、マスティマや影の天使も幾分か巻き込む勢いです。海嘯を発生させ数多を呑み込まんとしています――

 意思の疎通は出来ません。所詮、紛い物ですから。
 とはいえ非常に高いHP、海嘯を中心とした範囲攻撃はそれなりの脅威です。
 ただ、どちらかがこの地の『触媒』となる核を体の中に呑み込んでいる様です。
 なにがしかの非戦スキルで調べる事が出来るかもしれません。
 撃破すれば同時に触媒の破壊も生じる事でしょう。

●『影の天使』×20体
 其の名の通り『影で出来た天使』の様な姿をしています。
 やたら数が多いですが主に剣を持った前衛型と、弓を持った後衛型の二種類の存在のみのようです。リヴァイアサンを躱しながら皆さんに攻勢を仕掛けんと試みてくる事でしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <廃滅の海色>テンペスト・サクリファイス完了
  • GM名茶零四
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年06月06日 23時10分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
あたしの夢を連れて行ってね
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
一条 夢心地(p3p008344)
殿
紅花 牡丹(p3p010983)
ガイアネモネ

リプレイ


 空はまるで嵐の如く。いや実際に嵐、か。
 作られた空間であるというはずなのに、天候まで模倣しているとは……
「天義の件は話には聞いていたが……どうにも手作りがお好きなこったねぇ。
 ……まったく嬉しくもねぇおまけの手土産つきときた」
「滅海竜リヴァイアサン、か。
 形だけは『らしさ』を保っているようだが……所詮は紛い物に過ぎない。
 負ける訳にはいくまい。こんな程度の模造品、見るも醜悪だ」
 語るは『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)に『騎士の矜持』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)だ。彼らの視線の果てには――リヴァイアサンを模した存在が在ろうか。姿を見ればかつての戦いが思い起こされもする、が。
「何だこりゃ、ウミヘビ二匹連れて来りゃあ、おれさまに勝てるとでも思ったのかよ?
 舐められたモンだよなあ──それともこれが連中の精一杯ってか?
 ハッ! ゴミみてぇモンしか作れねぇたぁ『神の国』ってのもお里が知れるなァ!」
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)の高笑いの通り、だ。
 何を臆そうか。何が竦もうか。
 ――ぶっ潰してやるよ。
 往く。数多の船の残骸を飛び越え、連中を叩き潰さんとッ――!
「絶望の青をもう一度征服しろってなら別にやってやってもいいけどさ。
 それよりアイツをぶっ殺した方が手っ取り早いよね?
 こーいうのは全部根元から引っこ抜くのが一番だよ――アハッ!」
「何度も何度も、後出しで間違ってるとか。豊穣も見えなかったツロの預言が如何程のもんよ。その時点で格が知れるってのよ――ごちゃごちゃ言い訳せずに、自分を取り繕うしか出来ないなんて、ね」
 さればイレギュラーズ達を排さんと至る影の天使らの影が見えようか。
 邪魔だとばかりに『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)と共に、その天使らへと一直線――ヒィロは挑発的な言も浴びせながら、連中の気を引き付けようか。そして隙が出来た所へと美咲は掃射の撃を浴びせかかるが……それ自体はあくまで『ついで』程度である。
 ――本命は触媒探し。
 天使共をなぎ倒した所で、この地の神の国を終わらせる為には意味がないのだ。あの模倣滅海竜のどちらかを討滅せねば。故に美咲は攻撃しつつも連中の観察の方に注力する――ワールドイーターへと解析の瞳を向ける事を試みるのだ。
「さて。彼らの言う真の歴史というのも、学者の端くれとして興味はある所だ……が。
 此処に長居していると些か危険な予兆がするしね。まずは事態解決と行こうか」
「うむうむ。どちらの滅海竜が触媒を吞み込んでいるか――
 まずはさっさと確認せねばの! ほれ、どっちじゃ麿にその身を晒してみせよ!」
 更に『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)に『殿』一条 夢心地(p3p008344)の動きも続こうか。ゼフィラは素早き動きと共に味方に治癒術を降り注がせる――そして先の美咲と同様に滅海竜を観察しようか。
 必ずある筈だ。触媒というのがなんなのか、仔細は知らぬが……
 恐らく神秘なる物としての反応が必ずある筈だ。
 故に夢心地も、至らんとする影の天使に自慢の夢心地ビームを叩き込みながら空を飛翔しようか。邪魔な連中は撃ち落としつつ……滅海竜の身を透視せんと試みる。うぉぉバリウム、バリウムの要領じゃ!
「練達人間ドックでバリウムを飲んだ後にぐるんぐるんさせられながら胃を見られる要領で探し求めれば――異物を見つけられようぞ! 麿もこの前それやったら医者に何か深刻な顔をされて、ぬわ――!? なんじゃ滅海竜が海嘯を――!!」
「お気を付けを……! リヴァイアサンも反撃の意思を見せています!!」
 だが観察もそう簡単にはいかない。リヴァイアサン自体、影の天使と同様に敵なのだ。
 二匹で相争っているとはいえ、近付く個体があらばそちらに撃を仕掛ける事もあろう。
 空舞う夢心地を狙いて海嘯一閃。幾つか影の天使も巻き込んでいるが、しかし威力は高そうだ――果てに着弾すれば難破船が粉々に砕かれる。本物でないとはいえ、力はそこそこある、と言う訳か。
 故、『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は警告の声を飛ばしながらリヴァイアサンへの接触を慎重に試みる。足場となる船を巧みに跳躍しながら――彼女は星のごとき燐光の尾を引く魔力の閃光を放とうか。
 同時にココロもリヴァイアサンの身を透視せんと、瞳に加護を。

「――イレギュラーズか。下らん連中が来たものだな」

 刹那。声がした――それは白き衣を身に纏った……マスティマか。
「お前達はいつもそうだ。どこにでも現れ自らの足跡を付けていく。清浄なる世界の汚物め」
「……何が汚物だよ。そっちは好き勝手に絵の具を付けていく子供じゃないか」
 であれば『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)は告げるものだ。
 影の天使達を抑えながら。その口より零れる言の葉には……確かなる感情が詰まっている。
 ――正直ね、私はそんなに短気な方じゃないと自分では思ってるんだけど、さ。
「流石にね、何も知らない所から自分たちの今までが間違いだと言われたら」
 ――ちょっと何らかのラインは越えたよね。
「潰させてもらうよ」
「やってみろ。お前達の醜悪な足跡など、全て消させてもらうがな」
「うるせぇ。誰かが命をかけた戦いをなかったことにしてるんじゃねえよ、クソが」
 更に次いで『巨星の娘』紅花 牡丹(p3p010983)も天使達へと炎を紡ごうか。
 それは怒りの炎。魂の奥底より放たれる一条の輝き。
 ――何が間違いだ。何が醜悪だ。
 好き勝手なことを言うな。お前ら如きに……『此処』で戦った者を消させるか!

 誰にも言わせない。命を懸けた歩みが――無駄だったなどと!


 戦いは入り乱れる。リヴァイアサンは各々で暴れながら数多を破壊しよう。
 船を、イレギュラーズを、そして味方の筈の影の天使すら。
「なんという乱雑っぷりよ。折角にも数が多いというのに、活かせておらんのではないかの、アレ?」
「と言っても――やはり模造リヴァイアサンの海嘯は強大だ。皆、警戒を怠るなよ!」
 その光景を見据えるは夢心地にベネディクトか。夢心地は再び飛翔しながら調査と攻撃を続行する――ただでさえ滅海竜に注力したい状況下なのだ。邪魔な天使共は、海嘯による撃で弱った個体などがいれば今の内に削っておこう。
 次いでベネディクトは模造滅海竜自体を狙っていこうか。
 幸か不幸か、模造の撃が激しい為に天使達の布陣には穴がある。
 移動にはそこまで不自由しなかった――それでも追い縋ってくる天使がいるのであれば、纏めて穿ってやる。必殺の槍を天へと投擲すれば、空を切り裂き竜の咆哮が如き音が鳴り響こうか。
 ――直後、着弾。超越の衝撃波が周囲を襲いて。
「さぁさぁ前座はちゃっちゃと消えちゃってねーお呼びじゃないんで」
 更に畳みかける動きを見せるのはヒィロだ。天使の群れに飛込みながら、引き続き敵らを引き付ける――彼女の卓越した動きがあらば例え多数に狙われた上でもそう簡単には直撃しえない。故に一部の影の天使は他のイレギュラーズから狙わんとする動きも見せる、が。
「ちょっと何を美咲さん狙おうとしてるのさ! ――ブチ殺すよ!!」
 美咲が狙われればヒィロの感情が猛り荒ぶものだ。
 弓を持った個体型を狙う。いくら温厚……温厚……? なヒィロでも決して許せぬ一線がある。それが美咲の命を奪わんとする動作――ッ!
「ヒィロ、ありがとう――触媒の手がかり、そろそろ見つけたい所なのだけど……!」
「嵐がなければ……音でも探れそうなんだけれども……!」
 であれば引き続き美咲は数多の調査を行おうか。その身を透過せしめ、解析の術を常に巡らせる。極彩に輝く瞳も用いてリヴァイアサンの全身を探らんとしようか――同時にイリスも別方面から索敵を行う。音の反響で『違う』点が無いかと探るのだ。
 しかし彼女の懸念通り、此処は嵐が出ている。
 轟音の中であれば『耳』を用いた索敵は効果がどうしても弱くなってしまおうか。
(或いは――マスティマの方を探るのも手――?)
 故にイリスは視線をマスティマへと向ける。
 この場で明確に、人間と同様の思考をしているのは彼だけだと感じる。そして彼ならばどちらが触媒を宿しているのかぐらいは知っている事だろう……ならば彼の狙いを戦略的に読むことが出来れば、推察の一助となるのではないだろうか、と。
 しかしいずれにせよ、リヴァイアサンの身が強大である事と二体いる事が相まって――もう少し調査には時間がかかりそうだ。故に……
「オラ、ビビってんのか? どうしたよ! 何人かぶっ殺されたぐらいでよぉ!
 天使だかなんだか知らねえが、まとめて掛かって来やがれってんだ!」
 グドルフは最前線で派手に立ち回る。天使をぶった斬り、尚に吼えるのだ。
 であればこそ天使は先のヒィロに加え、グドルフを集中的に狙う。
 剣を突き立て弓矢を投じ。傷を与えて打ちのめさんとする――が。
「その程度かよ。ガッカリだぜ!
 んなもんでリヴァイアサンを制した俺らをどうするってぇ? ェエ!?」
 その都度グドルフは逆にぶちのめしてやる。挑発の言を常に絶やさずに。
 おらどうしたもっと来いと――
 しかし、その時イレギュラーズ達の一部に異変が生じ始めていた……これは。
「――懐かしいな。廃滅病か。
 こんなモン、できれば二度と味わいたくなかったんだがね」
 縁が気付いた。そう、廃滅病の症状だ。
 あくまでソレも模倣。真なる症状ではなく、神の国から出れば露と消えるモノ。
 だが思い起こされようか――あくまで似たような病であり、問答無用の死を迎えていたあの廃滅病とは異なれど――しかし出でる症状は似ているが故に。身体が腐るような……そんな感覚が襲い掛かってくるのだ。
「全く。いらねぇものも再現するもんだ……
 悪いが、大号令も廃滅病もリヴァイアサンも、『おかわり』する気はねぇんでな。
 さっさと帰ってくれや。お友達とよろしく箱庭ごっこで満足しといてくれ」
 直後。縁は影の天使へと纏めて撃を穿つ。
 それは周囲の『気』の流れに干渉し、操る秘術――彼の血筋の技。
 もののついでにリヴァイアサン達も纏めて呑み込んでしまおうか。
 どうせどっちが『当たり』にしろ倒す必要はあるのだ。あの海で戦った本物には遠く及ばねぇにせよ――厄介な相手には変わらんだろうし。傷を与える事が出来る内に、可能な限り傷を重ねておこう、と。
「だがそろそろ特定しておかねばまずいな……誰か見えたか?」
「――仕方ないね。牡丹さん、加護をお願いできる!?」
「ああ任せとけ!」
 と。その時だ――探知に当たっていたゼフィラが他の者にも確認した所。
 これ以上の時間は掛けれないと、美咲が牡丹へと援護を依頼した。
 技能の効果を高める加護を、だ。これをもってして自らの直感を信ずる。
 どこだ。どこにある? 核となりそうなモノがある場所は……!
「……! 牡丹さん、確認して! 奴の――首元を!」
「首元……!? クソ、なんか、見えそうなんだが……!
 ――ああッ! なんだ、なにか……見えたぞ! ぽっかりと穴が開いてるように――
 『温度』が違う場所があらぁ!!」
 牡丹が見つけた。隅々までリヴァイアサンの身体を見据えんとしていた時……『温度』が異なる場所があったのだ。そこにまるで何か入っているかのように。一体のリヴァイアサンの首元に――何かを感じ得る!
「よし、間違いなさそうッアレが触媒だよ!」
「やりましたね……! それでは後は、アレを狙えば――ッ!?」
 次いで美咲も解析の術で見据え、ココロも透視の瞳で観察すれば確定だ。
 倒すべきリヴァイアサンは見つかった。ならば後は倒すだけ……と。
 そうなれば簡単だった、のだが。

「煩わしい。無為に争うだけであれば……
 お前達の力を見る為にもう暫く見逃しても良かったが」

 ココロが気付いた――マスティマが前へと出てきている事に。
「神の国は絶対だ。お前達ごときが穢すな」
「――だからさ。さっきから随分……上から目線の言葉が、多すぎるよ」
 同時。マスティマの様子もうかがっていたイリスが、言を紡ごうか。
 随分とマスティマはご立腹のようだ、が。
 あぁ――それはこっちの台詞なのだと!


 リヴァイアサンの片側へと集中攻撃が始まった。
 コレさえ倒せば神の国は維持できなくなるのだから――
 一方のリヴァイアサンは、しかし。狙われる状況にあっても戦い方は変えない。相変わらずもう一匹とは争って、影の天使やイレギュラーズも巻き込んだ一撃を放って。思うがままに暴走状態である。
「ほほ、海嘯が来るの! 皆々の者、注意せよ!!」
 そして大出力の海嘯が放たれる――相も変わらず全てを薙ぐかのような一撃だ。
 攻撃すべき対象は分かったが、それでも警戒を怠っていない夢心地の言が飛ぶ――もののついでに彼自身も、風を利用して跳ぼうか。暴風に煽られるのは承知の上で飛翔し、他の船を飛び移る様に移動し続けるのだ。
 これぞ義経の八艘飛びもかくやあらむ! そして――
「天使なんぞおよびではないのじゃ! 立ち塞がるならば――死せよ!」
「やれやれ果たしてどちらが先に事を成せるか……と言った所かな」
 夢心地は残存の天使を切り裂こうか。すれ違いざまに天使も夢心地へ剣の一閃を放つ、が。
 負った傷はゼフィラが治癒の術を巡らせる。
 彼女の紡ぐ歌はイレギュラーズの皆を覆い、常に戦う力を灯すのだ。
「煩わしい。そんな程度の児戯で成せるのは時間稼ぎ程度だろう」
 ――が。マスティマの一撃が襲い掛かって来れば話は別である。
 彼は五指を握りしめる。そこから放たれる拳は鋭く、重い。
 船に直撃すれば足場を粉砕しかねない程だ――ならば、と。
「分かっていたよ、いずれ介入してくる事はね」
 辛うじて躱しながら言を紡いだのは、美咲だ。
 これはまだ想定内。最後の最後まで様子見などあり得ないからと――しかし多くの人員は割く事はできない。倒すべき最優先はやはり触媒持ちのリヴァイアサンなのだから……故に。
「つーいに出てきたね! 遅いよおそーい!
 ボクが楽するために死んでもらうの決定ー! お前だよ、お・ま・え!
 聞いてるー? 耳ついてるー? もっと大きな声で言ってあげよ・っか~? アハッ!」
「――小煩い」
「ぶっぶー残念でした!
 お前みたいに最初から強札出してくるのは二流三流なんだよ、この道化!」
 信頼しているヒィロと共に事に当たるまで、だ!
 ヒィロは船の残骸を足場に大跳躍。船から船へと飛び移り一気に距離を詰め、マスティマを挑発するのである。この時の為に秘めていた切り札たる嘲笑を表情の色に纏わせながら立ち向かおうか。さすればマスティマの只なる一撃は空を切る様に彼女には通じぬ。
 同時に美咲は視線に殺気を込めて――文字通り『視線で殺す』一撃を放つ。
 ――が、マスティマは動じない。
 拳一閃。空を穿つように放てば、衝撃が彼方まで襲い掛かろうか。
 遠当ての一種か。美咲にも穿ちてそれぞれを打ち倒さんとする撃を放つ。
 当然――攻撃が来ると分かっている二人は常に移動し躱さんとする動作を続けるものだ。
 マスティマの本格介入を遅らせる為にも……!
「あークッソ! うげーなんだよこれ、気持ちわり! 廃滅病ってこんなんなのか? こんなの復活させようとしてどうするつもりなんだ? アイツラ自分で掛かりたいのか? マゾなのか!?」
 その時。『おいおい異臭とか勘弁してくれよ!』と紡ぐのは牡丹である。
 こっちは『アイツ』に恥じぬよう、身だしなみも気を使っているというのに――遂行者共の所為でこんな有り様だ! 許せねぇ!!
「ったく! まぁ何があろうが――オレは硬い! オレは無敵だ!
 かかってきやがれ、全部全部捻じ伏せてやるよ――ッ!!」
 その怒りは敵へと直接ぶつけてやろうか。天使の剣が襲い掛かってくるが、彼女は恐れない。自らの堅牢たる身を全霊で活かしつつ、逆に炎の一撃を相手の懐にぶちこんでやろう。オラ、死ね、死ね!!
 ――猛攻が繰り広げられている。相手を全て撃ち滅ぼさんとする程の勢いであり。
「──パチモンでドヤ顔たあ寒い事しやがる。
 おれさまの知ってるリヴァイアサンは、この一億倍はヤバかったぜ」
 更に、口端より血を乱雑に吐き捨てながらグドルフは紡ごう。
 かつての戦いの記憶を。かつての死闘がどれほど厳しかったかを――!
「こちとら、ヤツの脳天に直接ブッコミ掛けてんだ。
 今更、こんなオモチャでビビったりしねえんだよ!!
 こんなんが正しいってか? 笑わせやがる! こんなショボイの出すんじゃねぇよ!」
「真実に程遠い模造品など――喰らい破らせて貰う!」
 己を携えグドルフは一閃。更にベネディクトも己が槍をリヴァイアサンへと投じようか。
 こんなものに負けるわけにはいかぬ、と。
 全てを出し切る一撃を込める――獣が如き獰猛さでリヴァイアサンの首元と破らんとし。
 されど。模造品とはいえ、やはり大竜は大竜。
 その力を結集させ、自らに挑まんとする不届き者を――消し飛ばさんとする。
「大海嘯……! させないッ――!!」
 故に。飛び出しのがイリスだ。
 偶然にもタイミングのあった二つの海嘯の合流。凄まじい破壊力を秘めた一撃を――しかし彼女は自らの身を挺して防がんとする。誰も落とさせない。誰も『此処』で死なせたりなどせぬと……!
 あぁそうだ。あの遂行者の前で屈したりなど出来ぬのだ。だって。

 ――先を目指す事が間違いだなんて、認めない!! 絶対に!!

 多くの者が尽力した。命を懸けて海に挑んだ。
 あの情熱が。魂の輝きが嘘だったなんて――
「言わせ、ない……!!」
 ――衝撃がイリスを襲う。迷いなく使った守護の力だった、が。
 当然凄まじい勢いが彼女に降り注ぐわけである。
 吹き飛ばされ、難破船の甲板上に激しく落下して――
「――イリスさん!」
「これ以上……時間は掛けていられねぇな。かつての日々の続きはいらねぇんだ」
 故にココロが即座に治癒の術を振り絞る。イリスの身にはこの地の廃滅病らしき症状も出ており――危険な状態だ。だが、それでも神の国から出れば消えるのであれば、とにかく今を生かせば大丈夫のはずだと……ココロは力を振り絞らせる。
 そしてイリスが作り上げた機を――縁は見逃さなかった。
 全霊たる一撃を叩き込める。首筋へ、膨張した黒の大顎が喰らい付くのだ!

 ――直後。リヴァイアサンが大きな咆哮を天へと向ける。

 総力を結集した攻勢が功を奏したか、最早消え失せる寸前のようだ――
「なんという使えん塵だ。所詮不遜にも『神』の名を冠する存在など……この程度か」
「アハッ! なにそれ、負け惜しみー?」
「どうする? もう一回此処を再現してみる?
 ――まぁ絶望の青なんか何度作られても、また吹っ飛ばしてやるけどね!」
 さればマスティマは落胆したような声を零そうか。
 追い立てるようにヒィロが煽り散らかして、美咲はマスティマへと雷撃の如く急接近。
 その面砕かんとばかりに斬撃概念を齎さん――
「図に乗るな小娘如きが」
 と、したが。マスティマは美咲を捉えた。五指を開き、美咲の首筋を掌握すれば。
 そのまま膂力をもってして隣の船まで文字通り投げ飛ばそうか!
「ぐ――ッ!」
「――美咲さんに何してんだよ道化ッ!!」
「邪魔すんな。とっとと帰れ、仮面野郎!」
 辛うじて斬撃の概念は紡いだが、仮面の破砕にまではいかないか――ッ!
 直後。ヒィロの脳髄を憤怒の感情が染め上げた。
 至ったグドルフと共にマスティマへと挑む――が、その刹那。
「チッ。模造品が……暴走をまだ続けるのか」
 マスティマやグドルフがいた船へと海嘯の一撃が飛来した。
 触媒を呑み込んでいなかった方のリヴァイアサンだ。
 喰らい合う対象もいなくなったが故に、真なる意味で自由に暴れている――この海は私のモノだと言わんばかりに。態度の増長振りだけは本物の如し、か。奴の放った海嘯の一撃は船を寸断するかの如くであり……大きく船が傾き始めて。
「もう一体の討伐は――どうかね。お前さんの動き次第な所もあるんだが?」
「なにやら嫌な『氣』が一帯を取り巻いておる。長居は無用じゃぞ」
 ならばと縁は状況を見据えつつ、マスティマへと呪いの歌を紡ごうか。夢心地も船をぴょんぴょん飛び跳ねつつ、自らの身に宿ってきている廃滅病の症状の匂いを嗅いでみる。うう。臭いが何故か嗅いでしまう。
 ともあれ残ったリヴァイアサンを相手にするか、マスティマを相手取るか。
 触媒を破壊出来た以上、この神の国は定着率が低くなり崩壊するだろう。
 つまりこれ以上の戦闘は行わなくてもいいのだが。
「――なぜそこまで絶望の青を踏破した冒険を否定する?
 我々が刻んだ足跡を消そうなどと……不遜なのは其方ではないのか?」
 ゼフィラはマスティマへと言を繋ぐ。
 そも、学者の端くれとして興味があるのだ――遂行者が言う『真の歴史』とは一体なんなのか。平行世界のようなものでもあるのか、単なる妄想か。それとも何か根拠でもあるのか……そちらの世界ではどのような歴史を辿ったのかも気になるところだ。
 だが、仮に如何なる理由があったとしても。
「間違っているだなんて言わせない」
 ベンディクトも紡ぐ。槍を携え、マスティマの動きに警戒しながら。
「俺達が今生きている世界は決して、全てが幸せに終わったばかりの世界ではない。
 ……失ったものがあった。何もかもが予測通りに進んだわけでは無かった。
 藻掻いて足掻いて――だが、それでも俺達が勝ち得て未来を掴んだ世界だ」
「それで? 掴んだ未来? そんなモノ、芥程の価値もない。
 お前達の旅路の途中で失われた者?
 あぁよく頑張ったと誉めてほしいのか? 花丸でもあげようか」
 拍手二つ。傲慢の極みから言が降り注ぐ――さすれば。

 ……てめえがなにもんか知らねえが、この歴史は間違っちゃいねえよ。

 グドルフが歩む。傾きつつある船の、甲板を。
 オクトは『満足』した。リヴァイアサンは『納得』した。アルバニアは『逃げなかった』
 敵だろうが、なんだろうが、奴らが選んだその選択を間違ってるなんざ。
「誰にも言う資格はねえんだ」
 ──そりゃ、本人が決める事だからなあ!!
 全霊の斧の一閃。その瞳に刹那に映ったのは、死んだ馬鹿な蛸野郎で……
「聖遺物ですらない無名のガラクタか。玩具遊びなら他所でやれ」
「ハッ! 見下ろしてばっかいると――予想もしてねー所から来るぜぇ!」
 直後。マスティマは真正面から迎撃せんと動け、ば。同時に牡丹が別角度から一撃叩き込んできた。変則的な飛行から繰り出されるトリッキーな一撃が襲い掛かる――ッ!
 『艦隊を護って消えたイレギュラーズ』には、彼女も思う所があるのだ。
 必死に輝いた命があった。その死を冒涜する者は――許さない。
 間違いであってくれと何度も願った。
 それでも消えぬ。決して消えない、確かな過去があるのだから――
「アイツらの戦いは――過ちなんかじゃねぇ!」
 彼女は許さない。『母』を蔑ろにする者を――!
「チッ!」
 ヒィロの猛攻、美咲の連撃をかねてより受けていたマスティマは決して無傷ではなかった。そこに加わるはグドルフの一閃に牡丹の襲来――更にはベネディクトがいつでもカバーに入れるように槍を構えているか。
 拳のみで戦って来た――が。
「――!? なに……アレは……!?」
 ココロの治癒により安定してきたイリスが、見た。
 マスティマの手に持たれている――『槍』を。
 どこから出した? 一瞬で手の内に出てきたように見えるが……
 その槍を用いてグドルフらの撃を防いでいる。流石に拳では限度があったが故、か。
「おのれ――過ち共が私の――」
「――ガタガタさっきから煩いんですよ」
 と、その時だ。更に至ったのはココロである。
 渾身の魔力を振り絞り想像した神滅の魔剣。
 ……あぁ彼女は苛々しているのだ。
 『神がそう望まれる』
 あの言葉は、わたしのお師匠様のセリフ。そんなところまで紛い物なの?
 独りであったわたしを拾って指導してくれたお師匠様はいわば神同然。
「その人の言葉を汚すなんて」
 心に湧く茨。胸の内に過る数多の感情が抑えきれない程の痛みを伴って。
 取り除くにはどうしたら? お師匠――
 ――嗚呼、そうだ。

 『だったら目の前の敵を倒しなさい』きっとそう仰るはず!

「滅しなさい! 神がそれを望まれている!」
「否! 私が正しい。私こそが神の意志に沿う者だ。お前達如き神の名を口にするな!!
 聖人でもない只人が――私に触れるなッ!!」
 ココロが殴りつけんと、強引にでも跳躍する――!
 許せないのだどうしても。だから、往く。
 高速一閃。互いに交差し、ココロは仮面に一撃を。槍は――刃ではなく柄の所でココロを横から薙ごうか。何故刃を使わなかったのかは分からない、が。ココロの身体が船の壁へと吹き飛ばされ、激突する。
「――か、はッ!」
 胸の奥より
 が、そこまでだった。触媒を失った神の国は、崩壊せんとしている。
「おのれ――まぁいい。貴様らの力とやらも見る事は出来た。
 ――いつかお前達は歴史ごと消し飛ばしてやる。私こそが正しいのだ」
「おっとぉ、逃げるの!? 死ぬまで此処に留まってれば、真の三流として認めながら殺してあげたのにね~!」
「顔面から……ビーム撃ちそうな顔してるのに……臆病なモノね!」
 これ以上此処に留まる必要もないか、と。ココロより受けた部分を手で押さえながら。
 マスティマは退く。別の船に飛び移り、そのまま何処かへと。
 さればヒィロに美咲が追撃の一手を放とうか。挑発に加えて斬撃一つ。
 流石に仕留めるまでは無理だが――先の一撃の借りを返さんとばかりに。
「くっ、船も崩壊するぞ! 皆、別のに移動しろ!!」
「……あの槍は、なんだ?」
「さて。ろくでもなさそうな気がするがねぇ……」
 さればゼフィラも声を張り上げようか。マスティマも退いたのなら、こちらもと。
 刹那。ベネディクトや縁は――マスティマの手に持っていた槍に想いを馳せるものだ。
 ベネディクト自身も槍を抱いている。黒狼の槍だ。
 これはかつて彼のいた世界での者を模したもの。由来はある、のだが。
 もしかするとマスティマが持っていた『槍』も何か由来があるモノではないかと――思考を巡らせるのであった。
 ……神の国。
 はたしてどこまでこの空間は広がるのであろうかとも――思いながら。

成否

成功

MVP

紅花 牡丹(p3p010983)
ガイアネモネ

状態異常

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)[重傷]
あたしの夢を連れて行ってね
イリス・アトラクトス(p3p000883)[重傷]
光鱗の姫
美咲・マクスウェル(p3p005192)[重傷]
玻璃の瞳
紅花 牡丹(p3p010983)[重傷]
ガイアネモネ

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 遂行者達は各地に広がりを見せていますね……彼らの言う歴史とははたして。
 ありがとうございました。

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