＜廃滅の海色＞高鳴の声

オープニング

●＜廃滅の海色＞高鳴の声
　ヤマネコの鳴き声が蒼海を貫く、広大な海が拡がる海洋の国。
　様々な事件があったが、今は大きな事件が起きる事も無く、ある程度平穏な生活を送れている時期。
　……そして今日も、そんな平穏な中に起きる小さな事件の一つが……。
『あー、クソッ。又今日も網を破かれてやがる……！』
『何だって？　……本当だ。少し前まで何もなかったってのに。これじゃあ絶望の蒼の時の様じゃねーか』
　荒れた海にも対応出来る程の中規模船にて、舌打ちと溜息を吐くのは乗組員達。
　確かにここは『静寂の蒼』と呼ばれし地だが、過去には『絶望の蒼』と呼ばれており、変異モンスターや荒れ狂う天候により、多くの船乗り達の墓標となった海である。
　だが国とローレットの活躍により平穏を取り戻した此の地は荒れも落ち着き、その場で漁をする一般人も増えていた。
　……だが、ここ最近になって網を食い破られ、漁はあがったりの状態が続いていたのだ。
『しゃーねぇ。もう一度沈めてみて、様子を見てみっか……』
　と、再び網を海の中に投じ、暫し具合を見る。
　……すると突然、人の耳ではギリギリ感じ取れるような高音の鳴き声。
『ん……？　う、うわぁっ！』
　次の瞬間、船は大きく左へ傾く。
　網はピンと張っており、何かが引っ張っているかの様。
　船はどうにか体勢を戻そうと足掻く為、網を引く。
　すると、張り詰めていた網がブチッ、と弾け……其れと共に海上に跳ね上がる生物。
　船と同じくらいの大きさの……『イルカ』。
　しかし動きは獰猛で、鋭い牙に、頭頂部には『角』の様な物。
　その角はまるで刀の如く船を薙いで、船員達は船より振るい落とされてしまう。
　冷たい海に溺れ、悲鳴を上げる彼等の視界に……頭頂部の角の下に『王冠』の様な刻印が、薄暗い海でもはっきりと分かるように鈍く輝いていた。

●
「……えっと……あの、すいません。今回は……この国ではないのですが……みなさんに、力を貸して頂きたいのです……」
　天義首都、『深緑の声』ルリア＝ルナミス（p3n000174）はペコリと頭を下げながら、君達に力を貸してくれないか、と御願いする。
　頷いてくれた君達と共に、酒場の一角でルリアは世界地図を広げ、指す……そこは天義から遠く離れた『海洋』の国。
　何故天義の国から、海洋が出てくるのか……と疑問に抱く者は居るだろう。
　だがルリアは、この事件、天義で今起きている『致命者』が関わっている可能性がある、と言う。
「海洋の国の『静寂の蒼』と呼ばれる海域の一角で、最近猟師達が帰って来ないという事件が多発しているのです。それだけなら、この天義とは関係無い……と思っていたのです」
「ですが……その被害を受けるものの、命からがら生き延びたという船員の方が居たのです。そんな彼が言うには……巨大な『角』を持ったイルカに襲われたと言うのです」
「それだけなら、突然変異したイルカ……というだけかもしれません。ですが、船員の方が、このイルカの頭頂部に『王冠』を模した『刻印』が鈍く輝いていた、と言うのです」
「最近の事件では……致命者の方々はそれぞれ、印のようなものを残していると聞きます。このイルカも……そんな致命者の創り出した異形なる魔物かもしれません」
「また襲われるのは、決まって深夜の刻であると言います……影の者達が、何かしら噛んで居るのでは……という感覚が拭い切れないのです……」
「……不明点が多く、御願いするにも申し訳無いのですが……致命者達の新たなる動きの切っ掛けかもしれません。どうか……力を貸して頂きたく……宜しくお願いします……」
　そうルリアは、もう一度深く頭を下げるのであった。

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

●海辺の声、悲鳴に通じ
　海を渡るヤマネコの鳴き声が甲高く響きわたる海洋の国。
　此処は静寂の青と呼ばれし海域に属する港町……過去、イレギュラーズ達の力によりて解放されたこの海域は、今となっては平穏を取り戻しており、海に生きる者達は漁へ、交易へと船を漕ぎ出す。
　……しかし、そんな海域に、再び忍び寄りつつある不穏な影。
　その影は遠く離れた天義の国より伸びし影であり……つい数日前より、その騒動は船乗り達の間に拡がりつつある。
「ったくよぉ、せっかく海洋も平和になったってのに、致命者めー！！」
　プリプリと怒りの表情を浮かべる『生イカが好き』ワモン・Ｃ・デルモンテ（p3p007195）。
　それに『苦い』カトルカール（p3p010944）も。
「ああ、全くだぜ。なんだよ正しい歴史ってよ！」
　当然、天義で起きている事件やら、、彼等の言う『正しい歴史』云々の話は彼の耳にも届いている。
　実際の所、天義の一つの街は彼等影の者共によって一度支配された……故に口だけではない、という事も重々承知。
　しかし、そう簡単に驚異の前には屈する事は無い。
「放っておいたら世界を滅ぼしちゃう奴をやっつけて、僕達は海を拓いたんだろう！？　僕のシマのシレンツィオ・リゾートが間違っているだなんて、誰にも言わせないからな！！」
　強く矜持を口にするカトルカール、それに『歪角ノ夜叉』八重 慧（p3p008813）は。
「そうっすね。この海域で繰り広げられた事件が、多くの犠牲を生み出したのも知っているっす。ですが、皆さんがこの海を越えて豊穣に来てくれたの、俺はすげー嬉しい出来事だと思ってるんっすよ。俺は当時の海には居ませんでしたがね、あの偉業の否定なんてさせないっす！」
　慧の言う通り、イレギュラーズ達の偉業によりて、海洋より豊穣へと至る航路が築かれた。
　故にこうして豊穣の者達と行き交うことが出来るようになった訳で。
「ま……何はともあれ、だ。今回の仕事はデカイイルカのワールドイーターを倒す事だ。それに併せて影の天使達も再現無く出てくる様だからな……こいつらは確実に仕留めなければならん。深夜の刻でもあるからな、暗視に感覚を研ぎ澄ませてやるしかねえな」
「そうだな！　奴らが何を企んでるのかはしらねーけどよ、海洋の平和はオイラ達が守ってみせるぜ！　みんな！　海洋の平和を守る為にも強力よろしくたのむぜー！！」
　『侠骨の拳』亘理 義弘（p3p000398）の言葉にぶんぶんと手を振るワモン。
　そうしていると、港の猟師達の方へと話しに行っていた仲間達が帰還。
「ふぅ……取りあえず猟師達に、凶海に出るなとは伝えておいたぜ。勿論黙って出てくような奴は居るかもしれねぇが……」
「いや、大丈夫じゃ。海洋の者達は、確かに荒々しくもあるが……同じ海に棲まう仲間達じゃ。その命を無碍にするような無貌者はおるまいて」
　『あいいろのおもい』クウハ（p3p010695）の言葉に『海淵の祭司』クレマァダ＝コン＝モスカ（p3p008547）は、自信あり気に頷く。
　彼女が言うのならば、間違うことはないだろう……とクウハは頷く、その一方で『観測中』多次元世界 観測端末（p3p010858）は。
「ソレニシテモ、今回初観測ノ、海洋二現レしワールドイーター。彼等ニハ全テ刻印が認メラレルトノ事。王冠ノ刻印ト言ウコトハ、対象ハ同系統ノワールドイーターノ上位種、或イハ統率用ノ指揮個体ナノデショウカ？　マサカ、巨大イルカガ致命者ソノモノナノデショウカ？」
　そう観測端末が疑問符を呈すると、『玉響』レイン・レイン（p3p010586）が、
「……確かに……王冠の刻印……遂行者が刻印を身体に入れているのは……天義の国でも……見た事がある……じゃあ、此処の子は……誰かが作った……って言うよりは……この子が遂行者……や……致命者……なのかも……？　刻印がある人達は……何か強い思いを持って居る人も居た……だから……今回の子も……何か……怒ってたり……悲しんでたり……するのかな……？」
　レインの言う通り、天義の国で遭遇した遂行者らは、全て確認出来て居る訳ではないものの、刻印を身体の何処かに刻んでいる者が多かったように感じる。
　それが、影の者達を示す標なのかどうかは分からないが……少なくとも普通にこの海洋に棲まう者ではないのは確かであろう。
　そんなレインの言葉に観測端末は。
「ダトスルナラ観測スル者シテ、ナカナカニ興味深イ案件デス。捜索中ニ漁船ト遭遇スル可能性モアリマスノデ、ギフトデ人型ニ変身シテオキマショウ」
　と、可能性から推奨すべき行動を導き出し、人型に変身。
　最初は驚いたものの、最近はレインも慣れつつある……ただ観測端末としては。
「長時間変身する程、解除後の筋肉痛が酷いのですが……当端末の本来の外観で暗闇から現れると、猟師さんがパニックになるかも知れませんので致し方在りません」
「……配慮……ありがとう……」
　頭を下げるレイン……そして。
「それじゃ、あんまり余裕も無いし、急ぐとするか」
　と言いながら、クウハは海に向けて声を掛ける……すると、宙からぼんやりと姿を現わし、彼に甲高い声で鳴く『竜宮イルカ』が。
「イルカと一緒にイルカの敵と立ち向かう事になるとは、なんかちょっとワクワクするな……頑張ろうな、フィーネ」
　名を呼ばれたフィーネはこくりこくりと頷き、嬉しそうに水飛沫を上げる。
　……そしてイレギュラーズ達は、夜の刻を迎える前に『静寂の蒼』へと漕ぎ出していくのであった。

●蒼き煌めき
　そして海に漕ぎ出し、数時間。
　すっかり夜が暮れた大海原は静寂に包まれ、神秘的でもあれば……何処か恐ろしさも孕んでいる。
　そんな大海原には、漁船の灯は今の所見受けられない……クウハを初めとして、レインやカトルカールの説得が功を奏している様である。
　この大海原の上に、少なくとも視界に移る範囲内では……イレギュラーズ達のみしかいない、そんな状況。
　勿論、だからといって安心しきれる訳では無いので、出来うる限り早急に彼等を見つけ出さなくてはならないだろう。
「……取りあえず……ワールドイーターに……こっちの位置を知って貰えるように……しないと……」
　とレインは言うと共に、己が身体をぼんやりと光らせる。
　儚げな光は海面を薄く照らす……だが、その視界には、未だかの『イルカ』は映らない。
　更にカンテラを観測端末が照らし、加えて暗い視界を暗視の視程に治めて、怪しい動きが無いかどうかを、常にアンテナ高く張り巡らせて察知しようとする。
　静寂の中に探索を続けていき……丑三つ時の頃。
『……ゥォォォン……』
　注意してなければ聞き逃してしまう程の、小さな獣の鳴き声。
　その鳴き声にワモンが気づき、声の方角に顔を向ける。
「ん……どうした？」
「いや……こっちの方から声が聞こえたんだよな」
　義弘の言葉にワモンは眼を閉じ、更に感覚を研ぎ澄ませる。
　……数分して、また。
『……ウォォン、ォォン……』
　断続的で、何処か悲しげな鳴き声が、先程よりも近づいてきている。
　数分の後、また声が近づいてきて……そして、数回の後。
『ウォォォォン……！』
　最早誰の耳にも聞こえるほどの大きさで、聞こえてきた鳴き声。
　その鳴き声と共に、ザバァァンと水飛沫が立ち上がり、そこから飛び出してきたのは……巨大な体躯のイルカ。
　いや、イルカとは名ばかりで、その大きさは……。
「これは……久しく見る巨大なイルカじゃ。これほど巨大ならば、もう鯨と呼んでも差し支えあるまい」
　クレマァダの言うが通り、イルカの形状をしてはいるが、その大きさは鯨と同等。
　そしてその身を翻し、海面に巨躯を叩きつければ……当然ながら、大きな水飛沫を上げて、波も立つ。
　竜宮イルカを駆るも、飛行する者達をも飲み込むその波にからだはずぶ濡れになる。
　……しかしその巨大イルカは海中をぐるりと回り、またも海面上に飛び出してくる。
　その瞬間を待ち構える様に、、じっと目を凝らしていたイレギュラーズ……頭頂部には角があり、その生え元には、鈍く煌めく『王冠』の標。
「間違いない……奴がワールドイーターだ」
「そうっすね。なら、こっちで惹きつけさせて貰うっすよ！」
　義弘の言葉に頷き、慧はイルカに向けて大きな身振りで。
「船よりもっと食い応えのあるもの、こっちにあるっすよ！」
　と厄災招きし呪いの呪符を放つ。
　その身にぴとっ、と張り付いた呪符は生物であるワールドイーターの怒りを呼び起こさせ、彼にその矛先を向ける。
　とは言えその巨体故、直ぐに踵を返すことは出来ない……先ずは再度波を身で作り、続く刻に海面に顔を出して、角からの雷鳴を彼に向けて放つ。
　当然ながら雷鳴は海面を伝い、思った以上の効力を発揮。
　彼の身を強く縛り付け、攻撃を躱せない様にした所で、更なる波の一撃で、慧に大ダメージを与えていく。
　だが、直ぐに慧の体力をレインと観測端末の二人が回復し、代わるように義弘がインターセプトし、その攻撃をカバー。
『ウォォン……！』
　鳴き声はやはり悲しげなのだが、聞いた者の心をざわつかせる……でも、決してそれに乗る事は無い。
　そして義弘が対峙している所に、ワモンとカトルカールの二人が順次。
「やるぜー！　海洋海豹魂みせてやるぜー！　うおおおおお！　今日のオイラは特攻隊長！　やるぜー！　やってやるぜー！！」
「どんだけ巨体だろうが、疲れ切ればまともに動けなくなるだろう？　なら、動き回って疲れさせてやるぜ！！」
　と、両者初っ端から全力全開の攻撃を叩き込み、いるかの体力をガッツリ削り去る。
　そして前衛に陣を取った三人の一方で、クレマァダは皆とは違う方角へと移動……それは海中。
　仲間達が海上から攻撃するのであれば、自分は下方から攻め立てる策。
「我こそは絶海の鎮守たるコン＝モスカ。お主よりもこの海は知り尽くしておるのでな……この海で負ける訳には行かぬ」
　口調は穏やかながらも、その言葉の間には、絶対たる自信が見え隠れ。
　その自信を裏付けるかのように、竜の如くうねる体捌きで大波を生み出し、ワールドイーターの身を巻き込んでいく。
　波で攻撃している相手を、あえて波で反撃。
　イルカは驚愕の鳴き声を一度は上げるのだが、すぐにならばそれよりも大きな力で圧倒してやろう……と体現するかの様に行動を繰り返す。
　そんなイルカの動きを観察しつつも……クウハはその周りへの視界の展開は忘れずに行う。
　……数分イルカを攻撃し続けているが、影の天使の姿が未だみえない……きっと、この戦いを何処かで見ている事だろう。
「……影の天使は何処に居るんだ？　奴らはＫ毛を渡り歩くという話だが……夜の海で影が成る所と言うと……」
　とクウハは周りを見渡し、暗闇の中であっても影が生じるところを確認。
　暴れ廻るイルカの下、イレギュラーズ達の背後……空から照らす灯が描く影は幾つもある。
　だが、生じる影の中で一番大きいのは、イルカと空灯が描く海面の影。
「ここか……？」
　とクウハは練り明日魔師、その影に向けて魔性の声を奏でる。
　すると……その場の海面がまるで地上の如く隆起し……羽を持ちし影姿が具現化。
「やっぱりな……んじゃお前達は俺様が相手だ！」
　とクウハはニヤリと笑みを浮かべたまま、様々なバッドステータスを積み重ねる攻撃を、一気に放つ。
　影の天使らは、己が身を守るべく、ワールドイーターの影に隠れて回復をしようと動くが……それをも許さぬ迅速な攻撃。
　勿論クウハの動きに連動し、慧と義弘がその動きを惹きつけて影の天使から引き剥がし、ワモンとカトルカール、クレマァダが天、海面、海中の三方向から連携攻撃する事で、影の天使達の回復量を遙に上回る様な猛攻で攻め込んでいく。
　そして、イルカの出現から十数分が経過した、その時。
『っ……！』
　最後まで残っていた影の天使が、クウハの一閃により命落とし……残るはイルカのみ。
　心なしか、頭頂部の王冠の標の煌めきは、開始時に比べてかなり鈍い輝きになっていて。
「……僕達の事……難い……？　それとも……遊んで欲しかった……？」
　敢えて、レインが問いかける。
　……彼の答えは、悲しげな鳴き声のみ……何故か、心に虚しさを抱かせる、そんな鳴き声。
　その声に観測端末は。
「分かりませんね。何故に、悲しいのでしょう？　貴方達は、致命者の命に従い、殺す事だけを命じられているのではないのですか？」
　と問いかける。
　それに、明確な返事はない。
　ただ、一つ言える事は……攻撃の手を辞める事は無い、という事。
「そう……なら……仕方ない……ごめんね……おやすみ……王様……」
　とレインは悲しげに告げると共に、放つは光翼の光刃。
　その一閃は、漆黒のワールドイーターの身を切り裂き……真っ二つに分かたれた身は、漆黒の中に消え失せて行った。

●刻まれた標
　……そして、ワールドイーターの影が消失して、少し。
「ふぅ……終わったのか？」
　ワモンが汗を拭いつつ、周りを見渡しながらも、敵の気配を確認。
　完全な静寂に包まれ、船の通る音も無い……ここまで静かな海があったのか、とも思えるくらいに平穏な海原。
　そしてそんな海原からは、敵の気配を感じることもない。
「そうだな……影の天使達の跡形もなくなったし、取りあえず……この周域に居る奴らは消失した様だ」
「そっかー。ふぅ、取りあえず一段落って所だな！」
　クウハの言葉にニッ、とえ身を浮かべるワモン、そして。
「それじゃあ、祝勝会も兼ねてうちが看板係として働いている店に来てくれないかな？　烏龍茶と点心でおもてなしするぞ！」
「ん……それもいいっすねー！　俺、お供させて貰うっすよー！」
「そうだな……いつもなら酒だが、時にはそういうのもいいだろう」
　カトルカールの言葉に慧と義弘が頷く。
　そして、一応何もないかを確認し、帰路へと着くイレギュラーズ……に。
「……」
　立ち止り、振り返るクレマァダ。
「ん、どうしたっすか？」
「いや……な。ちょっと、先に行ってて貰ってよいかの？」
「え？　まぁ、いいっすけど……」
　慧が何故、と聞こうとするが、クレマァダの表情に……それ以上聞く事は止める。
　そして仲間達が離れた所で、クレマァダは……朝焼けしつつある『静寂の蒼』に潜る。
　……彼女を優しく包み込む水面……それに目を閉じながら。
「もう……その役目は終わったと思っておったのじゃがな……辺境伯として、これからは鎮座ではなく、他国との関わりを重んじて行くことになるじゃろうと……じゃが、いかんな。どうしようもなく、疼く。この海で戦うと。ここは我らが領海なのだと、絶海こそが、我が庭なのじゃと、な……」
　過去の戦乱と、今の平和……どちらが良いかと問われると難しい。
　だが、一つ、明らかに言える事……クレマァダは、目を開くと共に。
「……比べ合いと行こうではないか、致命者とやら。この海の王はどちらか、定める時じゃ……！」
　愛する海を、他国より侵略せし致命者を許す事は出来ない。
　そんな、強い確固たる意思を胸に抱き、クレマァダは強く、強く叫ぶのであった。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

ご参加頂きまして、ありがとうございました！
天義の国から侵食せし影の軍勢の狙いは良く分かりません。
ただ彼等をのさばらせておけば、またあの戦乱の時に逆戻りしかねないでしょう。
どうか、皆様の力を発揮していただければ、と思います。