シナリオ詳細
<伝承の帳>異界を闊歩するメインクーン
オープニング
●
――仔羊よ、偽の預言者よ。我らは真なる遂行者である。
――主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ。
新たな神託は、『現在の天義はまやかし』であり、正しき歴史に修復すべく『使徒』が訪れると予告していた。
イレギュラーズの活躍によって、その『使徒』、影の進軍は食い止められていた……と思いきや、それは氷山の一角。
影は人知れぬところで密かに活動を進めていたようだ。
「彼らは各地に『触媒』をばら撒いていたのです」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)はそう話を切り出す。
『神の国』は聖遺物を核とした作られた『遂行者』たちの領域であり、混沌のコピー。
ルスト・シファー(冠位傲慢)の権能によって構築された領域は、使徒によってばら撒かれた触媒によって、現実に神の国を定着させるという。
「完全に世界が書き換えられてしまう前に何とかしなければなりません」
天義も敵の動きを察知していたが、国外に騎士団を大々的に動かすことができない。
その為、ローレットへと騎士団にも纏わせている『純粋なる黒衣』を託し、彼らを止めるよう依頼してきている。
テセラ・ニバスの帳(異言都市(リンバス・シティ))の内部に存在していた『アリスティーデ大聖堂』より『神の国』の各地へと移動できる。
転移した先は『神の国内の幻想王国』となっており、この中で『核』の破壊したい。
「遂行者の意を組んだ致命者ジョエルがこの任に当たっているようです」
アクアベルは、狙われていたのは幻想にある街セイケトルだと話す。
ここは大量の猫がやってきたことで、イレギュラーズの活躍もあって猫と共存する街として生まれ変わり、多数の猫好きを中心に人々が訪れている。
この地をコピーした『神の国』には『核』が存在しており、破壊することが必須だ。
「以前、皆さんが解決した際、この地の猫たちを記した台帳を作成しましたが……それに遂行者の聖痕が刻まれています」
現行利用されているものが多数街に出回っているが、宿にある台帳の一つが『核』となっている。
これを破壊することで、現実世界のセイケトルを神の国の浸食から救えるはずだ。
「ただ、一部リンバス・シティとなったことで、迷い込んだ猫がいるようです」
街にボスとして君臨していたメインクーン、たこやき(♂)。
似て非なるこの場所へとやってきてしまったこの猫は普段自分に従っている猫と同じ姿をしたコピーに戸惑いを覚えながらも、普段と同じように街を闊歩している……らしい。
「『核』の破壊と合わせて、なんとか助けてあげたいですね」
猫の憩いの場が奪われる危険があるとなれば、黙っていられないと、アクアベルも参加の意思を示していた。
●
『アリスティーデ大聖堂』から、イレギュラーズは『神の国』へと至る。
そこは幻想の街並みを思わせる場所。
あちらこちらに住民と同じように猫の姿を確認することができた。
アクアベルの案内で、メンバー達は『核』があると思われる宿を目指す。
そこには、案の定というべきか、終焉獣や影の天使といった存在が核の守護役として配備されていた。
影の天使は大柄な人型が背に持つ翼で飛翔し、身長ほどもある槍を突き出してくる。数で攻めてくるのが厄介な相手だ。
終焉獣は2種おり、一つは飽食の口と呼ばれ、存在すら食らう恐ろしい敵だ。
もう1種は新たに確認された種で、長い髪を思わせるものが浮遊する苦悩の髪。己の体を叩きつけ、あるいは大きく振る払うことで起こす風を浴びせかけてくる。
また、相手を強く締め上げてその存在を消し去ってしまうことも……。
「…………」
そして、浸食度合いを確認していたと思われる致命者ジョエルの姿もあった。
相手はほとんど語らず、核防衛の為、応戦の意志を固めていたようだ。
「大丈夫です。心強い助っ人が来てくれます」
にこやかに笑うアクアベル。
直後、のっしのっしと歩いてきた助っ人とは。
「にゃふん」
全長1mもあるメインクーン、たこやき(♂)。
ただの猫と思うなかれ、以前交戦した際は、イレギュラーズと渡り合えるほどの力を持っていたというから侮れない。
とはいえ、世界を書き換えるレベルの相手となれば、さすがの猫も厳しいかもしれないが……。
「撃退しませんと、宿の中には……」
宿のカウンターに目的の台帳はあるだろうが、アクアベルが言うように影の一団が突入を許さないだろう。
「……排除」
ジョエルの短い一言を受け、終焉獣や影の天使達が一挙に襲い掛かってきたのだった。
- <伝承の帳>異界を闊歩するメインクーン完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年06月05日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
(サポートPC3人)参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
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イレギュラーズが至った神の国。
そこは幻想のとある街を模したものだった。
「今、ただでさえ何かと慌ただしい幻想国に、さらなる厄介事ですか」
「神の国が幻想まで射程に入ってるのも厄介な上にこの状況……」
この事態に眉を顰める『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)の言葉に応じた『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)が周囲を見回す。
そこは街道にあって宿場町として栄えたセイケトル……を模した場所。
元の世界の町並みと同じように、人々や猫の姿をちらほらと見かけることができる。
「まさか、猫まで住人として扱われてるのかしらこれ……」
イリスが見ている限り、人よりも猫の方が多い印象すら受ける。
「世の中には自称神が多くて困るわね。けれどまあ、猫だらけの街を模倣したことは評価しても良……こほん」
少しだけ、『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)は気を良くして語るも、途中で咳払いして冗談よと仲間から顔を背けていた。
「……聞きとうなかった。ここにいるにゃんこが1匹除いて幻だなんて」
事前に話には聞いていた『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)ではあったが、ほとんどが作られた存在と知って愕然としてしまう。
「どちらにしても、よくわからない力で作られた得体のしれない猫を可愛がる気分にはならないけれど、ね」
「無断にゃんコピーとかおのれ傲慢連中がー!」
頭を振るアンナの傍で、サポートに駆けつけたヨゾラが半ギレしていたのも無理もないことだろう。
「終焉獣に、コピーされた猫たち……」
紫電にはそれがまるで、R.O.O.が現実を侵食してきているように。あるいは過去の改変のようにも感じて。
「……全くアジな真似をしてくれる」
「猫さんの街……のにせもの、無断コピーなんだね……許せない」
祝音もまた怒りで体を震わせていた。
「今回のオーダーは……えっと、台帳を破り捨てればいいのか?」
「はい」
傍では、『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮 (p3p010573)の問いにアクアベルが頷く。
「まぁ、どうなるにせよ、核を破壊した上でたこやきの安全も確保しないとかな」
イリスの言葉に、幸潮も納得する。
「同じ猫として、たこやきを放っておく事は出来ぬな」
ここは迅速に解決して、たこ焼きを家に帰してやろうという『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)の呼びかけに、ドラマが同意して。
「早々に核を破壊して、状況を収拾しましょう!」
彼女の決起の声に、銘々応じて声を上げるのだった。
●
烙印受けたメンバーに姿の変化などが見受けられたが、そちらの問題となる地から離れていることもあってか悪影響は小さい。
今はこの事態の解決を急ぐことにした『紅薔薇水晶』ファニー(p3p010255)は「ArmillarySphere」から呼び出した2羽の烏に敵の居場所と数を探らせる。
「帳が降ろされつつあるこの街で、どの程度役に立つかはわかりませんが……」
ドラマは事前に入手した現実のセイケトルの見取り図で目的の宿の立地を示す。
元々街道沿いに発展した宿場町だ。
加えて、宿屋というわかりやすい場所とあって、メンバーはほぼ一直線に目的の宿を目指す。
その間もイリス、汰磨羈が細かな音を聞き取りつつ索敵しつつ、周囲を警戒しながら進む。
通称司書、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は仲間達の捜索と合わせて辺りに視線をめぐらす。
「神がこの世におわすなら、それは我らの胸の内にありて正しく導こうとなさるでしょう」
ただ、イーリンは混沌において神の声を未だ聞いていないし、この神の国でも聞こえないという。
「猫ばかりだわ。ここの神は、それ以下ね」
そう吐き捨てたイーリンの言葉も耳にしながらも、秋奈は不要な敵との遭遇を避けるべく敵探知を使い、合わせて人助けセンサーも働かせる。
「ウチらしかいないはずなんだし、反応があればたこやきがやばたんっしょ?」
それに汰磨羈大きく頷いたのは、何かが聞こえたからに他ならない。
彼女は広域俯瞰で宿屋の前に敵が待ち構えていることを皆に伝えていた。
目的の宿正面で待ち構えていたのは、不気味な集団だった。
核の守護役として配備された影の一隊。人の口や髪を思わせる終焉獣に、翼を生やす大柄な影の天使。
「…………」
そして、それらを率いる白銀の鎧を纏う少年……の見た目をした致命者ジョエルだ。
そこでアクアベルが笑顔を浮かべると、のっしのっしと現れる大きな猫が。
「にゃふん」
灰色の毛並みをした全長1mのメインクーン。
赤い瞳を持つこの猫こそ、セイケトルのボス猫たこやき(♂)である。
「……いや、それでもデカいなにゃんこ」
そこで、ふと秋奈は同じく猫だと主張する汰磨羈が気になって。
「フフ……そうだな、たぬきち。人類皆誰だってねこなんだぜ……ってそんなワケあるかーい! だはははは!」
大笑いする彼女に汰磨羈がやや不満顔。
「にしても、相当な巨体ですね!?」
一方で、貫禄すら漂うたこやきはかわいいのかと、ドラマは首を傾げてしまう。
「にゃーん」
一通り汰磨羈をいじった秋奈は自信満々の笑顔と砕けない鋼鉄の意思で、たこやきへと呼びかける。
「ねこ。ねこです。よろしくおねがいします。にゃんにゃん」
つけ耳をつけてこそいないが、幸潮は「にゃーん♡」と愛嬌ある鳴き声で近づき、保護しようとした。
車に載せようとする幸潮だが、たこやきもこの町の状況が気に入らないのか、敵を威嚇している。
ならば、仲間と共にたこ焼きを支える構えへと幸潮も転じていた。
「……排除」
相手も睨み合いなど続ける気はなく、致命者が配下をこちらへと差し向けてくる。
「核を探すにはちょっときついかしら」
戦いの合間に核を確保できればと考えるイリスだが、相手もそう甘くはないようだ。
「始めましょう」
――神がそれを望まれる。
イーリンの言葉が口火となり、戦火は切って落とされるのだった。
●
目的の宿の前に立ちふさがるのは、終焉獣が4体と影の天使8体。
それらを引き連れていたのは、致命者の少年……いや、少年を模した致命者というべきか。
(猫は踏んだりしないように気を付けながら、自分の足場を確保しねぇと)
周囲の猫が無数にいるのを気にかけるファニー。
辺りの建物や人、猫を巻き込まぬようにとファニーが保護結界を展開する間、秋奈は核がないかと見回すが、やはり宿の中にあるようだ。
「なら、倒しながら進む感じなのだにゃー」
どのみち、宿の入り口近くに群がる相手を討伐せねば、宿には入れない。
おそらくは空を飛んでも影の天使が追いすがって邪魔してくることだろう。
イレギュラーズ一行も、ここは正面から蹴散らして進むことに。
前線へと素早く数名が前に出て、影の一隊が自由に動けぬよう引き付ける。
壁役となるドラマは真っ先に鼓動を限界まで高め、影の天使や致命者を引き付ける。
「…………」
黙する致命者ジョエルは素早く剣を振るってきた。
ドラマは他メンバーに周囲の敵を任せ、魔力によって空気を震わせることでジョエルの感情も掻きむしる。
「…………!」
致命者は遂行者らによって作り出された存在というが、ジョエルも不快さを感じてか若干眉を吊り上げてドラマを狙っていたようだ。
「貴方の子分として戦ってあげる。いつも通りボス猫らしく振る舞うと良いわ」
すでにファンタズム・ステップで力を向上させていたアンナもまた鼓動を高め、終焉獣や影の天使を引き付ける。
傍で毛を逆立てて敵を威嚇していたたこやきがのびのびと戦えるように。
そう考え、アンナは多数の敵を抑えるよう立ち回っていた。
「さて、愚者の行進を始めようか」
保護結界を展開し終えたファニーは、仲間の集めた敵へと纏めて星屑を叩き落とす。
それだけでなく、ファニーは個別に一番星を落として影の一隊の体力を削る。
「長期戦は可能だと思うけど……」
後はどれだけ致命者の周りに戦力が集中してるかと考えていたイリス。
皆うまく敵を抑える仲間達をエスプリ「啓示の乙女」で支援しつつ、イリスは終焉獣を危険視する。
「たこやきさんも可愛……もとい気になるし、僕も可能な範囲で手伝うよ」
ヨゾラは4体の終焉獣を見据え、たこやきの存在を消し去らせぬ為にと星空の泥を浴びせかけていく。
「神の国を定着させずに消す為に、僕も猫の手貸します。みゃー」
祝音もまた終焉獣が相手を消し去ることを懸念し、気糸の斬撃を浴びせかける。
そんなサポートメンバーの助力によって終焉獣の動きに乱れが見られ、ミスが誘発していたが、イリスは気を抜かずに対処する。
(飽食の口と苦悩の髪……どちらも近接戦闘でこっちを喰らおうとしてくるのが危険性高そうなのよね)
イリスは神聖を纏わせた三叉の武装で終焉獣を抑え、たこやきの様子を窺う。
「にゃううん」
そのたこやきは周囲にいる猫へと呼びかける素振りを見せるが、模倣された街に迷い込んで浸食された猫達に応じる様子はない。
それでも、たこやきは襲い来る影の天使相手にも全く臆することなく飛び掛かり、猫キックを繰り出す。
(たこやきは……まぁ放っておいても大丈夫だろ)
ファニーは猫とは思えぬ強さに舌を巻いてはいたものの、あんまり勇敢に前へ出すぎてダメージを追うようなら後ろに下がらせることも考える。
「回復を頼んでいいか?」
「はい!」
他メンバーからも援護を任されていたそうで、アクアベルはファニーの依頼に応じて水術による癒しを皆に振りまいていた。
幸潮もたこやきへと癒しを振りまくべくクェーサーアナライズを発した。
「回復を続けてやるから安心せいよ」
多少の傷は些事。なかったことにして手早く終わらせると幸潮は豪語する。
「貴方の神は何を述べた?」
戦いは激しさを増すが、イーリンは詠唱しながら敵陣へと問いかける。
ただ、影の一隊はいずれもまともな言葉を返しては来ない。
祈るような所作をする影の天使の仕草、行動の一つ一つにさえ、情報供与に直結する為、イーリンは細かな振る舞いすらも見逃さない。
「私の神は、正しい知識で、正しく判断せよと言う」
そいつらへと泥の槍を発したイーリン。攻防の要を削げればこちらのものだ。
「バラけるとめんどくちゃいしー?」
相手が余計なところに気を回さぬよう、秋奈はパリピ効果で敵の身も心も湧き上がる感情でかき乱す。
(時空を斬る刀としても【時】を滅茶苦茶にされては面白くない)
この街を、世界を正しき歴史に戻そうと紫電もサポーターとして参加し、己の爆発力を高める。
傍にいる秋奈にかっこいいところを見せようと、多くの敵へと纏めて抜刀術で切り裂き、瞬時に凍り付かせていく。
絶界・白旺圏によって一時的に長髪を靡かせる汰磨羈は横からの郷愁を警戒しつつ、たこやきと動きを合わせる。
終焉獣を中心に多くの敵を巻き込む汰磨羈は刀身から光を発する。
苦悩の髪は堪えていたが、巻き込まれた影の天使2体は早くも光に灼かれて消し飛んでしまっていた。
●
サポーターやたこやきの力もあり、戦いはイレギュラーズ優位に進む。
猫と戦うと聞いて、動物疎通を用意していたアンナ。
「貴方の子分として戦ってあげる。いつも通りボス猫らしく振る舞うと良いわ」
猫の下僕的なものになりたかったわけではない。ついでに褒めてくれると嬉しいとかではない……そんな言葉を心中で繰り返して。
(……ないったらないわ)
首を振って否定するアンナは多数の敵へと刃を滅茶苦茶に叩き込み、影2体を霧散させる。
「にゃふん」
なかなかやるではないかと、たこやきはアンナの剣技に鼻を鳴らす。
「っしゃあ! アゲていこうぜ! か弱い乙女ーっ!」
恍惚としていた敵に、秋奈は一層テンション高く素早い動きで斬りかかっていく。
彼女に合わせて、紫電も敵のいる空間を切り裂く。
2人の見事なコンビネーションが影の天使2体を滅してしまう。
さらに、前に出ていたドラマが別の2体に痛みを与え、血を流す暇に夢幻の色彩で包み込んでこの空間から消し去ってしまった。
影の天使が全ていなくなれば、イレギュラーズはすぐさま終焉獣の撃退に取り掛かる。
しばらくは飽食の口の噛みつきや苦悩の髪の締め上げを前線メンバーが耐える間に攻撃を繰り返す形となる。
それを、幸潮が近場から支えて。
「『意思生命体』の我にできるのはその程度、だからよ」
ただ仲間だけを盾にするだけでなく、幸潮自身も一部攻撃を請け負って。
「後先耐久考えることはない、気にしなくていい」
仲間達の活躍する姿を存分に書き記そう。支えよう。
私はその為にいるのだと、幸潮は全力でメンバー達へと聖体頌歌を響かせる。
その後も応酬が続く中、飽食の口が崩れたのをイリスが逃さない。
危険な相手をこれ以上のさばらせぬよう、相手をしっかりとブロックしたイリスは仲間達の手厚い支援回復もあってすかさず放ったエクス・カリバーで口を完全に断ち切ってみせた。
「にゃおん」
たこやきも終焉獣相手に奮闘はしているが、さすがに分が悪い。
「たこやきのことは任せたぜ」
「今回僕にできる事はこの位だね……皆、たこやきさんも、頑張ってねー!」
紫電の雷撃やヨゾラの星の祝歌による支援を受けながらも、奮闘するメンバー達。
同じく福音や祝歌を響かせて前線を支えていたイーリンが片手で抜いた剣で相手の動きを止める。
「!?」
「今よ」
イーリンの声に応じ、果敢に毒ひっかきするたこやきと合わせ、汰磨羈が妖刀による殺人剣でもう1体の口を真っ二つに切り裂き、見事に仕留めてみせた。
「猫の手、貸します。みゃー!」
すかさず、疲弊するメンバーを祝音が癒す。
周囲には近づいていた猫達もいたが、愛らしくはあるものの、元のセイケトルではボス猫であるたこやきに従わぬ所に、彼は少しもの悲しさを覚えてしまう。
その間に、ヨゾラはそれらの猫を移動させて。
「やっぱり、傲慢連中は許せないよ」
「そうですね……」
癒しの水を振りまくアクアベルも、猫達を巻き込んだことに並々ならぬ怒りを抱いていたようだ。
ジョエルはドラマが抑え続けており、幸潮、イリスの支えもあって互角以上の戦いを繰り広げる。
その脇では、攻防の末にあちらこちら断たれてボロボロになっていた苦悩の髪の姿があった。
もはや、縛り付ける力もなくなってきていた片割れに、秋奈が嬉々として残像を伴って斬撃を浴びせかければ、束なることもできなくなった髪が溶けるようになくなっていく。
もう1体もドラマの身体を縛り付けようとしていたが、汰磨羈がその髪を切断したことで、大きく態勢を崩す。
確実に数を減らそうと、ファニーがその体躯を指先でなぞり、その意識を完全に消し去ってしまった。
取り巻き全てを倒し、メンバー達は一気に致命者ジョエルへと攻め入る。
「猫の街にしておいてこのワールドイーターのチョイスはやる気がないのかしら。あなたもそう思わない?」
「致命者ってよくわからんがやたら強くね? なんかズルしてね?」
アンナ、秋奈が立て続けにジョエルへと問いかけながらも一気に斬りかかって敵の小さな体に傷を増やす。
「…………」
そのジョエルは黙したまま応戦し、こちらに鋭い突きを繰り出してくる。
その一撃はかなり高く、しっかりと防がねばあっさり仕留められかねない。
「悪いな、ジョエルとやら。猫に対する不埒な所業は、ここで終いだ!」
身体のリミット外した汰磨羈が至近から三日月の光跡を残した一閃でジョエルを切り裂く。
「……っ」
だが、ジョエルも突風を伴う突きと合わせ、剣戟を放ってくる。
それらを引き付けるドラマが蒼い刀身を一閃させて態勢を立て直す。
「ボンビアッジョ、かしら?」
天眼で相手の出方を窺っていたイーリンが瞬時に抜いた剣で動きを封じようとしたが、不利を悟ったジョエルは冷静になってイレギュラーズから距離をとる。
「失敗……撤収……」
ほとんどイレギュラーズの質問には答えぬまま、致命者は崩した地面の中へと飛び込み、行方を眩ませたのだった。
●
致命者一隊を撃退し、メンバーはそのまま宿の中へと駆け込む。
「核とされる猫の情報の書かれた台帳を捜索しましょう」
ドラマは下手人であるジョエルが持っているなら話は早いと考えたが、生憎と所持してはいなかった。
「気合で核を探すぜ行くぞおおおお! うおおおー!!!!」
宿のロビーを駆ける秋奈。
あちらこちらと彼女が駆け回る上で飛んでいたファニーのファミリアーが宿の受付カウンターへと降り立つ。
そこはすでに、イーリンが戦闘中、ギフトによって閃いていた台帳のある場所だった。
そこには、セイケトルへの来訪客の為にと作られた猫達の台帳も置かれてある。
「これを破壊すればたこやきもセイケトルへ帰れるんだろう?」
「……しかし、本の形のしたモノを破壊しなければならないと云うのは中々心が痛みますね」
台帳を手に取るファニーに、ドラマがその破壊には気後れしてしまう。
「たこやきも早く仲間の所に戻りたいでしょう?」
「にゃふん」
アンナの問いにも、ふんぞり返ったままのたこやき。
異常な空間であるはずだが、それでも己を保ったままの態度なのは実に肝の据わった猫である。
「にゃーん」
「にゃふん」
幸潮の呼びかけに応じたたこやきが寄ってくると、彼女の車へとどっかり座り込む。
これぞにゃんにゃんチャリオッツと、幸潮は満足そうに頷く。
他のメンバーもまたその猫に興味を持って近づいていて。
「帰る前にちょっともふもふさせてもらえねぇかなぁ」
仕方ないなと言わんばかりにファニーの手を受け入れるたこやき。
ギフトで猫化した汰磨羈もたこ焼きに断ってその背に乗って丸くなっていた。
「うむ……とても良いもふもふだ」
もふもふを堪能する2人。
ただ、核となる台帳を破壊するとこの空間は消える。
そうなれば、たこやきは元の世界に戻り、この場からいなくなってしまうという。
「……無事に帰れたら少し撫でさせて頂戴ね」
「にゃふん」
アンナに、セイケトルで待ってると言わんばかりにたこやきが鳴く。
皆の同意を得て、ドラマが躊躇なく一太刀で台帳を切り裂き、帳を晴らす。
すると、セイケトルの町並みが徐々に薄れ、たこやきもまた同じようにここから消えていく。
「たこやきさんが元の街に戻れて、従ってくれる本物の猫さん達と会えるといいな」
祝音にアクアベルが同意する。
空間が消えるのを見届け、イレギュラーズ一行はアリスティーデ大聖堂へと戻る。
そして、依頼の完了を受け、秋奈が駆け出す。
「よおし、イリスちゃんちの冷蔵庫に入ってるアイスを全部、私ちゃんが食べるぞ!」
そんな自由奔放な秋奈を、イリスが全力で追いかけていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開中です。
MVPは結果的に核を破壊した貴方へ。
致命者は逃走しましたが、また出会う機会はあるはずです。
今回もご参加ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<伝承の帳>のシナリオをお届けします。
猫の街として知られる幻想セイケトル。
拙作「にゃんにゃんばとる!」以来2年半ぶりの舞台ですが、あくまで『神の国』にてコピーされた場所です。
●状況
『神の国内の幻想王国』内部で『核』の破壊を目指します。
調べによれば、それはセイケトルから持ち出された猫の名前、特徴が描かれた過去のデータ集……台帳の1つです。
これを使い、影の一団は時間をかけて定着させ、無抵抗な異言使いを作り出すようです。
コピーされたセイケトルの猫たち。その中に、なぜか、この場所へと迷い込んだボス猫、たこやきの姿が……。
できるなら、たこやきも助けてあげてくださいませ。
●敵:致命者一隊
〇致命者の少年:ジョエル
実在のアドラステイアの少年を元に作られた致命者。
遂行者の命によって淡々と職務を果たそうとし、子供らしさはほとんど感じさせません。
鋭い突きを中心とした剣術を使うかなり手練れの剣士です。
○終焉獣(ラグナヴァイス)×4体
R.O.Oではワールドイーターと呼ばれたモンスターです。
・飽食の口×2体
全長3mほど。直接噛みついてくるだけでなく、歯ぎしりや怨嗟の声を発します。
直接食らいついたモノの存在を消し去ろうとしてきます。
・苦悩の髪×3体
全長5mほど。女性の長髪を思わせる物体が束になって浮遊しています。
その長い体躯を叩きつけたり、激しい風を巻き起こしたりします。
自身の身体を相手に絡めて締め上げ、その存在を消し去ろうとすることもあるようです。
○影の天使×8体
身長3m程もある人型に、大きな翼が生えた姿をした影でできた存在です。飛翔しながら、祈りを捧げる姿が特徴的です。
大きな槍を所持し、急降下しての突き、接近してからの連続突きや、全身から闇の波動を発することもあります。
●NPC
○アクアベル・カルローネ (p3n000045)
セイケトルを守るべく参戦。
水の術と癒しの術を使い、支援に当たります。
自分の判断で動きますが、テクニカルな動きを求めるなら彼女に指示をどうぞ。
〇たこやき(猫)
「にゃふん」
セイケトル在住のボス猫。全長1m。灰色の毛並みをした赤い瞳のメインクーンの姿も。
どうやら、たこやきは巻き込まれてしまい、この場をさまよっていたようです。
なお、戦闘力も高く、毒ひっかきに猫キック。不気味な鳴き声と不気味な影相手だろうと果敢に攻撃することも。
なお、核を破壊すれば、たこやきは幻想のセイケトルへと帰ることができます。
〇猫×無数
セイケトルに存在する猫達のコピーです。様々な種類の猫達が存在します。
こちらは戦闘には参加しません。たこやきの指示を聞くこともないようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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