シナリオ詳細
Bug Getyou。或いは、Hunt、Hunt、Hunt…。
オープニング
●Help!
R.O.Oからのメッセージが届いた。
メッセージの内容は至ってシンプル。
「Help!」と、ただ一言だけ。
R.O.Oにログインした縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧 (p3x001107)は、前回ログアウトしたのと同じ、廃墟の中に立っていた。
空には厚い雲。
吹く風は埃っぽく、物音などは聞こえない。
静寂が耳に痛い。
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧 は廃墟をぐるりと見まわし、首を傾げた。
「おヤ? トロイとウィルスが いないね」
H・P・トロイとB・B・ウィルス。
少し前にR.O.O内で捕獲した、奇妙なNPCである。
否、NPCと言っていいのかどうかさえ不明だ。2人は確かな意思と目的を持ち、これまで何度も縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の前に姿を現したのだから。
2人は縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧のことを「お父さん」と呼び、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧に奇妙なゲームを仕掛け、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧にクリア報酬を供した。
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は、トロイとウィルスの目的が「報酬データを渡すこと」にあると予想している。
「まぁ 別に縛り付けていた わけでもないし 逃げられ……」
「お父さん!」
「こっち! こっちだ!」
「んン?」
声が聞こえる。
それも、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の頭の上から。
顔を上げると、悲鳴が聞こえた。
頭上にそっと腕を伸ばすと、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の手の平の上に何かが乗る。
そこにいたのは、手の平サイズの小さな人影。
小人……ではない。
背丈の縮んだ、H・P・トロイとB・B・ウィルスの2人であった。
●トロイとウィルスの事情
「なぜ 小さくなって いるんだい?」
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は問うた。
少し思案し、ウィルスは答える。
「私(オレ)たちが小さくなったのは、良くないデータを収集しちゃったせいだ」
そう言ってウィルスは項垂れる。
頭頂部から伸びる兎の耳も、ペタンと力なく倒れた。
「ボクたちも、元々、良くないデータなんだけど……まぁ、相性ってものがあるんだよね?」
「……はぁ?」
「もしかすると名前から察しが付いているかもしれないんだけど、ボクたちって元々、自我なんてないウィルスやバグなんだよ」
悲しそうに目を伏せて、トロイは語る。
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は無言で、続きを促す。
「お父さんがこの世界に来た時の存在情報流入に巻き込まれて、ボクたちは意思と形を得たの」
「なるほど だから “お父さん”か」
「うん。あ……もしかして、お母さんだった?」
「だったらお母さんって呼ぶぜ? どっちがいい?」
2人の縋るような視線を受けて、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は首を傾げた。
どっちでもいいと言えばどっちでもいい。
それより、なんとなく弱ったように見える2人の様子が気になった。
背が縮んでいることもそうだが“意思”が幼児化している風にも感じられる。
「どちらでも いいけど。なんだか 弱ってないかい?」
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧がそう問いかけると、2人は困ったように顔を見合わせる。
それから、そっと廃墟の奥を指さした。
「……バラバラになっちゃった」
「なぁ、お父さん。このままじゃ私(オレ)たち消えちまう」
「……あー」
廃墟の奥に視線を向けると、そこには幾つもの人影が見える。
H・P・トロイとB・B・ウィルスをはじめ、きうりん(p3x008356)や、ヴァリフィルド(p3x000072)、すあま(p3x000271)の姿もそこにあった。
それぞれ1人だけではない。
ぱっと見ただけでも、10を悠に超えている。きっと、その倍や3倍はいるのだろう。
「あれらを 捕まえれば いいのかい?」
2人は頷く。
それで、2人の頼みは理解した。
「まぁ いいけど」
と、1つ頷き縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧はフレンドリストを開くのだった。
――Bug QUEST:Bug Getyou、発生――
- Bug Getyou。或いは、Hunt、Hunt、Hunt…。完了
- GM名病み月
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年05月25日 22時05分
- 参加人数7/7人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 7 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(7人)
リプレイ
●不気味な賑わい
廃墟都市は、不自然なほどに賑わっていた。
街路にも、建物の陰にも、井戸の傍にも、屋根の上にも、人、人、人、人、人の影。
H・P・トロイやB・B・ウィルスをはじめ、逃げ惑う『わるいこ』きうりん(p3x008356)にそれを追いかけ回す、『きうりキラー』すあま(p3x000271)たち。無論、本体ではなくトロイとウィルスによって作り出された偽物……いわば、コピー体のような存在だ。
「痛いです痛いですやめてください美味しくない……ことはない! とっても美味しいけど食べないで!!」
否、逃げ惑うきうりんの中には、本物のきうりんも混じっているが。
「やっぱりきうりんが多い所に集まる習性ある気がする!」
きうりんたちは今日も元気だ。
一斉に逃げるし、時にはすあまに立ち向かう。
そんなきうりん(偽)達の様子を見ながら、すあま(本物)はよだれを垂らした。かつて、R.O.Oを震撼させたきうりんの大増殖の折、食い散らかしたきうりんは実に美味であったのだ。
「これは、まさしく増殖バgえっ違う?」
大発生したきうりんたちを唖然と眺め、『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)は目を丸くした。
策を用意して来たとはいえ、この量を捕縛するのは骨が折れそうに思えたからだ。
「……ま、まぁそんな事もありますよね」
網を手に取り、カノンはひとつ気合を入れた。
「あっちだ、あっち! 市場の方にきうりんたちが逃げ込んでるぜ!」
『不明なエラーを検出しました』縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)の肩で小さなウィルスが声をあげた。
本体であるトロイとウィルスは、増殖個体の居場所がおおまかに分かるらしい。姿形は様々であるが、結局のところ、廃墟都市にいる増殖個体はすべてトロイとウィルスから分離したものであるためだ。
「ふむふむ、そんなところに……私、少しそちらに行ってきますね」
『佐藤・非正規雇用のアバター』アンゲシュテルター(p3x009377)は、屋台の台車に手をかけて市場の方へ目を向けた。
台車に積まれているのは大量の胡瓜だ。味噌と塩も積んでいる。
既に数体のすあま(偽)が物欲しそうな顔で集まって来た。どうやら偽物であってもすあまはすあま……きうりんの味を知った者は、生涯、その美味さを忘れることは出来ないのである。
「それじゃあ、私はウィルスの増殖個体優先的に探そうかな」
アンゲシュテルターを見送りながら、『Reisender』アウラ(p3x005065)はすあまを1匹、捕まえた。胡瓜を寄越せと暴れるすあまだったが、すぐに身体が崩れて行って粒子状に変化……トロイ(本物)に吸収される。
「こうなるのか……他の個体は多分闘技場の方に集まってるだろうけど、怠惰の子は来ないだろうからねえ」
廃墟都市にある闘技場に、増殖個体を集めて一網打尽にする。
今回の作戦は、おおまかにそう言うものである。だが、増殖個体の中には怠惰な性格の者もいるため、アウラはそれらの捕縛を担当するつもりだった。
「全て捕まえねばならぬということなら、結局すべてのエリアを見て回らねばならぬということになるわけであるな」
アウラ同様、『悪食竜』ヴァリフィルド(p3x000072)も闘技場以外の場所で留まっている増殖個体の捕縛に当たる心算だ。
「なれば、闘技大会に集まる様子がない者を、先ずは重点的に拾っていくとしようぞ」
翼を広げたヴァリフィルドが宙へ浮く。
飛び去って行く巨竜の背中へ向かって、きうりん(偽)が手を振っていた。
仲間たちが、各々の担当区域へと散って行った。
そして、最後に残されたのは縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧だけ。その足元では、小さくなったトロイとウィルスが、落ち込んだ様子で肩を落としているではないか。
「ごめんなさい。お父さんの役に立ちたかったのに、迷惑をかけちゃった」
トロイとウィルスは、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧を父と呼ぶ。2人の出自によるものだ。2人は、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧がゲーム内にアバターを作った際に生まれたバグとウィルスの集合体だ。
「おやま、よしよし 可愛いこと。ウィルスだろうとバグだろうと アタシより悍ましくは なかろうて」
2人は縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧にデータと娯楽を提供すべく行動していた。もっとも、2人の集めたデータのせいで、データの流出および偽個体の増殖という異常事態に発展してしまったわけだが……。
「ほら、おいで トロイ ウィルス」
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は、その程度の異常事態を問題視していない。問題が起きたら、解決すればいい。いつもやっていることだ。
「あんまり体に悪いモノ 食べちゃだめだよぉ」
小さなトロイとウィルスの2人を抱きかかえ、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は這うようにして歩き始めた。
●増殖個体回収作戦
きうりん(偽)が現れた。
すあま(偽)が現れた。
きうりん(偽)とすあま(偽)は様子を見ている。
「いらっしゃい、いらっしゃい! 塩だれも味噌だれもありますよ〜!!」
棒に差した胡瓜2本を手に持って、アンゲシュテルターはきうりん(偽)とすあま(偽)に呼び込みをかけた。
きらん、とすあま(偽)の目の色が変わる。
アンゲシュテルターはその目を知っている。獲物を狙う獣の眼差しだ。
じりじりとすあま(偽)が近づいて来る。
ノリがいいのか、すあま(偽)の真似をして、きうりん(偽)も近づいて来る。だが、きうりん(偽)は、すあま(偽)を警戒してか多少、後方に位置したままだ。
すあま(偽)ときうりん(偽)は、捕食-被捕食関係にあるらしい。喰う者と喰われる者……本体の関係性を増殖個体も受け継いでいるのだ。
「あっ、偽すあまさんが来ましたよ。かわいいですね」
アンゲシュテルターには関係ないが。
あっさりとすあま(偽)を捕まえた。
同時刻、神殿エリア。
「あれ? カノンちゃんも来たんだ? やっぱり、ここに集まってるよね」
神殿エリアを訪れたのは、アウラとカノンの2人であった。
花壇や噴水、柱などが視界に映る。
日向で、日陰で、ウィルスたちが微睡んでいる。
「見えている連中は捕まえやすそうだけど、隠れてる個体もちらほらいるね……対応できそうかい?」
「もちろん! 探索系のお使い依頼も冒険者の得意分野です。お任せくださいっ」
2人とも、隠れたターゲットを見つけ出すのは得意なのだ。
「じゃあ、お手並み拝見といこうかな」
柱の陰に身を隠し、アウラはライフルを構える。
「景観も良く心地よく怠惰に浸れるんでしょうね。すっかり油断しきっています」
そう言ってカノンは苦い笑みを零した。
アウラが狙う先には、日向で微睡む何体ものウィルスがいる。誰も彼もが、猫のように身体を丸めて、のんびりと寛いでいる。
自分たちが襲撃を受けることなど予想だにしていないのだ。
否、怠惰であるため、警戒することさえ怠っているのだ。
「さっさと済ませて闘技場の手伝いに行こう」
引き金に指をかけ、アウラは薄い笑みを浮かべた。
と、その時だ。
2人の背後で足音がした。
すぐ近くの建物の中に、きうりん(偽)が隠れていたのだ。
アウラが背後へ視線を向けた。
アウラが動くより先に、カノンが背後へと跳んだ。
きうりん(偽)は逃げる間もなく押さえ込まれて、粒子になって消えていく。
「残念でしたねっ! 足音や気配には敏感なんです!」
「それにしてもこの偽きうり……食べられるの? お腹くだしそう」
なんて。
そんなことを呟いて、アウラはライフルのトリガーを引く。
偽ヴァリフィルドは好戦的だ。
爪を伸ばし、牙を剥いて咆哮をあげた。
蒼い蒼い空の上で、ヴァリフィルド(偽)と相対するのは、本物のヴァリフィルドである。
咆哮の応酬。
並みの獣であれば、それだけで尻尾を巻いて逃げ出すほどに怖ろしい。
「咆哮で連れて行くのは無理か。であれば、この場で実力行使も辞さぬ」
翼を畳んで急加速。
ヴァリフィルドは、あっという間に偽物の懐へ潜り込むとその喉首に喰らい付く。
虚を突かれたヴァリフィルド(偽)は、当然抵抗する素振りを見せた。
翼を広げ、息吹を放つか、牙で敵を噛み砕くか。
偽物とはいえ自分のことだ。
何をしてくるつもりかは分かる。
分かるから、対応も出来る。
ヴァリフィルドは、ヴァリフィルド(偽)の翼に爪を突き立てて体勢の制御を狂わせた。もつれるように落下していく巨竜2頭の眼下には、アンゲシュテルターの姿が見える。
「フルメタルチャリオットの機動力をご照覧あれ!」
ヴァリフィルドとヴァリフィルド(偽)の姿を見つけ、応援に駆け付けたのである。
アンゲシュテルターは右手を伸ばして、リボルバーを構えた。
「応! 我が模造体は容赦なく噛砕してやれ!」
ヴァリフィルド(偽)地面に叩きつけながら、ヴァリフィルドは天を揺らす咆哮をあげる。
闘技場には50を超える人影が集まっていた。
すあま(偽)も、きうりん(偽)も、トロイ(偽)も、目をキラキラさせている。これから何が始まるのか、楽しみで仕方が無い様子だ。
「集まってくれてありがとう!」
観客席から、すあまが叫んだ。
鎧の肩に乗ったすあまが、集まった増殖個体たちを見下ろしている。
闘技大会。
増殖個体たちが呼ばれたのは、それに参加するためだ。
けれど、しかし……。
「残念だけどトーナメント表ははじめからないよ」
すあまの放った一言に、増殖個体たちがざわめいた。
喋ることは出来ないので、衝撃を受けたような顔をするだけだが……。
鎧の肩に足をかけ、すあまが鋭い爪を伸ばす。
「だまして悪いがこの場のみんなでバトロワです!」
そして、跳んだ。
闘技場へと跳び込んで、手近なきうりんを一撃で引き裂いたのだ。
闘技場の出入り口が閉ざされた。
すあま(偽)も、きうりん(偽)も、トロイ(偽)も、これで誰も闘技場の外へ逃げることは出来ない。
「えっバトロワとか聞いてない!!!」
声をあげたのはきうりん(本物)だ。
焦ったような顔をして、暴れ回るすあまを指さす。
「くそっ、なんてやつだすあま……みんな! 力を合わせてあのすあまってやつをぼこぼこにするぞ! みんなでかかれば怖くない!! 逃げずに立ち向かえ!!」
きうりんは足が遅い。
戦闘に向いているわけでも無い。
だが、決して有象無象では無い。
数こそ力だ。
個の力が弱いのなら、一致団結すればいい。
「そこ! 逃げるな!!」
無論、逃げようとする個体もいるが。
そして、早々にバトルロワイヤルに対応したすあま(偽)によって狩られる個体も大勢いいるが。
狩られた仲間の無念を思えば、きうりん(偽)とて黙っていられない。力を合わせ立ち向かう時は今なのだ。
拳を振り上げ、突撃していくきうりん(偽)の背中を見つめ、きうりん(本物)はにやりと笑った。
「おまえらをぼこぼこにしてやるぜ……!!」
背を向けたことがきうりん(偽)の不覚。
不意打ちで、きうりん(偽)を狩るつもりだ。
狩るつもり……だった。
「あっ」
きうりんの頭上に影が落ちる。
巨大な何かに踏みつぶされて、きうりんはあっさりと【死亡】した。
本能が、闘争の気配を感じたのか。
闘技場にヴァリフィルド(偽)が降り立った。
幼子の嗤う声がした。
幼子“たち”の嗤う声が響いていた。
轟音が鳴り響き、ドス黒い何かがヴァリフィルド(偽)の側頭部を打ちのめす。
姿勢を崩し、倒れ込んだヴァリフィルドにきうりん(偽)の群れが次々とよじ登る。その様はまるで、獲物に群がる蟻の姿を彷彿とさせた。
「偽きうりん集まってる! 豊作だね! お覚悟―!」
きうりん有るところにすあま有り。
獲物に群がるきうりん(偽)を喰い尽くすべく、すあまが駆けた。
「ちょっまって! モノホンのきうりん居るから! すあまくん!! あ、トロイくんまで!?」
本物のきうりんも混じっているが。
いつの間にか【リスポーン】して来たらしい。すあまから逃げた先に待ちかまえていたトロイによって、袋叩きにされている。
そう遠くないうちに、2度目の【死亡】判定が出されることだろう。
「それにしても、すあま(偽)やきうりん(偽)やヴァリフィルド(偽)まで キミたちの収集データかい あれ なんか凄くきうりん(偽)が 多いけど」
身動きの取れないヴァリフィルド(偽)の頭部へ近づき、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧はそう問うた。先にヴァリフィルド(偽)を奇襲した一撃は、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の放ったものである。
頭部に触れられると、ヴァリフィルド(偽)の姿が掻き消え、データの粒子へと変わる。それを吸収しながら、ウィルスは縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の問いに答えた。
「きうりんとすあまは、解像度が高いから造りやすいんだよ。きうりんが多いのはあれだ……どういうわけか、増えやすいんだ」
「ふぅむ? 興味深いね リアルの情報も 一部参照しているのかな」
頭部を傾げて、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は思案する。
バトルロワイヤルの真っ最中だというのに、いかにも余裕綽々といった様子である。
「まぁ いいか」
なんて。
そう呟いて、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は視線を空へ。
ゆっくりと闘技場へ降りて来るのは、ヴァリフィルドだ。どうやら、偽ヴァリフィルドを撃退し、闘技場へ応援に駆け付けたらしい。
●Bug Getyou
噛み砕かれたトロイたちが、データと化して崩れ去る。
それを横目に、ヴァリフィルドは顎に手を触れ、首を傾げた。
「しかし、あれであるな。模造体とはいえ、何も喋らぬというのは少々面白みに欠けるな」
「しゃべれていたら きっと悲痛な悲鳴が 響いていただろうけどね」
なんて。
くっくと肩を揺らす縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は、腕を伸ばして2体のすあま(偽)の頭を掴んだ。すあま(偽)が藻掻いていたのも少しの間、あっという間にデータと化して、トロイとウィルスに吸収されて、消え去った。
逃げる、逃げる、ウィルスが逃げる。
仲間たちが大勢やられてしまった以上、流石のウィルスも怠惰なままではいられないのだ。散り散りになって、神殿の端へと逃げるウィルスをカノンが追った。
「冒険者はこれくらいで諦めませんっ」
ウィルスの眼前に回り込むと、その頭部へと1発の魔弾を撃ち込んだ。
ダメージを受け、よろけたところを手で掴む。
はらり、と解けるようにしてウィルスは元のデータに戻った。
だが、ウィルスもやられっぱなしではいられない。背後からの不意打ちを受け、カノンはぐらりとよろめいた。
「あいたーっ!?」
よろめいた瞬間、一気に数体のウィルスが群がる。
「おっと……これだけ多いと、やっぱり少し手こずるよね」
1体ずつ順番に、アウラが撃って仕留めるが、その時には既にカノンの姿は消えていた。
ウィルスの猛攻に耐えきれず【死亡】判定となったらしい。
「あすごいめっちゃ群がってきた!」
「ぶつかるー!」
1体や2体はどうにでもなるが、10を超えれば流石に辛い。
逃げるきうりんとすあまの後ろに、トロイときうりんの偽物が続く。
2人が【死亡】するのも時間の問題だ。
だが、それでいい。
増殖個体を一ヶ所に誘き寄せられたなら、後は一掃するだけで済む。
その瞬間が訪れるのを、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧とヴァリフィルドは今か今かと待っていた。
地面に倒れたヴァリフィルドが、データと化して消えていく。
その様子を見ながら、アンゲシュテルターはため息を零した。
足元には、幾つもの空薬莢が散らばっている。都合30を超える弾丸をヴァリフィルド(偽)に撃ち込んだのだ。
「ヴァリフィルド君を相手にするのはドキドキしましたが……」
焼け焦げた鎧が、端から崩れ落ちていく。
「お陰様で、闘技場の良い練習になりましたよ!」
そう言い残し、アンゲシュテルターは【死亡】した。
気が付けば、闘技場に立っているのは9人だけ。
トロイとウィルスも、元のサイズに戻っていた。
「それで 無事に元に戻れたわけだけれども 2人はこれからどうするんだい?」
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧はそう問うた。
トロイとウィルスが生まれた原因は、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧にあると理解した。だが、だからと言って2人を消してしまうのは違うとそう思えたのだ。
「うぅん? どうだろう? お父さん、アイテムとか経験値とかあったら嬉しいでしょう?」
「今まで通り、あちこち歩いて集めて来るよ」
トロイとウィルスの意思は、今のところ縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の役に立つこと、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧にデータを供することで統一されている様子だ。
「ゲームだからねぇ 何もせずに 手に入れるのは違う とは思うけど」
「だったら、今まで見たいにゲームの報酬って形にするか?」
「それがいいね。でも……時々、遊びに帰って来ていいかな?」
恐る恐る、と言った様子でトロイは言った。
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の顔色を窺っている風だ。もっとも、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の顔色など、窺おうとして窺えるものでもないのだが。
「別に構わないよ 君たちの好きに するといい」
なんて。
慈しむかのような口調で、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧はそう言った。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様です。
トロイとウィルスの増殖個体は全て回収されました。
依頼は成功となります。
この度は、シナリオのリクエスト&ご参加、ありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。
GMコメント
●ミッション
散らばったH・P・トロイとB・B・ウィルスのデータ(半数以上)を捕獲する
●ターゲット
分散したH・P・トロイとB・B・ウィルスのデータから発生した偽個体。
腕や網で捕獲すれば、本体のH・P・トロイとB・B・ウィルスに吸収される。
合計で約100体が廃墟遺跡内を自由に動き回っている。
・H・P・トロイ(偽)×約20
https://rev1.reversion.jp/scenario/ssdetail/4412
黒い髪した兎の獣種(に見えるが、正体はプログラムの集合体)。
バラバラになって増殖した偽個体が、遺跡を駆け回っている。
増殖した偽個体は悪戯好きらしい。
・B・B・ウィルス(偽)×約20
https://rev1.reversion.jp/scenario/ssdetail/4411
短気にして強欲な、十二単を纏った兎の獣種(に見えるが、正体はバグの集合体)。
バラバラになって増殖した偽個体が、遺跡を駆け回っている。
増殖した偽個体は怠惰らしい。
・すあま(偽)×約10
甲冑と猫獣人の2人組。
すあま(p3x000271)に酷似した容姿をしているが、喋ることは無い。
https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3x000271
すあま(偽)は気紛れらしい。
・きうりん(偽)×約50
きうりん(p3x008356)に酷似した容姿をしているが、喋ることは無い。
https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3x008356
きうりん(偽)は好奇心旺盛らしい。
・ヴァリフィルド(偽)×3
ヴァリフィルド(p3x000072)に酷似した容姿をしているが、喋ることは無い。
https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3x000072
ヴァリフィルド(偽)は好戦的らしい。
●NPC
H・P・トロイとB・B・ウィルスの本物。
手の平サイズにまで縮んでいる。
増殖した偽個体の位置をある程度把握できるようだ。捕獲した偽個体は、本物のトロイとウィルスに吸収される。
●フィールド
廃墟都市。
大きく分けて区画は以下に別けられる。
建物の密集した居住区エリア
柱や噴水、花壇などがあり見晴らしの良い神殿エリア
広い通りと広場のある市場エリア
武舞台のある闘技場エリア
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
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