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シナリオ詳細

RAIZING!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●BATTLE HORIC
 剣戟が鳴り響く。
 双剣を携えた男の鋭い連撃を、相対する男が剣と盾で受け流し、崩れた体勢を狙い剣を気合いと共に振り下ろす。
 相手の命を絶つことを目的とする殺意籠もった一撃はしかし、卓越した技量からなる双剣使いの身のこなしによって空振った。
 双剣使いの仲間――大斧を携えた男が疾駆し、盾もつ男に肉薄すればそれ以上前に行けないように行動を抑制し、横薙ぎに大斧を振るう。その一撃を盾の男は手にした盾で見事に防ぎきる。
 彼らの周囲には他にも参戦するものがいた。
 槍を巧みに操る槍騎士に、遠方より弓を射かける者、そして魔力引き出す魔術師。
 彼らを回復する治癒士も二人いて――そう、彼らは四対四に分かれ戦っていた。
 戦いは互角、バランスのとれた、しかし死線の見えるギリギリの攻防が続き、互いに体力が底を突きかけたその時、盾持つ男が力を抜いて剣を納めた。
「よし、ここまでだ。中々いい仕上がりじゃないか?」
「おいおい、そりゃねぇーぜガラド。これからじゃねぇか」
「これ以上やったら腕の一本や二本がなくなるさ。そいつは俺達の目的じゃないだろ?」
 ガラドと呼ばれた盾の男が肩を竦め笑う。不平を述べた斧の男が舌打ちし、斧を納めた。
「仕上がりは上々。ということで、前々から考えていたアレを実行しようと思うが、どうか?」
「へへ、良いじゃねぇか。俺達の力を見せつけてやろうぜ。なぁザイン!」
「我に恐れぬ者なし……!」
 斧使いに肩を叩かれた双剣使いが瞑目する。その様子に弓使いの女が笑った。
「くくく、ザインは相変わらずだねぇ。それじゃあたしから手紙を出しておくよ」
「下手にでるんじゃねぇぞ、これは喧嘩なんだからなぁ!」
「いや喧嘩じゃないだろ。まあ、でも挑発的な手紙を受け取って逃げ出すような奴らなら相手にはならないだろうな」
「ふふ、楽しみですね」
 訪れるであろう戦いを想像し、八人は静かに笑う。
 彼らは飢えているのだ。心の渇きを癒やす、熱く、身を焦がす戦いに。
 強者を求め、強者になろうとする飽くなき向上心、戦いこそが全てを決し、勝者は全てを手に入れ、敗者は全てを失う。
 鉄帝――ゼシュテルは大闘技場を主戦場とする八人。
 彼らの名は――


「チーム、ライジング?」
 イレギュラーズが繰り返した言葉に、『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が頷いた。
「RAIZING。ゼシュテルは大闘技場『ラド・バウ』で戦うチームみたいね」
「そんな人らから届いたって?」
「ええ、挑戦状」
 リリィがひらひらと振って見せる手紙には、確かに挑戦状と書かれていた。
「噂に聞くイレギュラーズとやらが、どの程度のものか力を推し量ってやる。向かってくるならばよし、尻尾を巻いて逃げるのならばそれもまた良し。その場合貴様らのゼシュテルでの名声は地に落ちるだろう。……要約するとこんなところね」
 よくわからないポッとでのチームに上から目線で言われるのもなんとなく癪に障るが、明確な挑戦状だ。こうまで言われるとやはり受けなくてはと言う気分にもなる。
「でも、ローレットとして受ける価値があるのか? 詰まるところ報酬なわけだが」
「その点なら心配いらないわね。RAIZINGを贔屓にしている鉄帝貴族は、戦闘を観戦するのが大の趣味でね。
 RAIZING側の持ちかけでこの模擬戦に大きな報酬が用意されたわ。ローレットが受けるに十分なね」
 なるほど。で、あれば戦闘経験も得られ報酬も得られる。ローレットとしても損はないわけだ。
「それでRAIZINGに関して調べて来たけれど、チームは男女混成の八人チームね。盾、斧、槍、双剣(短剣)、弓、魔導書、杖、宝珠と全員が別種の武器を手にしているわね」
 そしてロール構成も盾と斧がタンク、槍、双剣、弓、魔導書がアタッカー、杖と宝珠がヒーラーと明確に分かれている。
「腕前はそこそこ。個々の能力は貴方達に劣るかもしれないけれど、連携力は対したものね。本気で挑まないと、きっと痛い目をみること間違いなしだわ」
 闘技場でもそれなりの戦績を納めているようだ。チームとして結束力が高いのだろう。
 イレギュラーズは依頼の場で初めて顔を合わせる者達が大半だ。チームとしてうまく連携できなければ、その隙を突かれてもおかしくないだろう。
「どうして挑戦状を送ってきたのか……その真意は測れないけれど、まあゼシュテルの人達は力こそ全てなところがあるからね、最近噂になりだした特異運命座標ちゃん達の力試しってところじゃないかしら。
 気を抜いてとはいえないけれど、自分達の腕試しのつもりで挑んでも良いんじゃないかしらね」
 自分達の今の力量を測るには申し分のない相手だろう。イレギュラーズとしての力をゼシュテルの人間に見せつける良いチャンスでもある。
 グッと握りしめた拳に力が漲るのがわかった。
「そうそう、あくまで訓練の名目らしいから殺害は許可されてないけれど、不殺とかは意識しなくて大丈夫だそうよ。全力でやっちゃってちょうだい」
 そういって依頼書を渡したリリィは、ニコリと微笑むのだった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 鉄帝の戦闘中毒チームからの挑戦状が届きました。
 イレギュラーズの力と連携力を見せつけてあげましょう。

●依頼達成条件
 チームRAIZINGに勝利する(八名全員の撃破)

●情報確度
 情報確度はAです。
 想定外の事態は起こりません。

●RAIZINGについて
 ライジングです。スペルミスじゃないです。
 チームは男女混成の八人チーム。
 盾、斧、槍、双剣(短剣)、弓、魔導書、杖、宝珠を武器に戦います。
 盾と斧がタンク、槍、双剣、弓、魔導書がアタッカー、杖と宝珠がヒーラーとして立ち回ります。

 ガラド/剣盾
 チームのリーダー。連携の要であり指揮官。
 ブロッキングバッシュ、名乗り口上、ブロック、マークが得意技。

 ゴーザス/斧
 チーム一の戦闘狂。
 クラッシュホーン、名乗り口上、ブロック、マーク、が得意技。

 リューオウ/槍
 巧みに槍を操る騎士。
 多段牽制、ダイナマイトキックが得意技。キックと見せかけ槍で突いてきます。

 ザイン/双剣
 闇纏う暗殺者。
 アクセルビート、カプリースダンスが得意技。

 カルラ/弓
 弩弓操る女弓術士。
 ラピッドショット、バウンティフィアーが得意技。

 レーラ/魔導書
 チームの頭脳。知識操る者。
 ピューピルシール、エーテルガトリングが得意技。

 ミルマ/杖
 チームの要、メインヒーラー。
 ハイヒール、シェルピアが得意技。

 クゥーエル/宝珠
 支援を担当するサブヒーラー。
 超分析、ヴェノムクラウドが得意技。

●戦闘地域
 ゼシュテルにある闘技場を模した模擬戦場になります。
 時刻は十時。
 障害物、遮蔽物のない広場となります。
 そのほか、有用そうなスキルには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • RAIZING!完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月05日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
ルツ・フェルド・ツェルヴァン(p3p006358)
暗黒竜王

リプレイ

●試合開始
 依頼を受けたイレギュラーズの面々が指定された場所――ラド・バウの闘技場に比べれば小さいが、本格的な模擬戦場――に辿り着くと、すでにそこにはRAIZINGのメンバーが待ち構えていた。
「お、来たな」
 斧を持つ男――ゴーザスが野獣の如き眼光を向け口の端を釣り上げた。
 イレギュラーズは揃ってRAIZINGメンバーの元へと向かう。近づけば近づく程に、並々ならぬ闘志と気迫を全身に感じる。
「ご招待頂き感謝だな。今日は宜しく頼むぜ!」
 『シャーク探検団名誉船員』カイト・シャルラハ(p3p000684)がその緋色の羽根を広げ、気安く挨拶する。
 イレギュラーズの面々を見回して、槍使いのリューオウが不躾に言葉を零した。
「ふん、噂に聞く特異運命座標。
 どんな連中かと思えば、女子供の集まりか? 本気で戦っても大丈夫なんだろうな?」
「なるほど、己の実力に自信があるように見える。
 ……心配しないでもらおう、ここでの戦いに慣れていないとはいえ、良き相手とはなるだろう」
 内心楽しみにしている『暗黒竜王』ルツ・フェルド・ツェルヴァン(p3p006358)がリューオウの安い挑発をさらりと受け流す。
「ふふ、まあ確かに個性的な面々ではあるけどね。
 でも心配しないで貰おうかな、僕たちは……そう、普通じゃないよ?」
「これは、仲間が失礼したな。
 あらゆる依頼を解決に導く特異運命座標がどんな連中か、勝手に想像を膨らませていたんだ。
 なに、腕前の方は心配していないさ……期待してもいいんだろ?」
 笑顔で返す『メルティビター』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)の言葉に、剣と盾を持つガラドが笑って返した。
「クハッ! 是非とも期待してもらおうか!
 吾達の力が偽りではないと、すぐにわかるはずである!」
 快活に笑うは種族美少女な『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)だ。
「ふふ、見た目の割りに以外とワイルドな物言いね」
「美味しそうな子が一杯で目移りしちゃうわね」
 魔導書を手にしたレーラが百合子に笑いかけ、宝珠を手にするクゥーエルがイレギュラーズの女性陣をその蛇のような細い目で流し見る。
「うっ、なんかこっちジッと見てる」
「はい、だめだめー。うちの子をそう言う目で見るのは遠慮してねー」
「あら、残念ね」
 『ペリドット・グリーンの決意』藤野 蛍(p3p003861)がちょっぴり引いて、間に『悪意の蒼い徒花』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)が入ると、クゥーエルは素知らぬ顔で視線を流す。
「くくくっ、クゥーエルはいつでも変わらないねぇ。
 アンタ達気をつけなよ。戦闘中でも隙を見せれば何をされるかわからないからねぇ。
 なぁ、そうだろ? ザイン」
 弓使いのカルラが愉快そうに笑い、隣で瞑目する男――ザインへと話を振る。
「――刮目せよ」
「ああ、アンタに話を振ったアタシがばかったよ。
 気にしないでくれ、こいつはこういう奴なんだ」
「……ふむ、ずいぶんと妙な人なのでござるな」
 同じように瞑目していた『黒耀の鴉』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)が片目を開いて言葉を零す。
 そんな面々を見渡して、『穢れた翼』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)がぼそりと呟いた。
「……変な人達だね」
『我々と同じ程度には、な』
「ふふ、互いに個性的なメンバーということですね。
 今日は一日、よろしくお願い致します」
 とても常識人に見える、杖を持った女性ミルマが丁寧に腰を折った。
「さて、互いに顔合わせも済んだところで、うちのスポンサー様も準備が整ったようだ」
 ガラドが、観客席のほうへ視線を向けると、見るからに貴族な男が、優雅にイスに座ってこちらを観察していた。
「早速始めたいが――準備はいいか?」
「ああ、問題ないぜ」
 互いに同意し、模擬戦場の中央へと広がる。
「事前に伝えた通り、殺し以外は何でもアリの模擬戦だ。
 多少の怪我は覚悟してもらうぞ」
「そっちこそ、これで怪我したからと言って、ローレットに苦情をいれるのは止してくれよ」
「ふん、言ってろ」
 中央に立つガラドが、指にコインを乗せる。
「地面に落ちたら――始まりだ」
 ガラドの言葉にイレギュラーズはコクりと頷いた。
 弾かれ宙を舞うコイン。
 視線で追う両者に緊張が走る。
 ゆっくりと落下するコインを前に、イレギュラーズは武器を握り直す。
 激闘を予感させるチームRAIZINGとの模擬戦が、始まった――。

●激戦
 コインが落ちると同時、ルチアーノとカイトが先手を取って駆けだした。狙うは敵前衛防御役であるガラドとゴーザスだ。
「僕達の前衛を翻弄したいんでしょ? させないよ!」
「俺はカイト! この緋色の羽、しっかりと目に焼き付けとけな!」
 二人はそれぞれの得物を手にガラドとゴーザスを抑えつける。先手を取られたことでガラドが声を走らせる。
「こちらの思惑通りとはいかないか――リューオウ、ザイン任せたぞ!」
 ガラドの言葉と同時、すでにリューオウとザインは走り出している。二人――否、攻め手に回るRAIZINGの四人の狙いは、セオリー通りのヒーラー狙い。つまり蛍へと一直線に向かう。
「こっちに来たね――!」
 狙われたとしても、焦ることはない。どんな編成、戦況変化、あらゆる『即興』に対応することこそイレギュラーズの強みだと、蛍は思う。
 迎え撃つ体勢をとる蛍。そして、周囲を固める仲間達の動きは事前に練った作戦通りだ。
「藤野殿は拙者が我が身に変えても守るでござる」
 蛍が動き出すより先に、咲耶が蛍を庇うようにリューオウとザインの前に割って入る。
 素早い反応を得られたことで蛍を守ることに成功する咲耶だが、事前に想定していた『連携力』は発揮されていない。これは事前の準備で不覚を取った故の出来事であったが、幸運なことに、蛍の反応は咲耶とほぼ同時だった。
 これによって多少ギクシャクしつつも、ヒーラーである蛍を先手をとって咲耶が庇うことに成功したといってよいだろう。
 リューオウの飛び込むような刺突も、ザインの死角外から放たれる斬撃も、咲耶がその身を盾に受け止める。
「癒やし手を守る算段のようだが――どこまで持つかな!」
「我を阻める者なし――!」
 熾烈な攻撃だが、イレギュラーズも黙ってみているわけではない。イレギュラーズの狙いは、こちらの陣地内で暴れるまさにこの二人なのだ。
 思いを力に。戦う意思を付与したティアが死霊の怨念を一条に束ねて矢として射かける。
 牽制の一矢が命中したのを確認すれば、中距離から虚無のオーラを放ち包み込んでいく。
「自由に動けるのは最初だけー。
 どんどん追い詰めていくよー」
 誰よりも後ろに展開し、幻像を半実態化させ見えない悪意を放つクロジンデ。リューオウとザインが飛び退るように回避行動をとるが、逃れることはできない。
「厄介な技を使うようね……」
 リューオウとザイン二人の前衛を狙う攻撃にレーラが即時反応する。能力を阻害する簡易封印術式を起動し、クロジンデの力を閉じようと試みる。しかし、これにクロジンデは抵抗し、術式を打ち破ることに成功した。
「白百合清楚殺戮拳は咲花百合子! 参る!」
 全身の力を呼び起こし、百合子が俯き気味に静々と肉薄する。不気味さすら感じさせるその歩法は、刹那の呼吸で自らの武器である白百合清楚殺戮拳の間合いに収める。奇襲となる格闘術がリューオウの腹部に直撃した。
「私はこの中でも弱小……皆の戦い方を参考にさせて頂こう……」
 アンデットの『なりそこない』を召喚し、自らの盾とするルツ。鋭き眼光は居並ぶRAIZINGメンバーに強敵を予感させる。
「……なんだ、こちらから出向かないと戦えないのか?」
 漆黒に染まる絶望の大剣を手に、安い挑発をしかけ距離を詰める。不運をもたらす大剣だが、ルツは見事に使いこなす。大振りの一撃がザインを捉えた。
 イレギュラーズの前衛二人を狙う作戦は、すぐにRAIZING側も察知することになる。だが、前衛二人を自由にするためには、タンク役であるガラドとゴーザスが自由になる必要があった。
 ガラドは考える。遠距離攻撃手であるカルラとレーラに自分達の援護をさせるかどうか。イレギュラーズの構成、その動きを見ながら、考え、そして答えをだす。
「四人とも、そのままヒーラーと庇い役を落とせ! こちらの火力なら十分やれるはずだ!」
 ルチアーノのナイフを大盾で防ぎながら、ガラドが声を上げる。
「ふふ、大きく出たね。そううまくいくかな?」
「いくさ、いや、いかせるんだよ!」
 横薙ぎ振るう剣の一撃をルチアーノが紙一重で回避する。重厚な一撃だというのはすぐにわかる。それはガラドの人生そのものの重さだ。
「ふふ、楽しいね。互いの矜持、生き様をぶつけ合うなんてさ。
 それでも、僕が勝つけどね!」
 挑発を受けるガラドは盾の後ろで、ルチアーノと同じように楽しげに口の端をつり上げた。
「――オォォ!!!」
 激昂のごとき気合い一閃。ゴーザスが戦斧を回転させ叩きつける。斧を叩きつけられた地面がひび割れえぐれる。
「ヒュー、すげぇバカ力だ。
 だが、力自慢だろうが俺には当たらないぜ! 無駄に力を使ってな!」
 カイトは幻で作り上げられた緋色の羽根を放ち、ゴーザスに狙いを絞らせない。回避盾として、怪力自慢のゴーザスを抑えつける。
「かーっ! めんどくせぇ! この鳥野郎がっ!!」
 イライラしながらゴーザスは我武者羅に斧を振るう。纏わり付く羽根ごと薙ぎ払う一撃は当たれば致命打となるだろう。カイトはその細い糸の上を綱渡るような戦いを続けていた。
 戦況が動いたのは、そうして互いの狙いが判明してから少し立った頃だった。
RAIZINGの怒濤の攻めは苛烈で、いかに狙いを逸らさせようと、蛍を庇いその攻めを一身に受けていた咲耶の身体は、そう時間を立たず限界を向かえることになる。
「くっ……なんという熾烈な攻めでござるか――!」
「なかなかしぶといが、これで終わりだ――!」
「我が前に跪け――」
 イレギュラーズの攻めを受け、体力的に限界が近かったリューオウとザインだが、面倒な咲耶さえ沈めてしまえば、ヒーラーである蛍さえ落としてしまえば勝ちは揺るぎないと信じていた。
 そうして、咲耶に止めの一撃を見舞った時、イレギュラーズとしての力が彼らを怯ませた。
 致命打を叩きつけられた咲耶がパンドラの輝きを放ち再び立ち上がったのであった。
「まだ、倒れるわけにはいかないでござるよ――!」
「くっ、ばかな何て体力だ!」
 ゴールが見えていた矢先に振り出しに戻される。そんな気分を味あわされたリューオウとザイン。二人が狼狽するその隙を狙ってイレギュラーズの反撃が始まった。
「いまよ、体勢を立て直して一気に攻めるわ!」
 蛍の統制の元、イレギュラーズが駆ける――蛍は、傷付き体力の底が見えていた者達に癒やし今一度戦う力を与え、チームを支える。守られ続けた自分が、最後まで仲間を支えるのだと気合いを入れた。
 飛行しながら敵の死角へと回り込むティア。
「逃げようとしても無駄だよ」
『自由に動ける以上、狙い放題だな』
 ティアより幾重にも放たれる虚無のオーラが対象の腕、そして足を掴み飲み込んでいく。あらゆる支援を打ち消す常闇がRAIZINGメンバーを蝕んだ。
「反撃の余地は与えないよー。
 皆仲良く倒れていってねー」
 超遠距離から敵を観察するクロジンデは、その並々ならぬ視力をもって的確に敵の動きを把握していた。
 声をあげ、仲間に警戒させながら、次々と見えない悪意を放ち、敵の体力を奪っていく。クロジンデの存在を重く見るレーラが狙いをつけて追うが、その度にクロジンデは距離を取って立ち位置を維持していた。
「反撃の時間であるな! 吾も存分に力を奮うのである!」
 戦場に緊張感を与えているのは百合子の存在だ。
 静々と歩く佇まいから放たれる重厚な一撃はRAIZINGメンバーに恐怖を与える。仲間と共に連携し動く百合子は心強い『力』だ。
「相手からも学ぶ事は多い……成程、そう言うやり方もあるな……!」
 RAIZINGのメンバーと相対しながら戦い方を吸収していくルツ。
 チートな世界出身の彼にとってみればこの世界での戦いは辛く苦しいものだが、新たな戦法、戦術を学んでいくということは新鮮で楽しいものでもあった。
 仲間達の熱量に負けじと、その漆黒の大剣を振るうのだった。
 RAIZINGのヒーラーを狙う作戦が、イレギュラーズのパンドラ復活によって狂わされ、瓦解を始めると、試合は反撃につぐ反撃の応酬で泥仕合の様相を見せ始める。
 しかしながらイレギュラーズ側の狙いは大きく変わること無く、連携した怒濤の反撃によってついにリューオウが膝を付くと、戦局は一気にイレギュラーズへ傾いた。
「我が屍を超えていけ――」
 リューオウに続きザインが倒れると、前衛をカバーするものが居なくなる。ガラドとゴーザスは変わらずルチアーノとカイトによって動きを封じられていたからだ。
「くっ……ガラド抑えが足らないわ! このままじゃ」
「耐えてくれミルマ! 俺とゴーザスさえ自由に動ければ――」
「自由にはさせないさ――!」
 互いに疲労は限界に近い。ルチアーノとカイトは体力の底が見える中必死に二人を抑えていた。
 クロジンデのフォーカスによってレーラに攻撃が集中する。防御技術の低いキャスターは、イレギュラーズの猛攻を受け、回復の間もなく倒れた。
「これ以上は――させんぞ!」
「オォォ――!!」
 ガラドとゴーザスの力を振り絞った一撃が、ルチアーノとカイトに直撃する。しかし、二人はパンドラの輝きを見せ、膝を付くことはない。
「くっ――なんてやつらだ!」
 底なしの体力にも思えるイレギュラーズに、ガラド達RAIZINGは戦々恐々な気分となるが――その顔は強敵との遭遇を喜ぶように喜色満面であった。
 そう、彼らはどこまでも戦闘狂なのだ。
 最後の一人が倒れるまで、RAIZINGメンバーは武器を手放すことはない。一人、また一人と倒れていく中、それでも彼らは勝利を信じて、己の身体を動かした。
「大概、ネジが飛んでるぜ」
「クハッ! 敵ながら天晴れである!
 なれば、吾の拳もまた最後まで奮おうではないか!」
 互いに参ったと言うことはない。その気持ちを理解し、望むがままに戦い続ける。
「……諦めて欲しいけどねー」
「鉄帝人とはよくいったものでござるな」
「これは終わった後の治療が大変ね」
 クロジンデと咲耶、そして蛍が肩を竦めて笑った。
 そうして戦いは終局を迎える。
 最後まで立っていたのは、RAIZING一の戦闘狂ゴーザスだ。対してイレギュラーズはパンドラに縋り体力的に限界が近い者が五名いるものの、全員が地に足を付いていた。
「ちっ……ここまでか」
 取り囲まれゴーザスが苛立たしげに言葉を零した。すでに満身創痍、あと一撃受ければもはや立っていることも叶わないだろう。
 だが、それが分かっていてもゴーザスは武器を構え一歩踏み出した。
「見事だ――その心意気、学ばせて頂こう……」
「そうかよ――!」
 ルツの言葉に反応し、ゴーザスが鈍重ながら激しい一撃を放つ、その一撃をイレギュラーズは受け流し、最後の一撃をゴーザスに叩き込むのだった。
 大の字に倒れるゴーザス。
「参った」とは誰も口にせず、静かに風が流れた。
 遠く観客席から、拍手の音が響き始めるのだった――。

●高みを目指して
 見物していた貴族の男が両チームを称え拍手を送る。
「いやあ実に面白い試合だった。イレギュラーズ、噂に聞く凄腕だね」
 試合を振り返りながら、総評を述べる貴族の男。実にこういった試合を見慣れているのか的確に試合の要点を押さえて話を続けた。
「この人はいつもこうなんだ。戦ってる中じゃ気づきにくい点を客観的に言ってくれてね。反省するにも助かっているのさ」
 起き上がったガラドが笑いながらイレギュラーズに話しかける。その表情は戦いきって満足しているようにも見えた。
「皆さん、大変お強かったです。私達もまだまだだなって感じました」
 ミルマが丁寧に腰を折り、イレギュラーズを褒める。
「いえ、あなた方の攻めも素晴らしいものでしたよ」
「……守りもね。なかなかしぶとかった」
 ルチアーノとティアが言葉を返すと、ゴーザスが「それでも負けちまったけどな」と悔しそうに言葉を零した。
「いずれまた、再戦したいものね」
「こっちは同じメンバーとはいかないだろうけどな。いつでも受けて立つぜ!」
 レーラの再戦を希望する声に、カイトがグッと拳を握って答える。
「実に楽しみでござるな」
「クハッ! その時までに更に拳を磨くのである!」
「次も負ける気はないけどねー」
 互いに勝ちを譲る気はないと笑い合いながら、イレギュラーズとRAIZINGは健闘と称えて握手を取り交わした。
 チームRAIZING。
 荒削りながら高い戦闘力を誇る彼らが、ラド・バウで名を挙げるのも近いかもしれない。
 その時を予感しながら、いつか依頼で肩を並べるかもしれないなとイレギュラーズは思う。
 それはそう遠くない未来の話だと、感じるのだった――

成否

成功

MVP

ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer

状態異常

なし

あとがき

澤見夜行です。
依頼成功となります。詳細はリプレイをご確認ください。

イレギュラーズの作戦が見事に決まった形になりました。
とはいえ、ヒーラーを倒されていたら、危なかったと思います。
反応ロールの結果が運が良かったと思います。(クラス・エスプリの設定忘れはご注意くださいね!)

MVPは壁役を抑え続けた二人のどちらかに贈ろうと思いましたが、相談もがんばっていたようなので今回はルチアーノさんに贈らせてもらいます。

依頼お疲れ様でした。そのうちまた出てくるチームRAIZINGをよろしくお願い致します!

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