PandoraPartyProject

シナリオ詳細

銃口は君に向く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●武器商人のもつ武力
 パサジール・ルメスのキャラバンが一つ『レーツェルマン一行』は世界中を渡り歩く商人である。
 主に扱う商品は、武器。
「武器商人の積み荷は名前のとおり武器と弾薬だ。それだけに、一発逆転を狙って銀行強盗をやらかす連中と似た思考のやつを呼び寄せてしまう」
 キャラバンのリーダーことレーツェルマンと、イレギュラーズたちと、『あなた』。
 あなたたちはいま、アサルトライフルの銃口に囲まれていた。
 両手をあげたままちらりとあなたをみるレーツェルマン。
「まあ、こいつらのことなんだがな」

 ――こうなるまでの時間を、すこしばかり遡ろう。

 ゼシュテル(鉄帝)からラサに向けたルートの中で、商人が通りたがらないルートがいくつかある。
 怪物ばかりの沼地や恐ろしい都市伝説のつく洞穴や断崖絶壁の橋もそうだが、特に嫌がられるのが犯罪多発地帯だ。
 ゆっくりと積み荷の馬車をひくレーツェルマン一行。
 後方をゆくレーツェルマンは紙煙草のケースをトンと叩いて一本突きだした。
「吸うか? この先は少ししんどくなるだろうからな」
 あなたがそれにどう応じたかはさておき、レーツェルマンは自分のぶんの煙草をくわえて銀のジッポライターで火をつけた。
 重い煙草のにおいがフッと広がって、どこか暖かい煙が上がっていく。
 レーツェルマンは皺の多い顔をより深くして、白い髭のたくわえた口をもごもごと動かした。
「この先にあるディエロという町は昔から犯罪が絶えない場所だ。
 まあ、町と言ってもバーと小さな店と小屋しかないウェスタンストリートさ」
 眉をあげ、咳き込むレーツェルマン。
「ああ、分かりづらい表現だったな。二階建ての木造小屋が左右に何件か並んだだけの場所を想像してくれ。
 土地の中心はウェスタンドアのついたようなバーで。銃をさげたゴロツキと娼婦しかいない場所だ。
 町自体どっかの誰かから奪い取ったものらしいから、ここに『一般人』はいないと思っていいだろう。
 そら、見えてきた」
 馬車はやがて町へと近づく。
「俺たちは食料を調達して馬を休ませ、数時間したらすぐに離れる。
 なに、たかが数人と馬車一台をわざわざ襲って身ぐるみをはごうとはせんだろう。我々が商人だとバレさえしなければな」

 ――と、そのすぐあと。
 町について一時間とせぬ頃に武器商人であることがバレ、ギャングたちが積み荷をタダで置いていけと脅して取り囲んだ。
「全員武器を置け! 今すぐだ!」
「手を上げろ、余計なまねはするな!」
 あちこちから怒鳴りつけてくる。
 自分に向いた銃口はいくつあるだろうか。
 ひとつ、ふたつ、みっつ……。
 そうしていると、レーツェルマンがこっそりとサインを出した。
 意味はこうだ。
『全員殺して切り抜けよう』

GMコメント

【これまでのあらすじ】
 パサジール・ルメス・キャラバンの護衛についていたローレット・イレギュラーズ。
 しかし犯罪多発地域ディエロにてギャングの集団に囲まれ、銃をつきつけられてしまう。
 イレギュラーズが8人と、商人が2人。
 馬車と馬は放れた宿に繋がれている。
 食事だけでもしていこうと欲が出たのがいけなかったのか。
 とにもかくにも命の危機。
 そんな中で依頼主であるレーツェルマンが出したサインは……。
『全員殺して切り抜けよう』

【状況観察】
 少々メタ視点になりますが、ここでの相談は『一瞬のうちに察しあって素早く動いた』という扱いとします。
 またそれぞれの観察眼を総合して以下のことがわかっています。

・ギャングの頭数は20人強。
・装備種類はアサルトライフル10人とハンドガン&ナイフ5人、のこり5人が隠れて見えない。
・ボスが誰かはよくわからないがすぐ近くにいないことは確かだ。
・今は銃でおどされて囲まれている状況。
・仲間と商人はそれぞれ一箇所に集められ、武器をすてるように要求されているところ。

 一瞬のことではありますが、以上に加えて更に情報を瞬時に獲得できるすべ(特に能力)があるならその個人にCT値をボーナスで付与します。更にそれを全員に一瞬で共有できる手段がある場合、伝えた分のボーナス値をシェアできます。
 ここでいう一瞬は『一秒以内』くらいを目安に考えてください。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 銃口は君に向く完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月09日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
黒鉄 豪真(p3p004439)
ゴロツキ
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
有馬 次郎(p3p005171)
鉄壁防御騎士

リプレイ

●刹那のコンタクト
(まさか、この村そのものが悪党の住処とはな……)
(物騒な事件に絡まれたものだ……)
 『鉄壁防御騎士』有馬 次郎(p3p005171)と『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)はちらりと互いに視線を交わしながら、周囲の状況を確認した。
 自分たちを囲んでいる人数はおよそ10人。そこそこの距離をとってアサルトライフルの銃口をこちらに向けている。ナイフを装備した奴が間からちらほら見えるが、残る何人かがよく見えない。
(だが俺は今日も依頼人を守り抜く。騎士の誇りに懸けて!)
 リゲルは剣の柄を強く握りしめ、反撃の決意を固めた。
(我等『冒険譚』に危険と興奮は必要不可欠。此れが神々の試練ならば哄笑と共に吹き飛ばす。貴様等の鉛玉は我等『物語』の肉を抉る為に在る。昂揚感を寄越せ。さあ。物語を始めよう)
 一方で『Eraboonehotep』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)はゆらゆらとしながら周囲の様子をうかがっていた。
 『自称、あくまで本の虫』赤羽・大地(p3p004151)がうんざしりた顔で腕を組んでいる。
(……ああ、全くついてないな、こんなことになるなんて。あア、俺達の事じゃねぇゾ。ここで返り討ちに遭ウ、アンタ達の事を言ってんダ)
 この場を切り抜けるだけなら簡単だが、商人たちが心配だ。
 自分たちの雇い主であるレーツェルマンを捨てていけば仕事がパーだし、なにより沽券に関わる。
 そんな中、レーツェルマンは『全員殺して切り抜けよう』というサインを出してきた。
(なかなか肝が座ってるよナ。それモ、商人には必要な資質なのかネ)
 武力における強者には二通りいる。自身に武力を持っている者と、自身のリソースを武力に変換できる者だ。レーツェルマンは後者であり、武器商人という職業柄、それは一般水準よりずっと上手だった。
 たった二人の商人の国家間移動に八人もの護衛をつけたのがその証拠とも言える。
 ぺろりと小さく舌なめずりをする『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)。
(おやおや。悪魔に武器を向けるとは、なんていじらしくて愛らしい子供達だろう。思わず涎が出てしまうよ)
 未だに武器を捨てない彼女たちに対して、取り囲むギャングは僅かながら焦りの色を見せ始めていた。
 強盗にとって最も恐ろしいのは手痛い反撃をくらうことだ。
 深夜自転車で帰宅中の中学生が二台のバイクにのった四人組に取り囲まれ木刀をちらつかせつつ恐喝されたことがあったが、中学生が木工作業用のごく小さな刃物を取り出しただけで恐喝グループが撤退したという事件があった。実話というか体験談である。
 今現在イレギュラーズを取り囲んでいるギャングたちも、この作業によって自分が命を落とすリスクが生じないことを祈っているのだ。
 だがその祈りは届かない。届かないことを、誰よりも襲われた側が知っていた。
(イツモこういうことシテルなら、今まで奪ったモノ、いっぱい持ってるヨネ? 殺したら奪ってイイかな?)
 背負っていたライフルにそっと触れる『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)。
 『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)が仲間のタイミングに合わせるために呼吸を整え始めた。
(話を聞いた時からこんなことになるんじゃないかって気はしていたよ。こうなってしまった以上は仕方ない、メイドとして雇い主はしっかり守り抜くよ)
 『ゴロツキ』黒鉄 豪真(p3p004439)が、全員が動き出すタイミングをなんとなく察知した。
(面倒だがしゃーない……切り抜けさせてもらうカ! 護衛は正直言って面倒だがナ)
 得意なやつに任せたぜと目で合図を送ると、メートヒェンは頷いて一歩歩み出た。
 両手を翳し、武器を持っていないことを主張する。
「武器なんて持っているはずないじゃないか」
 とはいえここは混沌。パン屋が素手で魔法を放つ世の中である。銃器や刃物を持っていないからといって無害認定できるほどみな愚かではない。
「なんだったら調べてもらっても構わないよ?」
 スカートをつまんで僅かに上げるメートヒェン。
 デリンジャーピストルすら出てこない。現われたのは美しく引き締まった御御足である。警戒よりも見とれる気持ちが上回った、その一瞬。
 メートヒェンが跳ねた。
 銃の攻撃射程を連続ロンダートとひねりを加えた跳躍で急速に埋めると、一人の顔面を蹴り付け、踏み倒したのだった。
 一瞬のことである。メートヒェンを狙うか残りの仲間たちを狙うか。ギャングたちの判断に迷いが生じた。
 今こそ好機。
「貴様ら、よりにもよって、囲むしか脳がないようだな。なぁ、言ったらどうだ?」
タダより高い物は無い。お解りですね? その銃弾を、鉛屑へと変えて差し上げましょう!」
 次郎とリゲルがメートヒェンとは全く別の方向に飛び出し、自らに注意を引き始めた。
 慎重に囲もうとするあまり、きっぱり円形に『固まって』いたことがギャングたちの落ち度である。リゲルたちはその円のうち四分の一ずつをブロックわけして引きつけたことになる。次郎も【怒り】の異常状態を与えられた相手は半数にも満たなかったが、一部の注目を得たことで連鎖的の残るヘイトが集中する形になった。みんなでご飯食べに行く際店が決まらないみたいな状況で10人中3人が賛成した内容に残る7人が賛同してしまう、というような経験はおありだろうか。今のギャングたちのヘイトバランスはそんなふうに集中した。
 つまり、切り分けられなかった残る4分2たちも、リゲルや次郎に集中したのだ。
 隙というのは作るもの。注意が完全にそれてしまった『リゲルたちとの反対方向』に向けて、マルベートが飛び出した。
「どっちを見ているんだい。一緒に遊ぼうじゃないか!」
 注意を大きく乱されたギャングたちは今度こそ混乱した。
 巨大なナイフとフォークを取り出して、マルベートはあらためて周囲の様子を確認する。
 最初に自分たちを取り囲んでいたアサルトライフル持ちの10人とナイフもちの5人。その影に隠れていたらしい5人のうち、ボスらしき人物が1人。
 はじめは見えないからずっと離れた場所に身を潜めているのではと思いもしたが、どうやらギャングの影に隠れてみえなかっただけのようだ。(よくよく考えればわざわざ恐喝中にかくれんぼをする必要がないので、当然といえば当然である)
 ギャングたちの統率は乱れ、攻撃対象が分散する形となった。第一の危険――大人数による攻撃集中でメンバーが著しく欠落することを、防いだのである。
「貴様等に肉の壁を晒して魅せよう。貴様等に膨張する蠢きを晒して魅せよう」
 混乱を促進させることにかけてオラボナはエキスパートである。
 オラボナは名状しがたい塊を無数に作り出しては見せつけはじめた。
「ところで、そんなところで固まって大丈夫なのか?」
「なにが――」
 ハッと振り向いたギャングに、大地が怨念の塊を投げつけた。爆発してギャングたちを取り囲む悪意の群れ。
「アンタらハ、俺達を蜂の巣にするつもりで居たんだろうが……いい的だゾ?」
「さて、テメェらは俺の闘争心を満たしてくれるのカァ?」
 豪真はライフルと拳銃をそれぞれ抜くと、無理矢理二丁持ちして乱射し始めた。
「オイ商人、死にたくなかったら離れるナ」
「心配ない。離れろと言われても盾にするつもりだ」
 レーツェルマンが敵に囲まれたメートヒェンのそばにぴったりとつき、なんだか居心地良さそうにしている。
 もう一人の商人はオラボナのそばについて居心地悪そうにしていた。なんとなく二人の力関係がわかる構図である。
「んー……?」
 ジェックがライフルでちょこちょことギャングを狙い撃ちにしながら、小さく首を傾げた。
 むせかえるような火薬の臭いと血の臭い。銃声や怒号が飛び交うなか、一つだけここから遠ざかる足音を察知したのだ。
 ちらりと足音のほうに目をやると、それが先程までギャングたちに指示を飛ばしていたボスらしいことがわかった。
 どうやら反撃がキツいことを察して、自分だけでも助かろうとこっそり逃げ出したのだろう。混乱に乗じたつもりのようだが……。
 ガスマスクの下からウィンクをして見せるジェック。マルベートはナイフを研ぐかのようにフォークの表面にしゃらんとこすらせると、同じくウィンクをして返した。

 ライフルを乱射しつづけ、拳銃を片手で器用にリロードする豪真。
 格闘に集中し始めたメートヒェンに変わってレーツェルマンを庇うべく馬車の前までやってきた。
「面倒かけやがっテ」
「そういう仕事だ」
「違いねえが……終わったら身ぐるみ剥いでおくかナ」
「いいかも。いい銃あったらモッテ帰りたいなー」
 ジェックも近くに寄ってきて、頑丈な馬車を中心とした簡易塹壕を作って向かいのギャングたちと撃ち合いを始めた。
 戦力差はどっちが上なのか微妙なところだが、はじめに混乱させておいたのが効いたらしく精神的優位はこちらがとっているらしい。ギャングの中に逃げ出す者もちらほら現われていた。
 こういうとき戦闘に携わる頭数を減らすのは、全滅への速度を早めるだけの行為だ。ジェックたちが逃走して隠れた人間を放って置いてくれるほど愚かで無関心であることを祈っての行動なのだろうが……。
「悪手悪手」
「アクシュだねー」
 ジェックはからからと笑った。
 ついでに死んだギャングから銃をパクって持ってきたらしく足下に2~3個積んでいた。
 ちらりとそれに目をやる豪真。
「なんだもうパクってきたのか」
「いい銃なのかなーって」
「クズ銃だぞ、こいつ」
 レーツェルマンが早くも鑑定を始めていた。さすが武器商人。武器に関して目も手も早い。
「『強盗の銃は捨てろ』ってな。武器屋のジンクスだ。こういうモンは売り払うにしてもバラすにしても、持ってるだけで自分の値打ちが下がるモンだ。銃は買え。保証のあるやつを買え。クズ銃はいざって時に暴発するぜ」
「その話後でいいカ!?」
 銃声が会話をかき消していく。

 ナイフや剣を装備した盗賊たちが襲いかかる。
 リゲルは自らの首を狙ったナイフを剣のひとふりで打ち払い、刀身で銀色の軌跡を描いた。
「あなた方は、なぜ命を懸けてまで罪を犯すのです」
 三人がかりで取り囲まれておきながら、リゲルは問いかけた。
 ギャングたちも三人がかりで取り囲んでおきながら、しかし優位をとれてはいない。
「てめぇには関係ねえ」
「国がどーしょもねーからさ」
「奪われる奴が悪いんだろうが」
 一斉に飛びかかるギャングたち。
「――浅はかな」
 リゲルは少し悲しげに目を伏せると、自らの剣を銀色に強く発光させた。
 一閃回転斬り。
 銀色の円盤が描かれ、飛びかかったギャングたちは一斉に切り払われた。
「来世が仮にあったなら……まっとうに生きるのです。こんな結末にならないために」

 拳銃やナイフで武装したギャングたちの中を、メートヒェンと次郎が駆け抜けていく。
 身体を丸くした次郎がボールのように弾み、銃弾の中をバウンドしていく。
 メートヒェンを狙った銃撃から庇うように飛び出し、回転した次郎ボールが銃弾をはねた。
 それをサッカーのごとく胸でトラップしたメートヒェンはノーバウンドでキック。拳銃を持った男の顔面にぶつけると、流れるような後ろ蹴りで後方から迫るギャングの腹を潰した。
「おっと、つい蹴ってしまった。大丈夫かい?」
「心配ない。この身体は、元から頑丈だからな。それに役得もあった」
 倒れたギャングの上で丸まった状態を解除すると、次郎は手で顔をぬぐった。
「ならいいんだ。……ん?」
 そういえばうっかり胸でトラップしたな、と思ったが直後に華麗にシュートしているのでまあいいか思い直すメートヒェンである。
 起き上がろうとしたギャングの胸を踏みつけて寝かせると、メートヒェンはやや乱れた髪を払ってなおした。
「さてと、仲間たちはどうしてるかな?」

「貴様等の敵は此処だ。貴様等が穿つべき壁は此処だ。貴様等が嘲るべき化け物は此処だ」
 地の底から沸くような笑い声をあげ、オラボナが両手を広げて近づいていく。
 ギャングたちは吹き出る汗をぬぐい、オラボナに銃撃を集中させた。
 大量の銃弾がオラボナへと打ち込まれる。常人なら死んでいて当然のデスダンスを見せた後でも、オラボナは変わらずに笑っていた。
「こ、こいつ――」
 何かを言おうとしたギャングたちに、大量の銃弾が撃ち込まれた。
 オラボナは彼らの放った弾をまるで防御することなく受け入れ、その一部を丸ごと返したのである。
 だが返したのは銃弾だけではなかった。
 恐怖の悲鳴をあげるギャングたち。
 自らが最も恐れる幻覚や手足に眼球がわき出る幻覚が彼らを襲い、恐怖という獣に精神を喰われてゆく。
「やれやれ、ダ」
 大地がそんな風にいいながら、ハンドポケットのまま歩いてくる。
 彼を取り巻く無数の怨念が吹き上がり、崩壊寸前のギャングたちの精神へと食らいついていった。
 裏返った悲鳴をあげ、泡を吹いて息絶えるギャングたち。
 それを前屈みな姿勢で見下ろし、大地は口の方端を釣り上げた。
「せめテ、この後ハ、御馳走にでもありつきてえモンだナ」
 ぐい、と背筋を伸ばして振り返る。
 この土地をもともと所有していた、ないしは暮らしていた人々の怨霊が周囲にこびりついているのが大地にはわかった。
 奪われたという悲しみと怒りが、ギャングたちに向けて注がれている。
 その中でも最も強く注がれているのが、ギャングたちのボスである。
 あっちはもう片付いているだろうか。
 大地は少しばかり考えて、そちらへ足を向けた。

「許してくれ、金はやる。この土地もやる。だから命だけは」
 懇願する男。ギャングのボス。暴力で土地に住む者たちを皆殺しにし、支配者になった男。
 今彼の腹には巨大なフォークが刺さり、酒場のバーカウンターに縫い付けられていた。
 がりがりと木目の床を削る音。
 自分の前を左右にゆっくりと歩く悪魔が、巨大なナイフで床を削る音だった。
「んー……」
 人差し指を顎に当てて考えるマルベート。
「お金はレーツェルマンがくれるし、土地はあっても持て余すし、別にいらないかな」
「じゃ、じゃあ何が欲しい。くれてやるから、好きなものをなんでも――」
「美味しいものが欲しいかな」
 そんなことでいいのか。という問いは口から出る前に止まった。
 マルベートの目が、まな板に置いたヒレ肉を見る目と同じだったからだ。
「じゃあお言葉に甘えて、好きなもの(部位)だけ貰っていくね」
 ナイフが、テーブルマナーそのままに、フォークにそってそえられる。
「今宵のディナーが楽しみだ!」

●死んだ町
 レーツェルマン一行は武器商人である。
 武力そのものを売るがゆえ、武力にまつわるトラブルには事欠かぬ人間である。
 だからこれは、そんな商人の日常のお話。
 通り過ぎた町の住民が全員死んだだけという、ただの日常のお話である。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――congratulation!

PAGETOPPAGEBOTTOM