PandoraPartyProject

シナリオ詳細

常朝村紅茶館段袋

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●常朝村 -Jocho village-
 田舎である。
 地球という星の、日本という国の、大正時代から来た者の子々孫々が、ほそぼそとやっている村だ。
 帰属は【幻想《レガド・イルシオン》】。
 フィッツバルデ領に位置するこの村は、しかし、海をへだてた【練達《アデプト》】から近い位置にある。
 時々練達へ行く者、くる者が宿のために寄る。
 わずかながらも、もたらされてきた英知により、田舎ながらただの田舎ではない。
 幻想らしく、魔術という語と、練達の蒸気機関なる語と、大正時代という語が、混ざり合ったような文化を形成していた。
「やっぱり救世主どんというのは、すごいもんだ。なあ、正一どん」
 ねずみ色の和服を着た清くんと、青色の作務衣を着た正一どんなる田舎者二人が、田舎の茶屋《カフェ》で、田舎話にワハハと笑った。
「なんでも山火事になるかもしれないと、心配して見に来てくれたお方がおるようだぞ、清くん」
「おお、親切なことじゃ」
 二人がつくテーブルは、こげ茶色の木製。足が70cmほど。
 卓上には真鍮メッキのケトルに、二つのカップ。カップはどちらも白磁だが、丸型の温度計がそなわる特異な形をしている。
「ときに清くん。アレスさんは戻ってきたのかい?」
「奥だべ。まったく、チョウホウインというのは、お忙しい仕事だべ」
 放し飼いになっているニワトリがやってきて、二人の足のあたりをくぐり、ココココと、どこかへ行く。
 二人の田舎者が世間話を続けていると、奥のすかしガラスの障子戸ががらりと開いた。
 現れたのは、金髪で青の瞳をした紳士である。着衣は白い裾長のタキシードだ。
「清と正一か」
 と紳士がいうと、清と正一は手をふった。
「や、アレスどん。年寄りどもの寄り合いは、どうで?」
「救世主殿を相手に、村おこしというテーマで盛りあがっていたよ」
 アレスは、つーっと来て、ハットを壁にかけてから卓についた。
「現金なジジババさぁ」
「まったくだ。世から外れたmoodが台無しだ」
「むうど……?、ふうんむ、そういうもんですかね?」
 正一どんと清くんが首をひねる。
 彼等にとっては、着物姿で、真鍮メッキのケトルから湯気がたつ光景をみるのも、丸型温度計がついたカップで珈琲を飲む事も、生まれついてからの日常である。
「さ、アレスどんは、珈琲でいいかい?」
「マスカテルフレーバーのダージリンがいい」
「いつもそれだ。そんなものはないっちゅうて、オババにまた叱られるよ?」
 ここで、ふと、アレスは、口に手をやった。
 少し考えてから。
「――それだ!」
 と指を高らかに鳴らした。
 おどろいたニワトリがコケココと表通りに駆けだした。


●村おこし協力依頼 -Tea party-
『私だ。
 今回の任務を説明しよう。
 諸君らの任務は、常朝村の村おこしの一環として紅茶館のメニュー作りに協力する事である。
 失敗は許されない。
 具体的なマイルストーンは二つ。
 諸君らの御眼鏡にかなう茶の木を、常朝村に密輸してもらうまでが一つ。
 現地にて、お茶会《Tea party》をひらき、実際にふるまってもらうまでが任務となる。
 茶の木から、茶葉にするためには複雑な工程を要するため、サンプルの茶葉も必要だ。
 くれぐれも忘れないでほしい。
 対象となる茶の木の条件は一つだけ。『美味い』ことだ。茶に良く合う茶菓子や、軽食も歓迎する。
 出来たものはすべて平らげると約束しよう。
 舌自慢、菓子自慢、茶自慢の渾身の作を期待している。
 余談ではあるが、私の好みは、マスカテルフレーバーのダージリンだ。

                         ――――『ペテン師』アレス・D

 追伸:このメッセージは自動的に消去される』

 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は怪文書をテーブルの上に置いた。
「別に自動的に消去されなかったのです。常朝村という所で、村おこし大作戦を立てているらしいのです」
 ここはギルドローレット。
 テーブルには特異運命座標《イレギュラーズ》が集まっているが、『戦闘がなるべく無いような仕事』を求めてきた者たちだった。
 この条件をつけた結果でてきたものは、怪文書と――
「村おこし?」
 と特異運命座標の一人が首をかしげる様な内容だった。
「紅茶屋さんのメニュー作りなのです。実際につくってお茶会をひらくまでのお仕事なのですよ。はわわ! お茶会!」
 特異運命座標の一人が挙手をする。
「経費は? 怪しい手紙を送ってきた人物というのは?」
 と問うと、ユリーカは「むむむ、たしかここに!」と言いながら別の羊皮紙を出した。
 今回の依頼人の情報のカンペ(羊皮紙)である。
「アレス・D・フェイスレスさん。フィールドワークが好きな自称諜報員さんなのです。あ、材料費は常朝村持ちなのです」
 要するに話はこうだ。
 アレスという、常朝村と懇意の自称諜報員がいる。
 緊急事態なことに、『血中紅茶』が尽きかけている状況らしい。
 常朝村が救世主――特異運命座標に村おこしをしたいらしく、その企画案に乗じて、汚くも私利私欲のために茶会を開き、あわよくばおいしい茶にありつきたい思惑とあやしまれる。
「どんなお茶淹れるか、どんなお茶菓子を作るかお任せらしいのです。ボクも行ってみたいのです!」
 と、ユリーカはニコニコと言ってのけた。

GMコメント

 Celloskiiです。
 特定のクラスや非戦スキルで補正あります。
 以下詳細。

●目的
『ペテン師』アレス・D・フェイスレスをお茶とお菓子で斃す(美味いと言わせたら成功)

※ 紅茶がターゲットですが、緑茶や烏龍茶など他の茶も可とします

●状況
・道中
 気にしなくても問題ありません。何か工夫をしたい場合は行動しても良いと思います。
 どんなお茶を使うか(自動的に茶の木も運ばれます)、どんなお菓子をつくるか(自動的にレシピも持っていくことになります)に専念しても問題ありません。

・常朝村
 幻想国、フィッツバルデ領の小村(人口200)。
 練達と幻想から半々の影響を受けてきた大正時代の村という混沌です。
 建物は木造とレンガが半々。19世紀風の自転車(魔術蒸気機関搭載)があるなど変な所で変に発達していますが、ニワトリが放し飼いになっているなど、やっぱり田舎村です。

・戦場:茶屋《カフェ》です。戦うには十分な広さがあります
 最初からお茶会の用意は整っているとして問題ありませんが、何か工夫をしたい場合は行動しても良いと思います。

・材料関係:
 畜産家から新鮮な卵、酪農家から牛の乳ほかバター等も入手可能。ギルドの援助により砂糖もあります。お茶葉もお茶の木も手に入るので、親切にマスカテルフレーバーのダージリンを持って行ってもいいです

・調理器具や現地設備:
 ギルドローレットの支援により、調理道具は持って行けるものとします
 現地設備は、魔術蒸気機関なオーブン等の得体のしれないものがありますが、大抵のものがあり、特殊なスキル無く普通に使えるとして問題ありません。

・常朝村にいる人たち
 アレスの他、救世主をありがたがっている村人が見に来るかも知れません。


●エネミーデータ
『ペテン師』アレス・D・フェイスレス
 綴りは、R.S.D.Faithless。
 金髪ロンゲ青瞳。白灰色のロングタキシードを着たキザっぽい奴です。
 称号は『英国面』『隠れてない諜報員』いろいろあるようですが、要するにリアクション芸人です。
 紅茶キメてるうるさい舌を黙らせれば依頼成功。
 納得させなくても、『すべて平らげると約束しよう』と言っているので、特殊用途の茶や菓子でHP減らせばそのうちくたばります。その場合も成功です。

●注意
 プレイング次第ですが、食事描写が増える可能性があります

  • 常朝村紅茶館段袋完了
  • GM名Celloskii
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年02月02日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リィズ(p3p000168)
忘却の少女
蜜姫(p3p000353)
甘露
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
ハヅキ・アラクニア・ガル(p3p001079)
テイラー【アラクニア】
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
灰塚 冥利(p3p002213)
眠り羊
安宅 明寿(p3p004488)
流浪の“犬”客

リプレイ

●常朝村を目指して -Smuggling Something-
 石畳の街道を南へ行く。
 左に切れて、石畳がない道へと入り、七曲がりにかかって――
 幌のある馬車の中で、特異運命座標《イレギュラーズ》は文句もいわずに待機していた。
 今回の依頼に必要なお茶の木と、お茶会の準備のための道具箱も、幌の中でゆれている。
 『甘露』蜜姫(p3p000353)は、運ばれるお茶の木たちに声をかけていた。
「常朝村のひとたちも、きっと、うんとよくしてくれると思うの」
 蜜姫自身は、桜の古木である。
 植物と心を通わすことができた。緑茶になる木は呑気な調子である。一方ダージリンの茶木は不安のようなものが感ぜられる。
 緑の抱擁で緊張を解いてあげることにした。
 あるところで、道中でふと馬車が止まる。
「コボルトが現れました! 道の先に2匹!」
 御者が幌の中に避難してきた。
 外へ出ようとした面々に向かって、待ったをかけたのは、『流浪の“犬”客』安宅 明寿(p3p004488)。
「某のお役目にござる」
 腰の大小を握って出ていった――やがて切り捨てて戻ってくる。
 明寿は今回の護衛役を買ってでいたのだ。
 道をゆき、宿場の町に寄る。
 翌日、出発して、昼には常朝村に到着す。
 見下ろすと、レンガや木造建築の集落がある。村のむこうには山がある。
 山の先は切り立った崖になっているのか、海へと続いていた。
 海の先には、水平線上に1mm厚さの島が見える。空気遠近をかけたようにボヤけているが、あれが【練達《アデプト》】だろう。


●まずは材料調達 -Ingredients for confections-
 村に到着す。
 早速、村長への挨拶に向かう者、茶屋へ向かうものと、それぞれの役割を遂行せんと動き出す。
「初めまして、常朝村の方。私たち、ローレットより参りました。デイジーと申します」
 『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)が作法に則って、ここを担当する。
「いやあ、この度は、ありがたいことで。先日、山の方に魔物が現れましてね、あわや山火事となったとき、お助けくだすった方々もローレットの――」
 低姿勢の村長であるが、話が5分続く。まだまだ続く。
 『忘却の少女』リィズ(p3p000168)はあくびをかみ殺している。
 ゆうべの宿で本日の段取りを共有した結果、ちょっぴり寝る時間が遅れたのだ。
 給仕をやるために、ゴスロリ服を着ている。
 仕方が無いので、デイジーは村長をつれて村人の呼び込みを行った。
 「さ、村長さんもご一緒に」と、チョコレートらぬ声色と作法で、人心をつかむ。
 リィズも流し目で村人を魅了する。
 酪農家や農家もいたため、菓子の材料に必要な、卵、ミルク、バターなどが手に入る。
 段取りどおり。
 リィズは材料を頂いて茶屋へと向かう。
 デイジーは村長に捕まったので、長話にうんとつきあうハメになる。


●逸品茶器 -Masterpieces-
 先に茶屋へ行った者を出迎えたのは『ペテン師』アレス・D・フェイスレスであった。
「待っていた。私がペテン師だ」
 肘から先がふよふよと霊体じみて浮いている点を除けば、人間種《カオスシード》のようだ。旅人だろう。
 簡単に自己紹介を行い、各人で茶屋での役割にとりかかった。
 用意ができるまで、ペテン師の相手をするのは『特異運命座標』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)だ。
「ティーパーティーとは、実に素敵じゃないか――さ、こちらへ」
 イシュトカはペテン師に着席をうながすと、荷物の中から包みを出し、丁寧に包装をはがした。
「人をもてなす時には茶器から拘ることにしていてね」
 用意したものは、青磁の茶器だった。
 濃淡が花を表現し、翡翠のような繊細な色を放っている。
 ペテン師は茶器を手にとって眺める。
「青磁でこれだけのものが造れるのは、中国――いや、海洋《ネオ・フロンティア》製かね?」
「お詳しいようだ……ふふふ。私が呼ばれたからには、三流のそれにはならないと思ってくれていいさ」
 明寿が、幌馬車から道具箱を持って来る。
「続いて、これに」
 明寿は、つややかな白色の茶碗を、茶托にのせて出した。
 これは明寿がイシュトカに頼んで調達してもらったものだ。「かたじけない」とイシュトカに会釈をする。
 明寿の茶器は、白に朱色の一筆書きのような扇が描かれている茶碗だった。
「末広、発展を意味する縁起物にござる」
「味に変化を加えない、硝子の茶器でテイスティングを考えていたのだがね、ふむ」
 茶器を眺めるペテン師。明寿が続ける。
「風流なことはよく分からぬが、美味いものの良さは知っておるつもりよ」
「いや、ハイセンスだ。茶を美味く頂けるプロフェッショナル向けの牙白釉に、扇のワンポイント。村おこしに伴う縁起の良い話も気にいった」
 牙白釉の象牙色には、ニセモノが多いだの、しばし、茶器におけるマニアックな会話が繰り広げられる。


●常朝村紅茶館開店準備中-Weed-
 マニアックな会話の卓から、少し距離をあけた地点にうつる。
 勝手口から、厨房へ。
 リィズが材料を持って来た。
 いよいよ菓子作りをはじめた。村長の長話に捕まったデイジーの犠牲を無駄にしてはいけないのだ。
「ドイツのお菓子であるシュトーレンを作ってみるよ!」
 と言ってみて、そもそもドイツという国がどこにあるのかわからない。
 首をかしげるリィズ。けれど、何となくレシピは知っていた。
 シュトーレンとはドイッチュラントなる国の、国民的菓子パンだ。
 荒く挽いた粒粉を練って生地にして、木の実を練りこんで焼き上げ、仕上げに粉砂糖をまぶす。
 こちらも縁起物である。
 リィズに触発されるように、『楽花光雲』清水 洸汰(p3p000845)も気合を入れる。
「おやつとお茶は最強タッグだよな!」
 洸汰は、村の雰囲気――もの懐かしさ――に合わせて、「カルメ焼き」「カステラ」「煎餅」を作ることにした。
「ウマイもん、しっかり貴族サマや、村の人に振る舞ってやろーぜ」
 デイジーのお誘いが順調なら、村民――日本人がやってくるのだ、絶対楽しくなる確信があった。
 清くんと正一どんは首をひねって眺めている。
「すごいもんだべ」
「ち~っとも何するか予想できん……」
 リィズはフフフと微笑む。
「タイショウロマン溢れる村に、新しい風を呼び込めるように頑張っちゃいますね!」
 清くんはデレデレしだした。
「そちらの坊ちゃんは、ああ、カルメ焼きでねぇかな?」
 と正一どんが言う。
「大当たり、カルメ焼き! オレ、ここには初めて来たはずなのに、なんか懐かしい気持ちになっててさ! ノスタルジア、ってやつ?」
 洸汰はカルメ焼きを当てた正一に、握り拳の親指を立ててみせた。

 別室。
 『テイラー【アラクニア】』ハヅキ・アラクニア・ガル(p3p001079)は衣装を担当する。
 仕立屋としての技術もあるが、一から裁断していては大変だ。
 アレンジでもできる限りの事をしたいと決し、お茶に合った衣装をみつくろう。
「とってもお似合いですわ」
 ハヅキが用意した紳士服。それを着る『眠り羊』灰塚 冥利(p3p002213)も鏡を見てうなずく。
「雰囲気があって良いと思うよ」
 ハヅキは、アレスの事前情報を参考に、冥利や蜜姫に英国風の格好をすすめたのだ。
 イシュトカも給仕役という段取りだが、彼は最初から英国風なので、問題無い。
「せっかくですから、村のこの雰囲気にも合うように、会場のレイアウトを考えたいものです」
 ハヅキはしっとりと微笑んで、会場のアレンジにとりかかる。
 蜜姫も同じとおり。
 冥利より先に支度――給仕の衣装をまとい――ティーワゴンに茶器をのせてきた。
「お客様に心地よい一時を過ごしてもらえるよう頑張るの」
「うん、もてなそうという気持ちが一番大事だからね」
 冥利はナプキンを自らの片手に下げて、支度を終える。

 デイジーが村人を連れてきた。
「ようこそ、妾たちローレットの茶会にようこそなのじゃ」
 村人が続々と入ってくる。
 和服を着ている男性の横で、その妻がシュミーズとワンピース型のローブを着ているような、一見、服装に統一性がない。
「データベースでしかみたことなかったですが、こういうのを和洋折衷というのですね」
 丁度、会場レイアウトを終えたハヅキが、ありのままの感想を述べる。たのしくなってきた。
「む?」
 村人たちが来たことに眉を動かすペテン師。
 イシュトカが狙いすましたように。
「村人の諸君も入ってくれたまえ。ミスター・フェイスレスも、それで構わないだろう?」
「ああ、構わない」
 洸汰が作るお菓子の香りが漂ってくる。
 リィズが焼いていたシュトーレンも仕上がってくる。
 先鋒は冥利。
 冥利は茶の心得がある。青磁の茶器で注ぐ一杯。
 茶菓子は、洸汰のカステラだ。
 紅茶にも十分合う。
「ブレンドティーです。香り高く、まろやかな味わいで和菓子にも合うんだ」
 人心を掴むプレゼンも添えられる。
 冥利が用意した茶はブレンドティーだった。
 ダージリンと緑茶を混合したもので、香りは紅茶が前面に出る。
 紅茶は、マスカテルフレーバーの上等なダージリン――ペテン師がこれを好むというから、ハヅキが気を利かせて持って来たものだ。
 『アレスさんが村の皆と楽しめるようなお茶』をコンセプトとしているが、ここは伏せる。
 プレゼンを聞いていたペテン師は、ククッと笑った。
「村人が美味いと言ったからとて、私が美味いというとは限らん。そう思わないかね?」
 元の世界では悪人だったのでは? と怪しまれるような表情だ。
 ペテン師は人差し指をピッと立てた。
「雰囲気作り、見事な茶器。ここまで準備してくれた点に感謝を述べたい。しかし私は紅茶に妥協しないのだよ。ワトソン君」
 茶皿を持ち、ティーカップの取っ手をゆるやかにつまむ。
「――最後は美味いか不味いか、だと私は考える」
 ここに、戦いの火蓋が切られた。


●vs『ペテン師』 -Richard.Sherlock.Dresnok to Faithless-
「んんっ」
 ペテン師は、口を手で隠した。
 目を閉じて、顎を上向き加減に。
 茶の香りをテイスティングするように口中で転がしている。
「はあ~~~っこれ」「つ~~~~」「ふ~~~~。嗚呼……ヒュー、ふおお……好き」
 眉間にしわを寄せて、眉間を中指でおさえ、ペテン師は旅立っていった。
 即落ち2コマであった。

 その後は自由なお茶会時間となる。
 良質の紅茶特有なフルーティなる香りと、焼き菓子の香ばしさが場にただよった。
「女性のお客様用に、木イチゴやスミレを加えるのもおススメ! ぱっと華やかな雰囲気になるのさー」
 とプレゼンを続ける冥利。
 明寿が用意した飲み比べセットにも、人だかりが生じる。
 プロフェッショナルな茶器で淹れられる紅茶と緑茶。
 一種の催し物のようで、村人にも村長にも、若者二人にも好評であった。
 茶の木を育てられるかと言った方面の知恵知識を共有できた。
 催しが終わると「某は無骨者ゆえ」と洒落《しゃらく》に会場を離れた。
 イシュトカが他にも見繕ってきた茶器は、青や金や一筆書きのもの等、ゲストのマダムに人気だった。
 無ければ作るしかない。「うちの宿六が~」と言っていたマダムが特に熱心に聞いていた。常朝村でも茶器が造られるだろう。
 デイジーは卓について村長を相手にする。
 この村には、茶道という文化があり、下地があるらしい。
 伝えた作法は、優雅な所作はリラックスを大前提に置くという点において、やってみようというムードが醸成される。
 蜜姫もデイジーの卓にやってくる。
 提供するお茶やお菓子について訊かれて、たどたどしくも一生懸命こたえる。
 時代が時代ならば、文句を出す老人もいただろう。大正の老人はうんうんと頷いて笑顔でしっかりきいていた。
「若いのにえらいねえ」
 と老婆が、デイジーと蜜姫をねぎらった。
 リィズについてはゴスロリが受けた。
 主に若者が中心だ。清くんと正一どんも「こういうの、好き」とか言っている。
 村の若い娘も、シュミーズとワンピース型のローブに飽き飽きしていたのか、珍しく、しかし美しいと評す。
 「和ゴスもあるよ!」というと「詳しく!」と食いついてきた有様だ。
 シュトーレンも次々消費されていくので、終いにはカウンターに移動して、小麦粉を練りながら若い娘の話し相手という状態になる。
 ゴスファッションがムーブメントとなるに違いない。
 洸汰は大忙しだ。
 次から次へとカルメ焼き、カステラ、煎餅をつくっては運んでいく。
「やっぱりウマイもんを皆で囲める楽しい時間が、いっちゃんお茶を美味しくするかんな!」
 洸汰の急須の緑茶も、老人に大好評だ。
 とてもやりがいがあった。
「おまちどーさま! 甘いお茶ばっかだとしょっぱいのほしいだろ!」
 切り札はお茶漬けであった。
 ペテン師は「ちょっと!?」「ま、待って」「Foooo」とか言いながら平らげた。
 ハヅキは、そんなFooooしてるペテン師へと接触する。
「着こなしについて興味はありませんか? 素材はいいのですから、もっと自己主張してもいいと思うのですよ」
「若いとき、パンクファッションに熱をあげた時期がある」
 と、Fooooから我に返った紳士は言った。
「まあ! パンク!? 諜報員的にどうなのでしょう?」
「分かっている――そういえばゴスパンというジャンルもあるかね」
 と各人、歓談を楽しむ。


●ここから本番 -Delicious-
「皆の準備した茶は後ほど味わってみたいでござるな」
 という明寿の一言がキッカケだった。
 賛成とすぐに決まった。
 村人達は満足したまま帰り、正一も清もそのとおり。場には特異運命座標が残る。あとペテン師。
 そのペテン師も、HPを減らそうと持って来た「明寿のセンブリ茶」「デイジーの30倍唐辛子エキス紅茶、唐辛子クラッカー」を勝手に食べて、隅っこで旅立っていた。リィズが色気などを駆使して回復を促す。

 冥利が用意した茶。洸汰の急須の緑茶。
 再び、上品な香りが場にただよった。
 茶のまろやかな苦みが、舌上で転がされるうちに、甘さに転じられる。
 鼻腔から抜ける上品でフルーティな紅茶の香り、緑茶の爽やかな香りが、舌上の甘さと極上のコンビネーションを産みだしている。
 ペテン師が旅立つのも頷ける茶である。
 ここに洸汰のお茶菓子とリィズのパンが添えられる。
 カルメ焼き。
 重曹と砂糖で作る簡単なものだが、サクサクとした食感とほろほろと舌上で崩れる、シンプルでベストな逸品だ。
 カステラ。
 卵、小麦粉、砂糖の生地にバターと蜂蜜を練り込み、オーブンで焼いたもの。
 「噛む」という動詞が不適切なほど、ふわりとしててバターの香りと、舌上で溶ける甘みが極上だ。
 茶の甘みと砂糖をつかった甘みは質が異なる。
 質の違う甘さが交互にくるのだから、甘味好きにはたまらない。
 しょっぱい煎餅は、甘くなった舌を改める。もう一度、甘露をくりかえし頂ける性質の茶菓子だ。ここに極みがある。
 シュトーレン。
 リィズの焼きたて菓子パンから湯気がのぼる。
 湯気には焼きたてパンの香りに加えて、木の実の香ばしさも鼻腔をくすぐる。
 表面のカリっとした口あたり。
 次にふわっとパン生地。
 練り込まれた木の実を噛むと、口中で弾けて、じゅわっとと木の実のまろやかな油気が広がる。
 パンらしく淡白で、これも口改めのような趣だ。
 いつの間にかティーカップやティーポットが空になっているような、クセになるような。
 お茶請けという役割の観点でも、食べ物として見たときも、絶品であった。

「美味にござる」「おいしいのじゃ」「おいしゅうございます」「うんめー!」
「甘いのとっても好きよ♪」「うん……見事なティーだ」「お茶の木さんが無事根付いてくれますように」

 今日もどこかでローレットの皆は戦っている。
 のんびりと、のんきに、我関せずの境地。
 木造とレンガ、蒸気の村。
 時代を感じさせるランプ。透き硝子の戸。暖かいレンガの暖炉。
 尊きものを、ただ尊いとだけ受け止めれば、詩にもなる唄にもなる絵画にもなるし、あるいはお茶にもなる。
 特異運命座標《イレギュラーズ》は美しく美味しく、洒落たひとときを満喫した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 Celloskiiです。
 成功です。おいしい依頼になれば幸いです。
 今回出てきたお茶、菓子、茶器は、今後もこの村絡みで名物として出るかもしれません。
 お疲れ様でした。

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