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シナリオ詳細

<天使の梯子>解かれた君に花束を

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「どういうことよ!!」

 少女の叫び声がこだまする。
 其の声は怒声であり、しかし悲痛な叫びでもあった。

「どうもこうもない」

 少女――アデリンに応えるのはグレモリー・グレモリー(p3n000074)。そうしてもう一度言うね、と、はっきりと聞き取りやすい発音で言うのだ。

「セグレタが、誘拐された」
「……ッ、な、何でよ! アドラステイアはもうないんでしょ!? ファルマコンは死んだんでしょ!? この前あいつに皆で話しかけたところだったじゃない! なんで、何で、誰に誘拐されなきゃいけないの!?」
「心当たりはある。最近天義では――ああ、来たね」

 そうしてグレモリーは君たちが来た事に気付き、アデリンに一旦こっちへおいで、と言った。
 アデリンは赤くなった目元でイレギュラーズたちを見て――……ぐしぐし、と目元をこするとカウンターの奥、グレモリーの隣に立った。

「さっきアデリンにも話したんだけど、セグレタ、って覚えてる? 元幹部候補生で、今は氷漬けのアドラステイアの生き残りだ。流石にアドラステイアの上層に置いておくのは、という事で幻想の森に彼は安置されていたんだけど――今朝確認の見回りに行ったら、氷の塊が忽然と消えていたらしい。……持って行くような人間は、恐らく“遂行者”以外に考えられない」

 遂行者。
 比較的耳に新しい其の呼称は、しかし天義の新たなる脅威であった。
 天義が掲げてきた正義を「偽物」だと断じ、「預言書こそが、そして其の預言書に即して行動する遂行者こそが正義である」と、街一つを豹変させて宣戦布告してきた謎の存在。

「“遂行者”が連れているものは様々だけど――其の中に、“アドラステイアでの犠牲者”がいたという報告がある」
「……っな、」

 驚いたのはアデリンだった。
 犠牲者の決して少なくない場所ではあったけれど、……どうして、と其の瞳が揺れている。

「恐らくそういう“遂行者”が、仲間に引き込もうとしているんだろう。或いは……其れを助けに来るだろうという計算づくかもしれない。だけど、セグレタを放っておくわけにもいかない。だよね、アデリン」
「……っ、あ、当たり前よ!! 此れ以上アタシたちは、“誰にも使われない”!! セグレタだって、誰にも使わせない!! あいつにはね、起きて、アタシと一緒に幸せな世界って奴を見て貰う義務があるのよ!」

 ――ねえ。だから、アタシも連れて行って!
 ――役に立つかは判んない。もう聖剣はアタシの手にはない。
 ――でも!! セグレタのヤツが、迷ったら行けないから!!

 少女は其の時初めて、イレギュラーズに心から懇願した。
 もう誰にも利用されたくない。利用させたくない。
 そう決めたの。だから。



 ハァイ! こんにちは、偽りだらけの皆さん!

 あたしの名前はカルヴァニヤ。覚えてくれたかしら? まだ難しいかしら。
 今日もね、可愛いお友達とプチドラグちゃんを連れてお出掛けです。今度はドラグちゃんたちに連れてきてもらった“新しいお友達”を起こす儀式を行おうと思うの!
 そうして目覚めてくれたら、ヘッドハンディングするつもりよ。

 だって聞いた話だと、この子、世界が嫌いで閉じこもっちゃったんでしょ?
 なら丁度良いじゃない! こんな不正がはびこる世界、好きになる事なんてないわ。あたし達と一緒に本当に正しい世界を見るのが、一番幸せな筈よ!

 ……まあ、勿論イレギュラーズが止めに来るのは織り込み済み。
 今回は蘇生儀式は小さい子ちゃんたちに頼んで、あたしが少し戦おうかしら。
 其の為に剣も持ってきたのよ?

 ――さて、相手になるかどうか、とても楽しみね!

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 セグレタが誘拐されました。場所は天義の森です。

●目標
 セグレタを救出せよ

●立地
 天義にある森です。
 開けた場所にセグレタの氷が安置され、儀式の為に致命者が囲み、なにやら力を注いでいます。
 カルヴァニヤは今回、己が引き付け役になるつもりのようです。

●エネミー
 遂行者「カルヴァニヤ」x1
 致命者「子どもたち」x8
 ワールドイーターxいっぱい

 カルヴァニヤはかつてアデリンが使用していた「十字架のような剣」を所持しています。恐らくは偶然の一致でしょうが、其の戦闘力は未知数です。注意して下さい。
 致命者は主に儀式に集中しています。ワールドイーターが彼らを護るように飛び回っていますので、其処を抜けなければ致命者を排除する事は難しいでしょう。

●NPC
 アデリンを連れて行く事が出来ます(待機させる事も可能です)
 彼女は「炎纏う剣」こそなくしはしましたが、剣術の腕前は大人が舌を巻くほどのものです。
 イレギュラーズの命令も比較的聞いてくれますが、セグレタを第一に考えていますのである程度の制御が必要です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
 では、いってらっしゃい。

  • <天使の梯子>解かれた君に花束を完了
  • GM名奇古譚
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年04月30日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤

リプレイ

●浮遊する意識

「人間の事、嫌いかも」

「……なによ、其れ。アタシたちの事も嫌いなの?」
「そうかも」

 そういうと、アデリンは不愉快そうな顔をする。オトナは嫌いだっていう癖に、同じ子どもに嫌われるのを嫌がる君。
 君も僕も、誰に恨まれてもおかしくない事をしてきたのにね。裁判で魔女を仕立て上げて、同じ騎士を蹴落として、こうして幹部候補生にまでなったのに。

「……じゃあ何で、アンタは此処にいるのよ」

 アデリンは口をへの字に曲げたまま、僕に言う。泣きそうなの? 泣かないでよ。僕、これでも女の子に泣かれるの弱いんだ。

「さあ、何でだろ。やっぱり大人といるよりみんなといる方が心地いいからかな」
「……オトナなんて嫌いよ」
「うん、僕も」
「アンタがアタシを嫌いなら、アタシだってアンタが嫌いよ」
「うん」
「……マザーが“相性が良い”っていうから一緒にいるけど」
「うん」
「……何よ! さっきからうんしか言わないじゃない!」
「うん」

 だって、君は眩しい、アデリン。
 僕が抱いているのは、もっとずっとどろどろとしたコールタールみたいな感情だ。
 嫌い、なんて言葉で言い表せない大人への憎しみ。始まりなんて忘れてしまった、感情の煮凝り。
 でも、君の“嫌い”は違うんだ、アデリン。君の“嫌い”は“好き”になる可能性を持ってる。本当に優しい大人が――そんな未来、あるか判らないけど――迎えに来て、君の手を取った時。君はきっと、世界を好きになれる。

 ――だけど、僕は。


●「君を、ぜったいに」
 森の入り口。
 この森の奥で、今もなおカルヴァニヤと致命者の子どもたちはセグレタを起こそうと儀式を行っている。

「あの氷って動かしても大丈夫だったんだ……! 安全な場所に移さなかったわたしに落ち度がありますね」

 『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が悔し気に言う。
 お前さんだけのせいじゃない、と『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)が其の細い肩を叩く。

「確かに移動を想定してなかったのは俺達もだ。だからココロさんだけの所為じゃない。――大人として、俺達が頭だけでも冷静を保たないと。一番怒っているのは、焦っているのは、アデリンだ」
「……ええ。判っています。きっとあの子が一番焦っている」

 イレギュラーズはアデリンを連れて行く選択をした。
 彼女を置いて行けない。大切な人の危機にじっと待っているなんてさせられないという結論だ。

 だから、とウェールは『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)から技の効果範囲を教わっているアデリンへと近づいて、視線を合わせる。

「アデリン」
「なによ」

 突き放すような少女の声色は、しかし、いつぞや対峙した時よりは随分と柔らかくなっているように感じた。
 まるで拗ねた子どものようだと、ウェールは内心で苦笑する。

「君が亡くなったり、後が残るような怪我を――無茶をしたら、セグレタが目覚めた時、きっと君と同じように泣くだろう」
「……」
「セグレタの心を護る為にも、自分を一番に考えてくれ。命を護るんだ」
「……判ってる。……判ってる、わよ」

 アデリンは腰に佩いた長剣を撫でる。子どもには不似合いな剣だが、アデリンはこの長さが丁度良いと言って聞かなかった。
 よし、と一度頭をぽんと撫でてウェールは立ち上がる。

「だいじょうぶ。セグレタはぜったいに連れ戻す」

 『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)はうんと頷くと、両手を握る。

「目を覚ますのを待ってるのは、ぼくも同じだもん」

「――準備はいいか? 飛び込むぞ」

 『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)と並んだ『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)が言う。
 そうして一同が頷く。……其の顔を一人一人見回してから――アデリンも、頷いた。
 其れを確認してから、イレギュラーズは戦闘域へと突入する。


●カルヴァニヤ、という女
「ああ――そろそろ来る頃だと思っていたわ!」

 斯くして森の中へと突入したイレギュラーズたちを出迎えたのは、底抜けに明るい声だった。
 金髪を風に遊ばせて、銀色の長剣を手にしたカルヴァニヤが振り返る。其の奥ではワールドイーターに護られて、一様に同じ白い服を纏った子どもたちが氷塊を囲み、手を上げて理解不能な言葉を紡いでいる。
 其の幼い両手が微かに輝いて、光は氷塊を包んでいる。

「セグレタッ!」

 アデリンが叫んだ。
 あら、とカルヴァニヤが嬉しそうに笑う。

「この子、セグレタっていうのね? 貴方、セグレタくんのお友達?」
「――ッ、そんな気軽に名前を呼ばないで!」
「其の子の言う通りよ。――またこんな事をやっているのね」

 怒りを隠そうともせずカルヴァニヤを見て、『この手を貴女に』タイム(p3p007854)が言う。
 こんな事だなんて、とカルヴァニヤが肩を竦めた。

「酷いわね。あたしは人助けをしているのよ? 氷の中に閉じ込められちゃった王子様。可哀想じゃない。世界を嫌いになって閉じこもってそのままなんて可哀想だわ? だから起こして、正しい世界を好きになって貰おうとしているだけよ」
「何が正しい世界よ。貴方がやっているのは――」
「落ち着きなさい、タイム」

 感情が高ぶるタイムの肩を叩いたのは『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)だった。仲間へ向ける視線は穏やかに、けれどもカルヴァニヤを見る視線は鋭く、射抜くかのよう。

「此奴に理解を求めるだけ無駄っていうのは、前回で判ってるはずよ。――さあ、カルヴァニヤ。運命違反した傲慢な奴らがまた来たぜ?」
「ええ! こんにちは! あなたもあたしたちのやる事を止めに来たの?」
「そうさ。依頼主がヘッドハンティングを止めて欲しいって言ってんだ。預言だかカミサマの為だか知らねぇけど、……こうなったら諦めるのが筋ってもんじゃない?」

 あらあら、とカルヴァニヤは軽く剣を振るって溜息を吐く。
 其れはまるで、駄々をこねる子どもを前にした姉か母のような所作で、タイムの神経をぞろり、と逆撫でしてくる。

「諦めるのは貴方達の方よ。貴方達だって流石に判ってたんでしょ? この子が生きていた世界の淀みくらい」
「……」
「其れを目覚めさせて、“また”澱んで間違った世界を見せるの? 其れって酷じゃない? 折角目を覚ますんだもの、正しい世界を見せてあげたいと思うんだけど、貴方達は違うのかしら」
「……死にたくねぇなんて思うのは当たり前の事だろ。其れを良いように解釈して駒にするのはちげぇだろうが」

 コルネリアはタイムと共に駆け出していた。
 間違っている。
 間違っている。
 こんなのは、間違っている!
 相手の目的も未だ知れず、ただ判るのは行動原理のみ。だけれども、タイムにもコルネリアにも、其れだけではない、イレギュラーズ全員が思っているのはただ一つ。
 “こいつのやる事は、間違っている”!

 タイムが己の中に聖域を展開し、カルヴァニヤの前に盾として立つ。

「あらあら! 二人ぽっちであたしを止めるの? ちょっと侮りすぎじゃないかしら」
「そっちこそ! こっちを侮ってるのは同じでしょう! 特異運命座標を――“大切な人を護るために戦う人”を、ナメないで!」

 コルネリアが防御を攻撃に変える一撃を放つ。この境界は譲れない。このラインは越えさせない。
 其の一撃は確かにカルヴァニヤを捉えた――筈だった。

「……うーん」

 かきん。

 そんな軽い音がして、コルネリアの攻撃をカルヴァニヤは“剣の一振り”で押し留める。

「やっぱり、二人じゃ足りないわよ。でも来た事は褒めてあげても良いわね! カルちゃんポイントを二人に20ポイントずつあげます」

 軽い調子でコルネリアの一撃を払ってみせると、カルヴァニヤが剣を振るう。

 ――恐ろしい一撃だった。

 ただの剣の一振りの筈なのに、豪風が巻き起こり、軌跡が衝撃波となってタイムとコルネリアを襲う。
 咄嗟にタイムは前に出ていた。暴風がぐわん、と周囲の木々を揺らし、鳥たちが恐ろしさに飛び立っていく。

 ただの剣の一振りで、タイムは凄まじく体力を消耗していた。
 天に灯る光輪が癒しの力を与えても、全快には至らない。
 其れでも、タイムは笑う。笑ってみせる。

「其の剣、何処かで拾ったの? あまり馴染んでいないようだけど」
「あら! 判った? 都市でたまたま拾ったのよ。やっぱり駄目ねえ、拾い物の武器じゃ。全然力が入らないわ」

 ――よく言う!

 タイムは内心で舌打ちをした。


●模糊とした意識
 僕はね、アデリン。
 親の顔も覚えていないんだ。
 よっぽどショックな事があったのかな。判らないんだけど、気付いたらアドラステイアにいたんだ。
 どんな顔の誰が僕の手を引いてくれたのか、其れすら知らなかった。
 ただ、たまたま同じ寝床に寝る事になった子が、此処での生き方を教えてくれたんだ。

 だから僕は、朝一番に其の子にキシェフを盗まれたと“告発”をした。

 だって、其れが生き方なんだろ?
 だって、そうしなきゃ僕たちは生きていけないんだろ?
 じゃあ、そうするしかないじゃないか。裏切って裏切って裏切って――そうして生きていくしか、ないじゃないか。

 気が付けば僕は、笑う以外の表情が出来なくなっていた。
 でも、寧ろ好都合だった。ニコニコしていれば皆自然と態度を柔らかくしてくれる。中には仲良くなったと勘違いして、弱点を晒してくれる子もいる。
 僕は其れを余すことなく利用した。多分ね、何かが壊れてしまったんだろう。でも其れが「生きる」という事なら、壊してしまっても構わないと思っていたんだ。

『――聴こえるか?』

 ……だれ?
 君は、子どもじゃない。僕の思い出には、君の声は、……いや、ある。君は確か……

『急に連れ去られて怖かったな、もう大丈夫だ』

 ……別に。
 怖くなんてないよ。僕は凍って割れても良いって、そう思ってたし。
 “おじさん”こそ、どうしたの。

『ローレットとアデリンが、君を助けに来た。少し周りが騒がしくなるが、絶対に助けるから。もう少しだけ我慢してくれ』

『もしも我慢できない時。命や魂に危険を感じたら。“助けて”って強く思ってくれ。命に代えても俺がなんとかする』

 ――。
 ――。
 なんだよ。
 なんで、アデリンがいるんだよ。
 僕はアデリンに全部押し付けたのに。其のアデリンを、おじさんたちに押し付けたのに。
 ねえ、なんで。
 ……返事してよ、おじさん。
 ……ねえ。なんで。……アデリン。君は、僕の事なんて嫌いだって、言ったじゃないか。


●繋ぐ手、繋げる手
「――通じた!」

 確かに念話がセグレタへと通じた手ごたえを感じて、ウェールは皆へと共有する。
 セグレタはまだ生きている。まだ意思がある!

「まあ、本当!? 其れは良い事を聞いたわ、死んでいたら起こし損……おっとぉ」
「テメェはこっちだ!」

 カルヴァニヤが何故か反応したが、言葉はコルネリアによって阻止される。
 其の間にウェールとカイトは頷き合って、まずは致命者の子どもたちを護るように蠢いているワールドイーターを叩きに動く。

「雨帳」

 カイトが場を整える。これから王子様が起きるんだ、しっかりと場は整えておかなければ。
 そうして放つ、さかしまの雨! 真っ黒な刃の群れにも似た雨は、ワールドイーターを次々と濡らして傷付け、大地へと落としていく。

「道を……開けろッ!!」

 ウェールが解き放つ、紅き焔の矢。其れは狙ったものだけを燃やし尽くし、焼き消して、其の命を終焉らせる。
 ワールドイーターが次々と貫かれ、其処から赫色が滲むように全身にいきわたり――やがて、ぱぁん!! と弾けるように其の身が砕け散った。
 間近でワールドイーターが命を終わらせているにも関わらず、致命者の子どもたちは其れに構う事もない。
 ただ理解不能な言語を呟きながら、両手の光を維持しているばかりだ。

 其処に意思はないのだろう。彼らは既に、終わった命だから。
 其処にいのちはないのだろう。彼らは意思なく、掬い上げられたものだから。

「不正に溢れた世界を否定して正しい世界を見る、か。そりゃあ正に“都合のいい弁論”だな」

 次の一発を構えながら、カルヴァニヤに、子どもたちに聞こえるようにカイトは言う。

「嬢ちゃんもそこのヤツも、なんなら、“其処のガキの元になっただろう存在”も、……そういう“都合のいい弁論”を振り翳す大人に引っ掛けられた被害者な訳だ」

 これほど胸糞悪い事もない。
 ぎりっ、と聞こえた。其れはカイトが知らず知らず、奥歯を噛み締めた音だった。

「じゃあだからって、“また”引っ掛けたい訳か? 酷い話だ、あんだけ酷い目に遭って、ようやく落ち着いたってのにまた無理矢理手を引っ張るってか! なあ“カルちゃん”とやらよ! お前も、お前が言う“不正に溢れた世界”に存在する大人どもと、言ってる事は何ら変わりねぇ!」

 ――俺にだって、止める権利はねぇ。
 ――嬢ちゃんを止める権利も、そこのヤツに何かを無理強いする権利もだ。
 ――だのに、お前らは勝手に攫って、口出ししようとする。そんな事があっていいのか? よくねえよ。だから俺達が、止めるんだ!

「取り敢えず――そいつは返してもらうぜ」

 カイトとウェールが開いた道を、サンディが駆ける。其の速さは疾風にも似て、狙いはただ一つ――致命者の子どもたち!
 丁度道が開けたところにいた子どもに、サンディは容赦ない一撃を与える。……まるで砂の詰まった袋を叩くかのような感触だった。

「あ」

 子どもは僅かに悲鳴のような声を上げ、サンディを振り返ると……其のままぶわり、と青黒い灰になって消えていく。

「カミサマへの捧げものにお前ら自身はなれないのか? ――なれないなら、“カミサマ”にとって、お前らは其の程度なんだろうな」

 仲間が一人減っても、致命者の子どもたちのやる事は変わらない。
 命令を忠実に訊く機械のような子どもたちに、サンディはぞわり、と僅かに走った寒気を押し殺した。

「何が正義か――なんてものは、掲げる人によって異なるわ」

 聖なるかな。聖の心を掲げて、ルチアは呟く。

「私たちの中でさえ、同じ正義を奉じている人ばかりではないでしょう。――でもね」

 正義を掲げる人たちが、寝る事を無理矢理叩き起こした挙句、洗脳するような真似をするのはどうなのかしらね?
 貴方達にとっては、今の天義と私たちに「正義なんてない」んでしょうけど。だけど其れは、私たちが退く理由にはならない。まして――

「やあああああッ!!」

 剣を振り翳し、ワールドイーターを斬り払っていく。幼い手に剣を握るあの子を退ける理由になんて、なりはしない。
 寧ろ退くのは貴方達の方。あの子が、アデリンが、貴方達を許せないと言っている!

『アデリン、僕の直線上から離れて』

 アデリンの心に、リュコスが語り掛ける。アデリンはぱっと振り向くと、其処がリュコスの直線上である事を認め、ぱっと横へ跳んだ。

「る、る、るるるぅ……!!」

 狼は吼える。ワールドイーターたちがそちらに目を向け、一直線に其の幼い身体を食い散らかそうと駆け抜けて――
 ――そうして、張られていた気糸に、すぱん、と其の身体を両断された。

「もう、だれにも利用させない」

 リュコスの意思は一つだった。
 もうアドラステイアの子どもたちを利用させない。もう誰にも邪魔はさせない。ワールドイーターにも、致命者の子たちにも、向こうで二人が受け持ってくれている遂行者にも!

「こい! ぼくがあいてだ!」
「……アンタ一人じゃ、荷が重いでしょ!」

 アデリンが飛び込んでくる。
 子ども特有の身軽さで飛び上がると、飛翔するワールドイーターを斬り、其の亡骸を足場に跳んで、斬って、また跳ぶ。
 其の剣技にウェールは内心で舌を巻いた。アドラステイアで対峙した時よりも、はるかに研ぎ澄まされた剣技。同時にそれは、彼女の戦意の高さも示していて。

「アデリン、……ありがと」
「お礼なんて要らないわ、気持ち悪い!」

 アデリンの声には激情が篭っている。けれど、其の剣は何処までも怜悧だ。リュコスは内心で安堵していた。
 入る前に念話で彼女に伝えたのだ。

 ――遂行者“カルヴァニヤ”の狙いは、セグレタを餌にして仲のいい人を呼び出す事かも知れない。

 ――何かあったらセグレタが悲しむから、どうか感情的になりすぎないで欲しい。

 この二点を。
 そうしてリュコスは再び、念話で語り掛ける。今度は氷が溶けかかっているセグレタへ。


●曖昧な意識
 正しいという言葉の意味を、僕は知らない。
 知っているフリはしてたけど。
 だってあの場所だと、ファルマコンが絶対だったから。ファルマコンが絶対で、マザーやファーザー、ティーチャーも絶対で。僕らは二の次三の次。
 だからいう事を聞いてた。其れだけだったんだ。
 幹部候補生になって、鎧と呼ばれる魔導書を貰って。そうして僕が引き合わされたのが、アデリンだった。

 世界の全てが敵だと。
 同じ目をした女の子だって、僕は思ったんだ。

「この子はアデリン。これから貴方達は、二人で手を取り合ってファルマコンの為に戦うのですよ」
「……」

 黙ったまま、アデリンは手を差し出す。
 こんにちはも宜しくもなかった。僕はそんなあけすけな敵意に思わずぽかんとして、……其の後、つい笑いだしてしまったんだ。

「な! な、何笑ってんのよ!」
「あ、ご、ごめん……だって君、初対面の僕の事、すっごい嫌いですって顔で……」
「……っ!! マザー!」
「アデリン。貴方とセグレタの相性はとても良いの。お互いに足りないものを補い合えるはずよ。初対面が少し失敗でも、これから仲良くしていけば良いわ」

 ――まあ、皮肉な事に。
 そう言ったマザーの言葉は合っていて、僕たちは二人そろえば敵なんていなかった。
 命じられるままに“狐狩り”をして。下層の子どもたちの監視をしたりもした。
 僕は知らなかった。アデリンも知らなかった。
 『嫌いだ』と言って『そう』で済ませてくれる存在が、どんなに大事なのかって事を、知らなかったんだ。

 ……アデリン。
 戦っているの?
 世界のステキなものは見た? 美味しいもの、食べた? 音楽や絵画とか、そういうのも体験した?

 君はどうして戦うの?

 もう、戦わなくても良いのに。

 オトナに任せて、子どもらしく待っていたって良い筈なのに。

 アデリン。

 僕は、君に剣を握った痕がなくなるくらい、幸せになって欲しいのに。


●カルヴァニヤの「本気」
 ――黒いキューブに、背の高い女が包まれる。
 だが其れはびしびし、と直ぐにひびが入り……ぱりん、と割られてしまった。

 ……どれだけ削れたかしら。

 タイムは小さな奇跡を浮かべてなお傷付いた身体を庇いながら、眼前の遂行者を睨み付ける。どんなに傷付いたって、視線の敵意は決して解かない、そう告げるように。

「もう。貴方達、本当にしぶといわねえ」

 剣をくるくると振るい、カルヴァニヤは前髪に隠れた方の目でコルネリアとタイムを見て呆れたような溜息を吐く。

「汚い世界がそんなに大事?」
「……ええ、大事よ……!」
「もっと綺麗な、正しい世界を見たいとは思わないの?」
「……テメェの語る正義ってのが、」

 ぐ、と立ち上がりながらコルネリアが言う。
 こんな形で寝た子を起こすのが正義ならば、“正しい世界”などお断りだと。

「納得出来ねぇんだよ、テメェの正義は……! 其れで十分だ、アタシがテメェの前に立つにはな!」
「随分と嫌われちゃったわねえ……サマエルに怒られそう。サマエルにもよく言われるのよね、あたしってちょっと人とズレてるから、怒らせやすいんだって。あーあ」

 幾度となくダメージを与えている筈なのに、カルヴァニヤの声には痛みはおろか疲労すら感じられない。
 身体は傷付いているのに、まるで痛覚を失くしたかのようだ、とタイムは思った。

「っはは……! 其のサマエルとやらの方が、アタシたちとは建設的に話は出来るかもな……!」
「ええ、全くだわ……! コルネリアさん、」
「ん?」
「わたし、この人の事すっごくイヤだわ」
「……は! 奇遇だな、アタシもだ」
「あら、嫌われちゃった?」
「ええ、わたし、貴方の事が嫌いよ。“正しい世界”なんて上っ面の綺麗な言葉に酔ってるだけで、其の先の事なんてなーんにも考えてないでしょ!」

 タイムは笑ってみせた。
 其れがカルヴァニヤへの最大の挑発になると知っているから。

「言うじゃない!」

 ……カルヴァニヤは“一層嬉しそうに”した。まるで其の言葉を待っていた、とばかりに。

「貴方凄いわ、カルちゃんポイント100点あげちゃうわね! まあ、言っている事は的外れかもしれないけど……でも、其処まであたしに啖呵を切ったのはすっごいと思う! あたし、吃驚しちゃった」
「……やっぱり、気持ち悪いわ、貴方」
「同感だ」

 コルネリアが駆け出す。
 彼女らには一つだけ、目的があった。其れはカルヴァニヤの足止めではなく――“カルヴァニヤの爪先を儀式へと向けさせない事”。
 タイムもコルネリアも傷だらけだったけれども、その計画は今のところ成功している。其の為に無駄な対話までしているのだ、成功して貰わなきゃ困るというものだ。
 儀式の氷を中心として、外側へ、外側へとカルヴァニヤを押し込んでいく。其の為ならどれだけ傷付いても、どれだけ苦しくても構わなかった。

「貴方達、本当に凄いわ!」

 コルネリアの攻撃を受け、タイムの攻撃を受け。身体を傷付けながら、カルヴァニヤは笑う。
 凄いわ――凄いから。

「あたしもちょっと本気、出しちゃうわね!」

 いうとカルヴァニヤは、とん、と大地に剣を突き立てた。
 其れだけだった。
 たった其れだけで――地形が変わった。
 べりべりめきめきと地面が隆起して剥がれてめくれ、衝撃波がコルネリアとタイムを、――其れだけではない! 致命者の子どもたちすら巻き込んで……!

「あ」

 しまった、とカルヴァニヤは瞬きをする。

「そういえば、今回は寝てる子を起こす儀式中なんだったわね」

「――皆!!! 危ないッ!!!」

 渾身の力でそう叫んで。
 凄まじい勢いで飛んできた大地の破片にしたたかに頭を殴られ、タイムの意識は遠退いて行った。


●開闢
 ウェールとカイト、そしてリュコスとアデリンがワールドイーターの保護を剥がし、サンディとココロが致命者を叩く。
 そうしているうちに、致命者の数が減っているうちに、氷は殆ど溶けて、セグレタの姿は露になっていた。

「こんの……!」

 アデリンが傷付きながらもワールドイーターを斬り払う。其の傷をルチルが直ぐ様に癒す。
 同じく癒しを施しながら、ちょっと、とココロがアデリンに声を上げた。けれども、アデリンに其の声は届いていない。

「下がりなさい! 囲まれたらおしまいよ!」
「セグレタ!! セグレタッ、さっさと起きなさいよ!!」

 アデリンが叫ぶ。
 サンディはいよいよワールドイーターの守りの内側に入り込み、致命者を叩いていく。致命者がやっているのはどうやら洗脳ではなく、たんに氷を融かしているだけ――だが。何が起こるか判らない戦況の中だ。叩いておくに越した事はないだろう。

「アンタなに寝てんのよ!! 人に、アタシに何もかもッ、押し付けといて! 勝手に全部押し付けて自分はのうのうと眠ってんじゃないわよ!!」

 アデリンは、泣いていた。
 其れでも其の剣筋は鈍らない。アデリンを背後から狙ったワールドイーターがいた。其処に大きなウェールの影が入り込んで庇い、カイトが黒い雨を降らせてワールドイーターを空へと縫い留める。

「アタシはアンタが嫌いよ!! ますます嫌いになったわ!! 人に押し付けて、自分は寝て楽をしようなんてアンタが大嫌いよ! ……大嫌いよ、……だから、……起きなさいよ……!! アタシにもう一回、……「うん」って、言ってよ……!」

 アデリンの視界はぐちゃぐちゃだった。
 もうどれが敵でどれが味方なのか判らない。剣を取り落とし、両手で顔を覆って座り込んでしまった彼女を、ウェールは黙って壁のように庇う。なぜなら其れが、大人の役目だからだ。

 其の時。

「――皆!!! 危ないッ!!!」

 其れはカルヴァニヤを足止めしていたタイムの悲鳴にも似た声だった。
 其の後、コルネリアが焦ったようにタイムを呼ぶ声がして――暴風と大地の隆起が、イレギュラーズとアデリンを襲った。


●目覚め
 ――アデリン。

 僕は。
 君に幸せになって欲しかった。

 其の為には、オトナには戦果が無きゃ駄目だ。
 だから、僕がそうなろうと、……思ったんだ。
 僕を戦闘不能にして、アデリンを捕縛する。
 オトナは優しい。本当はね、僕、知っていたんだ。此処が間違っているって事、薄々わかっていたんだよ。
 だから、まるでダイスをえいって投げるみたいに……“外から来たオトナ”に全てを賭ける事にした。
 アデリン、君が幸せになれなかったら、君に僕を斬って欲しかった。
 君が幸せになれたのなら、僕を忘れて……其れで、おしまい。
 其れで良いって、思ってたのにね。僕も子どもなのかなあ。判断が甘かったのかな。
 君が僕の事をいつまでも覚えていて、其の上“帰ってくることを望んでいる”だなんて思わなかったんだ。これは僕の計算ミスだね。

 ああ、外の景色が見える。
 アデリン。君はオトナに護られても、剣で払おうとしなくなったんだね。
 オトナがいっぱいいる。君は、人の助けを借りる事を覚えたんだね。

 ……じゃあ、アデリン。
 “嫌いな”君の為に、僕は、出来る事をするよ。


●Segreta

 ――ひゅお、と風が吹いた。

「あーあ! やっちゃったわあ……」

 ぼろぼろのぐずぐず。ぐちゃぐちゃ。
 まさにそんな表現が似合う、隆起した大地の中心で、カルヴァニヤはぱさ、と金髪を背に流して言った。

「久々に本気を出したらこれだわ。またサマエルに怒られちゃう……、」

 あら?

 ふと漂ってきた冷たさに、カルヴァニヤは首を傾げた。
 そうしてもうもうと漂う土埃が晴れてきた頃。カルヴァニヤは其処に見覚えのないものがある事に気付く。

 其れは、氷の盾だった。
 黒い氷の盾が、大地の隆起を押し留め……其の後ろ、扇状に安全地帯を作り出している。

「あら? あら。あら、あら、あら! おはよう! セグレタ!」

「うん、……おはよう。馬鹿力のお姉さん」

 ウェールは、アデリンは、確かに見た。
 己たちの前に立つ少年を。氷の盾を展開する、少年を。

「お兄さん、水分ありがとう。とっても助かったよ」
「……そりゃあ、どーいたしまして?」

 セグレタが僅かに振り返ったのはカイトだ。
 幾度となく降らせた黒顎逆雨。其の水分を利用されるとは、と半ば呆れながら、カイトは返事する。

「其れで、お姉さん。僕はこうして起きた訳だけど」
「ええ! お話があるのよ! 貴方をね、正しい世界に――」
「アデリンが」

 ――アデリンが行かないなら、僕も行かない。

 カルヴァニヤの言葉をさえぎって、セグレタは言う。
 あら、と目を丸くするカルヴァニヤ。

「じゃあ、其のアデリンちゃんとだったら来てくれるの?」
「うん。アデリンが行くって言うなら、僕も行くよ。……どうする? アデリン」

 其の会話自体が無意味である事に、カルヴァニヤは気付かない。
 だって、アデリンの返答はもう決まっている。
 視線だけでセグレタが振り返ると、アデリンは涙をぼろぼろと零しながら……決まってるじゃない、とウェールの腕の中で笑った。

「もう、大人に利用されるのなんてごめんだわ! 正義なんてまっぴら!!」


●終幕
「……タイムさん、コルネリアさん……」

 意識を失ったままの二人に、ルチアが治癒の力を注ぎ続ける。ココロはもっと早く合流すべきだったと唇を噛んだ。2人で無茶なら、3人で押し留めれば良かったのに、僅かに間に合わなかった。

「――取り敢えず、死者が出なかったのが幸い、ってとこか」

 サンディが言う。ウェールにこら、と脇を突かれるが、発言を訂正するつもりはない。事実、其の通りだったからだ。

「セグレタがあの時点で目を覚ましていなければ。全滅の上にセグレタとアデリンを攫われるという可能性もあった。……相手の作戦に礼を言うのは癪だが、」

 カイトが呟く。
 そうだね、と同意するようにリュコスが頷いて、……二人は少し離れた場所にいるアデリンとセグレタを見た。





「……本当に、アンタの事なんて大嫌いだったし」

「うん」

「これからも大嫌いだし」

「うん」

 数えるように嫌い嫌いと呟くアデリンに、セグレタは静かに頷く。
 いらりとしたように、アデリンがセグレタを睨み付ける。

「大嫌いだって言ってんのよ!? ちょっとは反論しなさいよ!!」
「いやあ、だって、あはは」
「何があははよ!!」
「君は大嫌いなオトナを頼れるようになったんだなって思うとさ」
「……」

 返す言葉もない。
 アデリンは黙り込み、……これからどうするの、とセグレタに訊いた。

「え?」

 意外そうにセグレタが瞬く。
 君、本当にあのお姉さんに返事した僕の答え、聞いてた?

「……? 聞いてたけど」
「だから、アデリンが行くところに僕も行くよ」
「……はぁ?」
「だって、アデリンが行くっていうなら僕も行かないとね。ほら、僕たちって相性が良いし」
「アンタね、自分の意思ってものはないの?」
「今はな~、ないかな~。だって僕、アデリンほど外の世界知らないし……」
「……アタシは、……少し、考えてる事があるわ」
「考えてる事?」
「ええ。戦いじゃなくて、……違う形で、あのオトナのやってる事を止められたらって」
「……。」

 正直意外だった。
 アドラステイアに限った話ではあるが、アデリンが動くのはいつだって自分の利の為。まさかこの開かれた世界で“義務感”なんてものを彼女から感じるなんて、セグレタは思ってもいなかったから。

「……アドラステイアを保護してくれてる施設があるんですって。ほら、あっちにいるココロって人の処。だから、其処にお世話になりながら、」
「へえ~。……へえ~?」
「な、何よ。……何か変?」
「ううん。いやー、あのお姉さん、随分とアデリンの怒りを買ったんだなって。じゃあ善は急げだ、合流しよう」

 ぱ、とセグレタはアデリンの手を取る。
 其の手はまだ少し冷たくて、……そして直ぐに引っ張るから、アデリンは感傷に浸る間もなくて!

「ココロおねえさーん! あのねー、アデリンがねー、」
「ま、待ちなさいよ! 自分で言うってば、……セグレタ! ちょっと!!」

 ――もう!

 ――本当に、本当に、……アンタなんて、大嫌い!

成否

成功

MVP

タイム(p3p007854)
女の子は強いから

状態異常

タイム(p3p007854)[重傷]
女の子は強いから
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)[重傷]
慈悪の天秤

あとがき

 お疲れ様でした。
 セグレタの氷の術は、持っていたアドラステイアの遺産とも言うべきものによるものなので、今後はただの子どもです。
 でも、ただの子どもにだって何か出来る事があるんじゃないかって、二人は思っています。
 其れは“正しい世界”ではなく“幸せな世界”のために。
 そして“自分たちの為に命を張ってくれた大人たち”を信じられるようになるために。

 ご参加ありがとうございました!

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