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シナリオ詳細

<天使の梯子>梯子を断て、少女の命とともに

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●託宣と異言都市
 ――主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ。
 影の兵隊が天使の姿を取り、鉄帝への侵攻を強めていた流れが天義国内へと向き。天義という国は今、徐々に悪意に侵食されつつある。
 混乱の予兆ともいうべき先述の神託も、その後起きた数々の異常事態の先触れでしかなかったのだ。
 聖杯に毒が満ち、信仰の書は燃え、聖銀は黒く汚れていく。巨大都市テセラ・ニバスを覆った影は、そこに『異言都市(リンバス・シティ)』を顕現させる。
 これらの状況が、そして『ワールドイーター』ないしは『終焉獣(ラグナヴァイス)』と呼ばれる存在の闊歩が、常識を大きく覆す行いであることは明白だ。
 かつて冠位強欲の脅威に晒された天義国は、この状況が『次なる冠位魔種』の侵攻の一環であることを即座に理解。
 早急に対策を進めねばと騎士団を動かすべく準備を進めていた矢先、攻勢を企図した者達は『遂行者』による襲撃を受ける……あまりに周到。
 されど、ここで怖じ気付くわけにはいかない。悲劇を防ぐ為にも、今はまず敵の目論見を断たねばならないのだ。

●『神の国』と『聖遺物少女』
「異言都市への攻勢は、今に始まった話ではありません。早期よりその異常性を警戒し、攻略に当たっていた皆さんのおかげで内部の状況も明らかになってきています。……そのうえで、この度『神の国』なる存在があることが発覚しました」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)はリンバス・シティの隅の方に描かれた円へと指を指す。実際には、周囲にかなりの数の円が刻まれており、そのうちの一つを、か。
「『神の国』というのは現実……彼等のいう地の国へと自らを定着させるための準備、『リンバス・シティ』の発生と拡大を目的にしたものといえます。発生源は聖遺物などが穢れたものにあたります。そういったものが『神の国』と『地の国』をつなぐ梯の役割を果たしているといえるでしょう」
 さて、ここからが本番である。
 今回、調査(そして聖遺物の破壊)にあたり、対象となった聖遺物の正体が判明している。そこまではいい。
 だが、その聖遺物は……人の命ヲ糧にして存在している。
「クローブ・オ・ベラ。聖遺物と、その宿主の少女をあわせてそう呼びます。手首の内側に装着するタイプの聖遺物で、これは人の血がブローチ内を満たし、循環することでそれを浄化する奇妙な性質を持ちます。水分を一定量得られなければ、機能が停止します。一方、少女はこれを装着していることで生きながられてるようなもので、失えば早晩命を落とすでしょう。不可分であるこの2つは、『遂行者』によって一つの『梯』として使用されています」
 ですので、破壊するということは少女の命をも奪うということを意味します。三弦はそう続けると、一同を視る。
「今殺さなければ、より被害が生まれます。……こんなものを創った遂行者とやらには、何れ命で償ってもらいましょう」

GMコメント

  ぶっちゃけた話、人の命をエンジンにする機構とかって昔からロマンの塊だと思うんですよね。格ゲーでもいたんですよ、そういうタイプが。

●成功条件
・『聖遺物少女』クローブ・オ・ベラの破壊
・上記達成より前に敵性勢力の8割程度の撃破

●『聖遺物少女』クローブ・オ・ベラ
 今回、『神の国』を生み出す「梯」としての機能を有す穢れた聖遺物です。
 厳密には、『流血聖石クローブ』とその装着者『ベラ・メドゥレ』を纏めての呼称です。
 細かい説明はOPに譲りますが、聖遺物の機能条件とベラ嬢の生命維持は相互補完の関係にあったことは明白です。
 現在、「梯」として人の苦しみを拒絶する余り『神の国』全体に特殊な効果を及ぼしています(後述)。
 敵対勢力に守られており、破壊するにしても物理に対するかなりの耐性を有し、HPに相当する耐久度も高いです。
 余談ですが、一応は人間要素があるため一部スキルの「対物攻撃」に該当する上方修正は入りません。

●影の天使×5
 常に祈りの姿勢を崩さない巨人の天使・術師タイプ2体、背中に翼を備え、機動力と近接攻撃に長けた四足獣タイプ2体、普通の人間程度の大きさで大型武器を備えた剣士タイプ1体の3種が存在します。
 いずれも低空飛行状態にあります。術師によるバフや治療、四足獣タイプでの足止め、剣士タイプの遊撃と、役割分担が成立しています。
 HPが他の雑魚よりも高めで、抵抗とそれぞれの能力(神秘とか機動力とか物理とか)に偏った性能をしています。
 それぞれ3~4種のBSに絡むスキルを有し、特に剣士タイプは【呪殺】【連】【必殺】を一纏めに与えてくるスキルを有しています。

●異言話者(ゼノグラシアン)×20
 『神の国』で生産された人の形をした兵隊。手にする武器は農具や道具類の延長ですが、攻撃に容赦がないため威力は侮れません。『神の国』補正で一番能力の振れ幅が大きい雑魚。
 時折クローブに向かって祈りを捧げるような所作をみせます。庇ったり、邪魔したり、ブロックしたり。徹底的に妨害してきます。

●戦場(『神の国』クローブ境界面)
 『神の国』とは「梯」と呼ばれる聖遺物により定着途上の段階にあるいわば『リンバス・シティの卵』のような存在です。この領域内では敵勢力が強化されます。
 さらに、今回の戦場はそれに加えて「敵勢力の毎ターンHP回復、毎ターンBS自動回復(低確率)」が付与されており、敵勢力のHP総量が少ないほど効果が向上します。
(なので戦闘が終わりに近づくにつれて敵は死ににくくなります)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <天使の梯子>梯子を断て、少女の命とともに完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年05月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
彼者誰(p3p004449)
決別せし過去
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
物部 支佐手(p3p009422)
黒蛇
リドニア・アルフェーネ(p3p010574)
たったひとつの純愛

リプレイ


 『聖遺物クローブ・オ・ベラ』は人の形を残しながら、人としての意識をすでに手放しているように見えた。周囲に群がる異言話者達は、彼女に祈りを捧げているように見える……或いは生贄になってくれたことに感謝でもしているのだろうか? 見るほどに醜悪な状況。それを受け容れられるか、と言われれば否だ。
「ハッ。神の国だ、なんだ。くだらねえなあ──。そんなもんを本気で」
「信じてるっちゅうんであれば、悪趣味にも程がありますな。グドルフ殿、そちらはお願いします」
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)は、歪んだ祭祀の如き様子に唾棄すべき嫌悪感を覚えた。その中心のベラについても。それは人の姿を保ちながら、異物の穢れの影響からか結晶化が進んでいる。如何様な悪意があれば、そんなものを生み出せたのか。『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)の表情に浮かんだ感情も理解出来ようというものだ。そも、この場に身を投じたイレギュラーズは概ねが「まとも」な死生観や倫理観を残した者達。聖遺物と少女の一体化の是非は脇においても、この状況は容認し難い筈だ。
「……俺の故郷では、世界を織りなす運命の糸はヒトのみが紡ぐ事ができる、とされていた。個としては弱くとも、種としては多様で順応力が高い。ヒトを使った術は動物を使ったそれよりもより高度なものとなりやすい、らしい」
「マジモンの神がいやがるのかと疑っちまうが……成程、ヒトの可能性ってやつか。こんなところで聞きたくはなかったな」
「……なんとなく気付いてはいましたよ、こういう悪趣味なことをするって」
 『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は元の世界の知識を思い出し、ぽつりと零す。ヒトという存在は、その意思は、それほど世界を動かす歯車たりえるという知識。それが聖遺物に影響しているのであれば。『誰が為に』天之空・ミーナ(p3p005003)と『決別せし過去』彼者誰(p3p004449)はその『合理性』を薄々察知してはいたが、いざ目の前に用意されて「はいそうですか」とは口にできまい。用意されたそれは、間違いなく悪趣味な所業なのだと断言できる。天義という国、そしてそれをベースにした遂行者の歪みそのものであると感じられた。
「ベラちゃんはあの聖遺物を無理やりつけられたのかな。それとも、長くはなかった命をあれで永らえてるのかな」
「存在自体が天義の『歪み』って主張してるような感じで単純に腹立つな。この聖遺物に正しい形があるとして、果たしてそれは、本当に『正しい』在り方だったのか?」
「ここまでされて黙ってられる程、大人ではありませんわ」
 聖遺物のもとの機能と少女ベラとの相関性を考えると、必ずしも悲劇の産物ではない。『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は薄々ながらもそれに気付き、彼女は幸福だったのではないかと推察した。無論、今は最悪の状況だが……『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)や『『蒼熾の魔導書』後継者』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)から見る限り、到底まともな精神性を持つ人間なら存在すら許さないだろう、と憤る姿かたちをしているが、或いは本当に、救われぬ者を救うという理念に立脚した聖遺物だったのかもしれない。それを歪めたという意味で、リドニアは尚更その存在を許せないだろうが。
 と、彼等の敵意を嗅ぎつけたのか、天使達が異言話者の背後に陣取り、彼等を送り出すかのように異言を放つ。口々に言葉を吐き、拙い得物を構えた彼等の姿は成程、非常に醜悪かつ不気味なそれだ。
「……なあサクラ、一つ聞いておきてえんだけど」
「うん……期待できる回答ができるかはわからないけど、どうぞ」
 大鎌を握りしめたミーナが、サクラに問う。聖遺物のなかにベラの可能性を、優しきそれを見出した敬虔たる天義の徒に、彼女は問わねばならなかった。サクラも、応じるべきと理解した。
「どっちが『主』でどっちが『従』だったんだろうな」
「私は、ベラちゃんに対する愛情が『主』だったんだと思う。……ううん、違うかな。思いたい」
 答えを知る者はこの場にはいない。だが、信じたい希望の片鱗はたしかにあった。ならば話は早い。
「くだらねえ感傷なんておれさまの趣味じゃねえが、天義が大事な連中が一緒ってんならお膳立てはしてやらねぇとなぁ! 面倒臭ぇ天使は引き受けてやらぁ!」
「……ああ。『壊す』のではなく『殺す』のだ。救えぬならば苦しみが少なく済むよう、全力で」
 グドルフはお涙頂戴には興味が無い。どうころんでも殺す相手だ、感傷を差し挟む理由を敢えて求めず、無視しているようですらある。アーマデルはベラという少女が、モノとして成り果ててなお人として救いたいと願っている。
 たとえ動機が自己満足と憐憫のみであったとしても、ここで止めたことで多くの人々が救われるなら、それは決して自己満足では終わらない。


「数が多いなら、進軍の速度は鈍くなる。なら、ここで一発叩き込めるってことだ」
「一人頭2~3体はぶっ倒す事になりますわ。なるべく節約していきましょう」
 遠間からアーマデルが一発を叩き込み、異言話者達の足を鈍らせた。まがい物の人間とて、行動原理や動きは変わらない。集団が一斉に動くなら、足はもつれ統制は乱れよう。天使たちから異言が漏れるが、歩速が遅れた者達はその指示に従えぬ。リドニアは一歩踏み出すと、そのうち一体に術式を放ち、動きをより乱す……群衆の中に生まれた乱れは、状況をより悪化させた。
「足並みが乱れたなら、ここでもう一手。動きの向きを変えてしまえばよいでしょう」
「殺しても心が傷まねえ奴ばかりで助かるぜ。最後の一体だけ、そうじゃねえ分余計にな」
 支佐手は下準備が整ったとばかりに得物を構えると、蛇神を喚び出し異言話者の目を己に向ける。数は厄介だが、受け止めるに足る実力と体力は十分にある。彼等をせき止めれば、あとは仲間の役目。ミーナは敵陣に飛び込み、異言話者をかき乱す……それでもむやみに得物を振るうそれらの姿は健気と言っていいほどに献身的であった。
「こんなのが天使サマかよ、ガキが見たら泣いちまうぜ。薄ら気色悪ィバケモンがよ──もうちっとマシなツラになって出直してきやがれ!」
 グドルフは殺到する異言話者を無視し、影の天使へと刃を向けた。敵意をコントロールし、天使を後ろに回さない。あわよくば、術師の支援を許さない。その狙いは、まず間違いなく適切なものだった。
 だが、剣士型の個体はグドルフが斧を振り上げるより速く術師の前に立ちはだかり、受け止めた。当たれば確実に自らを狙いにくるぶった斬り。それを、自らを犠牲にして止めに来た。
 知った事か、と得物を再び持ち上げるより速く、四足獣が彼に食らいつきにくる。剣士が斬撃を振るい、グドルフの逃げ場を奪いにかかる。
 難を逃れた術師型は、足並みを乱した異言話者に無闇な言葉を向けたりはせず、術式を振るうことでたちまちのうちに傷を癒やす。奇跡の顕現であるかのような治癒効率。僅かでも足並みと冷静さを取り戻した兵がいる意味を、理解できぬミーナではない。即座に指揮を飛ばそうとした……が、動きはサクラが速い。
「偽物が自由に、この国の空を舞うことは許されない」
 竜を墜すために得た斬撃は、天使にだって届く。地面に叩き伏せられた術師型は、しかし即座に体制を立て直す。一斉突撃ではなく散開。互いがカバーし合う状況を作らぬため、人の壁、人の道を作ろうと。20名ではいかにも数不足だが、それでも陣形を乱すには十分だった。
「あの天使が面倒くさいですわね。ぶっ潰して差し上げ――」
「なら、その露払いは私がしましょうか……!」
 術師型を叩くなら、サクラ一人に任せておけぬ。一気に戦局をひっくり返すには数がいる。リドニアは即座に動くが、進路には異言話者が数名。すわ打擲に遭うかと覚悟したが、それを受け止めたのは彼者誰だった。死なねば安い、傷つかねばなお安い。落とされれば戦術的な穴になろう仲間の位置、その把握は欠かさなかった。
「術師が不調の回復に手を回すなら、回しきれないほどに叩き込めばいい……そうだろ?」
「間違っちゃいねぇが、思い切った戦い方だと思うぜ」
 アーマデルは術師型がフリーになったことに慌てない。いようがいまいが、自分の特性を生かした戦いでねじ伏せればいい。不調を与える手段はごまんとある。その自信はカイトをも動揺させるものだが、カイトもまた、彼を揶揄できるほど行儀の良い戦い方でもない。それでこその、ローレットの多様性でもあるのだけれど。
「邪魔すんな! ブッ殺されてェか、カスども!」
「グドルフ様! こちらを片付けたら、直ぐに加勢を!」
「あァ、勝手にしな。漸く体があったまってきたんだ、中途半端に治すだ庇うだは程々にしとけよ!」
 天使数体を一人で引き受けるのは、如何にグドルフといえど荷が勝つのは明白だ。状況次第で先んじて援護に回ろうと画策していた彼者誰は声を張るが、返ってきた言葉は必ずしも好意的ではなかった。彼は不利に追い込まれてこそ真価を発揮するタイプでもある。故に、グドルフの『全力』を如何に維持し、倒されぬよう補助するかが鍵となる。その繊細な補助を行うには、彼者誰にこそ荷が勝つと言ってもいい。
「足元から固めんと足をすくわれます。雑魚からしっかり終わらせましょうや」
「焦ったって倒せるわけじゃねえ、視野が狭くなるだけだ。雑魚は雑魚として蹴散らしちまってから、話は始めようぜ」
 支佐手とミーナの言葉も、尤もな話。ここに四足獣型が飛び込んでくれば万事休すだが、グドルフが止めているのだ。その意志に応えるには、一人でも無事に敵戦力を壊滅させることにある……結果として多少の苦戦は強いられても、彼等が敗北に至る可能性は高くないのだから。


(これを壊せば、この少女の命は助からない。いずれにせよ、誰かがやらねばならなかった。どうしてこんなになるまで――)
 リドニアは後光すら放ちそうな荘厳さで佇む聖遺物を見た。聖遺物に肉体を預けた少女。それが生命維持のためだとして、それは幸せであったのか。聖遺物という神秘の爆弾を抱えたことが、愛だなどと言えるのかと。
 誰かがやらねばならなかった。自分の力では十分な成果を得られないが、仲間ならうまくやってくれると分かっている。だから、残った敵戦力を討ち、最後まで彼女のために戦ったと自分に言い聞かせたい、そう思った。
「ごめんなさい。許してとは言わない。私は私の国を守る為に、貴女を犠牲にする!」
「国のため、人のため……そんな言い訳は必要無ぇぜサクラ。こちとら情もクソもねえのさ。恨んでくれていいぜえ。おれさまは山賊だ、欲しいモンはぶっ殺してでも奪い取る。嬢ちゃんの持つ──その血色の宝石がね。ああ、欲しがる奴なんざごまんと居るだろうぜ!!」
 天義を救うためなれば、サクラという少女はその手を汚すことを厭うまい。信仰と国と家族のためという名分のもとに、躊躇をしない。グドルフはそれが気に食わなかった。
 彼女のような敬虔な者が心を曇らせる必要はない。自分のような捨ててしまった者が、薄汚い信念とも呼べない動機の名の下に、無慈悲にことをなせばいいのだ、と。
 サクラによって落とされた聖遺物の手首をつかんだ彼は、クローブとベラの手首とを力一杯引き剥がしにかかる。血管が浮かぶほどに込められた力で引きちぎられたクローブを力一杯ぶった斬る。
「いくら硬くてもな……私の前じゃ等しく殺せる者、なんだよ!」
 サクラが二の太刀を構えるより速く、ミーナがベラの身に一撃を叩き込む。そのまま手数の嵐で押し込むように叩き伏せ、わずかに生じた罅からは氷の柱が噴き出す。カイトの結界だ。外さぬための研鑽がそのまま破壊力に変換されたそれは、見るものが見れば残忍な手管に見えよう。だが、氷結により感覚を奪われた肉体が、痛みを感じることなどあろうはずもなく。
 クローブ・オ・ベラ。忌まわしき穢れた聖遺物。そして悲しき少女の残骸。
「……ちっ。これだけ傷ついちまったら、価値もクソもねえや。あーあ、せっかく高く売れると思ったのによ!」
 グドルフの呆れ果てたような声とともに、それは完全に無価値となった。彼は上等な演技力と他者への思い遣りを、傲岸不遜で包み隠している。それは誰もが知っており、誰も口に出さぬ話だ。
「ちょいと、疲れましたわ。……後幾つ、死を見ることになるのやら」
「生きてる限り、イレギュラーズである限り仕方ないことではありましょう。わしは、遣る瀬無いのはもうごめんですが」
 眼の前で『悲劇』と言う名の鐘楼を打ち鳴らされたリドニアの夢見は、当分よろしくないものになろう。支佐手は『また見るだろう』と分かっていても、もう御免だと繰り返した。
「然るべき清算は……ちゃんと、やらせる。さも自分達が正しいと嘯いてる『傲慢な』連中にな」
「この国を狙う以上、何れ見えることでしょう。その時に、全て支払わせればいいんです」
 カイトの決意に、サクラも応じる。
 そう、この国に新たに生まれつつあるのが悲劇であるというのなら、刈り取るのがイレギュラーズの役目であるのだから。

成否

成功

MVP

グドルフ・ボイデル(p3p000694)

状態異常

グドルフ・ボイデル(p3p000694)[重傷]
彼者誰(p3p004449)[重傷]
決別せし過去

あとがき

 NORMAL依頼相応に、無難な勝利となりました。
 が、その内容のためにお届けが遅れてしまったのは慚愧の極みです。
 ご満足いただければ幸いです。

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