PandoraPartyProject

シナリオ詳細

絶命せよ、オリオン

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●兄の苦悩
「お兄様! いい加減私とオリオンの邪魔をなさるのはやめてください!」
「ああ、どうしてわかってくれないのだアルテミス」
 黄金の玉座にて。太陽神アポロンは頭を抱えていた。
 否、自分も悪い。
 強引に婚姻を迫った結果、両目を繰り抜かれ、可哀想にと思って彼の目を直してやったのはほかならぬ自分だ。その結果、今度は可愛い妹たるアルテミスが彼に夢中になってしまうなど。何度お前に相応しくないと説いても若い妹にはまるで響かない。
「とにかく、私はオリオンを愛しています。いかにお兄様が彼を慕うなと言ってもやめる気はありませんわ」
「待ちなさいアルテミス、まだ話は」
「弓の手入れがあるので!」
 ばん、と強く扉を閉めてアルテミスは出て行ってしまった。
 これは早急に手を打たねば、アポロンは再度頭を抱えた。

●絶命せよ、オリオン
「アポロン神に何とか認めてもらわねば……」
 彼への貢物を探す為、オリオンはその身一つで海を渡っていた。時折、海の中へ顔を突っ込んでは宝を探す。金の盃、真珠のネックレス。こんなものでは屹度満足してもらえない。
「はぁ、一旦陸へ向かおう」
 そういって海面へ顔を出したオリオンを偶々アルテミスを連れて散歩していたアポロンが見つけた。幸いオリオンは向こう側を向いており、アルテミスも気が付いていない様だ。アポロンはアルテミスを手招き『それ』を指さした。

「アルテミスや、遠くに見えるあの小さな島に矢を当てられるかな?」
「お任せください、お兄様」
 アルテミスは弦を引き絞った。狙い澄ました矢は真直ぐに飛んでいく。

(よし、これでオリオンは死ぬ)

 しかし運命の悪戯とは、時に太陽神の眼さえも曇らせるのだ。
 びゅう、と目も開けてられない程の風が突然拭いた。オリオンを貫く筈だった矢は僅かに逸れて、水面に浮かんだ。
「な……」
「あら……ごめんなさい。お兄様……当てられませんでしたわ」
「い、いや。今のは仕方ないさ、少し休憩しよう……」
 落ち込む妹の肩を抱いてやりながら、アポロンは『小島』を一瞬振り返りその場を去った。

「……? 今のは?」
  兄妹が姿を消した後、オリオンは顔を出した。
 奇跡的に風が吹いたことで、九死に一生を得たオリオンだが水面に浮かぶ矢に彼は気が付いた。その矢は見間違えようもなく、アルテミスの物だった。
「アルテミス……?」
 彼の心に一滴の毒が混ざった。その毒はじわりじわりと広がることになり――。
 
「よぉ、来たかい。早速だが、オリオン座の神話を知ってるかい?」
 黒衣の境界案内人、朧が例の如く一冊の本を持ってきた。ぱらぱらと捲った頁に写った挿絵には血だまりの中に、アルテミスとその兄アポロンが倒れそこに立ち尽くすオリオンの姿があった。
「本来はオリオンはアルテミスの矢に貫かれて……まぁ、アポロンが仕込んだんだけどな。命を落としてアルテミスは二度と恋をしないっていうモンだ」
 しかし、何かの因果かアルテミスの矢はオリオンに当たらず結果疑心に駆られたオリオンはアポロンとアルテミスを殺してしまう筋書きに換えられてしまったのだ。
「……オリオンが死ねば、この二人は死なない。
 方法は問わないが……相手は神話の英傑だ、気を抜くなよ」
 そういった朧の声は冷たかった。 

NMコメント

 初めましての方は初めまして、そうでない方は今回もよろしくお願いします。
 星座のモチーフ大好きな白です。久しぶりの星座シリーズですね。
 今回はオリオン座の御話です。

●目標
・オリオンの死亡
 本来はアルテミスの矢で命を落とす筈の巨躯を誇る狩人です。
 今回は生き残り、その矢からアルテミスに殺されかけた事に気が付き、疑心から彼女とその兄であるアポロンを殺害しようとします。
 結末(オリオンが死亡する)が同じであれば途中の道筋が変わっても構いません。
 語り継がれた神話のうちの一つとなるでしょう。

●舞台
 神と人が暮らす星座の神話の世界です。
 今回は『オリオン座』の話の舞台です。
●戦場
 蒼く透き通った海中です。日の光があり、視界は開けています。

●敵
 オリオン
 訳3mの体躯を誇る巨人の狩人です。
 強靭な肉体は並大抵の刃をはじき返し、その怪力は岩をも砕きます。
 現在は海の中に居る為平時程力を発揮することはできない様です。
 また、毒物への耐性は無いようです。

●備考
 OPに出てくるアルテミス、アポロンは基本的に登場しません。
 
●サンプルプレイング
 英雄殺し、なんて言葉があるけれど。
 まさか自分がやることになるなんてね。毒蛇よ、行きなさい。

 こんな感じです。それでは行ってらっしゃい。

  • 絶命せよ、オリオン完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年04月26日 22時05分
  • 参加人数4/6人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

小金井・正純(p3p008000)
ただの女
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
ダリル(p3p009658)
勇猛なる狩人

リプレイ

●猜疑の矢
「矢の一本で疑って殺害。猜疑心が強すぎない?」
 『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は拾い上げた矢を見つめながら呟いた。しかしその鏃の形状は特徴的で、間違えようが無いのも確かだった。オリオンだって疑いたくはなかったはずだ。それでも清らかな水に一滴の毒が融け込んだようにじわじわと、彼の心を染め上げていったのだろう。フォルトゥナリアだって、彼の気持ちが全く分からないという訳ではない。それでも、やはりこの誤解は、すれ違いは哀しすぎる。
「……わからなくもないけどさ。オリオンさんの誤解を解けそうなら解いておきたいよね」
(神霊の類とヒトとは存在の相違によりメンタリティもまた異なる。その中ではこの世界の神は比較的ヒトに近い気がする……というかヒトが神に近いのだな)
 『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は考え込んでいた。以前にも神話の世界で英傑に立ち向かい、物語の結末をあるべき姿へ元に戻した。あの時は友を想い、小さな存在が起こした奇跡を無かったことにしたのだが――。
「……あれは蟹だったな」
 セピア色の回想を手で払い、無理やり終わらせた。
 しかし今回の標的は動物ではなく、れっきとしたヒト。ひいては英雄である。
 真正面から殴りあって勝てる敵でもないだろう。
「よしわかった、俺は毒蛇」
 自分自身に言い聞かせ、刃の先に塗りこめた毒を薄く指に取る。じわりと指先を染めた劇薬は彼を殺すのに大いに役立ってくれるに違いない。いつもと変わらぬ通常運転。アーマデルは再度アルファルドを鞘に納めた。
「……まあ、神々にこう言うのはあまりよくありませんが、アポロン神が全部の原因ですよね?」
 凡そ星と共に在る巫女とは思えない発言を『明けの明星』小金井・正純(p3p008000)は真顔で言い放った。実際その通りなのだから返す言葉もないのだが。
 恋心を利用され、大好きな人を殺す様にしむけられたアルテミス。そしてその結果、天に召し上げられたオリオンに同情を禁じ得ない。
 とはいえ、このまま物語が歪んでしまうのは朧の言う通り避けねばならない。
「ううん。どうしたものか」
 正純は蟀谷を揉んだ。正直な話、殺すだけなら方法はいくらでもある。
 真正面からは難しくとも、オリオンは蠍は大の苦手だし毒に弱い。アルテミスの真似をして背後から矢を射掛ける事も、まぁ不可能ではないだろう。
(しかしそれでは、アポロン神となんらかわらない)
 あの英雄を天へ送るのであれば、せめてこんな悲しい結末ではなく少しでも救われてほしい。それが星の声を聴くものとして、せめてもの願いだった。
「ふむ、オリオンはいま沖合の方におるようじゃの」
 その正純の遥か頭上で、空中からオリオンの様子を『輝きを目指して』ダリル(p3p009658)が窺っていた。彼はまだこちらに気が付いていない様で、奇襲を駆けるのであれば今が絶好の好機ではある。
(とはいえ、全ての神々が唾棄すべき存在ではない事は承知)
 ダリルは嘗て『神』と呼ばれた存在に幽閉されていた。堕落しきった彼らに反逆せんと武器を取ったが、最後まで気高く人々に寄り添い続けた神々も確かにいたのである。オリオンは厳密には神ではないにしろ、神話に語られた英雄の一人に違いない。誇り高き狩人を今からこの手で殺すのだ。彼の命が喪われた世界こそが正しいのだから。
(此度の件も知らずと言えども騙す形である以上、完全に庇うとはいわぬが憐憫に値する)
 ならばせめて最期は、華々しく堂々と勇士として彼に挑もう。
「なーに、全ての責任はアポロンに押し付ければ良いのじゃ!」
 そういってダリルはオリオン目掛け急降下した。

●英雄との邂逅
 水中に居た魚たちが急に方々へ散ったことでオリオンは異変を感じ取った。
 振り向けば、降り注ぐ陽光と共に四つの影が此方に向かって来ている。
 狩人としての直感が『彼らは敵である』とオリオンに教えた。
「何者だ……さては、この矢の持ち主に俺を殺すように言われたか」
 ごぽりと泡と共に吐き出した低い声には、少なからずとも哀しみが混ざっている。信じていた者に裏切られた、哀しみが。
「ほう、気が付いたか。そう、それは……エートナンジャッタカ」
「アルテミスさんの矢だよ」
「そうそう、それそれ」
 格好つけた癖に一瞬名前が飛んでしまったダリルにフォルトゥナリアがそっと耳打ちする。ぽんと手を打った後ダリルは続きの台詞を紡いだ。
「そう、アルテミスの矢。目を盗んで奪いし、敢えて外すように放った、いと貴き矢である」
「……外す様に? 何故?」
「あ、えーっとぉ、それはぁ……」
 まさか突っ込まれるとは思わず、言いよどむダリルの前に正純が立った。
「お待ちください、英雄オリオン。少しだけお話を聞いていただけませんか?」
「俺に話だと?」
 正純の様子に水底に潜み気配を殺していたアーマデルは引き続き待機することを選んだ。
 まだ行かないの? と竜宮イルカが振り返るが優しく微笑んでその頭を撫でる。きゅう、と嬉しそうに鳴いて利口な従者は主人の指示に従った。
「私は星の声を聞き、星を信仰する巫女です」
 常人であれば、その場に立っているだけで脚が震えてしまいそうなほどの威圧感。しかし正純はオリオンから目を逸らさない。
「貴方が命を狙われたのはアポロン神の策略によるものです。アルテミス神に貴方を害するつもりは全く無かったのです」
「そうだよ、アルテミスさんはちゃんとオリオンさんのことが好きで、アポロンさんに騙されて矢を射ってしまっただけ……」
 正純の言葉にフォルトゥナリアが同意の言葉を重ねる。その少し後ろでダリルも何度も頷いていた。
「あの男神の性格の悪さと、あの女神の純真さは貴方も知るところでしょう?」
 正純の微笑みに、オリオンの脳裏にアルテミスと過ごした時間が過る。
 彼女もこうしてよく自分に微笑みかけていたものだ。アポロン神に何度責められようが、自分の事が大好きなのだと真直ぐに伝えてきてくれていた。
「……アルテミス」
 僅かにだが、オリオンの雰囲気が和らいだことに正純達は気が付いた。
 その口元が緩く弧を描いていることも。
「正純さん……」
「ええ」
 ここで、オリオンがアルテミスと話し合えば屹度ハッピーエンドで物語は幕を閉じる。しかし今回求められているのはハッピーエンドではなく、トゥルーエンド。物語のあるべき姿なのだ。
「そして、貴方が真にアルテミス神を愛しているのであれば、この世界だからこそ許される、お二人で居られる方法がございます」
「俺があそこへ行くことか」
 オリオンが海面……否、そのずっと先。『空』を指さした。
「はい」
「もしかしたら誤解を解けて幸せになれるかもしれないオリオンさんを、今から殺すの。だから恨むのであればアルテミスさんでもアポロンさんでもなく、私達を恨んで欲しい」
「恨みなどするものかよ、だが」
 再度オリオンは戦闘態勢を取った。
「俺も、狩人としてみすみすやられるわけには行かない。アルテミスの為にも」
「それでこそ、神話の英雄じゃ!」
 ダリルは正純達の前へ出た。もう、アポロンの刺客だと偽る必要もない。そもそもこういう胡散臭い芝居は我に向いてないんじゃ!
「我の名はダリル! 今ここで、正々堂々と屈強な勇士に挑ませてもらうぞ!」
「来い!」
「む……! なんか盛り上がっている……!」
 アーマデルは竜宮イルカを急上昇させた。真正面から挑む気はさらさらなかったのに、なんかすっごい盛り上がってる。
(ダリル殿がオリオンの注意を引いている間に……)
 竜宮イルカを駆り、オリオンの背後に回り込む。毒を叩き込む絶好のチャンスだが、今ここでさっくりやったら空気読めない奴過ぎないか?
 アーマデルは思い直し、その辺りにいた霊魂を捕まえてオリオンについて伺ってみた。溜め無しノーモーションから痛い一撃を繰り出してきたりしかねないからである。
『ウミヘビが出てビビり散らかしてこけてました』
「びっくりするくらいプライベートだった」

●絶命せよ、オリオン
「そら! これはどうじゃ!」
「悪く思わないでくれ」
「ぐっ……!」
 上空からダリルの破式魔砲が、オリオンの肩目掛けて放たれ、下からはアーマデルの蛇巫女の後悔がじわじわとオリオンを蝕んでいった。
 互角の戦いを繰り広げていたオリオンだったが、やがて徐々に不利になっていった。水中で身動きがとりづらかったこともあるが、それ以上に手練れが四人。そのうち一人は、手の届かない上空から。一人は影を味方につけ、気配を殺して近づいてくる。そして、気づかぬ間に付けれた傷から侵入した毒で、意識はもうろうとし立っているのもやっとの状態だった。
 勝敗は火を見るよりも明らかで、それはオリオン自身が一番判っていた。
「……俺の、負けだ」
 肩で息をし、苦し気なオリオンにフォルトゥナリアは眉根を寄せた。
 この依頼が、彼を助けるものなら良かったのに。そう思わずにはいられなかった。
「せめて最期は苦しくないように」
 フォルトゥナリアの手に光が集まり、一本の矢を作る。
 邪を穿ち、裁きを与える神聖なる光。
 矢を番える姿が、アルテミスの姿と重なった。 
 オリオンは再度問う。
「……もう一度、聞く。アルテミスは、俺を殺そうとしなかったんだな?」
「ええ、天の星々に誓います」
「そうか、良かった」
 正純の偽りのない言葉に、オリオンは嬉しそうに目を細めた。

「アルテミス。俺は先に逝って待っているから」

 避けようと思えば、避けられたその一撃をオリオンは正面から受け入れた。
 的確に心蔵を撃ち抜かれながらも、不思議と痛みは感じなかった。
「だから、ゆっくり……ゆっくり、来てくれ」
 身体の先から細かい光の粒になったオリオンは、天へ昇っていった。
 こうして一人の男の人生が、物語が幕を閉じた。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM