シナリオ詳細
再現性沖縄20XX:スイーツ・バイキング・ドラゴンフルーツ
オープニング
●再現性沖縄とは
そこはまるで……《沖縄》であった。
練達の一区画に存在する再現性沖縄。さらにその一区画には翔波と呼ばれる地域が存在する。
それは異世界『地球』よりこの世界に召喚された人々の言う《沖縄》を何か凄い勘違いして、「大体こんな感じだろう」というイメージで出来上がった魔境である。
沖縄にはあらゆる夢がある。沖縄は食べ物が美味しい。
そんなイメージを植え付けられた料理人たちは「沖縄こそは料理人に約束されし聖地である」と思い込み、事実翔波ではあらゆる食材が手に入る。
そして全ての物事は料理でのみ解決され、あらゆる暴力は此処では排除される。
料理こそ全て。料理が世界を救う。
火と油、水と調味料に囲まれた世界こそ我が人生……それに気付かないなど料理人として愚かだし何なら皿洗いからやり直せばいい出直してこいやド素人が……その境地に至らなければ料理人としては未熟に過ぎ、究極の一皿になど永遠に届きはしない。だからこそ、街ではいつでも料理バトルの音が鳴り響いている。
練達を襲った未曽有の大事件。
それは沖縄にも少なくない影響をもたらした。
しかし、しかしだ。
だからこそ「今」、沖縄らしくあらねばならない。
それが再現性沖縄に暮らす者たちの、誇りなのだから。
●非正規雇用、再現性沖縄に立つ
「覇竜に向かっていたはずが何故か再現性沖縄に立っていた俺ですが。太陽がめっちゃ眩しいな……」
『コンプライアンス』佐藤・非正規雇用(p3p009377)が立つのは再現性沖縄<アデプト・オキナワ>翔波。
波の音響く常夏の場所。
日差しは暑く、けれど空気はカラッと爽やか。
海岸では水着の男女が銛を片手に海へと挑み、海岸では海の家同士のイカヤキバトルが繰り広げられている。
「なんだろう。なんか思ってる常夏と違う気がする!」
「そんなことはないぞライオン君!」
「うわ誰!?」
出てきた黒覆面のおじさんに、非正規雇用はそんなひどく真っ当なツッコミを入れる。
「此処は翔波! あらゆる全てが料理で解決する町だからね!」
「そうか! でも俺の質問に全く答えてないな!」
「すぐ答えを欲しがるのは若者の特権……ということか。フフフ」
「理不尽!」
一歩、二歩、三歩と男は下がっていき……「今日も料理で勝負だライオン君!」と男が叫ぶ。
「いや初対面!」
「誰もが何時だって初体験! 出でよクッキングモンスター!」
男が叫ぶと同時に、何処かから何かが普通に歩いてくる。
そう、それは……パティシエらしき服を纏った……ドラゴンフルーツだった!
「ようこそ沖縄へ! 俺はスイーツ・バイキング・ドラゴンフルーツ! こっちはさっき会った知らないオッサンだ!」
「そっちも初対面かよ!」
「フフフ……細かいことは気にしちゃいけない! 今日の対決はこのでっかいドラゴンフルーツとの『スイーツ勝負』だ! ていうか春のスイーツバイキングフェスやろうって時にこのドラゴンフルーツが出てくるから邪魔なんだよね!」
「あ、貴様覆面してると思ったらこの辺のパティシエだな!」
「そんなダンディな男は知らんね! さあライオン君! 仲間を集めてこいつと勝負だ! 美味しいスイーツ食べ放題のチャンスだぞ!」
翔波に来るなり此処のノリに巻き込まれた非正規雇用だが……どうやら、そういうことらしい……!
- 再現性沖縄20XX:スイーツ・バイキング・ドラゴンフルーツ完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年04月18日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●スイーツ勝負だ! 前編
「やはりスイーツバトルだね! いつから開始する? ボクも参戦する!」
「シフォン院」
『甘夢インテンディトーレ』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)と『コンプライアンス』佐藤・非正規雇用(p3p009377)が何かを分かってる同士で頷きあうが、ひとまずさておいて。
「スイーツバトルか! あちこち食べ歩いた我じゃ! 舌は肥えとる筈じゃぞい! こりゃ優勝は貰ったも同然じゃな! ガハハ! おっと、敵も倒さなくてはならぬのか? なんなら我のスイーツの肥やしにしてくれるわ!!」
『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)も気合は十分だ。
「久方ぶりの再現性沖縄、ボクのR-Senceが今か今かと待ちわびてたよー。さあ、今日はどんなスイーツを作って戦おうかなー? 今からワクワクしてくるよ!」
「久しぶりの沖縄だな……ここほど料理の技巧を磨くのに良いところはないからな……妖精たちやメープル……愛する者達に振る舞う為の料理のスキルアップの為に実験台になって貰うぞ」
キュピンとR-Senceを発動させるシフォンに『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)がそう頷く。そう、此処で必要なのは料理のみ。
後先考えずに料理をする者だけが勝てるのだ。だからこそサイズは早速動き出す。
「材料は標準的な物を使う、他の場所でも作れるようにしないと後々振る舞えなくなってしまうからな。確かに幻の食材など特別な物は強いさ、インパクトもある…だがな…王道忘れては料理において重要な基礎が崩れるぜ?」
そう、サイズは流石に沖縄に慣れている。奇をてらうでも珍しさで勝負するでもなく、いぶし銀な技で勝負するつもりのようだ。
(再現性沖縄の料理道具セット……今ではデザイアの力で薬膳料理、ワードの力で野性的なサバイバル料理など汎用性が高まったが……その力に振り回されてしまわないようにしないとな)
そう、サイズの手にあるのはこれがあるだけでも料理が出来そうな程の出来らしいという再現性沖縄の料理道具セット。
サイズの手に合うようにカスタマイズまでされたそれは、まさにサイズに沖縄らしい料理人としての風格をも醸し出している。
「作るのはホットケーキ、ファーマシーで作った栄養補給が出来て滋養があるハーブを複数混ぜた生地の混ぜ加減、焼き加減は腕の見せ所だな、ふわふわの小麦色のパンケーキを焼き上げて見せよう。飾りつけはミカンや苺やキウイなど酸味系で彩ろう、生クリームの塗り具合は見た目的美味しさに直結する、妥協は出来ぬ。後はお好みで蜂蜜なりシロップなりかけて完成というやつだな。後ダブルワークでフルーツカクテルも作るか、甘いカクテルでおやつ時にぴったりな組み合わせにしよう」
なんということか。沖縄の海にもピッタリのスイーツが出来上がっていく。これは他の面々にも大きな期待が出来るだろう……!
では『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)はどうか? こちらは基本を踏まえつつもかなり挑戦的にやっているようだ。
「翔波での料理に、必要なものはまごころ・テーマ・メッセージ性・インパクト……ですの!」
多分、と心の中で付け加えてなどいない。たぶん。
「邪魔だから料理バトルで倒されてしまえ……なんていう、まごころのない理由で、呼ばれたかたにわたしたちが、負けるはずが、ありませんの!」
そんなノリアの言葉にあっちこっちで知らんぷりをする料理人がいるのはまあ、さておこう。あれだ。平和を謳って仲間と共にバトルに挑むようなものなので。
「ですので……わたしのメッセージは、決まりましたの、『この世に望まれざる命なんてない』それを、表現するために、えらんだテーマは『戦場に咲く祈り』……ですの」
中々に重たいテーマだが、ノリアはそれをどうスイーツで表現する気なのか? 注目が集まる中ノリアが取り出したのは生クリームだ。
「生クリームをぬって、グラニュー糖をまぶした、ケーキの生地はまるで、翔波の砂浜のように、うつくしい砂地。けれども、その表面に、ちらばっているのは…赤と青の、水飴の痕。赤青、ふたつの勢力が、はげしく、たたかった跡ですの。けれども……光景を、よく見ればふたつの色は、非対称武器をかたどった、赤い、ゼラチンのうえに、青は、ふみにじるかのように、まきちらされていて、赤が、支配的なのは…砂のうえの、ほんの一角、おびただしい赤がながれた場所だけですの。ここは、きっと、青においつめられた、赤色が、悲劇の最期を、とげた場所、生きているのは、ただ一輪……墓標のように咲く、砂糖細工の、月桃の花だけですの
でも……よく、ご覧くださいですの、その、墓標に向けて、一対の、青い足跡が、のびていますの。きっと、敵に、この花を、たむけるために……」
すごく重い。スイーツに載せるテーマとしては半端なく重いが、それ故に芸術性は抜群だ。
スイーツ通り越して油絵の如くのメッセージ性を持つノリアのスイーツは、完成しつつある。
「戦場という、インパクトのなかに、たとえ命うばいあう敵にでも、おもいやりをわすれてはならないという、まごころをこめて『月桃の記憶』ケーキで……勝負ですの!」
さて、いきなり凄い技2連打がきたが、中には初々しい者もいる。『ささやかな祈り』Lily Aileen Lane(p3p002187)のことだ。
「巧く出来ないかも、だけど頑張るねぞ、おー」
まさに態度も初々しく、それ故に何が飛び出すか分からない期待感もある。
「とりあえず、本で読んだ事を実行してみるのです。料理の最後に「美味しくなる魔法の言葉」を入れると、どんな食べ物も美味しくなると、あの本に書いてあったのです……この勝負、勝ったのです……」
どうやら練達あたりから流れてきたメイドカフェを題材にした本を読んだようだが……よし、早速不安が募ってきたぞ。
そして作るのは生チョコであるようだった。高級感のあるスイーツだが、はたして……?
「必要なメイン材料はこの3品です。ミルクチョコレート、生クリーム、ココアパウダー……よし!」
材料確認が済めば、早速とばかりにLilyの準備が進んでいく。
「まず事前準備として、使うバットにクッキングシートを敷いて……こう、かな……?」
それが終われば、大きいボウルにミルクチョコレートを割り入れていく。
「パキパキ~♪」
実に楽しそうだ。そう、料理とはそういう楽しむ心を忘れてはいけないと思わせる、そんなLilyのほほえましい姿だ。
「次に鍋に生クリームを入れ、沸騰直前まで温めて、チョコ入りボウルに入れます。えいやー! そしたら耐熱性のヘラでミルクチョコレートが溶けてクリーム状になるまで混ぜ合わせます。美味しくな~れ、美味しくな~れ♪」
美味しくなる呪文をキュンと唱えれば、あとはバットに入れてラップをし、1時間冷やし固めるだけだ。
沖縄なので、その辺はなんかこう上手くできるので安心である。
「果報は寝て待て……なのです」
そうして沖縄パワーで上手く固まれば、あとは盛り付けだ。
一口分のサイズに切り分けて、ココアパウダーをまぶしたら器に盛り付けて完成! うん、巧く出来た、かも?」
そして此処で更にキュンな呪文をかけていく。本人としては本の通りにやっているつもりなので、何も疑問に思っていないのがミソである。
「美味しくな~れ♪ 美味しくな~れ♪」
そう、愛情はスパイスというがこの呪文もまたスパイスだ。
「えっと、チョコ初めてだから、巧く出来てなかったら、ごめんなさい、です」
何も問題はなく、ミルキィもそんな仲間たちを見ながらR-Senceを発動させていく。
そう、R-Sence<リョウリ・センス>。再現性沖縄<アデプト・オキナワ>翔波に染まった人間のみ使用できる謎の超感覚をミルキィは会得しているのだ。
「ふむふむ、相手はドラゴンフルーツか……ならばボクが狙うべき食材は……そう、タイガーメロン! 龍に対抗するのは虎! 龍虎相打つっていうくらいだしね♪」
テーマ選択も決まれば、早速準備だ。分かっているとばかりにミルキィは周囲をパッと見回していく。
「さて、そうときまったら虎退治だー! 沖縄の虎は狂暴だー! 気合いれて採取しないとだね☆ エキスパートで強化したR-Senceとグルメの感覚、そしてボクのパティシエとしての経験と甘味への執念で最高の素材を集めてみせるぞー!」
そうして集まった材料は、まさにミルキィの満足の行くものが集まっている。これで何を作るのか。ミルキィの中ですでに答えは出ていた。
「作るのはタイガーメロンをメインに添えたパフェだよ☆ パフェは完璧を意味する甘味の王様! いうなればボクにとっての必殺料理(スペシャリテ)だからね! スイーツバトルとならば敵のシェフだけじゃなく、仲間達の料理に対しても負けるわけにはいかない! その覚悟をもって最高のパフェを作り上げてみせるよ!」
そう、仲間にも負けない。その為にスペシャリテを出すミルキィは今まさに燃えていた。
「再現性沖縄食材とはいえタイガーメロンはマスクメロンより甘さでは負けちゃうから、その良さを殺さないようにアイスや他の果物の味が勝ちすぎないようにバランスを見極めてつくらないとだね!」
そう、パフェとはバランスだ。それを見極めるのはまさに、職人の技であるのは間違いない……!
●スイーツ勝負だ! 後編
非正規雇用はスイーツの作り方など知らない。だからこそ『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)と組んだが、トールは非正規雇用に負けず劣らずのファンキーだった。つまり良いコンビでは? さておこう。
「どうして私だけエプロン1枚で参加しなきゃならないんですか~っ!? というか肌色のエプロンですし只の全裸では!? え……もしもの為にへっちがーど!!!!! も完備……? そんな変な気を使われても嬉しくないです~!」
「俺は何も言ってない! とにかく頑張ろうな!」
「幸い装備は料理に無影響のようですし私が羞恥心さえ我慢すれば問題なく依頼はこなせそうですね。やるからには本気で取り組まねばなりません!」
「俺は何もやってないけどな!」
大事なことなので非正規雇用は念押しした。ともかくすでに互いが何を作るかは決まっている。
「分担して最高のスイーツを作るぜ! 必要な食材は、あと3つかな。お前は? トール」
「さぁ佐藤さん! 私たちの「あ、うん」の呼吸で秘蔵の究極合体スイーツ”例のアレ”を作って驚かせてやりましょう!」
「あ、うん。凄いスルーするな」
とにかく材料集めに非正規雇用は駆け回る。
「フルーツの王様といえば……そう、バナナだ!! 中でも最高の甘さを持つという沖縄バナナは、あまりの美味さに沖縄ワニが守っていると言う!! それをこうして……ぐあああっ!! お、沖縄ワニがロールケーキを俺の口にまるごと突っ込んでくる……野良クッキングバトル!? ぐわあー! はぁはぁ……ちょっと深爪してしまったが、何とかゲットしたぜ」
なんだか吹っ飛びながらも次はココナッツの木にも見えるカカオの木へと突貫していく。
「沖縄カカオはその芳醇な香りから、世界中の美食家に愛されているが収穫方法に問題がある。高さ1kmもある沖縄カカオの木に登る必要があり、毎年、死者が出ているとかいないとか……。しかし俺なら……ぐあああああ!! お、沖縄コアラがちんすこうを山のように!? はぁはぁ……ちょっと膝を擦りむいたが、何とかゲットしたぜ」
そして次は卵だ。
「沖縄で卵といえば、やっぱり沖縄コーチンだろうな……。ただし、沖縄コーチンは絶滅寸前で、市場に出回るのは百年に一度。とても入手することは……えっ!? さっき偶然助けた少女が沖縄コーチンの育て屋!? そんな貴重な卵受け取れないよ!!」
「では私とクッキングバトルです! 私が勝ったら貰っていただきますよ!」
「くっ、やるしかないのかぐわー!」
ともかく非正規雇用は無数の冒険を経て伝説の材料を集めきる。さあ、調理だ……!
「うおおおおおお!!沖縄バナナを一口大にカットし、沖縄カカオから作ったチョコソースをかける。あとは、トール君が何か良い感じの食材を取ってきてくれるだろう! 最後に、沖縄コーチンの薄焼き卵で巻いて、究極のクレープの完成……」
「私が持ち込んだのはトワイライト・シンデレラとクロックワーク・キャンディーのレシピ。これらを沖縄の材料を使って独自にアレンジします華蓮ちゃんキッチン(時短編)を参考にしつつまずはカルピス、レモンジュース、ブルーキュラソーをシェイク。グラスに注いでチェリーと一口サイズのドラゴンフルーツを添えれば青いドレスに身を包んだカクテル『ブルーシンデレラ』の完成」
そして非正規雇用と同時にトールの調理も進んでいた。
「クロックワーク・キャンディは飴ではなくチョコで作ります。佐藤さんからチョコソースを貰う代わりに私は生クリームを渡しましょう。技巧な支配の指で精巧な懐中時計チョコを作る姿は正にマエストロ」
そう、此処では「攻撃」は何の意味もない。しかし料理であれば話は別……!
だからこそトールはアーリーデイズで天才パティシエだった自分の姿を思い返そうとしていく。
「そんな記憶は一切ありませんが時には思い込みの力も馬鹿になりません。私は今ノービスだから何にだってなれるんだ。そうさ心はいつだって挑戦者」
中々にフリーダムで初めての沖縄とは思えない動きだが、そこはトールの適正なのだろう。
「仕上げに練達のお菓子「ハッピーなターン」の粉をおまじないのようにチョコにふりかければあら不思議! 止まっていた時計の針が動きだします! こんなこともあろうかと! トレンドを調べて用意しておきました。甘さ控えめチョコと爽やかなシンデレラが佐藤さんのクレープと調和します」
「これを”美女と野獣”と名付けよう!!!」
「そう、その名も『美女と野獣』! 決して混じわる事のない二つの逸話が貴方の口の中で新たな物語を紡ぐことでしょう。幸せに満ち溢れたその味を是非ご賞味ください」
その完璧なコンビネーションに、ニャンタルと『謳う死神』フロイント ハイン(p3p010570)が思わず拍手する。
「あっちは中々じゃのう。負けていられんな」
「そうだねー」
言いながらも、2人も中々のフリーダムだ。
「え、何の歌かって? 料理の歌に決まってるじゃん」
ハインは食材の実る木を丸ごと伐採しながらどっかで聞いたことのあるフレーズを口ずさんでいた。
「とにかく相手より美味な料理を作れば勝利! 文面にするとわかりやすいけど、味覚って思いっきり個人の感覚……アッ」
何やらハインの中で常識がミキサーにかけられる音がしていたが、すでに常識を微塵切りにしていた気がするのは気のせいだったらしい。とても沖縄らしいスピリットだ。
「問題ない、死ぬほど美味い料理を作ればいいんだ。そうすれば誰だって美味しいって感じる……ハズ! 料理は味より愛情、質より量! って通りすがりのおばちゃんが言ってた! つまり愛情をフルブーストすればどんな料理も美味しくなるって寸法! 付与スキルと似たような感じだね、そーれ美味しくなーれ、萌え萌えきゅん♡」
ドカ、バキ、グシャ、ゴキ、ブチッと音が響いているが、Lilyと比べると闇のキュンなのは決して気のせいではないだろう。
「ふー、下拵えはこんなものかな。あとは繊細かつ大胆に盛り付けて」
ガチャガチャ ピーピー ボロボロ ズルズル ドンガラガッシャン ポッピー
響く効果音はメカニックではなくクッキングであるらしい。
「さあ、僕の料理を文字通り喰らえ! ふぐ刺し! 木に実ってたトラフグを僕が捌いたよ! 甘味が強いらしいからスイーツでいいよね! え、調理師免許? ナニソレ美味しいの? あと、新鮮な魚の肝ってとても美味しいらしいから、身と一緒に鍋も作ったよ。あんきもみたいで美味しそうでしょ? あんきもはフォアグラより美味しいって通りすがりの新聞記者が言ってたから作ったんだ。まぁ、食べてみてよ。何か死ぬほど美味しいらしいよ。知らないけど」
まさにフリーダム。スイーツの概念を壊しに来た意欲作が出来上がる中、ニャンタルの気合も充填されていた。
「我の作るスイーツは『おはぎ』じゃ! あったか〜いokinawaっぽくも仕上げてみせるぞい!」
そう、ニャンタルが作るのはおはぎ。スイーツの王道だ。
「先ずは材料の調達じゃな! 大量の北の大地の小豆!! ここに南の大地のきび砂糖を合わせ、南北の融合を図るぞい! そんでもって間を取り持つのは東のもち米!! バリエーショントッピングには西の青のりときな粉!! 水色の皿を用意して、巨大なおはぎを作成じゃ! メインの盛り上がった山のような小豆のおはぎをベースに、所々青のりをまぶして草地を表現! きな粉のおはぎは少し小さめに作り、メインのおはぎや周りに配置…これで岩場は完璧じゃ! 青い皿に乗せて、余ったきなこを皿の周りに振りまけば……何と言う事でしょう……! 貴方だけのプライベートアイランドの完成です! 何? 彩りがまだ足りないじゃと? ふっふっふ…… そんなもの我にはお見通しよ……!! これをこうしてこうじゃ!!」
と、そこにドラゴンフルーツが作った飴細工のヤシの木をそっと添える。
「ババーン!! 貴方の島にヤシの木が刺さって、南国気分が3000倍アップしたではありませんか……!! ムフフ……完璧な戦術よ……南国okinawaっぽさ満載で世界の統一も図った我のスイーツ!! 優勝は貰ったぞい!!!!」
そうして出揃ったスイーツの数々。始まった試食の結果……ドラゴンフルーツとニャンタル、そしてハインが空へと吹っ飛んでいく……!
「まあ、ハイン君はそうだろうなと思ったけどニャンタルさんはあれか。敵との合作みたいになって『向こう側』になったから連帯責任なんだな……」
響く非正規雇用の言葉。沖縄はそんな感じで、今日も平和であった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
フリーダム!
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
はい、というわけで久々に再現性沖縄です。
では、改めまして。
料理人の皆様、再現性沖縄<アデプト・オキナワ>へようこそ。
え? イレギュラーズ? そんな肩書此処じゃ牛脂1つ分の価値もありゃしないぜ!
そんな感じです。今回皆さんは浜辺でスイーツ・バイキング・ドラゴンフルーツとスイーツバトルです。
ちなみに材料は持ち込んでも構いませんが、必要な食材や調味料は「基本的」にはその辺に生えています。
豚肉の木とか砂糖の実とかあります。砂浜を掘って砂糖細工の2枚貝を開けたら真珠の如き白玉があったりするかも。超怖ぇ。
幻の食材と言われる類のものは特殊な場所、あるいは状況でしか存在しなかったりします。
(逆転が必要なシーンで偶然見つかったりするかもしれません)
●今回の敵(スイーツバトル)
・スイーツ・バイキング・ドラゴンフルーツ
浮遊する、パティシエ服を着ているでっかいドラゴンフルーツ。
超絶技巧のヤシの木型の飴細工を作ります。色もついていて、まるで本物のヤシの木のよう……。
いや確かにスイーツだけどさあ?
●翔波
再現性沖縄20XXに存在する料理バトルの街
何かあれば料理で解決する料理馬鹿の聖域。
ローレットのイレギュラーズの皆さんは料理人として参入することができます。
此処では全てのステータスは無意味です。武器は振ってもハリセン程にも通じず、ギフトもスキルも無効化されてしまいます。
ただし、相手より美味い料理を作れば大ダメージを与えて海老ぞりで大空に吹っ飛ばすことができます。
相手の料理の方が美味ければ自分がそうなるってことですよ。
なお、必要な食材や調味料は「基本的」にはその辺に生えています。
豚肉の木とか砂糖の実とかあります。超怖ぇ。
幻の食材と言われる類のものは特殊な場所、あるいは状況でしか存在しなかったりします。
(逆転が必要なシーンで偶然見つかったりするかもしれません)
●情報精度
このシナリオの情報精度はRです。
料理には常に想定外が付きまといます。
常識なんてミキサーにかけて飲んでしまいましょう。
ハヴァナイスデイ。
Tweet