PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ラドンの罪域>勇者志望の女の子たちと、仲間たちのために奮う勇気

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●撤退路
 ピュニシオンの森の踏破。
 それは、この先に潜むとされる冠位魔種、ベルゼーと接触するためにも、必須のクエストであった。
「えっと、だからみんなは、この先のラドンの罪域、ってところに行ったんだね!」
 そういうのは、ピンク髪の亜竜種の少女、レィナだ。彼女は背中に大剣を背負っていることからもわかる通り、冒険者であり、新米ローレット・イレギュラーズでもある。
「そうね。わたしたちは、ここで撤退路の確保よ」
 そういう黒髪のスナイパーは、ユーリィ。暴走しがちなレィナを止める、女房役といったところか。
「……さすがに緊張するわね。わたしたちが、不帰の森に入ることになるなんて……」
 そういうユーリィの顔には、緊張が走っていた。不帰の森とも呼ばれるこの地は、竜の領域だ。覇龍領域はその全域が危険地帯だが、ここはその中でも『特に』が頭につくほどの危険地帯である。その名の通り、入れば生きては帰れないのだ。
「……そうだね、さすがに、あたしもドキドキしてる……」
 さすがの能天気なレィナも、緊張している様子だ。何度か先輩たちと冒険を繰り広げた彼女たちでも、いや、だからこそか、ここがあまりにも危険な場所であることを理解しており、いつものふわふわした感じも鳴りを潜めていた。
「ま、あんまり緊張しないでくださいよ」
 と、ファーリナ(p3n000013)が言う。ローレットの情報屋で、一応の戦闘スキルも持ち合わせているため、現地でのサポートをかって出たわけだ。そこには、レライム・ミライム・スライマル(p3n000069)やラーシア・フェリル(p3n000012)の姿もあった。さらに、あなたをはじめとする、ローレット・イレギュラーズたちの姿もある。かなりのフルメンバーで、ようやく一つ、撤退路を確保できるか否か、というのが、この地が危険であることの証左でもある。
「そうですね。油断はダメですけど、いざというときに動けなくなってしまいますから」
 ラーシアがほほ笑んだ。森は、今にも何か恐ろしい怪物が飛び出してきそうな気配するらする。
「とはいうものの、さすがに怖いっすね」
 青髪の少女、ネネナが言う。
「ほんと、子供のころは不帰の森に連れてくぞ、なんてかーさんに叱られたもんっす……」
「里の皆の殺し文句でしたよね。ほんと、お化けがいる~って信じてました」
 キッツェが苦笑する。今にして思えば、お化けの方が何倍もマシであるのだが。
「とにかく、あたしたちはここで先に向かったみんなのために撤退路を確保しないといけないの」
 レライムが言った。
「責任は重大だから、気を付けてね」
「うん! ……あれ?」
 レィナが、元気よく手を上げて――きょとん、とした顔をした。それからすぐに、
「なんか、変な気配がする――」
 そういう。そしてそれは、気のせいなどではなく、全く正しい感覚だった。すでに、あなたたち歴戦のイレギュラーズたちは、交戦体勢をとっている。
「いますね……かなりの数です」
 仲間の一人がそういうのへ、あなたはうなづいた――するとどうだろう! 森の奥から、体長にして30cmほど、小型の二足歩行爬虫類のようなものたちの群れが、地上を埋め尽くさんばかりに走りこんでいたではないか!
「亜竜よ! スピッツ・ラプト!」
 ユーリィが叫んだ。
「小型だけの、群れで襲ってくるの! でも、今のわたしたちなら、これくらいは――」
「いや、ユーリィ! 上っす!」
 ネネナが叫んだ。構えをとったあなた達も、思わず唖然とする。頭上にいたのは、巨大な亜竜だ! 岩のようなうろこを持つ、見るからに頑強そうな、岩の塊のような亜竜が、悠然と、三匹、遊弋している!
「ひ、な、なんですか、あれは……!?」
 キッツェが悲鳴を上げる。どうやら、亜竜種である彼女たちも知らないらしい。おそらく、ピュニシオンの森に潜む固有種だろう。
「まずいですね、どうやら、スピッツ・ラプトを餌にしようと飛んできたいみたいです……!」
 ラーシアが、構えつつ、叫んだ。ファーリナがうなづく。
「どうします!? 考えてる時間はないですよ!?」
 そういうの、あなたは提案した。
 スピッツ・ラプトを、四人娘とファーリナ、ラーシア、レライムへ任せる。
 自分たちを含めたイレギュラーズたちは、新たに表れた強力な三匹の亜竜を迎撃する、と。
「……あたしは構わないけど。そっちの子はやれる?」
 レライムが小首をかしげるのへ、レィナがうなづいた。
「まかせて! あたしもローレットの一員だもん! やってみせる!」
「というわけで、先輩たちは、あの岩みたいなやつをお願いします!」
 レィナが構えるのをサポートするように、ユーリィも構え、あなたたちに叫び返した。
 あなたも、仲間とともに構える。遊弋していた岩亜竜は、獲物を定めたとばかりに勢いよく降り立ってきた!
 あなたは意を決すると、仲間たちとともに、岩亜竜を撃破すべく、戦場へと飛び出した――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 仲間たちとともに、撤退路を死守しましょう!

●成功条件
 三匹のブドラマイスの撃破。
  オプション――速やかにブドラマイスを撃破し、スピッツ・ラプトの全滅に力を貸す。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●状況
 ピュニシオンの森攻略戦――。
 その作戦が展開される中、あなたたちイレギュラーズは、ピュニシオンの森に構築された撤退路の防衛任務に就きます。
 そこでは、戦えるローレットの情報屋や、レィナら亜竜種の四人娘も配備されており、大所帯で守らねばならぬほど危険な場所です。
 さて、当然のように、敵の襲撃が起こりました。現れたのは、小型の亜竜、スピッツ・ラプト――だけなら何とかなりそうでしたが、なんとスピッツ・ラプトを餌にしようと、巨大な岩亜竜ブドラマイスが飛来したのです。
 このすべてを一度に相手にするのは、皆さんでもつらいかもしれません。しかし、今は皆さんには頼れる仲間がいます。
 というわけで、比較的御しやすいスピッツ・ラプトを仲間(NPC)たちに任せ、みなさんは強力な岩亜竜ブドラマイスの撃破に赴くのです。
 作戦決行タイミングは昼。
 周囲は充分明るいですが、森であるために視界は少々悪いものとなっています。

●エネミーデータ
 岩亜竜ブドラマイス ×3
  全身が岩のようなうろこでおおわれた、巨大な亜竜です。見た目通りに硬く、タフで、生命力があります。
  防御技術やEXF、HPに優れ、攻撃力も高めですが、鈍重で、EXAや回避、命中は低めであるといえるでしょう。
  攻撃は主に物理属性のものを多用し、出血や乱れなどを付与したり、飛などで吹き飛ばしたりなど、パワフルな攻撃を行います。
  しっかりと攻撃を引き付け、最大火力で確実に撃破していきましょう。あるいは、得意の防御能力を減ずるように惑乱してやるといいかもしれません。

 スピッツ・ラプト ×20
  小型の亜竜で、生命力などが低い分それを補うように大量に発生し、集団で狩りを行います。
  毒などを付与してきますが、脅威度は高くありません。
  そのため、下記の亜竜種四人娘や、ラーシアらNPCに任せきりで問題ありません。
  もちろん、ブドラマイスを早期に倒して加勢に出るのもいいですし、うまくNPCたちを指揮して、効率よく倒せるよう導いてやるのもいいでしょう。
  イレギュラーズが相手にする分には、脅威ではない存在になります。

●味方NPC
  亜竜種四人娘
  剣士タイプであるレィナ、狙撃手であるユーリィ、魔法使いであるネネナ、回復士であるキッツェ、の四人です。
  皆さんに比べて半人前もいい所ですが、スピッツ・ラプトの相手は任せても大丈夫です。
  レィナはEXF高めで盾役も可能。ネネナはちょっとだけ死霊魔術を会得しており、霊魂疎通(弱)を使えたりします。
  ユーリィは素直な銃を持ったスナイパータイプ。キッツェも同様に回復タイプです。

  ラーシア・フェリル
  神秘属性を多用する術師タイプです。回復なども一通りこなせます。

  ファーリナ
  こちらも神秘属性を多用する術師タイプ。攻撃スキルに特化しています。

  レライム
  こちらは平均型前衛。器用貧乏とも。攻撃と回復をそこそこにこなせるため、盾役もできます。


  全員に共通して、放っておいてもスピッツ・ラプトくらいなら何とかできます。
  皆さんが敗退しまうと、彼女らではブドラマイスの相手は困難であるため、撤退……ということになりますので、頑張ってください。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <ラドンの罪域>勇者志望の女の子たちと、仲間たちのために奮う勇気完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年04月24日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サイズ(p3p000319)
妖精■■として
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
囲 飛呂(p3p010030)
点睛穿貫
アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)
ライブキッチン
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女

リプレイ

●二種の亜竜
 この場に、二種の亜竜がいた。
 まずは、小型(亜竜にしては、である。人から見れば十分に大きく、人間サイズの怪物である)のトカゲのごとき亜竜、スピッツラプト。これは集団で狩りをするタイプの亜竜である。
 そして、大型の岩石亜竜である、ブドラマス。これは、スピッツラプトすら食らうタイプの獰猛な亜竜であった。
 この二種がどうして一堂に会しているかと言えば、食い食われるためというわけではない。いや、スピッツラプトは、おそらくブドラマイスから見れば餌であるが、この場合は、より『弱い』存在が、目の前に現れてたが故の、奇妙な均衡が二者の間で保たれていた。
 この森において、もっとも弱き者。つまり、『人類』である。
 ごくり、と少女レィナは喉を鳴らした。友達である、残り三人の少女たち、ユーリィとネネナ、キッツェも、内心で緊張と慄きを飼っていた。亜竜とは、亜竜種である彼女にとっても、恐ろしい、手も出せないような存在であることに間違いなかった。スピッツラプトなら、まだ何とかなる自信はあった。だが、あの巨大な岩石亜竜は、見たことも聞いたこともない、恐ろしい怪物に違いなかった――。
「レィナ、ユーリィ、ネネナ、キッツェ。そっちは任せた。すぐに加勢するからちっとばかし待ってな」
 とん、と、そんな四人娘を勇気づけるように、肩が叩かれた。
 『運命砕き』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)の笑みは、やれる、ということを教えてくれて、やれる、と背を押してくれる笑みと言葉だった。
「いつぞやぶりの四人組ですけれど、元気そうで何よりね。
 今日は元気を存分に発揮して頂戴な?
 其のほうがこっちも仕事が捗るってもんですからね!」
 そういって、いつものように涼やかに言ってみせる、『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)の姿も、少女たちを勇気づけるのに十分以上の力を果たしてくれていた。
「四人とも久しぶりだな。竜宮でのフリーパレット騒動以来か? 成長しているようで何よりだ、今回も頼りにさせてもらうぞ」
 そういってくれる、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)の言葉もまた、うれしかった。一度、力を貸してもらった先輩に、頼りにさせてもらう、と言ってもらえる。それは、まだまだ半人前の彼女たちにとっては、うれしい言葉に違いない。
「まかせて! こっちは、わたしたちでやっつけるから!」
 びっ、とレィナを構えて見せる、レィナ。
「そちらはお願いします、どうか、お気をつけて……!」
 キッツェが心配げにイレギュラーズたちを心配しながら、しかし自分たちも武器を構え、獰猛な亜竜へと立ち向かうべく意を決した。一方で、彼女らに比べれば先輩にあたる、例えばラーシアなどが、「こちらはお任せを」と、イレギュラーズたちに視線を送る。任せておいて問題ないだろう。
「仲良し4人組みんなで協力して退路を確保、か。
 いやぁ、青春だなぁ。微笑ましくなっちゃうね!」
 『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)は、楽しげに笑いつつ、しかしすぐにその口元を引き締めた。
「とはいえ、こっちも危ないのには変わりないね。あの子たちの先輩なんだから、ちゃんとやらないと!」
「ああ。決して油断できる相手じゃない」
 『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)が、油断なく身構えながらそう言う。
 目の前の、三匹のブドラマイスは、決して『咆哮』をあげたり、『威嚇』したりはしなかった。
 単純である。『威嚇とは、つまり自らが危機に陥ったときに行う逃げの行為である』。この森において、亜竜とは、ある意味で頂点であることに間違いない。ましてや、目の前の『人間』などという存在は。むしろ、咆哮などを上げ、おびえて逃げられてしまうことの方が、ブドラマイスにとってはマイナスであった。これより食らう相手である。『自分たちは勝てる』と勘違いさせて、無様に食われに来てくれる方がずっと楽でよい。
 間違いなく。この森において、人間とは最底辺の生き物である。
「……とか思ってるんだろうぜ。それを勘違いだってことを教えてやる」
 飛呂がそういうのへ、
「むしろ、たべるっていうのならば、わたしたちのほうだわ」
 と、『ライブキッチン』アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)は興味深げに言ってみせた。
「かなり頑丈そうな甲殻ね……と、いうことは、味に期待できそうだわ。
 ああゆうのは大抵、肉は柔らかくておいしいものよ。カニとかエビもそうでしょう?」
「え、ええ……食べるんですか……?」
 困ったように『未来への葬送』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)が尋ねる。
「た、確かに、鱗は硬そうで……お、おいしいのでしょうか……?」
 困る。確かに、食という点ではあれを見ていなかった。なんかそういわれると、身は柔らかいのかもしれない、という気分になってきたので、マリエッタは頭を振った。
「なんにしても、です。
 今日は頼りに仲間がいますが、頼りきりというわけにもいきません。
 速やかにやっつけて、援護と行きましょう。
 ……食べるかどうかは、そのあとで」
「そうだな。それに、退路の確保をしないとならないのが第一だ」
 『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)がそう続ける。
「……こんなやばいところで退路を確保しないってのが本当に大変だが……あっちで頑張ってるやつに弱気なところは見せられないからな」
「そう言うことだ。ま、どしんと構えよう」
 ルカが笑う。
「そうね? 味に期待、なんて言ってやるのも悪くないんじゃない?」
 ゼファーも涼やかに笑ってみせた。
「では――友のため、後輩のため。
 行こうか」
 エーレンの言葉に、仲間たちはうなづき、そして武器を構えた。
 驕る亜竜に教えてやろう。この場において、捕食者はどちらであるのかを!

●岩石亜竜
 さて、岩石亜竜、見た目通りに『動きは重い』。それは回避能力であったり、反応速度であったり。無論、これはそういった能力を必要としない強固な装甲を得ているが故の進化ともいえたが、しかし今この場においては致命的ともいえた。なぜならこの場には、咲良をはじめとするイレギュラーズたちがいたからだ!
「飛呂くん、エーレンくん、続いて!」
 咲良が声を上げて、友を連れて駆ける。連鎖的な行動を可能とするその業に、問題なく飛呂と、エーレンは続いた。
「右手のやつを、アタシたちで!」
「承知した――さあ、行くぞ。
 鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。こっちなら人間を食べ放題……などと思ったか? 残念だったな!」
「食べられるのはそっち……らしいぜ? 足を止める! みんなは続いてくれ!」
 飛呂が構える。Paradise Breaker。狙撃の銃。放たれる銃弾は、封殺の呪をのせて、解き放たれた。がうん、と強烈な音は、しかし一撃目はその硬い装甲に阻まれる!
「硬い……! が、それも想定通りだ!」
「装甲の隙間を狙って! 飛呂くんなら狙える!」
 咲良の言葉を受けて、装甲の隙間を探す。堅牢な鱗と言えど、それで体を完全に覆っていたとしたならば、そもそも動けるはずがないのである。例えば、関節など。柔らかくなければ動かせぬところ。こんどは、ぶしゅ、というような軽い音だった。脚部の関節、装甲の合間を狙た一撃が、封殺の呪を込めてブドラマイスの体内に突き刺さる。この時初めて、ブドラマイスは咆哮を上げた!
「止めた!」
「なら切り裂く!」
 エーレンがその刃を振りぬいた。一閃。『ただの居合切り』とエーレンは謙遜するだろうか。だが、極限にまでそれを鍛え追求し、やがて魔技に至ったのであれば、それはすなわち、一閃の奥義となる。
 散、と文字にすべきか。清廉とも思える音を、雷と刃の軌跡が描いた。飛呂の貫いた関節、そこを切り裂く! 無論、大輪のように太い脚は、それだけで切断とはいかなかったが、深く切り咲いた斬撃は、その足を引きずるほどのダメージを与えることに成功したようだった。
「なるほど――確かに、肉は柔らかいのかもな?」
 手ごたえを率直に感想するエーレン。咲良は目を丸くした。
「えっ、じゃあ本当においしいの……?」
「それは食ってみて、だろうさ」
 そんな風に答える、ルカ。涼やかに、しかしその闘志は獰猛なる猟犬がごとく。黒犬の大剣を、片手で殴りつけるように、ブドラマイスの背部へと叩きつける! がおうん、と強烈な衝突音が鳴り響く! ブドラマイスの装甲も大したものだが、それに叩きつけられたルカの一撃も、尋常でないほど重い。
「なるほど、たしかに硬ぇな。だがこれならどうだ?」
 その刃に強烈な『赤』を燃やし、再度ルカはその大剣をブドラマイスへと叩きつけた! その威力は、先ほどのとは段違いのものであることに、見れば誰もが気付くだろう。最初は試したのだその硬さを。亜竜足る怪物を前に、彼はそれを試した――。
 ルカの強烈な一芸に、ブドラマイスの装甲もいよいよ耐えられなかった。べぎり、と背中の装甲にひびが入り、まさに岩が割れ砕け散る様に四散した。内部には、なるほど、確かに柔らかい肉が見て取れる。
「アンタの獲物は、その硬い鱗だ。なるほど、確かに大したものだよ。
 だが、重装歩兵の殺し方なんてのは、傭兵が最初に学ぶことだぜ?」
「そして、そういうのって、一度崩れると脆いのよね」
 ずだん、と、天空より一陣の閃光が、ブドラマスへと着弾した。いや、それは、上天よりおのが槍を叩きつけたゼファーの姿である。ルカのこじ開けた穴に、ゼファーは一切の慈悲なく、最大の一撃を叩きつけた。それはまさに、蒼天より落ちる強烈な雷の一撃に違いなかった。その衝撃が、柔らかい肉を内部からうち叩く。ぎゅおう、と断末魔の悲鳴を上げて、ブドラマイスが倒れ伏した。その目があっという間に白く濁る。死、の現われ。
「さて、足は遅いけれど中々に力自慢ってとこかしら。
 ま、そういう手合いの相手は慣れたもんよ。御覧の通りにね?
 岩石亜竜さんだったかしら? 愉しく遊ぶとしましょ?」
 この時、はじめてブドラマイスは理解したのだ。
 目の前にいる人間は、ただの獲物ではない。
 ゆえに、残る二体のブドラマイスは咆哮を上げた。
 『威嚇』である。その咆哮は、まさにイレギュラーズ達のみを震わせるほどの威を持ち合わせていたが、しかし『この程度の死地など、何度も踏んでいる』。
「わたしは、この国を外の国みたいに普通に人が暮らせる場所にしたいの。
 だから、狩れるやつは徹底的に狩り、そして、食す。二度と人と争おうなど思わせぬためにね。
 まぁ……食の追求という趣味も兼ねてはいるけど。
 まずは、焼いてみたら、どうかしら!」
 すぅ、とアルフィオーネが息を吸い込んだ。間髪入れず勢いよく吐き出すそれは、火炎のブレスだ! 戒めの炎が、その身を焼き尽くす! ブドラマイスの装甲は確かに厚いが――。
「じりじりと、遠火で直火で焼いてあげれば、鎧の中は蒸し焼きよ」
 強烈な炎は、着実にブドラマイスの体を焼き、その体力をえぐっていく! 熱さにこらえられず、ブドラマイスたちがでたらめに暴れるように、タックルを繰り返した。その鎧は、鎧であり武器であるわけだ。
「おっと、そうはさせない!」
 サイズがその手を振るうと、仲間たちを守る様に、いくつもの『鎖』が地面より飛び出した。鎖血界。敵の攻撃を防ぎ、その勢いを落とす、サイズの生み出した鎧だ。その鎧により衝撃を減じながら、イレギュラーズたちは回避、あるいは受け止めるなどして、その砲弾にも似たブドラマイスのタックルを何とかうち耐えていた。
「サイズさんは、確かスピッツラプトの方を担当してらしたんですよね?」
 マリエッタが言うのへ、サイズはうなづいた。
「うん。あっちは順調だ。みんな頑張ってくれてる……だから!」
 もう一度手を振るった刹那、様々な花が、草が、葉が、舞うように散った。春と秋のワルツ、サイズの生み出した、結界の術。
「もう少しだ!」
 敵は亜竜。さすがに攻撃はヘビィであったが、しかし、イレギュラーズたちにも倒れることのできぬ理由がある。
 隣で戦う後輩のためにも、別の地で戦う仲間たちに退路を提供するためにも。
「はい! 負けてなんて、いられません!」
 ブドラマイスからの攻撃に痛む体、それを耐えながらも、マリエッタはその手をかざした。鮮血の聖印が、赤の光を描き。同時、中空に無数の『鮮血の刃』が生まれる。
「我は命ず――その赤き血を以って、愚者に災いを」
 振り下ろすと同時に、鮮血の刃は一気に解き放たれる! ブドラマイスの装甲、それに突き刺さり、関節などの柔らかい部分にも突き刺さった。狙ったのではない。周囲を囲み、一気に圧殺する。強烈な面制圧の術式に、狙うなどという細工は不要。
「まだ、止められます! もう一体の方を!」
 マリエッタが叫んだ。
「もちろん、このままやっつけてしまっても、私は構いませんよ?」
「その意気!」
 咲良が飛び込む。速度をのせた一撃! スーパーノヴァ、その超新星のごとき爆発力! はっきりといえば、シンプルな跳び蹴り、である。だが、それで、咲良にとっては必殺の一撃とできるのだから!
「吹っ飛ばすっ!」
 上空から落着! 超新星が、ブドラマイスの装甲を粉砕した! ぎあう、と強烈な悲鳴を上げるブドラマイスに、飛呂の呪弾が突き刺さる! 封殺!
「一体ずつだ。今はお前の番だ」
 静かに告げる。それは死神の宣告でもある。体をしびれさせられたように、あるいは恐怖で固まったかのように、ブドラマイスは動くことができない。その、完全に封殺されてしまったブドラマイスに、とどめを刺したのはエーレンである。
「そうなっては、自慢の鎧も用をなすまい」
 再びの、一閃。今度は、首の隙間を狙った。動きを止めた相手だ。エーレンにとってみれば、狙うはもはや容易。斬撃。再びの清廉な音を立てて、刃が躍った。切り落とされる。ブドラマイスの、首。ずん、と、それが地面に落下した。
「お見事、じゃあ、私もまだまだ頑張りましょうか?」
 涼やかにそういうが、これまでブドラマイスを抑えていたゼファーのダメージと疲労は濃いはずだ。ルカは労うように笑うと、
「いいや、ちょっと息を整えておきな。まだちびっ子たちがいるからな」
 そういって、黒犬を振りかざす! 突撃! マリエッタが相対していた、最後のブドラマイスへとむけて!
「よく頑張った! わるいが、とどめはもらうぜ?」
「ルカさんも、お怪我が……!」
 マリエッタが言うのへ、ルカはウインク一つ。
「あいにく俺は怪我してるぐらいの方が調子が良くてな!」
 その手の大剣を、勢いよく、ブドラマイスへと叩きつけた! 一撃が、岩石の装甲を破砕し、その肉を裂き、骨を断った。ぎゃあう、とブドラマイスが悲鳴を上げる!
「っと――食べるんだろ? いい感じに焼いてくれよ?」
 ルカの言葉に、アルフィオーネはうなづいた。それから思いっきり息を吸い込んでから、強烈な炎のブレスを吐き出した。
 恨み。あるいは畏怖。そういった様々な感情をのせて、アルフィオーネの炎が、ブドラマイスを焼き去ろうとしていた。

●すべての友のために
「ひ、ひぃ……さすがにしんどい……」
「もう、ネネナも泣き言いわないで! 先輩はもっと大変なんだから!」
 戦場を変えてみれば、残る四人娘、そして情報屋の三人が、懸命な戦いを繰り広げている。肩で息するネネナに言うユーリィだが、しかし彼女の疲労の色が濃い。
 すでに半数以上のスピッツラプトは倒せていたが、彼女たちに任せていては、まだまだ時間がかかりそうである。
「そうだよ! 先輩たちに、かっこ悪い所見せられないからね!」
 レィナは笑う。少しだけ震える手に、力を込めて――だが、彼女たちを労うように、涼やかな声はかけられた。
「お待たせ。まった?」
 その声は、優しく。
「ゼファーさん……!?」
 キッツェが声を上げるのへ、ゼファーは片手を上げる。エーレンもまた、ゆっくりとうなづいた。
「あちらは終わったぞ、俺達も一緒に片付ける!」
「うそ、もうやっつけたの? あの亜竜を……!?」
 喜びよりも先に、驚きがユーリィの表情を彩った。自分たちでは手も足も出ないような怪物を、彼らは下したのだ。
「英雄って、マジでいるんっすね……!」
 ネネナも嬉しそうに笑った。
「英雄って言うなら、皆がそうだ。
 敵もあと少し。頑張ろう!」
 サイズがそういうのへ、四人娘は力強くうなづいた。
「勇者サマって言うにはまだまだ修行不足かも知れねえが……、俺らの頼れる仲間としちゃあ十分だろ。
 もう一息だ。力を貸してくれ」
 そういうルカに、レィナは嬉しそうにうなづいた。
「さぁて、俺たちはもう止められないぜ? ここからが、本当の全力だ」
 飛呂がそう声を上げて、
「皆、行くよ!」
 咲良が続いた。
「まとめて料理してあげるわ!」
 アルフィオーネが声を上げて、
「……えっと、ほんとに、食べるんですか……?」
 マリエッタが苦笑する。
 とはいえ、それを合図に、仲間たちは最後の戦いに、その身を投じた。
 スピッツラプトたちが全滅したのは、そのすぐにあとであったことを記しておこう。
 イレギュラーズたちは見事、仲間たちのための退路を、維持し続けたのである、とも。

成否

成功

MVP

皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍によって、退路は維持されました。
 ……それから、亜竜種の少女冒険者たちも、皆さんに尊敬の視線を向けている事でしょう。

PAGETOPPAGEBOTTOM