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シナリオ詳細

<ラドンの罪域>多頭竜のテリトリー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『覇竜領域デザストル』。
 この地で活動を始めたローレットイレギュラーズは、『冠位暴食』ベルゼーがフリアノンにおける相談役だったことを知る。
 ベルゼーを放置すれば、次なるターゲットとして覇竜領域が狙われることになると思われる。
 ただ、現状では退避したベルゼーはピュニシオンの森に向かったとみられており、イレギュラーズもそれを追うことになる。
 森を抜けた先、竜族が住まう『ヘスぺリデス』。
 ベルゼーがいると思わせるその地を目指し、イレギュラーズはまずピュニシオンの森の攻略に臨む。
 
 しかしながら、ピュニシオンの森は代々覇竜に住まう亜竜種達ですらほとんど立ち入らない場所で、前人未踏の地とも呼ばれる。
 イレギュラーズは過去、R.O.Oで進軍したことがあるが、相当なデスカウントを強いられた過去のある場所だ。
 当然ながら、現実では死に戻りなどできようはずもなく、慎重な進軍を行う必要がある。
 とはいえ、代わり映えのしない風景に、名も知らぬ植物。頻出するモンスターと、警戒する対象はあまりにも多く、瞬く間に神経をすり減らしてしまう。
 次から次へと襲い来る脅威をやり過ごし、イレギュラーズ一行は森の奥を目指していたのだが……。
 メンバー達の眼前に現れたのは、大柄な竜だった。
「「「貴様らか。森を荒らしているのは」」」
 同じ言葉が同時に複数聞こえてくる。
 それもそのはず、声の主は多数の首を持った竜だったのだ。
 将星種『レグルス』アルディ。多頭竜であるその竜種はイレギュラーズを見下ろし、睨みつけてくる。
 交戦は避けられないと察するメンバー達は冷静に周囲の状況を確認する。
 木々の間を潜り抜け、洞窟にも立ち入った気がするが……。
 それに、撃退する相手は目の前の竜種だけではなさそうだ。
 ここに至るまでに、2つの頭、硬い鱗を持つ亜竜の姿を満たし、頭とは別に尾まで頭となった双頭の蛇も視認している。
 それらが纏めてかかってくれば、非常に危険なことになる。
「「「覚悟はよいか」」」
 イレギュラーズは状況を見極め、目の前の竜との交戦を開始するのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <ラドンの罪域>のシナリオをお届けします。
 覇竜『ピュニシオンの森』の攻略に挑むローレットイレギュラーズ。
 今回の事態を切り抜けるには、多少の運も必要となります。

●概要
 覇竜、ピュニシオンの森に臨みます。
 森を進んでいたはずが、いつの間にか敵に囲まれてしまう羽目に……。
 
 PC,GM双方のダイスロールの合計値で状況が決まります(GM側の値はシナリオ公開時に公開します)。
 状況は6段階あり、1が最も危険度の低いランクで、6が危険度MAXです。
 皆様のダイスは各プレイヤー1D6、GMは1D100で、合計した数値で状況判定を行います。プレイングの一文字目にダイスロールした数字を一文字だけ記載してください。
(プレイングは改行の上、記述を願います)
 とりうる合計値は08~147。基本小さな数字が危険度小ですが、合計値がゾロ目だとファンブル判定とします。

 以下、危険度ランク。1~5の合計値はゾロ目を省きます。
1.(08~35)開けた森の中での戦い。竜種のみ
2.(36~63)木々が立ち並ぶ森の中での戦い。竜種+魔物2体
3.(65~91)木々に遮られた袋小路での戦い。竜種+魔物4体
4.(92~120)洞窟入口傍の木々の間での戦い。竜種+亜竜(魔物0体)
5.(121~147)双方向に通過可能な洞窟内での戦い。竜種+亜竜2体+魔物2体
6.(ゾロ目[11~99、111の10通り])洞窟の奥、袋小路となった場所での戦い。竜種+亜竜2体+魔物無数

 基本撃退。高危険度の場合はその場を切り抜けることが重要です。
 運は絡みますが、ある程度汎用性のあるプレイングが求められます。

●敵
 上記の状況によって、敵の数が増減します。

〇竜種・将星種『レグルス』:アルディ
 全ての状況において交戦します。
 全長7m複数の頭を持つ竜種。人型にも変形可能で人語も使います。
 高い治癒力を持ち、全身から発する様々な種類の毒が恐ろしい竜です。
 いくつかの頭を使った連続食らいつき、複数のブレスを使いこなす難敵です。

〇亜竜:ツインヘッドドレイク(略称:二頭亜竜)
 洞窟付近、もしくは内部でのみ交戦。
 全長7~8mほど。翼を持たぬ四足竜。鋭い爪と強靱な顎を持ちます。
 全身は堅い鱗に覆われ、魔法ブレスも使いこなす亜竜です。

〇魔物:アンフィスバエナ(略称:双頭蛇)
 頭、尾の部分の両方が頭となっている蛇です。
 毒々しい見た目と合わせ、蝙蝠の翼と足も有しており、空中から素早く飛び掛かってくる為、多数いると非常に危険です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <ラドンの罪域>多頭竜のテリトリー完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年04月24日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
流星の狩人
シャールカーニ・レーカ(p3p010392)
緋夜の魔竜
マリオン・エイム(p3p010866)
晴夜の魔法(砲)戦士

リプレイ


 覇竜、ピュニシオンの森を行くイレギュラーズ一行。
 方向感覚を惑わせるこの森は覇竜在住の亜竜種ですら近づかぬ場所。
 何が起こるか分からないこともあり、メンバーの対策もかなりのもの。
 例えば、周囲がかなり暗い為、『誰が為に』天之空・ミーナ(p3p005003)は暗視、透視といった手段を講じて視界の確保に努める。
「どんな状況になっても切り抜けられるようにしないとね」
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)もいかなる状況でも十全に立ち回れるようにと戦略を練ってきている。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……まあ、出てくるのは竜なんですけどね」
 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)が言うように、竜種と出くわすのは確実。
 問題はその竜と出くわすタイミングでおかれるメンバーの状況と、メンバーが一度に相手しなければならない敵の数だ。
 それらは実際に合わなければわからない。
 できる限り、危険がないようにと寛治は自ら一行を主導して偵察を行う。
 忍び足で進み、気配を消し、できる限り先に敵を早期発見しようと寛治は努める。
「どのような敵に遭遇するかは運ですが、賽を振る前に運以外のモノを塗り潰すのは定石です」
 例え、状況が時の運としても。
 天命を待つなら人事を尽くすべきとは寛治の談。
 メンバーの中には状況に抗おうとするものもいて。
「おや、愛しの君。森で迷子になってもその美しさが損なわれることもなし」
 ふらりと道中に現れたのは、亜竜種の少女。
 彼女は自身をイリンキャットと名乗って。
「どれ、キャットがワタリをつけてやろう」
 生存のプロである彼女は、比較的安全なルートを提示する。
 それでも、ピュニシオンの森を抜けるには、多少の運と大きな覚悟が必要だとキャットは語る。
「君ならそれができると信じているよ」
 状況の打破に協力してくれるキャットに、イーリンも礼を告げる。
 そして、『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)は少し仲間から離れる形で歩いて。
「さて、と……この手段は好みじゃないけどネ」
 彼女は虚空に向けて呼びかける。ちょーっと頼みごとがあって、お姉さんの手助けをしてほしい、と。
「そのかわり、シたい事も着せたい衣装でもなんでも聞いてあげるわよ?」
 いひひと笑うリカの姿は傍から見ていると妖艶で、それでいて少し不気味にも感じる。
 証拠が残らないとか物騒な言葉が聞こえれば、それは致し方のないことだろう。
「んじゃ、後はヨロシク❤」
 イカサマ全開の手を打ったリカ。果たしてその成果は……。


 代わり映えのしない風景に、名も知らぬ植物。
 個々のイレギュラーズの対策もあって、魔物の遭遇はやり過ごすこともできてはいたが、それでも竜種と遭遇してしまえばそれも簡単ではない。
「「「貴様らか。森を荒らしているのは」」」
 同じ言葉が複数個所から聞こえてきたのは、声の主が複数の頭を持っていたから。
「森を探るために来たつもりが、どうして探られていたのは私達の方か」
 通称司書、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)はこの迷宮のような森の環境が自身の勘を鈍らせたのかと首を傾げる。
 そんなメンバー達の眼前に現れたのは、大柄な竜だった。
 将星種『レグルス』アルディ。全長7mもあり、複数の頭がいくつもの毒やブレスを使いこなす強力な竜だ。
「探索してたら、激怒ドラゴンとこんにちは!?」
 『双影の魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)は男女両方の姿をとることができるが、今回は女性モードでの参戦だ。
「森を荒らした、か。まあ原住民からすりゃそうなるか」
「森を荒らしている、か。貴殿の領域たる地に、事前の相談もなく無遠慮に分け入った事は深く詫びよう」
 相手の言葉に納得するミーナ。『緋夜の魔竜』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)が続いて竜種に謝罪する。
「あら失礼、森を荒らすつもりはなかったのだケド……この奥にやばい奴がいるのよ」
 それこそ、この森をも消し飛ばしかねない魔種が。
 人とは価値観の違う竜に言葉を伝えるのは極めて難しいが、その竜と呼ばれるアルディだからこそ知っているのではないかとリカは問う。
「通るくらいは許してほしいけど……」
「「「煩わしい。私の傍を通るな」」」
 リカの頼みにも竜はにべもなく断ると、『竜の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)も我慢ならなかったようで。
「オイオイ、森を守る狩人に対してそれはないだろ」
 考えなしに木々を切り倒して森を破壊するような木こりと区別がつかないのかとミヅハは問うが、相手は尻尾を振って否定するのみ。
 たくさん頭があるのに、目は悪いんだなとミヅハは嘆息し、1つ2つ抉ってやろうかと煽れば、さすがに竜種の癪に障ったらしい。
「「「小物にそれができるとでも?」」」
 ややイラついた様子で睨みつけてくるアルディに見えるよう、ミヅハは手のひらを上に向けて両手を上げて。
「まったく、これなら野生動物のほうが話が通じそうだぜ」
「ならば、自然の摂理を知れ」
 それは、こちらの方が自然の摂理を知らぬと言いたげなアルディは、自ら弱肉強食というものを教えてやろうと身構える。
「こちらにも引き下がれない理由があるからな。ここを押し通ること、先に重ねて詫びさせて貰おうか……!」
「私は詫びなどしないけどな」
 レーカはそうして謝罪を口にするが、力で推し通るとミーナが剣に手をかけると、周囲から新手の魔物が姿を現す。
 シャアアアア……!
 現れたのは4体の魔物。
 蛇の両端が頭となっており、蝙蝠の翼と足も有する毒々しい見た目をしたアンフィスバエナだ。
 魔物達は別にアルディに付き添っているわけではないが、餌がやってきたという認識でこの場にやってきたのだろう。
「……強がってみたけど、わりとピンチか?」
「とりあえずマリオンさんは、周辺の状況把握が第一かなと思います! まる!」
 ミヅハの一言もあり、マリオンが現状把握するよう皆に促し、周囲を見回す。
 敵の数は5体。複数の頭を持つ竜種アルディと、双頭蛇アンフィスバエナ4体。どうやら、近場に亜竜の姿はないらしい。
 ただ、いつの間にかメンバー達は木々に囲まれた袋小路へと迷い込んでしまっていたようだ。
「ふむ、これは……」
 寛治はこの状況の中、何をすべきかを考える。
 竜の撃退は絶対だが、それほど追い込まれている状況でもない。
(とはいえ、退路の確保は必要ですかね)
 新手として現れた蛇が後方へといる状況。これらは最低でも排除しておく必要がある。
「どうした。威勢がいいのは口だけか」
 流石は竜種。状況把握に努めるこちらの態度を臆したと認識したらしい。
 この場を突破したいというこちらの主張は伝えたはずだが、下等生物にそう言われても納得も理解もしたくないのだろうとリカは察して。
「じゃあ、悪あがきしてあげますよ!」
 アレまでした結果はそこまで悪くなくなかったが、かといって最善とも言い難い状況には微妙な表情をするリカである。
 そこで、ハードでラックなこの状況を打破できれば、皆でドラゴンスレイヤーを名乗れるとマリオンは口にするが。
「でも会話は通じるみたいだから、殺さずに終わらせられたらその方がいいね!」
 マリオンは前向きにこの状況を考えていたようだ。
「あんまり先走るなよマリオン。皆と合わせて一点突破だ!」
 ミーナにとって、自身を師匠と慕ってくるマリオンは不思議と嫌には感じない相手。だからこそ、気にかけてしまうのだろう。
「「「覚悟はよいか」」」
 同時に聞こえるアルディの声は空気を揺るがすようにも感じられる。
 メンバーは凛然と対し、戦闘態勢をとる。
「然らば、突破するだけよ」
 ――神がそれを望まれる。
 イーリンの言葉が口火となり、森の袋小路での戦いが始まるのである。


 思ったよりは危険な状況にはならなかったが、相手は竜種であり、油断は禁物。
 その巨体にも拘らず、素早い動きでこちらへと攻撃を仕掛けてくる将星種『レグルス』のアルディ。
「小物程度、これで十分よ」
 全身から放出してくるのは、様々な成分を持つ毒だ。
 暗色の毒が周囲へと飛び散り、周囲の木々を侵す。
 それを吸い込んだ木々が変色してしまうが、枯れる様子がないのはアルディの縄張りで生息する故に克服しているのだろうか。
 対するイレギュラーズもまた、毒には十分な対策を講じている。
 所持する魔石で毒を防ぐ寛治は己の状態を戦いに適した状態とし、2種の敵から距離をとる。
 毒は防げても、ダメージ自体を防ぐには至らない。
 魔眼を煌めかせる寛治は焦らず、攻撃へと打って出る前に万全な態勢を整える。
「想定の範囲内で最大の被害、まぁ妥当な結果よねぇ」
 アルディは煩わしいと言っていたのをイーリンは聞き逃さない。
 小さな自分達が森で動き回るのを、アルディは嫌がっているのだとイーリンはインスピレーションで閃く。
 ともあれ、毒をやり過ごしたイーリンは竜種がこれから繰り出す猛攻の手を止めるべく、守りの構えをとって相手の動きを封じるべく瞬時に抜いた刃で複数の首が蠢く根元を突く。
 こちらは持前の高い抵抗力によって広がる毒に耐えていたリカは、相手の侵攻を食い止めようと身構える。
 圧倒的強者を相手取るのは接客の如し。
「「「餌になりたいか、いいだろう」」」
 リカは夢魔術を使って竜を煽ると、アルディは軽く頭を振って彼女に連続して食らいついてくる。
 一撃だけでも重いが、それが複数来るだけでも相当な負担となる。
 それでも、リカは臆することなく、それに耐えようと踏ん張っていた。
「出来ることは一つ。殺られる前に殺れ! だな」
 強い相手なのは間違いないが、深い手傷を追わせれば、本能で退いてくれるはずだと、ミヅハは距離の詰まったアルディの背に向けて矢を放つ。
「治癒力が高いらしいが、俺の矢は特別抜けにくい致命の矢だぜ」
 ミヅハの一矢は見事にアルディの背に突き刺さり、相手は鬱陶しそうにその矢を抜こうと身をよじらせていた。
「この数なら……」
 この場は撃退とみたアクセルは戦場に眩い光を放つ。
 強い光はアルディだけでなく、入り口側でうろちょろと立ち回る双頭蛇……アンフィスバエナの身体も灼く。
 さすがに泰然と構えるアルディはほとんど態勢を崩していないようだったが、双頭蛇が早くも態勢を乱すのを、アクセルは見逃さない。
 どの程度、竜種を抑えられるかはわからないが、アクセルは乱戦になるのを防ぐべく動く。
 巨体のアルディはともかく、双頭蛇は小回りが利く為、メンバー達の布陣を縫うように移動しようとしてくる。
「よし、マリオンさんもいくよ!」
 マリオンは群がる双頭蛇が厄介だと判断し、連なる雷撃を発して撃ち抜いていく。
 苦しみのたうつ蛇達だが、そこは覇竜棲息の生物。
 翼を羽ばたかせたそれらの蛇は、鋭い牙で食らいついてくる。
 その毒々しい見た目通り、毒を伴う噛みつきによって蛇は毒を注入しようとするが、マリオンは装飾品によってしっかりと毒をシャットアウトしていた。
「これくらいの敵なら、斃れず断ち続けてみせよう」
 名乗りを上げるレーカが双頭蛇を引き付ける。
 亜竜は岩場近くにいるらしく、ここまで現れる可能性は極めて低い。
 だからこそ、レーカはできる限り長く戦線を維持しようと防御を固めていた。
 そこまで、戦況を見ていたミーナは携帯品を使って双頭蛇に突撃する。
「おおおおおおおっ」
 死神や暗殺者といった経歴のあるミーナだが、ここは戦況を好転する為に全身全霊で大喝を発する。
 直後、準備が整った寛治が45口径の自動拳銃から鉛の弾丸を無数掃射して双頭蛇へと浴びせかけていく。
 口をパクつかせる双頭蛇はなんとか力を使おうと激しく暴れていた。


 竜種のアルディは鬱陶しそうにイレギュラーズを振り払おうとする。
 広域に広がる毒だけでなく、炎や光、雷と複合属性を持つブレスは対処が非常に困難だ。
 数人でアルディを抑え続けるも、メンバー達の体力、そして攻勢を削ぐ。
 治癒力の高い竜のこと、多少の攻撃はアルディに効果がないが、そこは歴戦のイレギュラーズ。
(少しでも、怯ませられれば……)
 背面穿ちの曲矢を射放ち続けるミヅハだが、アルディの態勢は盤石。
 なかなか敵が崩れぬのは焦燥にかられてしまいそうになるものの、ミヅハは攻撃を繰り返すのみだ。
 その間も、前線はリカが支えていて。
「リカ! あとどれくらい耐えられるかしら!?」
「さあ? 司書さんの思っているよりはずっと行けますよ――ざっと12万くらいね!」
 高い抵抗力でそれらを凌ぐリカは、イーリンの呼びかけにも余裕で答えて見せる。
 だからか、リカは構わず呼吸を整えて魔力を高め、竜種の攻撃を受け続ける。
 それでも、彼女にはダメージが蓄積しており、いつまで耐えられるかはわからない。
 最悪の場合はここからの離脱を考えねばならない。
 天眼で戦況を把握するイーリンはそれを想定しながらも術式を組み、双頭蛇に魔光を叩き込む。
 それらによって、双頭蛇は個別にではあるが、動きを止める。
「ミーナ、そろそろ段崩しにかかるかしら――」
「ああ、任せろイーリン」
 イーリンの考えを察してか、ミーナが胸を叩く。
 終焉を刻み込み、赤い闘気を叩きつけて虫の息になっていた双頭蛇に、ミーナはその敵の十八番と言わんばかりに飛び掛かって一気に仕留めてしまう。
 敵が減ったが、依然首をもたげる敵に、レーカが亡霊の慟哭を聞かせてその身を滅亡へと誘う。
 仲間意識が多少なりともあるのだろう。激しくレーカ目掛けて頭上から強襲してきた。
 アクセルがそこに閃光を瞬かせ、双頭蛇の体に痺れを走らせる。
 レーカが堪える間に、アクセルは素早さを活かして雲海鯨の歌を振るい、神秘の一撃を撃ち込む。
 大きく口を開いて崩れ落ちる1体に息をつくも、アクセルは戦場をしっかりと見定める。
 いつでも離脱に転じられるようにアクセルは構えるが、今は攻勢を強めて叩くべきだ。
 現に、メンバーは順調に双頭蛇を弱らせている。
 それらを抑えていたレーカは、仲間の手当てを受ける間、敵陣を呪術で捉えてなおも呪いの歌を聞かせる。
 レーカが立て続けに攻撃したことでどさりと地に墜ちる1体の双頭蛇。
 双頭蛇はいきり立って鋭い牙を突き立てようとするが、マリオンは仲間へと大きく口を開いた1体に黒い顎を食らいつかせる。
 その牙は双頭蛇の体……命すらもやすやすと噛み砕いてしまった。
 残る1体は、寛治が素早く弾丸で撃ち抜く。
 毒牙を煌めかす双頭蛇を封殺しようとした寛治だったが、頭を穿ったことでそいつは果ててしまう。
「「「…………」」」
 双頭蛇を全て倒したイレギュラーズをしっかりと見ていたアルディだが、攻撃は一切の手を抜くことない。
「どうやら、似た者同士みたいですね! 私の毒は都合の良い夢を見せるものですが……いひひ!」
 ただ、毒はリカに効かずとも、アルディの攻撃の威力はイレギュラーズが受け止め続けるには厳しい。
 ここまで回復を絶やさずに竜を抑えるリカだったが、ブレスを発して牽制してきたアルディがここぞと実力の一端を見せつける。
「私を小物と同列に扱うとは……、身の程を弁えろ」
 一気に食らいついたアルディ。刹那、リカの身体が見えなくなるほどだったが、彼女はパンドラの力で事なきを得る。
 その時、イリンキャットが動いていたが、対象の無事を察知して待機することにしていた。
 とはいえ、弱った彼女は急いで絶気昂で立て直しをはかる。
「これ以上は危険だよ!」
 アクセルもすかさず大天使の祝福をもたらす。
 澱の魔女によって、力を高めていたアクセルだ。
 素早い動きで、彼は仲間達の傷を塞ぐ。
「手負いの獣が危険なように、手負いの狩人ってやつも危険なんだぜ?」
 後方から相手に矢を射放ち続けていたミヅハは相手のブレスや毒を発した際の衝撃によって体力が削がれていた。
「ここからが『本番』だ!」
 アルディの攻撃が脅威なのはすでに仲間が実証済み。
 それでも、ミヅハは敢えて前に出て致命の矢を放つ。
 ここにきて、アルディの傷が塞がらなくなってきていたのは、ミヅハの矢によるところが小さくない。
「悪いわね、修羅場はこれでも潜ってる方だから!」
 不透明な状況ではあったが、これまでも似たような状況を乗り切ってきたイーリンだ。
 相手の動きを止めるべく、イーリンは『絶海拳・珊瑚』で素早くアルディに剣を突き付けるが……。
 相手も恐ろしく速く反撃に出て、イーリンに牙を剥くが、そこで、ミーナが身を挺した。
 間違いなく、複数の頭に噛み砕かれたとミーナは察したが、次の瞬間、体はパンドラによって修復されていた。
 イーリンの無事に安堵するミーナは、アルディを見上げて。
「そういや、多頭ってのは脳がいくつもあるのか? 一つなのか?」
「「「答える必要があるのか?」」」
 すげなく返すアルディに、ミーナは小さく笑って。
「なぁに、脳がいくつもあったなら考えるのが面倒だろ? 考えなくていいようにしてやるよ!」
 ミーナにアクセルがここでも回復支援をと、大いなる天の御使いの如く救済をもたらす。
 危険な状態のミーナを庇うように前に出るレーカがアルディの夢想を具現化させて相手自身を滅しようとすれば、寛治も死神の狙撃を叩き込み、アルディの挙動を制しようとする。
 ただ、レーカも寛治もこれだけ攻撃を重ねてもなお、アルディの攻勢はほとんど削がれていないことに気づく。
 負った傷は、塞がってはいない。
 少なからずアルディもイレギュラーズの力を感じ取ってはいるはずだ。
 さらにマリオンが飛び込み、渾身の力で魔砲を放つ。
 鱗を貫通し、アルディの身体に空いた穴。
 それでも、相手は攻撃直後のマリオンに掴みかかり、一挙に首を襲い掛からせた。
 意識を失いかけながらも、運命力で耐えきったマリオンは気丈にアルディに呼び掛ける。
「もう、止めよ!」
 勝ち筋が濃厚になったわけではないが、マリオンは何かを察して停戦を呼び掛ける。
「殺し合うだけしか選択できないなら、滅びの眷属達とどう違うのかなって思います! まる!」
「……小物と思っていたが、な」
 マリオンの真摯な訴えに、アルディはゆっくり彼女を離す。
 交戦の構えを竜が解いたことで、イレギュラーズもまた武器を収めたのだった。


 戦いが終わり、アルディはこちらの力を認めたのか人型をとって同じ目線で話しかけてくる。
 その姿に、イレギュラーズは眼を丸くしてしまう。
「私が人の姿をとれるのが意外か?」
 実際に毒を操り、毒々しい見た目をしていたアルディだ。
 だからこそ、麗しい成人女性の姿をとったのには皆が驚いたのも無理はない。
 紫の髪はすごく艶っぽく、肌は非常に瑞々しい。
 高い治癒力の為なのか、あるいは扱う毒に何かあるのか。半数が女性メンバーであるイレギュラーズにとっても気になるところだろう。
「どうした。森の先に出たいのだろう」
 アルディは袋小路となった木々の先を指し示す。
 その間は人一人が入れる程度の小道。そこから森を抜けだすことができるとアルディは話す。
 彼女に礼を告げたメンバー達はその小道へと向かう。
「森を侵した罪は償うわ」
 最後に、イリンキャットを労っていたイーリンがアルディへと詫びを入れる。
 ただ、それは今日ではないと付け加えて。
「楽しみにしてなさい」
 ウィンクするイーリンに背を向けたアルディは早く行けと手を払いのけるような仕草をしていたのだった。

成否

成功

MVP

マリオン・エイム(p3p010866)
晴夜の魔法(砲)戦士

状態異常

リカ・サキュバス(p3p001254)[重傷]
瘴気の王

あとがき

 リプレイ、公開です。

 まず、GM側、1D100のダイス目は50でした。
 プレイヤーの皆様の出目合計は29。
 このため、29+50=79で、状況は……。
3.(65~91)木々に遮られた袋小路での戦い。竜種+魔物4体
 プレイング分で増減も若干考慮していますが、判定は変わらず。
 上記の状況での交戦とさせていただきました。

 MVPはこの状況の対処と合わせ、魔物の討伐や竜への呼びかけと活躍をみせたあなたへ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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