PandoraPartyProject

シナリオ詳細

悪党共に約束の枷を

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 鉄帝の、とある寒村。
 目ぼしい物は無く、狂騒に加わることも出来ないほど、弱い村。
 早々に僅かな蓄えを野盗達に奪われ、あとは寒さの中死ぬしかなかった場所。
 逃げることの出来なかった者と、それを見捨てることの出来なかった者。
 世界から取り残されたかのような弱者しか、その村には居なかった。
 そこに、明らかに場違いなほどの食糧と物資が運び込まれていた。
「分担するのは後で良いから、とりあえず納めとけ」
 村人達に指示を出しているのは、三十代ほどの男性。
 クルィーヴという名の彼は手配師という通り名で呼ばれ、裏流通に長けている人物だ。
 野盗の強奪品を流通させたり、新時代英雄隊に強奪品を売り捌いたりしていた。
 そんな彼が村に物資を持ち込んでいるのは、今組んでいる人物が行った約束を守るためのものだ。
(さ~て、これからどうすっかね?)
 村人達に指示を出しながら、手配師が今後のことを考えていると――
 不可視の呪詛の刃が、手配師目掛け飛んで来た。
 音もないそれは、手配師に届く直前で爆発する。
 それは手配師のスキルが、不可視の刃を迎撃した証拠だ。
「うひゃっ、なんだ!?」
 怯えたような声を上げる手配師に騎士――シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)が肉薄する。
 手配師は逃げようとするが、それより早くシューヴェルトは蹴りを放つ。
 呪詛を込め飛竜すら打ち落とす蹴りは、しかし先程と同じように爆発によって阻まれた。
(あの時と同じだな)
 以前、同じように防がれたシューヴェルトだが、その時の経験を踏まえ連撃を加えようとする。
(こちらの攻撃は防がれるが、その分、手配師は魔力を消費する。いつまでも防ぎ続けることは出来まい)
 消耗戦を覚悟して、シューヴェルトは手配師を追い詰めようとする。しかし――
「勘弁してくれよ!」
 手配師は足元を爆破させ、その勢いを利用して一気に距離を取る。
 離れてしまった手配師を追い詰めようと、シューヴェルトは走り出そうとしたが――
「止まって!」
「罠です!」
 依頼人のリリスとヴァンの声に、シューヴェルトは反射的に後方に跳ぶ。
 ほぼ同時に、今まで手配師がいた場所が爆発した。
「地雷を設置して距離を取ったみたいね」
「接触箇所から魔力を流して爆弾を作る魔法の応用でしょう。掌ではなく足元から魔力を流して、地面に爆弾を作ったみたいです」
「……なるほど。なら飛行して攻撃すれば問題ないな」
「あっさり対抗手段考えつかないでくれよ!」
 引きつった声を上げながら、手配師は魔種の男の背中に隠れる。
「ジャック先生、頼みますぜ」
「キミねぇ……戦ったら強いんだから、自力でどうにかしなよ」
「いやいや、好き好んで戦う気はねぇんで」
「キミ、鉄帝の人間だよね?」
「鉄帝生まれだからって、誰も彼も戦闘狂ってわけじゃないですよ」
 手配師と魔種の男が話していると、新たに1人の男が現れる。
「ふむ。これは、どういうことかな?」
 犯罪組織の長であるモリアーティが、リリスに視線を向け問い掛けた。
「君達との約束通り、予定以上の援助を行っている最中なのだよ。それを襲うのは、約束違いではないのかね?」
 それは少し前、モリアーティ達とリリス達が取り交わした約束だ。
 新時代英雄隊の補給基地を襲う代わりに、鉄帝の村や街に支援物資を送らせる約束。
「そちらが約束を破るというなら、こちらも――」
「馬鹿言ってんじゃないわよ」
 モリアーティの言葉を遮り、リリスが言った。
「そっちがこっちの言ったこと曲解して好き勝手しようとしてるから締めに来ただけよ」
「なんのことかね?」
「とぼけんじゃないわよ。アタシは、そっちが予定してた量の二倍寄こせって言ったのよ。なに三倍以上配ってんのよ」
 それは『予想をはるかに超える量の物資を村に配っていたので殴りに来た』と言っているのに等しい。
「酷い言いようだね。量が多いのに文句を言われるのは――」
「格差を作って争いの種にする気でしょうが」
「ふむ」
 続けて、と言うように視線を向けるモリアーティにリリスは言った。
「そもそもあんたらが持って来てるの、鉄帝で略奪された物資でしょうが」
「それが一番効率が良いからね。それは、そちらも分かっていただろうに」
「だからアタシ達は、いったん買い取って必要な物資だけ行き渡る様にして、余分は他の村や街に配る予定だったのよ。それを予定以上の物量を持ちこんでくれたお蔭で、こっちは対応に大忙しよ」
「ふむ。予定外のことにも対応できたというわけだ。素晴らしい」
 パチパチと手を叩いたあとモリアーティは言った。
「どうだろう? 今後も協力し合わないかね?」
「……何が目的?」
「細かいことは、お茶でもしながら話すとしよう」
 そう言ってモリアーティは、仲間と共に村の家屋のひとつに向かう。
「どうする?」
 シューヴェルトの問い掛けに、
「悪いけど、しばらく付き合って貰える?」
 リリスは頼んだ。

 そして、粗末な小屋で一行はお茶をしている。

「相変わらずお茶の趣味は良いわね」
「好きな物には手間を掛けたい性質でね」
 香りの良いお茶を楽しんだあと、リリスは言った。
「それで、協力したいってどういう意味?」
「そのままの意味だよ」
「何でそんなもの必要としてるのよ」
「私達だけでは手が足らないからだ」
 淡々と事実を言うようにモリアーティは続ける。
「自分達だけではどうしようもないから他人の手を借りる。おかしなことでは無いだろう?」
「内容と見返りによるわね」
 即座に拒否はせずリリスは言った。
「アンタ、何をどうしようっての?」
「幾つかあるが、まずは今、ラサで起っている吸血鬼騒動に手を貸して欲しい」
「……どういうこと?」
「昔馴染みが色々と拙いことになってね。場合によっては、吸血鬼を幽閉して生涯外に出さないようにする必要がある。そういったことの手伝いを頼みたい」
「詳しく話しなさい」
「ふむ……手短に話すと、昔馴染みの男が助けたい吸血鬼の女性がいるのだが、その為には吸血鬼で無くすのが一番だ。だが、それは叶わない可能性が高い。なので次善の手段として、殺されないように保護する必要がある。それを君達に任せたい」
「それ、アンタがしたら?」
「難しいね。昔馴染みの男は私を頼りはしたが、信用はしてないんだ。助けたい女性を任せてくれといっても、信じてくれないだろうね」
「……どういう仲してるのよ」
「仲は良いよ。信用されて無いだけで」
「……そういうの仲が好いとは言わないのよ……それで、協力したいことはそれだけ?」
「あとふたつあるよ」
「ふたつね……説明しなさいな。聞くだけ聞くから」
「ではひとつめ。君達はウォーカーだが、元の世界に戻るため、異世界転移ができる方法を探しているそうだね」
「……よく調べてるわね」
「それぐらいはね。と、話を戻すが、私もそれに一枚噛みたい。理由は、私も元の世界に戻りたいからだ。彼を連れてね」
 指し示すように、背後にいる魔種の男に視線を向けるモリアーティ。
「理由は、この世界の滅びの因子である魔種を持ち込むことで、元の世界を終わらせる要因になるかもしれないと期待しているからだ」
「……アホなの?」
「否定はしないよ」
 平然と応えるモリアーティ。
「いかんせんこれは、本能みたいなものだからね。どこに居ようが、世界を終わらせたいという欲求は消えないんだ」
「……それ、この世界でもそうよね? でも元の世界に戻りたいっていうことは、この世界を終わらせることは諦めたってこと?」
「いや、違うよ。単に、この世界で私が出来ることは終わらせたから、次にしたいことに移っただけだ」
「……どういうこと?」
 頭痛を堪えるような表情で尋ねるリリスにモリアーティは応えた。
「世界を終わらせると言っても、生憎と私は、冠位魔種のような超越的な能力をこの世界では持ち得ない。所詮は、十把一絡で終わるその他大勢。コストの低い悪役の1人でしかない。だが、それも悪いことじゃないよ。低コストで済むということは、代役を作り易いということだからね」
「……あぁ、やっぱそういうこと」
 げんなりとリリスは言った。
「ちょろちょろと目立つように動いてるからおかしいと思ったら……アンタ、自分が殺されても問題ないよう後継者を複数用意してるってことね」
「後継者では無く、システムだがね。そのために細胞モデルを模した作りにしている。増殖し分裂し、必要であれば接続する。すでに私の手を離れ自立しているから、私は殺された所で問題ない」
「……一応聞いときたいんだけど、今この場でアンタを殺したら、どうなるの?」
「私の遺産が、それぞれの組織に渡る様になっている。私が欠けた分は、それで埋まるだろうね」
「……ほんっっとに、性質悪いわね……それで、最低限のことは終わらせたから、他のことしようとしてるってわけね」
「ああ。元の世界に戻るために異世界転移の手段を探す、あるいは創り出すことよりも、この世界に私の分身となる何かを作り出す方が確実性は高い。それが終ったので、次にしたいことに取り掛かるというわけだ」
「……あっそ。で、一つ目は分かったけど、ふたつ目は何?」
「この世界の運命を終わらせたい。なので、冠位魔種が関わる騒動には積極的に協力したい」
「……詳しく説明しなさい」
「そんなに複雑なことじゃないよ。まずこの世界には『運命』が実在する。ここまではいいね?」
「そうね。だからそれに対抗するために『イレギュラーズ』がいるわけよね」
「ああ、そうだ。そして運命というものは、あらゆる事象を最終的に『運命』に関連する事柄に収束させる。つまり、なにをどう動こうが、最後は運命通りにしか進まなくなるというわけだ」
「そうね……つまりこういうこと? この世界で自由に動こうとしても最後には運命に絡め取られるから、自由に動けるように運命を消してしまいたい、と」
「そういうことだよ。冠位魔種は恐らく運命に関連するパーツのひとつだろうから、運命を消すために居なくなってほしい。そのための協力をしたいということさ」
「……言いたいことは分かったわ。それで、こっちのメリットは何?」
「純粋に、協力することによるお互いの利益の確保になるんだが……これだけだと足らないというのなら、君達と約束を交わし守ると誓おう」
「それを信じろっての?」
「疑うかね?」
「……アタシは疑ってないわよ。あんたらみたいなのは、善悪とか他人の決めたルールは無視するでしょうけど、自分で自分に課したルールは破らない。ただ、破る時は破るわよね?」
「そうだね。たとえば私は『約束を破ることで世界を終わらせることに繋がる』という約束なら破るよ。それに、約束に穴があれば、必要があればそこを突くつもりだ」
「でしょうね……まぁいいわ。ならアタシ個人と、まずは約束して貰うわ」
「内容は?」
「アタシ達と敵対する時は、戦える者だけ狙いなさい」
「それで良いのかね?」
「良いわよ。どうせあんた調べてるんでしょうけど、うちは身寄りのない子とか、戦えない子も多く抱えてるから。あんた、仮にアタシ達と敵対するとして、そもそもが戦わないでしょ」
「その方が効率が良いからね。『勝ってから戦う』状態でないなら、まずは弱らせるために嫌がらせをするよ。だが、それはしないと約束しよう。これで良いかね?」
「アタシは、ね。他にも約束しなきゃいけない相手がいるでしょ、アンタ達は」
「イレギュラーズかね?」
「そうよ。あんたら、必要があればイレギュラーズの子達とも手を組みたいんでしょ? だったら、そっちとも約束するのが筋じゃない」
「否定はしないよ。だが、約束をしようという者が出るかね?」
「そういう場を作るわよ。この村もそうだけど、他にも物資持っていく村や街は残ってるでしょ? そこにイレギュラーズの子が来て貰えるように、ローレットに依頼を出すわ」
「誰も来なければ?」
「その時は、アタシ達とあんたらだけの約束で終わるだけよ。そうなったら、アンタらと協力するのが難しくなるでしょうけど、諦めなさいな」
「ふむ。承知したよ」
 ひとまず話にけりがついた所で、リリスは同席しているシューヴェルトに言った。
「というわけで、こいつらと協力する代わりに、約束させて行動を縛ろうと思うの。気が向いたら力を貸してくれる?」
「……考えておく」
 油断なく手配師達を警戒しながら、シューヴェルトは静かに応えた。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
今回は、アフターアクションを元にしたシナリオになっています。

以下が詳細になります。

●成功条件
 荒廃した村の物資配給を手伝い、可能なら悪党NPCに約束を結ばせる。

●状況
 鉄帝の、とある荒廃した村が舞台となります。
 そこに悪党NPCが物資を持って来ているので、村に配給してください。
 悪党NPCは配下を連れて配給しています。
 悪党NPCと話し約束するのも可能ですし、無視するのも可能です。
 基本は、村の復興手伝い。それにプラスして、悪党共に約束させる状況です。

●舞台
 鉄帝の、とある荒廃した村。
 直近の鉄帝の騒動の影響で荒れ果てている。
 略奪などもされて村人の人心も荒れてます。

●NPC

 村人 
 直近の鉄帝の騒動の影響で荒んでいます。
 物をくれるなら貰うというスタンスですが、感謝したりする余裕はありません。

 リリス&ヴァン
 依頼人です。複数人員を連れて村に訪れています。
 村に補給される物資は他所からの略奪品であるため、物品の確認などを行っています。
 物資をいったん買い取り、必要な分量だけ村に残し、余分は他の村や街に分配する予定。
 物資の格差による争いを予見しており、それが起らない様に立ち回ろうとしています。
 PC達が必要な物を頼めば、可能な限り用意してくれます。

 悪党ども
 約束を結ばせる相手になります。

 モリアーティ
 リリス達との取引で村に物資を持って来た一団のリーダー格。
 大量の物資を持ち込むことにより格差を作り、それにより騒動が起これば関与するつもりだった。
 直近で、昔馴染みが拙いことになり、助けるのに自分だけでは無理と判断し助力を願い出た。

 手配師 
 本名、クルィーヴ。裏流通にたけた人物。
 色々と都合が良いのでモリアーティと行動している。
 とはいえ割と気が合うので、今後もモリアーティと共に行動しようかと思っている。
 モリアーティは「世界を終わらせたい」とか言ったりするが、その度に
 与太話言ってんな、このオッサン。ぐらいに思っている。
 鉄帝の騒動で、野盗などに武器の都合をつけたり、新時代英雄隊の物資をちょろまかしたり
 色々とやっていたが、鉄帝の騒動が収まりそうなので手を引く予定。
 物が動くことで、人や状況が動くのを見るのが好き、という性格をしている。

 ジャック
 魔種の男。元幻想の、とある地方領主。
 元々は親族の言われるがままに領地経営を真面目にこなしてきたが
 それを尻目に好き勝手する親族や領民に嫌気が差していた頃にモリアーティ達と出会った。
 現在はエンジョイ系。楽しければ良いや、というスタンスで生きている。
 現状、モリアーティと共に動いていて楽しいので一緒に行動している。
 楽しくなくなったら好きに離れても良いし、殺しに来ても良いとモリアーティと約束している。

 上記の三人の誰か、あるいは全員と約束を結ばせることが出来ます。
 約束に穴があったりすると、そこを突こうとしたり、曲解できる内容ならする可能性はありますが
 基本は、結んだ約束は守ります。
 例外は、自分も死ぬ前提で、それでも実現したいことがあれば
 破る可能性はありますが、現状その可能性はありません。
 今回約束をさせることが出来れば、それに従った制約で行動します。
 当然悪党共にとってはリスクのあることなので、約束の内容によっては断ってきます。
 多少のリスクは飲むでしょうが、リスクが大きい割にリターンが少ないなどの判断をした場合は
 約束を結びません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 説明は以上になります。
 それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • 悪党共に約束の枷を完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年04月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
三國・誠司(p3p008563)
一般人
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
ファニー(p3p010255)
夢野 幸潮(p3p010573)
敗れた幻想の担い手
灰燼 火群(p3p010778)
歩く禍焔

リプレイ

 現地に訪れた『剣閃飛鳥』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は、顔なじみの依頼人に親しげに声を掛けた。
「リリィにヴァン! 久しぶり! 元気にしてた?」
「元気よ!」
「お久しぶりです」
 再会を喜ぶリリス達に、ミルヴィは続ける。
「なんかめんどくさい事になってるらしーね?」
「ええ。それでさっそくで悪いんだけど、力を貸してくれる?」
「もちろん。任せて!」
 ミルヴィは笑顔で応え、仲間も応じてくれた。

 まずは何より困窮する村を援助する。

「手配し易いように仕分けしたいんだが、物資はアレで全部か?」
 早速動いてくれたのは、『歩く禍焔』灰燼 火群(p3p010778)。
「体質的に燃えやすい物は取り扱いに注意したいから教えてくれ」
 これにリリスは、物資リストを渡し説明してくれた。
「量も質も申し分ないな」
 仕分けを始める火群に、『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)が声を掛ける。
「ロバちゃん連れて来てるから、運ぶのは任せて」
 馬車のお蔭で手配はスムーズに進みそうだ。
(物資配給を効率的に行えば村の人達も助かるだろうし、話す時間を長く取れそうだから手早くしないとね)
 手伝ってくれるヴェルーリアに応えるように、火群はテキパキ馬車に乗せていく。
「まずは食料を載せたけど、必要な人は?」
 火群の呼び掛けに、『闇之雲』武器商人(p3p001107)が応えた。
「では、我(アタシ)が役立てるとしよう。炊き出しをしたいから――」
 必要な物を伝え、火群が仕分けし、ヴェルーリアが配送してくれる。
 同じように皆は要望を告げ、援助を開始した。

「お代りは自由だ。だが一度に食べ過ぎなくても良い。心配しなくても、余るほど持って来ている」
 殺伐とした村人を落ち着かせるように、武器商人は炊き出しに集まった人々に声を掛ける。
 奪うように炊き出しを持っていく者もいたが、武器商人は笑顔を崩さない。
(人間って衣食住が揃っていないと簡単に荒むからねぇ)
 道理だ。だからこそ――
(温かいものを食べてまずは落ち着いてもらわねばね)
 炊き込みご飯のおにぎりや味噌汁を配っていく。
 それは強張った心を、ほっと一息つかせてくれた。
 一息つけば、色々な物を食べたくなる。
 それを満たすように、『先導者たらん』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)も炊き出しをしていた。
「数は十分にある。多少日持ちもするから、あとで食べても良い」
 持って来ていた砂国産物も広げながら、集まった人々に配っていく。それだけでなく――
「皆が食べ易いようテーブルを設置してくれ」
 リリスやモリアーティが連れて来た人員に指示を出し、効率的に動いて貰う。
 お蔭で村人に十分な炊き出しが行き渡り、表情が柔らかくなる。
 心に余裕が出て来たのだろう。村人の中には礼を告げる者も出て来た。
「……ありが、とう」
「気にしなくて良い」
 返しながらシューヴェルトは思う。
(長かった鉄帝での動乱も、ついに終わったなのだな)
 感慨深い。それに――
(手配師たちとの戦いも、ここで手打ちか)
 視線を一瞬向けたあと、思う。
(また騒ぎを起こされても敵わないから、ここで足枷として約束を取り付けるとしよう。だがそちらに集中するためにも――)
 村の援助は十二分に行う必要がある。
「部屋が暖かくなるようにしよう」
 武器商人が提案する。
「北国の人間ってのは『部屋が寒い』ことに耐えられない人種だからね。断熱性を高めて室内をなるべく暖かく過ごせるようにしよう」
 これに皆は応じ、テキパキ動く。
「これとこれ……あとは、板材がこれだけあれば良いか?」
「これだけあれば十分だよ」
 資材を仕分けしてくれた火群に、ヴェルーリアは応え馬車に載せていく。
 そこに村人が数人集まって来た。
「……わしらも、手伝う」
 どこか警戒するように声を掛けて来る村人に、ヴェルーリアは笑顔を浮かべ明るい声で応えた。
「ありがとう!」
 僅かに目を逸らす村人。
「……礼を言うのは……」
 警戒はしたまま、けれど小さな声で礼を言う村人。これに火群は胸中で呟く。
(お礼とかは要らないよ、というか求めたらこういうのはダメなんだけど……)
 火群は思う。
(お礼を返す余裕があるかって言われたらそれは絶対に違うし、余裕がない人に強要する程は狭くないつもりだよ、俺は。正直俺の地元が『恵まれてた』んだな、って痛感するくらいには、そう思うし)
 村人は痩せ衰え、争乱で心が痛めつけられているのが見ていて分かるほどだ。
 村の住居を、皆は補修、あるいは補強していく。そんな中――
「これ、あっち、もってくの?」
 よろよろと板を持った子供達に、『一般人』三國・誠司(p3p008563)は声を掛けられた。
「ありがとう。持って来てくれたの?」
「……うん」
 ひょいっと板を受け取った誠司が声を返すと、ガリガリに痩せている子供達は小さく頷いた。
(休んでて良いよ、っていうのも、違うかな?)
 子供達と遊んであげるつもりで一緒に家々を回っていく。
 中には盗賊に打ち壊された家さえあった。
(しっかしまぁ、偉い所にでくわしちゃったなぁ)
 村の様子を改めて見渡し、誠司は思う。
(ミルヴィに呼ばれて来た以上手伝いはするけれど……さてどうしたものかね)
 恋人であるミルヴィに合わせ訪れた誠司は、この先どうするか考える。
(個人的には特段約束を取り付けるつもりはないんだが、気になることはある……とはいえその前に、村の復興に手を貸さないと)
 家と村の周りの柵といった、目に見えて安心を与えられるものを重点的に修理しながら荒れ果てた村を整えていった。
 お蔭で村は見違えたようになる。
 村人達の表情には安堵と、未来に対する期待が僅かに浮かんでいた。それを寿ぐように――
「村の復興を記念してお祝いしよう!」
 ミルヴィが踊りを披露する。
 ファミリアーのねずみに誘導され集まった村人は、明日へと命を繋ぐことが出来る喜びを実感しながら、ミルヴィの舞踏にリズムを合わせるように手を叩き共に喜んだ。そして――
「ありがとうございます」
 村長が代表して皆に礼を言う。
 それは損得勘定もあったかもしれないが、心から自然に零れた物のようにも感じられた。
 村の援助は一先ずではあるが完了。あとは――
「では、約束を取り決めよう」
 モリアーティ達悪党との約束をするのみだった。

●悪党に約束の枷を
「立会人として見届けさせて貰う。それでいいね?」
「構わないよ」
 リーディングを使い真偽を見極めようとする誠司にモリアーティは承諾する。
 他イレギュラーズもリーディングを使い、付け入る隙を排除しながら話を進めていった。
「腹の探り合いをする意味もないから本題から入るよ」
 ヴェルーリアが進行を務めるように話を切り出す。
「まず、『ローレットに討伐依頼が持ち込まれるレベルの企てに関わることの制限』を約束したい」
 淀みなくヴェルーリアは話す。
 事前に皆と話し基本的な内容はまとめているので迷いはない。
「そちらの本気度が分からないから定期的に調べもするし、破ったなら討伐する。それで良い?」
「承諾した。誓うのではなく、約束しよう」
 認めるモリアーティ。他の2人も同意しているようだ。
(嘘じゃ、ないね)
 仲間が見極めてくれている。間違いないだろう。
(律儀な感じ)
 モリアーティ達を観察しながらヴェルーリアは思う。
(嘘もつくし約束の穴を突くと教えてくれるのは優しい気もするし……このままなら行けるかな?)
 状況を見極めているとモリアーティが口を開く。
「他の君達も同じかな?」
 これにシューヴェルトが返す。
「僕も同意だ。それに合わせ、守るならばこちらとしても協力することを約束する。それとは別に、個人的な事として――」
 手配師に視線を向け言った。
「奇襲を仕掛けたことへの謝罪として、今後何かあった際に幻想貴族であるシェヴァリエ家の僕、シューヴェルト・シェヴァリエの名前を使っても構わない。そして、その名前を使った時には僕が駆けつけて何かしらを手伝えればと思っている」
「へぇ……本気かい? 騎士の旦那」
「本気だ」
「じゃあ、謝るのは無しだ」
 本気に本気で返すというように手配師は応えた。
「言っとくが俺は、鉄帝でやった事は謝らねぇ。何しろ法を破ったわけじゃねぇ。あの時はアレが法だった。否定するんなら、鉄帝の法や根本的な嗜好を変えるしかねぇ。出来ないならあれは合法だ、とやかく言われる筋合いはねぇ。だが――」
 渇望を示すように続ける。
「もし鉄帝が変わったなら、そんときゃ謝るさ。他の国でも良い、代わる所が見れたなら礼もする。だからそれまでは謝るな、騎士の旦那」
 そこまで言うとへらへらと笑う。
「それはそれとしてお互い利用し合いやしょうぜ、騎士の旦那」
 揉み手をしそうな手配師に、
「……分かった」
 苦笑を飲み込むようにシューヴェルトは返した。
 約束は進む。
「他に、何かないかね?」
 モリアーティの呼び掛けに、『愚者』ファニー(p3p010255)が応えた。
「よう、オレのことを覚えているかい?」
 そう言って服をめくり上げ烙印を見せる。
「これはおまえの言う昔馴染み……バレルに”付けさせた”ものだ」
「どうやったのかね?」
「本気でカーラを助けたいと思うなら烙印を寄越せ、と言って”付けさせた”」
「なるほど」
「そういう意味では、オレはアンタよりバレルに信用されてると思うぜ」
「……」
 見詰めるモリアーティにファニーは続ける。
「で、そういうわけだから、カーラが元に戻らなかった場合に殺されないように保護することは約束しよう。できる限りバレルも殺されないようにはするつもりだ。できる限り、ではあるが」
「信用しよう。私が君を、ではなく、バレルが信用した君を信用する」
「それでいい。だがそのためにはアンタにも派手な動きをされたら困る。オレたちがグルだと知れたらオレたちもローレットから監視されるかも知れないし、バレルたちだって上層部のやつらに嗅ぎ付けられる可能性があるしな。そういやアンタは、王宮に侵入して色々と調べたいんだったな?」
「ああ」
「ならばなおのこと、今後派手な動きを見せず、吸血鬼関連の依頼をローレットに出し続け、いざ王宮へ侵入することが可能になったらおまえらまとめてイレギュラーズに手を貸せ。もちろん、自分の命を優先にしていい。そのうえで、協力できることは協力してくれ」
「その条件なら、私も守ると約束しよう。他にはないかね?」
「オレが取り付けたい約束は、それくらいだ。でも、約束したいのは俺だけじゃない」
 仲間が約束を取り付けやすいよう繋げるファニーに、続けるようにして武器商人が口を開いた。
「紅血晶の取扱を禁止して貰う。ラサでの活動が確認できている以上、商人ギルドの長としてはこれを約束させないわけにはいかないからね」
 同意するようにミルヴィも言った。
「私も賛成。紅血晶は取り扱わないで。でもその代り、対価としてラサへの便宜をアタシの領地経由でしてあげる」
「ならば、我(アタシ)も一枚噛ませて貰う。手配師の調達の手腕は評価できるものと思っているからね」
 手配師に視線を向け言った。
「何か面白い品を売りたい時や欲しい品がある時は相談に乗ろう。欲望の殿堂、サヨナキドリがお相手しよう」
「ひひっ、そいつはありがてぇ」
「ならいっそのこと、ラサと鉄帝を繋げる交易会社を立ち上げて」
 ミルヴィが提案すると、
「そいつはこれまた……目まぐるしく変わる所を見れるかもしれねぇし、いいぜ。お互い利用し合いましょうや、2人とも」
 隙あらば喰いついて来そうな視線を向けながら手配師は約束した。
「良いんじゃねぇか」
 手配師の言葉に、火群が相槌を打つように言った。
「紅血晶の取扱いって、言ってみりゃ転売みたいなもんだろ? 意図的にやると余計にシメられたりするし、欲しいってのより山で持ってきたら今みたいな状況だとグーパンものでしょ。そうやって殴られるのが趣味なら知らないが」
「そんな趣味は無いよ」
 応えを返したジャックに、火群は約束を取り付ける。
「あ、そうそう、お兄さん。『一番面白くない話』はした方が良いかな」
「なんだい?」
「基本的に魔種ってバレると良い顔されないんだよね。今みたいに問題にならない場合は良いんだけど。『魔種』として討伐しろって言われたらこっちもそういう仕事をしなきゃいけないんだよね。だから『可能な限りは魔種という正体は隠して貰える』と面倒事は少しは減るんじゃないかなぁ」
「バレないようにね……それなら能力に制限を掛けて気付かれないようにする必要があるけど……」
 どこか楽しげに思案したあとジャックは応えた。
「迷う苦痛じゃなく、迷える楽しみがある。良いよ、約束しよう。それで、他には無いかな?」
 これにヴェルーリアとミルヴィが返した。
「決裂しない限り基本的に三人で行動することを約束して欲しい」
「アタシも賛成。それに加えて――」
 モリアーティに視線を向けミルヴィは言った。
「アンタは今後リリスとヴァン達と同行しなさい。所在がわかんないと探るしかなくなっちゃうよ?」
「協力的であれということだね。良いよ、約束しよう」
 呆れたように返すリリス。
「思いっきり利用する気でしょ、アンタ」
「そちらと同じようにね」
 リリスに返したモリアーティは続ける。
「他に約束は無いかね? 気になることでも良いが」
「なら聞きたいことがある」
 誠司が言った。
「元の世界に戻るために一枚噛む以上、帰還方法について情報を渡すことも約束に含まれるのか知りたい。あと、僕の世界にそんなの持ってこられても困る」
 ジャックに視線を向ける誠司。
 元の世界への帰還を口にする誠司に、ミルヴィは寂しげな視線を向けたあと言った。
「カオスシードが他世界に行ける可能性があるか教えて」
「どういうことかね?」
「だってアタシは彼についていきたい」
 誠司を示し、モリアーティに言った。
「だからその為の準備はしてるしするつもり」
(心配な人も見守りたい人もいる。また大切な人に置いて行かれるのは嫌)
 これにモリアーティは応える。
「帰還方法についての情報は欲しいね。だが無理強いはしない。他からも得るつもりだからね。カオスシードが他世界に行ける可能性ついてだが、それも想定して探っていくつもりだ。でないとジャックを連れていけない。ああ、彼を君の世界に連れて行こうとは思わないよ。ジャックはひとりしかいないからね。とはいえ、これらが実現するかは――」
「エンディングを迎えるまでは無理だよ」
 狂言回しのように『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)が口を開く。
「やうやう私でござい」
 視線を集め続ける。
「まぁとりあえずは……初めましての挨拶を。これを"見る"汝とは久方であるがこれを"聞く"汝とは初顔合わせなのでな。ってーか私が普通のキャラと話すのがレアすぎるんだわ」
「ふむ……君はワールドトーカー、語り部の類かね?」
「どちらかといえば書き手だわ。んでよ。超絶短絡要約するとやるべきことが終わったので元の舞台に帰りたいと。ふむぅん……と考えてはみるが、さ」
「なにかね?」
「メタ発言、つまりいつも通り第四の壁を超えて話しちまうが。それは、今の世界の時間軸では『不可能』よ。何故ならば"今"は数多の物語より集いし英雄どもが死力を尽くして争うシーンで。元の物語との関係性は、この世界に来た時点で殆ど途切れてしまっているからな」
「物語ね。R.O.Oがあるからゲームの類かと思っていたよ」
「ゲームも物語さね。それはさておき、逆に言えば、今のシーンを終わらせれば『エンディング』として帰還の機会を得ることもできるかもしれん。この世界の私は書き手ではないから確約はできんがな」
「運命の書き手かね?」
「はてさて。それより上位の観測者。読者か書き手か作り手か」
「誰にせよ、完全自由は出来まいが。まぁそれはいいよ。それで?」
「だからまぁ………私が提示するのはこう言う条件。シンプルで、手軽な。それでいて超単純なもの」
 注目を引くように間を開け告げた。
「『悪を束ねて管理してくれ』」
「ふむ」
「……我が認識で言うのであれば反社組織に対して即制裁を加えるのではなくある程度監視を置いて黙認する、そんな形だ」
「君の認識ねぇ」
「束ねるといっても簡単だぞ、いくら悪でもメンバーやアイテムの管理はやるだろう。そういった組織情報を自由に見せてもらえるだけでいい。『閲覧できる』というフレーバーに意味があるからさ」
「つまり」
「汝にもこの世界の書き手が想定している終わり方に協力して欲しいのさ。あんじょうよろしゅう」
「やれやれだ」
 降参したというようにモリアーティは言った。
「想定する一番痛い『約束』だよ。これに繋げる前に他の約束をしていなければ断ることも出来たが……ここまで『読んで』いたのかね?」
「まさか。皆で物語を紡いだだけさ。汝も含めて」
「なるほど……承知した。他人はともかく自分は裏切れない。『約束』しよう」
「……いやお前ら、与太話言ってんな」
 突っ込みを入れる手配師の物言いに、
「否定はしないよ。それはそれとして、『約束』を結ぼう。お互いを利用し合うために」
 イレギュラーズと悪党達は、『約束』を結び合うのだった。

成否

大成功

MVP

フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
皆さまの労力のお蔭で、鉄帝の村のひとつが救われました。
村人は殺伐としていましたが、余裕を得たことで変わっていくでしょう。

そして悪党共との約束、お見事でした!
場合によっては、約束の穴を突こうとしていた悪党共でしたが、逃げ道を封じられたので守ることに考えをシフトしたようです。
この先、色々と協力することになるでしょう。

それでは最後に重ねまして、御参加ありがとうございました!

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