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シナリオ詳細

早めの秋だぜ、ロケットサンマ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●早めの秋だぜ、ロケットサンマ!
 サンマを食べると足が速くなるという噂を聞いたことはあるか。
「それはなぜかというと、サンマは足が早――」
「サンマアアアアアアアアアアアアア!」
「へぶっし!?」
 どや顔で語っていたおっさんがサンマにはねられた。
 鼻血をふいて回転しながら海へ落ちていくおっさん。
 色鮮やかな石畳を踏んで猛烈に走って行くサンマ。
 全長1メートルくらいのサンマにおっさんの足が生えたような、海洋の港町に現われる陸上魚類。通称ロケットサンマである。
 その光景を二階の窓からみていたご婦人は、洗濯物を干しながら呟いた。
「もう秋ねえ」

 炭火をしいた七輪を、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はうちわでぱたぱたやっていた。
 もうそろそろいいかなというタイミングで、さばいたサンマをのせる。
 ぱちぱちと炙られるサンマの皮と肉が、ほのかに香ばしい煙を広げていった。
 その光景をほっこり眺めていたユリーカが、ぽつぽつと語り始める。
「そろそろお店にサンマが並ぶ時期なのです。幻想でもあちこあちで見かけるようになって、まだ高いのについつい買っちゃうのです。特に海鮮料理が有名な海洋の港町に来たら、買わないわけにいかないのです……」
 ふと見上げてみれば、色鮮やかな天幕が並ぶ商店街。芸術的に手すりのさきには海が広がり、あちこちをネコが歩いている。
 ここが幻想の町ではなく海洋のある港町であることが、色と空気で分かるだろう。
「海洋には、夏から秋のさかいめにかけて一部のお魚が上陸してくるのです」
 お魚が上陸するという時点でピンとこないが、魚に足がにょきっとはえてよっこいしょと浜を歩いてくるのをそのまま想像していただいてかまわない。
 なんなら海からゆっくりと徒歩であがってくるサンマの群れを想像して頂いてもOKだ。
「こういうのをアガリサンマと言って、中でも特に足が速くテンションの高いやつを『ロケットサンマ』と呼ぶのです。海洋でも捕まえるのが難しくて、高く取引されるのです」
 きりり、と顔をあげるユリーカ。
「そのロケットサンマを見かけたら倒して捕まえてくれっていうのが、今回の依頼なのです。ですが見かけることも少な――」
「サンマアアアアアアアアアア!」
 ユリーカとイレギュラーズたちの間をロケットサンマが駆け抜けていった。
 踏み砕かれる七輪。舞い散る焼きサンマ。ごはんがーと絶叫するユリーカ。
「ロケットサンマだ!」
「つかまえろー!」
 イレギュラーズは、走り出す。

GMコメント

【これまでのあらすじ】
 ロケットサンマを見つけたら捕まえてねと海洋の漁業組合から依頼されたローレット・イレギュラーズ。
 ひょんなことから目の前を数匹のロケットサンマが突っ切っていくのを見かけレッツハンティング!

【ハンティングのようす】
 皆さんは見かけたロケットサンマを全力で追いかけています。
 ロケットサンマは防御や回避や抵抗がペラペラなかわりに機動力が冗談みたいに高いという性質をもっていて、おいつくのがめちゃくちゃ大変です。
 罠、BS、先回り。あらゆる手段を使ってロケットサンマを捕まえましょう。
 尚、機動力が8あると併走が可能です。それ以上あるなら追い抜くこともできます。そんな人いないとは思うけど。
 数は割と沢山おり、一匹捕まえたらまたもう一匹遭遇するつもりでプレイングを書いて置いてください(町中を捜索するプレイングが余計になるので書かなくても自動成功扱いとします)

【あとのお楽しみ】
 もし何匹も捕まえることができたなら、オマケで一匹くらい食べさせてくれます。一匹で軽く8人前くらいあるので、サンマパーティーをしましょう。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 早めの秋だぜ、ロケットサンマ!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月03日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
あたしの夢を連れて行ってね
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)
悪食の魔女
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド

リプレイ

●秋はサンマの季節
 絶叫するユリーカを背に走り出すイレギュラーズ。
 それをひとり見送って、のんびり歩き出す『水底にて罰を待つ』十夜 縁(p3p000099)。
「賑やかだと思ったら、もうそんな時期だったか。あいつら速過ぎて中々捕まらねぇからなぁ……そういや、うちが贔屓にしてる魚屋の旦那も仕入れたがってたな。せめて一匹くらいは店先に並ぶよう気張るとしようかね」
 一方で『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)たちは全速力でロケットサンマを追いかけていた。
 坂道を吹き上がる潮風を追い越して、太陽を背に走る。
 ドーナツ屋の甘い香りもコロッケ屋台の香りもネコの集会も飛び越えて、ロケットサンマとのチェイスが始まっていた。
「今年もサンマの季節! わたしは海の中でしか見たことないのですが……あれ、むっちゃ速く走れるのね。」
 はやくも足がつらい『くれなゐにそらくくるねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)。
「あれは、おさかな……おさかな? 私、これでも一応ねこなのです。鮮魚は好きなのです。全力でアレをひっ捕らえて、お弁当にしてもらうのです!」
「けどこのままじゃ追いつけないから――」
 待ち伏せ戦法でいきましょうとジェスチャーするココロ。
 クーアがダブルサムズアップで応えた。
 途中の路地で分かれる二人。
 同じく追いかけていた仲間たちがそれぞれ役割分担をジェスチャーで決め始める。
「この世界のサンマは、とても活きが良いのですね。……良すぎますけど」
 担いでいた金属製キャリーバッグを指さし、次に銃で撃つジェスチャーをしてから別の路地でカーブしていく『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)。
 頷いてから、『白き渡鳥』Lumilia=Sherwood(p3p000381)が更に速度を上げた。
「……うーんなんだか私の思っていたのとは全く別物な気がします。アレ。秋の味覚? なんですか? ともあれ、海のものはなかなか機会なかったですから、楽しみです。サンマは初めてですし、しっかり捕まえて、お仕事の帰りに食べていくことにしましょう」
 走りながらガッツポーズをとる『妖精使い』エリーナ(p3p005250)。
「はいっ! 二足歩行する魚なんで初めて見ましたけど……え、魚でいいんですよね?」
「いいんです、きっと」
「いいんですね!」
「混沌のサンマは足が生えてる上に走るのだな、うーむ……」
 『辻ヒーラー』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が路上の木箱に飛び乗り、パルクール的機動で商店の屋根へよじのぼっていく。
「混沌では常識に囚われてはいけないとはよく聞くがまさかこういうことなのだろうか? まぁ、何はともあれ折角の依頼だ。頑張れば私達にもサンマをくれるそうだし気を引き締めるとしよう」
 『自分は別方向から行く。そっちは頼んだ』のジェスチャーをするゲオルグに応えて、『悪食の魔女』シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)が眼鏡の端を中指で押した。
「もうロケットサンマの時期なんですね。目指すは大漁!食卓に美味しいサンマを届けましょう! あ、今回の群れにいるかは分かりませんが、
ヒレが黄金色に輝く個体がいたら、迂闊に手を出さないでくださいね。それは『ロケットサンマ・シュナイダー』という種類で、ロケットサンマの中でも特に切れ味抜群な個体なんです」
「ははは、そんなのいるわけないでしょう」
「ほんとなんですからー!」
 わいわいやりながらも、イレギュラーズたちの即席追い込み漁が始まった。
 目指すは大漁。ロケットサンマ。

●サンマは気合いで捕る
「うおー! まちなさーい! 大人しく七輪で焼かれなさーい!」
 七輪を頭上に掲げて猛ダッシュするクーア。
 手袋で焼き炭を取り出しては投げ取り出しては投げ。魚にとって処刑台に等しい七輪に恐れを成したのか、サンマは(サイズ的に絶対乗らないはずなのに)慌てて逃走速度を引き上げた。
「この先のルートくらいは聞けるはず。おしえて精霊さん!」
 虚空に呼びかけるクーアに、なんか精霊げなものが見えた。
 あえて言語翻訳してみる。
『私は海の精霊。ロケットサンマは担当外になりますので陸の窓口まで』
『私は陸の精霊。魚介類は担当外になりますので食の窓口まで』
『私は食の精霊。生きてるままの魚はあまり食べないほうがいい。行き先? サンマにでも聞けば?』
『私はサンマの精霊。20メートル先右折、そのまましばらく道なりです』
「ありがと精れ――なんです今の!?」
 うにゃーとか言いながら七輪ごと投げつけると、サンマが慌てて右折。細い路地へと入っていく。
 それを待ち構えていたのは十夜だった。
 ハンドポケットで振り返ると、暴れ馬のごとく突っ込んでくるロケットサンマに短く身構えた。
 するとどうだろうか。
 十夜を突き飛ばして進もうとしていたロケットサンマがバナナの皮でも踏んだみたいに縦回転し、激しく地面に頭(?)を激突させたではないか。
「お前さん、サンマは好きかい? なら、ちっとの間離れていてくれや。そうすりゃ、今夜の食卓には旨いサンマが並ぶだろうからよ」
 十夜はたまたま通りかかった主婦にそう告げると、倒れたサンマにとどめの拳を叩き込んだ。

「鮮度を保つなら……フロスト・ボルト!」
 走るロケットサンマに遠術の魔法をしかけてから、シズカは追いかける速度を上げた。
 直線で追うばかりではない。
 裏路地のビールケースを飛び越え先回りすると、立ち塞がるようにロケットサンマの前へ飛び出す。
「ごめんなさーい! サンマが通りまーす!」
 言いながら至近距離でのフロスト・ボルト。
 ロケットサンマは正面からの直撃をさけるべく僅かなカーブをかけ、裏路地の壁に頬をこすりながら駆け抜けていく。
 飛び散る火花。
 ぎょろりと動く目。
 シズカとロケットサンマがすれ違い、『どうだい俺は早いだろう? お前になんかつかまらないぜ』という目をしたかしないかというタイミングで――。
「今です、ネリー!」
 エリーナの声。雨水排水溝に潜んでいた妖精ネリーが飛び出し、ロケットサンマに妖精パンチを叩き込んだ。
 見事に顎をとらえたおかげで派手に転倒。ロケットサンマは地面をずさーっと滑っていった。
 かがむ姿勢でそれをキャッチするエリーナ。
 妖精剣を振り上げると、起き上がろうとするサンマの脇腹(?)に深々と突き立てた。
「一丁あがり……です!」

 サンマ追い込み漁はあちこちに散っていた。
 広い場所に出ちゃえばこっちのもんだとばかりにロケットサンマが港町大通りを突っ走る。
 馬車をよけた町の人々が『もうそんな季節かー』と平和に微笑む中、Lumiliaは露天の間から飛び出してマジックロープを発射した。
 魔術の縄がロケットサンマの尾ひれに巻き付き、その先端をぎゅっと掴んで踏ん張るLumilia。
 あれだけのスピードを出すだけあってすごいパワーだ。
 それでも逃がすまいとLumiliaは地に足をつけて踏ん張り、翼を動かして抵抗する。
 ロープがぴきぴきと音を立てて千切れそうになったその時。
「おまたせ――!」
 大通りに面したカフェの屋根を走ったココロが大ジャンプをかけて魚屋さんの屋根へ着地。
 ギリギリ射程圏内にとらえると、ココロはリリカルスターの魔法を発射した。
 虹色の軌跡を描いてロケットサンマに直撃。
 マ゛ーとか言いながらスリップするロケットサンマへ向けてさらなるダッシュアンドジャンプ。
 ココロは武器にしていた金属板をサーフボードのごとく踏み敷くと、そのまま起き上がろうとするロケットサンマを踏みつけにした。
 ぐったりと力尽きるロケットサンマ。ちらりと見ると、魚屋さんがソロバン片手ににっこりしていた。

「そこか……!」
 海浜公園へと飛び出すゲオルグ。ロケットサンマの残り香(?)を追ってやってきたらしい。
 かいた汗を流すべく上着を脱ぎ捨てると、花壇を飛び越えるロケットサンマに猛ダッシュで追いついた。
 全力を出せばギリギリ追いつく。
 ゲオルグも同じく花壇を飛び越え地面をロールすると、公園の出口へ向かうロケットサンマに石を投げた。
 びっくりして右折するロケットサンマ。直線移動が早いだけあって方向を一度切り替えるとそうそう戻せないらしい。
 右折した先がまっすぐな道でも進むほかない。
 その40メートル後ろの路上に鶫が陣取っていても、進むほか無いのだ。
 鶫は素早い操作でキャリーバッグを展開変形。芸術的素早さでスナイパーライフルと三脚を組み立てると、伏せ姿勢のままスコープを覗き込んだ。
 風向きが、時間の流れが、たった一瞬だけ手に取るように分かった。
 腕と頬と指を介してライフルが身体の一部となり、指とトリガーを介して発射機構が身体にマッチする。
 ごく精密な爆発と回転をもって発射された弾頭は空気を螺旋状に穿ってロケットサンマへ直進。目はその弾と鶫をとらえてこそいたが、避けるよりも早く着弾。ペンシル状の多重結界弾頭が鱗を一ミリずつ正確に破壊し、体内を削り取ってそのまま体外へ排出。民家の石垣にめり込んで止まった。
「……ふう」
 長い髪をようやくかきあげて立ち上がる。
 ロケットサンマは倒れ、地面に長い血の跡を残した。

 『秋ロケットサンマは嫁に追わすな』という言葉があるように、陸に上がった旬のロケットサンマ漁は過酷である。
 一時期に盛った男女平等説により暗黙の女人禁制は解かれたものの、大けがのリスクは依然として存在し追走の労力は計り知れない。
 昼間にサンマを追い回す簡単なお仕事かなと一度は思ったイレギュラーズも、日が傾き夕暮れ時を迎えたところで過酷さを痛感していた。
 漁とは本来厳しいもの。一日中走り回っても収穫が無い時すらあるという。
 だがその労力に見合う美味であり、取引価格が定まっている。
「ロケットサンマは走光性を持っています。この時間なら強い光をたくことでロケットサンマの動きをある程度限定できるでしょう!」
 夕暮れ時。家々が明かりをつけ街灯が光り出す直前の時間。
 シズカは眼鏡を親指と中指で覆うようにして位置を直した。眼鏡のレンズがきらりと光る。
「見つけました! まてー!」
 クーアが道を横切るロケットサンマを追いかけ始める。最高速を出したロケットサンマに追いつくには速度が足りない。
 火炎瓶でも投げようかと考えたクーアの足下に空き瓶。日の落ちた時間だからこその見逃し。
 クーアはひゃあと言って転倒。転がりながらも懐から子猫をとりだしスマホ感覚で耳に当てた。
「そっちへ行きました! あとはお願いします!」
 連絡を受けて待ち伏せていたのはエリーナと十夜だ。
 エリーナは風の妖精の祝福を受けてふわりと飛び上がると、スシ・バーの屋根へと降り立った。点滅する『パチバヤシ・オオトロ・バー』のネオン看板のに自らの影を伸ばしながら、妖精ネリーを召喚する歌を紡ぎ始めた。
 位置はずっと遠く。ロケットサンマの通り抜けるその一瞬が勝負だ。
「――そこ!」
 輝くミスティックサークルが路上に現われ、妖精ネリーがゲートを潜って現われる。
 直撃は狙わない。たった一瞬ロケットマグロの頬を叩ければ良いのだ。
 ぺちんと走る小さな衝撃。
 直進方向にかけていたロケットサンマの物理エネルギーが歪み、それを修正しようと激しい蛇行を始めた。
 ふらりと現われた十夜が行く手を阻み、カーブをかけようとするロケットサンマを殴りつけた。
 ぐらりと傾き、倒れるロケットサンマ。
 直後、十夜の後ろを別のロケットサンマが駆け抜けていった。
 追いかけるのはゲオルグとLumilia。
 民家の屋根の上を飛行して進路を探るLumiliaと、路上を全力疾走して追い込みを試みるゲオルグのコンビだ。
 Lumiliaが前方を見ると、銭湯の石煙突をよじよじ登るココロの姿があった。
「来てる来てる! 来てますよ鶫さーん!」
 呼びかけながら飛び降り、何段階かにわけて落下の衝撃を吸収、屋根の上へと着地する。
 隣にはスナイパーライフルをセッティングする鶫があった。
「肉眼で確認しました。射撃可能距離まで左右から追い込んでください」
 ハンドサインを交えてLumiliaへ伝達。Lumiliaはそれを受けてゲオルグにサインを伝えた。
 空中で身体を傾け右方向へ回り込むLumilia。走りながら大きく身体を傾けて左方向へ回り込むゲオルグ。
 左右から追い込まれたロケットサンマはまっすぐに走り、ついに大通りへと突入した。
 馬車や露天商が端に寄る中、ダッシュジャンプで真正面を陣取るココロ。
 拳に炎を宿すと、弓のごとく引き絞って構える。
 突き飛ばしてすすんでやるとばかりに勢いを増すロケットサンマ。
 衝突までコンマ八秒時点。
 先に衝撃を受けたのはロケットサンマのほうだった。
 屈強で知られるロケットサンマのふくらはぎが崩壊し、派手に転倒したのだ。
 はるか後方。スコープを覗く鶫が小さく『ヒット』と呟いた。
「とどめです! 燃えろぉ!」
 転倒したロケットサンマへ、ココロは派手なファイアパンチを叩き込んだ。

●秋ロケットサンマは嫁に食わせろ
 もともと栄養価の高いロケットサンマは秋になると力を増し、配合されるDHAやカルシウムは勿論のことマグロぢからと呼ばれる魔力栄養素を多く含み絶妙な美味をもたらす。
 シズカは得意のお茶と料理術でマグロの蒲焼きを作り上げると、一部をタッパーに詰め込んだ。
「これはユリーカさんに持って行ってあげましょう」
「七輪ごと吹き飛んでいったものな」
 醤油とみりんで甘辛く焼いたサンマをご飯にのせていくゲオルグ。彼も同じくサンマ弁当をこしらえていた。
「沢山とれたからでしょうか。一匹まるごと貰ってしまいましたね」
 鶫は焼いたり甘露煮にしたり竜田揚げにしたりとマルチタスクをこなす一方、大きな土鍋でカブト煮をこしらえていた。
 スピードと共に高い動体視力をもつロケットサンマの頭部にはDHA(デラ・ハカセ・アタマイイ)が含まれているという。海洋料理の常識であり、ロケットサンマのカブト煮は無病息災を願う旬の料理としても知られていた。
「そういえば、お魚が食べられない方もいらっしゃるとか」
「あー……海の仲間は食べない主義なので……」
 弱った顔であたまをかくココロ。十夜も似たようなものらしく、魚は食えねえと言っていた。
 ならばと鶫やゲオルグが栗の甘露煮や甘いお菓子を作って振る舞った。
「こりゃいい。のんびり酒でもいきたいねえ」
「そういうと思って用意しておいた」
 ゲオルグが取り出す一升瓶『海美人』。地酒である。
 一方でエリーナは妖精たちを呼び出してお茶とお菓子を並べていった。シズカと協力してテーブルに広げていく。
「うまままままままま」
 クーアが高速で漫画肉みたいになったサンマステーキにかじりついていた。
「おさかなだいすきです!」
「ああ、ネコさんなんでしたっけ……」
 Lumiliaも旅についてきた白猫のアイリスに魚を一切れわけてやると、自分も静かに食べ始める。
 テーブルに並ぶのはロケットサンマづくしのフルコース。
 イレギュラーズたちは舌鼓を打ち、この日の労をねぎらい合った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ユリーカ「ありがとうなのです! ありがとうなのです!(サンマ弁当をがつがつ食べながら)」

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