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シナリオ詳細

<カマルへの道程>GO CRAZY FOR BLOOD

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『赤犬』ディルクの失踪。
 『女王』と呼ばれた娘と姿を消したらしいという噂もある彼を捜し、『凶』ハウザー達がたどり着いたのは、『古宮カーマルーマ』と呼ばれる遺跡。
 なんでも、夜の祭祀』と呼ばれた死と再生を司る儀式が行なわれていたとされる場所なのだという。
「遺跡内部は『夜の祭祀』が行なわれた形跡と、幾つかの転移陣が存在していることを確認済みです」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が今回、説明を行っているのは、ラサの都ネフェルストのバー。
 皆、各地で依頼をこなし、ラサへと入っているが、さほど疲れも見せずにオーダーを行い、銘々に飲み物で喉を潤す。
 ウエイターが去り、皆がグラスを置いたのを見計らい、アクアベルは話を続ける。
「この遺跡にある転移陣から飛んだ先は、砂漠になっています。そして、そこから見えるのは、『月の王国』なのだとか」
 道中で多数待ち受ける吸血鬼達は烙印をその身に刻む。
 それは女王から力を与えられた証であり、月の王国の住民になれると報告にあった吸血鬼らは語ったのだそうだ。

 無数の同胞を生み出し、映し鏡のような砂漠の国は大きくなって行く。
 月の王国は何時しか現実に顕現しラサの全てを飲み込んでしまうだろう――。

 それらの言葉、敵の動向から推察すると。
「月の王国は吸血鬼や紅血晶に侵された存在を増やすのが狙いとみられます」
 放置すれば、敵勢力はラサ王国をも飲み込みかねない。
 そんな危険な存在を放置するわけにはいかない。
「それでは、遭遇する敵小隊の情報をお渡ししますね」
 すでに、自らの余地である程度の敵については調べていると、アクアベルはわかる範囲でのデータをメンバー達へと提供するのである。


 王宮カーマルーマ内で発見された転移陣までは、うまく敵と遭遇できずに済んだイレギュラーズ一行。
 これまでの戦いによって、敵を減らしているのが功を奏しているのだろう。
 その転移陣を恐る恐る踏むと、飛ばされたのは砂漠の上。
 遠くに月明かりに照らされた荘厳な趣のある王宮が見えるが……。
 できるならそこまですぐに向かいたいところだが、吸血鬼達もそうはさせてくれない。
「同胞ではない者を王宮へと通すわけにはいかないな」
 闇夜の中現れた吸血鬼は、線の細い美少年を思わせた。
 ガアタと名乗った彼は両手を広げ、晶獣である大きな亀と2体の亡霊、それに7体の偽命体を現してから続ける。
「おかえり願おう。……それでも、拒絶するのなら」
 口から生えた牙を見せつけて笑い、ガアタは身構える。
「我々の仲間になってもらおうか」
 次の瞬間、彼の手下である晶獣、及び偽命体がゆっくりとこちらに近づいて来るのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <カマルへの道程>のシナリオ、『月の王国』砂漠攻略戦です。
 転移陣の先、王宮までの道のりを確保する為、向かい来る敵の討伐を願います。

●概要
 王宮内にある転移陣の先に進み、王宮までの道のり……障害物のない砂漠にて襲い来る吸血鬼一隊の討伐を願います。
 砂漠は高低差があり、1m以上あるところもあるので、必ずしも見通しがいいとは限りません。
 敵地ということもあり、討伐後は新たな敵と遭遇する前に無理せず一時身を引くことをお勧めします。

●敵:吸血鬼一隊
◎吸血鬼(ヴァンピーア):ガアタ
 月の王国に棲まう『偉大なる純血種(オルドヌング)』により『烙印』を得た者達の総称を吸血鬼と呼びます。
 流れる血は花弁に、涙は結晶になるといいます。

 ガアタと名乗るのこの敵は中性的な少年です。
 流れる血(自身、他者問わず)を炎へと変えて放つことができます。鋭い爪を伸ばした両腕からは真空波を発し、着火して飛ばすことも可能です。
 また、強い吸血衝動を有し、噛みついてくることもあります。

◎晶獣(キレスファルゥ)×3体
〇ポワン・トルテュ(略称:水晶亀)×1体
 巨大リクガメの化石が紅血晶に侵食されて誕生した、大型のアンデッド・水晶亀です。
 咆哮によって怒りを振りまき、敵を引き付けようとします。
 他にも体当たりやプレスも行い、足止めした相手を叩き潰そうとしてきます。

〇リール・ランキュヌ(略称:怨念)×2体
 紅血晶が付近の亡霊と反応し、生まれたアンデッド・モンスター。全長1m程度。人間の上半身のみを現した状態で空中を浮遊しています。
 強化された怨念による鳴き声は強力な神秘の魔術に匹敵し、毒や狂気をもたらすこともあります。

〇偽命体(ムーンチャイルド)×7体
 アルベドやキトリニタスなどを思わせる非常に短命な人造生命体。ベースは人間種のようです。
 吸血鬼化した個体が5体。鋭い爪と牙で直接襲い掛かってきます。
 2体は半分サソリのような姿となり、両腕がハサミに、尾が伸びて鋭い針を持つ尾を持ちます。

●特殊判定『烙印』
 当シナリオでは肉体に影響を及ぼす状態異常『烙印』が付与される場合があります。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <カマルへの道程>GO CRAZY FOR BLOOD完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年04月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
アルトゥライネル(p3p008166)
バロメット・砂漠の妖精
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
囲 飛呂(p3p010030)
君の為に

リプレイ


 王宮カーマルーマ内に発見された転移陣。
 そこに乗り、砂漠へと出たイレギュラーズ一行は慎重に歩を進める。
 高低差のある砂地を進むべく、メンバー達は対策を講じていた。
 例えば、『氷狼の封印を求めし者』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)はファミリアーを起点とした広域俯瞰によって、視界不良の解消に努める。
 また、日が落ちていたこともあり、ルーキスは暗視で周囲を見通す。
「王宮を出て迎え撃つからには、何かしらの策があると見るべきだろう」
 敵の出方について、そう考えているのは『可能性の壁』アルトゥライネル(p3p008166)だ。
 こちらもファミリアーで鳥を先行させ、これから交戦することにある敵の早期発見、遮蔽場所への潜伏などないかを警戒させる。
 合わせて、アルトゥライネルはリーダーである吸血鬼が追い込まれて逃げる場合はどういったルートを辿るか思考する。
 今のところは奥に見える月の王国と思われるが……。
 その時、2人のファミリアーが何かを発見する。
「この奥で待ち構えてますね」
 『君の盾』水月・鏡禍(p3p008354)も同じく暗がりを高所から俯瞰していたが、合わせて砂山の薄い部分の向こう側を透視して敵隊を発見する。
 相手も影からこちらの不意を突いてくるだろうと鏡禍は砂山を乗り越えず、回り込んで敵へと接触するよう提案した。
 程なく、メンバー達は砂山の谷間に陣取っていた吸血鬼一隊と遭遇することに。
「同胞ではない者を王宮へと通すわけにはいかないな」
 中性的な吸血鬼少年ガアタが行く手を遮るようにして前へと出る。
「また吸血鬼のお出ましか。王宮まで、あとどれだけ出会うんだろうな」
「相手のホームグラウンドとなれば出てくるのも当然っスが、こっちとしても「ハイそうですか」で引き返すワケにもいかねぇよ」
 アルトゥライネルがその登場に辟易とすると、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は仕方ないとばかりに身構える。
「そっちから近付いてきて勝手に紅血晶を撒いたり人を攫ったりしたんだろうに」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)も好き勝手振る舞う吸血鬼に呆れてしまう。
(吸血鬼はまだまだ分からないことが多いですね)
 そのやり取りを見ていた鏡禍は改めてそう感じる。
「おかえり願おう。……それでも、拒絶するのなら」
 3体の晶獣と7体の偽命体を従える吸血鬼は牙を見せつつ口角を上げて。
「我々の仲間になってもらおうか」
「同族を増やせっていうのがオーダーなのかな?」
 月の王国という名前にはルーキスも魅力を感じるが、交渉以前に敵を連れてきている状況に疑念を抱く。
(まあ、弱い人間を引き入れたところで益にならないから、振るい落としも兼ねてかな)
 とはいえ、楽しめればいいと感じるルーキスは黙して成り行きを見守ることに。
「同胞さ。同胞」
 そこで、『縒り糸』恋屍・愛無(p3p007296)は敢えて偽命体に呼び掛け、自らも偽命体みたいなものだからと手を差し伸べて。
「仲よくしよう。取り合えず、投降して持っている情報を全て吐いてくれたまえ」
 だが、偽命体は誰一人愛無の手を取らず。
「ガアタ様に反抗するか」
「月の王国に敵対する愚か者め……」
「どうせ短い命だ。少しでも長く生きる事をお勧めするがね」
 吸血鬼、あるいは異形と化した偽命体に、愛無は素直に申し出を受け入れればいいのにと諦観する。
「お前みたいなのと、一緒に行こうなんて思うもんかよ」
 さて、烙印や月の王国への危機感を抱く『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)は、吸血鬼等のやり口にムカついていたようで、相手の勧誘を撥ね付ける。
 葵も別世界で半吸血鬼として生を受けてはいるが、そのよしみなどとは微塵も思わず。
「邪魔するってんなら相手になるっスよ」
「やはり、力で追い返すしかなさそうだ」
 両手を上げたガアタは、しもべ達を手前に出してくる。
「悪いけれど、こちらも子供の遣いじゃないの」
 『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)は攻め込んできた者の立場ではあるがと前置きしつつも。
「このまま帰る訳にはいかないし、まして吸血鬼の仲間になるなんて願い下げだわ。ラサを守るためにも、ここは排除させて貰うわよ」
(盾役として恥ずかしくない動きをしないと)
 そのルチアの前に、鏡禍が出る。
「……僕は貴女の盾なんですから」
 仲間達の様子を見ていたイズマも細剣を抜いて。
「自分の国に踏み入れられたくないのは分かるが、それは俺達の台詞だ」
 黙って引き下がるつもりなど、イズマにはない。彼は抗議の為に王宮まで通してもらうと豪語する。
「これだから人間は……」
 ガアタの一言に、アルトゥライネルはもう戻してやれないとだと悟って。
「……子供であれ、ここで止めよう」
 これ以上、被害者を増やさせはしない。
 アルトゥライネルは決意を新たにして、仲間と共に吸血鬼一隊とぶつかるのである。


 吸血鬼ガアタを筆頭とした敵の数は11体とイレギュラーズよりも数は多い。
 メンバー達が接敵していく間、葵は早めに敵数を減らすべく2種いる晶獣の片割れ、怨念のようなリール・ランキュヌを中心に狙う。
 その前に、葵は戦場の側面部にある砂丘の上へと位置取り、集中力を高める。
 感覚を研ぎ澄ませた葵はそのまま、蹴り飛ばした灰色のサッカーボールを叩き込む。
 高いスキルを伴い、飛呂も素早く戦況に対処する。
「なるべく早く敵を減らさないとな」
 合わせて足止めしようと画策する飛呂は、水晶亀ポワン・トルテュから距離をとる。
 ブオオオオオオオオオ!!
 早くも咆哮する亀はこの場のイレギュラーズを自らへと強く意識を向けさせようとしていたのだ。
 それ故に、距離を取らねば巻き込まれてしまう。
「んー、実際に使われると厄介だこと。少しお口チャックしていてくれないかな?」
 亀を敵視するルーキスは適度に距離を取り、混沌に漂う根源の力を泥と化して敵陣へと浴びせかける。
 ブオオオ……。
 鬱陶しそうに身を震わす亀。
 ルーキスもすぐさま第二陣をと身構える。
 その間に、砂に足を取られぬよう低空飛行する愛無が敵の正面へと回り込んでいて。
 紫の瞳を怪しく輝かせる愛無。
 ブオオオオオオオオ……。
 そんな愛無へと注意を払う大亀は体が強力な毒に侵されたことに気づき、激しく身悶えし始めていた。
 戦況を全体的に把握するよう努める飛呂は突撃戦術を仕掛けるべく動く。
 遠距離を保ちつつも、やや前のめりの態勢で飛呂は狙撃銃から多量の弾丸を撃ち放ち、怨念や偽命体へと浴びせかけていく。
 敵のみに鋼の驟雨を降らすプラチナムインベルタは、怨念となった晶獣にも十分効果があったようだ。
 おおおおぅぉおおぅうおおうおう……。
 怨念も鳴き声を上げて反撃し、メンバー達の精神をかきむしらんとする。
 聞くだけで発狂してしまいそうな声だが、事前情報もあって対策していたアルトゥライネルは声の圧力に耐えつつも戦場を駆け抜け、怨念を巻き込んで熱砂の嵐を巻き起こす。
 ラサで発生するものと同等の嵐は、敵対する者のみを執拗に襲う。
 渦巻く風は怨念の体を引き裂きそうな勢いで荒ぶり、激しくうねる。
 怨念どもはもちろん、偽命体も嵐をやり過ごすだけでも必死な様子だ。
「みんなに、力を……!」
 戦う仲間達の傍らで、前線に出るルチアは自身のエスプリによる支援をしながらも、傷の浅い状況なら攻撃にも打って出る。
 現状、怨念に仲間達の攻撃は集まっており、ルチアもそいつ目掛けて禍の凶き爪で薙ぎ払う。
 そのルチアを守るように位置取る鏡禍は、手鏡から薄紫色の妖気を放つ。
 鏡禍が相手を招き寄せる時にとる術「妖気の誘い」によって、怨念だけでなく偽命体もわらわらと彼へと引き付けられていたようだ。
「抵抗するじゃないか」
 にやけていたガアタには、リオンに騎乗したイズマが迫っていて。
「正当な話し合いなら聞こうと思ったが、強引な仲間作りはお断りだ。貴方達は侵略者という事でいいな?」
 イズマは問いかけの間にも細剣で冷たい一撃を繰り出し、彼をしもべから分断する。
 それに追従するイズマに、ガアタも感心したような声を出して。
「へえ、考えてるじゃないか」
 余裕を崩すことなく、彼は長く伸ばした爪を振り払い、真空波を発してくる。
 グッと堪えるイズマは構うことなく自らを幻想で纏い、更なる攻撃の為細剣を構えるのだった。


 砂地での戦いとあって、所々で大量の砂埃が舞う。
 役割分担して交戦するイレギュラーズは個々の敵を抑えつつ、体力を削いでいく。
 前線で多数の敵に絡まれる鏡禍は吸血鬼となった偽命体に飛び掛かられ、半身がサソリとなった偽命体のハサミで斬られ、尾に刺されてしまう。
 その鏡禍を、ルチアが支える。
 彼女は他にも抑え役となるイズマやルーキスにも気を回し、聖体頌歌を響かせて立て直しをはかる。
 援護を受けた鏡禍も力を得て、眼前の敵に纏めて乱撃を食らわせていった。
 それを受けた1体の怨念が掻き消えかけていて。
 あ、あぁ……。
 怨念も反撃しようとするが、鳴き声を上げることができない。
 それもそのはず、飛呂の弾丸に撃ち抜かれて身動きすら満足に取れなくなっていたのだ。
 素早いファニングで多数の弾丸を発砲していた飛呂は、倒れそうなそいつを含め、鉛玉の雨を浴びせかけると、怨念は姿が維持できなくなり、姿をかき消してしまった。
 もう1体も多くのイレギュラーズから波状攻撃が続く。
 ああぁぁおおおぉぉぉあああ……!
 鳴き声を上げてメンバーを足止めしようとするがすでに遅く。
 再度、鏡禍の妖気に当てられて彼へと近づく怨念に、回復の暇にルチアがフォローをと渾身の一撃を撃ち込む。
 消え去る怨念の傍ら、ルチアはすぐさま鏡禍を癒そうと彼へと光輪を与えていた。

 晶獣の片割れは倒したが、水晶亀は依然健在だ。
 主に抑えを続けるルーキスが深淵の呼び声を直接聞かせて雷撃を全身に駆け巡らせると、彼女は儀式魔術『銀花結界』で水晶亀の力を封じる。
「大きい亀さんを置いておくと、其処から厄介なことになりそうだしね」
 一時的なものだが、それでも抑えとしては十分。
 相手の力が封印されている隙に、ルーキスは本腰を入れた攻撃も行う。
「さあ威力偵察だ。まずは一発失礼するよ」
 魔力を凝縮し、宝石を核とした仮初の剣……禍剣エダークスをしたルーキスは、見上げんばかりの水晶竜の巨体へと叩き込む。
 ブオオオオオオ!
 激しい光に体を灼かれる亀が痛みに悶え、じたばたと暴れて砂埃が一層大きく立ち上る。
 砂埃飛び散る戦場、依然吸血鬼が笑いを浮かべたままイズマとぶつかる。
 ただ、戦局は徐々にイレギュラーズ優位に傾く。
 怨念が消えたことで、メンバー達のターゲットが偽命体へと移る中、孤立するのを避けるよう立ち回る葵が紫の重力エネルギーを込めた一球を個々の偽命体へと叩き込む。
 アルトゥライネルも同じく攻撃を仕掛けながら偽命体の爪を軽やかな舞踏で回避し、他の敵に絡めたテリハノイバラによる移動でサソリの尾もうまく避けていた。
 態勢を立て直し、アルトゥライネルは熱砂の嵐で偽命体複数を巻き上げる。
「せめて安らかに眠ってくれ……すまない」
 全身がズダボロになり、崩れ落ちて動かなくなる偽命体に、アルトゥライネルは小さく祈りを捧げていた。
 まだ偽命体の数が多いと、葵もまた纏めて捉え、砲弾の如くシュートを放つ。容赦なく葵のサッカーボールは偽命体の体を打ち付ける。
 大きく瞳を見開いたのも一瞬のこと。砂の上に突っ伏したそいつはしばらくぴくぴくと体を痙攣させていた。

 しもべの交戦状況は、ガアタも把握していたようだ。
「ふむ、まだ課題は山積みだな」
 尊大な態度のままイズマの攻撃と問いかけを、彼は受け止める。
「もし違うと言うのなら、俺に説明してもらおうか」
 イズマが問うのは、吸血鬼がラサにおいて侵略者か否か。
 彼はガアタのみを空間ごと切り取り、粉砕せんとするが、ガアタも多少の傷を負いつつもそこから逃れる。
 傷口から赤い花弁を散らすガアタは自らの傷口だけでなく、しもべやイレギュラーズの傷口から流れる血を炎へと変えて激しく燃え上がらせる。
「まだまだ」
 吸血鬼は長く伸ばす爪から真空波を飛ばす。
 先ほどの炎で引火した一撃は、仲間達を回復支援していたルチアの体を抉り、燃え上がらせる。
 パンドラを使って斬撃と炎に耐えきったルチアだったが、彼女を狙ったガアタに、鏡禍が並々ならぬ闘志を燃え上がらせていた。


 イレギュラーズの優先撃破対象は水晶亀へと移っていた。
 ブオオ、オオォォォ。
 思うように声を出せぬ亀を、愛無が魔眼でじっと見つめる。
 完全とはいかぬが、ほぼ相手の咆哮を押さえつけていたことで、仲間が亀の傍へと引き付けられるのを防ぐ。
「戦闘型の魔術師を舐めないでね」
 強毒で弱っていたその亀に、ルーキスが再度形作った禍つ剣を飛ばす。
 ブオォォォォォ…………。
 強大な破壊力に耐える力すら残っていなかった水晶亀が弱々しい声で鳴き、横倒しになっていったのを確認し、ルーキスはガアタへと告げる。
「夜の住人はキミ達だけじゃないってことを教えてあげよう」
 ルーキスはさらに、漆黒の泥を呼び起こす。
 残るは偽命体4体と吸血鬼。それらに泥が浴びせかかった直後に、飛呂がすかさずガアタを狙撃する。
 その弾丸の間隙を縫うように、アルトゥライネルが熱砂の嵐を巻き起こす。
「アンタは何と言って唆された。力を得て何を成す」
 偽命体1体の体を引き裂きつつ、彼は嵐に呑まれたガアタへと問う。
「生きる力と幸せな生活をあげるってさ」
 ただ、その振る舞いはあまりにも無邪気すぎた。
「やあ、こんばんは。せっかくだし、一曲ダンスでもいかがかな?」
 仲間が投げかける質問にも注目するルーキスも、軽くガアタへと挨拶して誘い掛ける。
「ついでにキミ達の事をもっと教えてよ」
 ルーキスが歪曲銀鍵を仕掛ける間、切れかけた幻想を改めて纏ったイズマが直接抑え込みに当たる。
「貴方はいつから吸血鬼になったんだ?」
「最近だよ」
 なおも軽口を叩くガアタだが、徐々に追い込まれていることを察知したのか、イズマへと牙を剥き出す。
 イズマも臨むところと、鋼の右腕を出す。
「血が欲しいなら、この鋼を噛み切ってみるんだな!」
 烙印に頼らねば仲間になれない者には従えないと主張するイズマだが、ガアタは強く噛みついて。
「甘いよ。お兄さん」
 例え機械の体だろうが、烙印には抗えないとガアタは笑う。
 そこで、葵が刹那のうちに飛び込み、ボールを使って狙ったガアタの顔を蹴り飛ばす。その牙をへし折りたかった葵だが、思った以上に丈夫だったようだ。
「こういうのは根っこから叩き折るに限るだろ」
 鏡禍も、ルチアの礼とばかりに高い防御を攻撃へと転化して叩き込む。
 後方からはルチアが聖体頌歌を口ずさんで援護してくれる。
 これ以上、彼女を傷つけまいと鏡禍は力を籠める。
 イレギュラーズの力が自身の吸血鬼としての力を上回っていると察したガアタは、不意に大きく距離を取ろうとする。
 丁度そこにいた飛呂が銃を振り上げて。
「コレ打撃武器じゃねーんだけどな!」
「グアッ!」
 思いっきり殴られたガアタが初めて苦悶の叫びをあげた。
 そいつを追い、イズマが細剣で追い詰める。
 アルトゥライネルもまた魔力の蔦を使ってガアタの体を絡めとって。
「命を弄ぶ悪趣味は子供の遊びでは済まされない……わかっているな?」
「クッ……」
 ガアタは怪力で逃れようとするが、魔眼で睨みつけた愛無が逃さず。
「逃しはしないよ」
 此処は相手のホーム。逃げを打たれては追うのも困難。
 愛無は躊躇なく、少年の体へと刃を埋め込む。
 流れる血が花びらと化していたが、それも程なく止んで。
「ふっ、残念だよ……」
 最後の最後まで不敵に微笑んだまま、ガアタは灰となっていったのだった。


 吸血鬼を倒した後、イレギュラーズ一行は残りの偽命体を掃討する。
 鏡禍の乱撃によって2体が果て、イズマがサソリの尾を振るう1体を細剣で切り捨てた。
 全ての敵を倒し、次なる敵との遭遇の前に撤収をすべきだが、できる限り情報を集めようとメンバー達は作業を続ける。
 鏡禍は砂山に上り、周囲を見回す。
「あれが……月の王国」
 遠くに見える立派な建物。それが敵の居城に違いないと鏡禍は確信する。
「此奴も元は人間だろう」
 同じタイミング、愛無は灰と化した吸血鬼の残骸を可能な限り回収していく。
 これらが烙印や吸血化について何か突き止めるきっかけになるかもしれない。
「戻す方法、絶対見つけてやる。敵の思い通りになるなんてゴメンだ」
 胸がざわつきを感じる飛呂は、吸血鬼にムカついているせいなのだと、自問自答していたのだった。

成否

成功

MVP

恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは亀の抑えから、吸血鬼を討伐した貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

●運営による追記
※イズマ・トーティス(p3p009471)さんは『烙印』状態となりました。(ステータスシートの反映には別途行われます)
※特殊判定『烙印』
 時間経過によって何らかの状態変化に移行する事が見込まれるキャラクター状態です。
 現時点で判明しているのは、
 ・傷口から溢れる血は花弁に変化している
 ・涙は水晶に変化する
 ・吸血衝動を有する
 ・身体のどこかに薔薇などの花の烙印が浮かび上がる。
 またこの状態は徐々に顕現または強くなる事が推測されています

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