PandoraPartyProject

シナリオ詳細

怨嗟の炎

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

「ああ、神よ」
 一人の女が神殿で祈りを捧げている。天義とは違い、幻想においては信仰こそがすべてはないが、それでも一般の人にとっては神は崇めるものだ。恋の成就、健康であるように願う事も、神へ祈るのだから。
 女もそんな信者の一人だった。

 けれど。

 女の顔に浮かんでいるのは神への情景や感謝ではない。

「ふふふ。神よ、貴方は何もしてくれはしない。誰がどんなに苦しもうとも、貴方はいつも見ているだけだ。私の愛しい子を奪い、私の身体を蝕んでいるこの病も、治すことなどできない無力な神……!」
 ギリ、と唇をかみしめるその表情には激しい憎悪が浮かんでいた。
 もはや何も信じることなどできはしない、そう瞳が物語っていた。

 哀れな女だった。

 ほんの少し前までは、普通のどこにでも居る女だった。
 愛する娘と一緒に、質素だけれど幸せな生活を送っていた。

 そんな幸せが消えたのは、つい三月前の事。

 馬車の走る幻想の道。
 女が目を離した一瞬の出来事。幼い娘は馬車にはねられ、その短い生涯を終えたのだ。
女にも過失はあった。
 本来ならば、娘の手を離すべきではなかったのだ。
 けれど、女はその日疲れていたのだ。本当に不幸な事故だった。
 周囲は皆、女を慰めた。
 一人になってしまった彼女への同情。無論本当に心配してくれる者もいたが、女にはそうは思えなかった。
 皆が自身を責めている、そう思ってしまったのだ。
 そして、極めつけに女の病気だ。
 もう長くはないだろう、そう医者に言われた時、彼女は思ったのだ。
 何もしてくれない神ならば、壊してしまえば良いのだ、と。


●ローレットにて
「集まってくれて感謝するのです!」
 情報屋ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が緊張した面持ちで面々を見やった。
 ローレットに訪れる人々が少ない時間帯。あえて、その時間に面々を集めた理由がある。
「今回の依頼は、とある女性の狂気を抑えていただきたいのです。 ……彼女はシシルと言う女性なのですが、最近近隣の教会を手当たり次第に破壊し、その教会の人間を殺そうと行動を起こしている方です」
 ひらり、と人相書きの絵がテーブルへと置かれる。
 絵に描かれているのは、年の頃なら30手前くらいの、金髪の女だ。
 目立って美人というわけではないが、愛嬌のある幼げな風貌は、可愛らしいとも取れる。とてもそんな騒動を起こしそうには見えない。
「シシルさんは10代の頃は冒険者でした。アコライト、だったと聞いています。冒険で出会った戦士の男性と恋に落ち、娘さんが生まれ、引退したそうです」
 ユーリカは目を伏せた。
「彼女が神様を憎むようになったのは、最初は旦那さんが依頼の途中で死んだ事から始まりました。けれど、まだその時は彼女はまだ正常だった。哀しみはしましたが、娘さんが居たから耐えられたのだと思います。 ……けれど、その幼い娘さんが、三月前に馬車に跳ねられて亡くなった事で、精神に異常をきたしてしまったのです」
 不幸は重なる。そうは言うが、あまりに酷だっただろう。
 アコライトとして神に仕えていた彼女が、神を憎む程に。
「今、彼女は邪教の根城に篭り、計画をたてています。ですから、彼女が教会を襲う前に、彼女の目論見を阻止してほしいのです。根城には邪教のメンバーが4人ほどいますが、シシルさんを含めて、そこそこ腕が立つので油断は禁物です。構成ははっきりとは分かりませんが、おそらくながら隙の少ない構成にしてくると思うのです」
 冒険者だった経験を活かしたパーティ構成をしている、とユーリカは予測していた。
「ただ、依頼人からはこう言われています。彼女を殺害するように、と。正直、ボクはこの依頼主は嫌いですが……仕事なのです」
 既に女は一つの教会を襲い、数人の命を奪ってしまっている。
 もはや逃げる事は不可能なのだ。
「あまり気乗りしないかも知れませんが、既に彼女は罪を犯しています。捕まったら、どちらにせよ……」
 ユーリカはその先は言わなかった。
「哀しい連鎖を止めてあげてください」
 ぺこり、とユーリカがお辞儀をした。

GMコメント

●シリル
30歳手前くらいの女性。アコライトとして冒険者だった経験から、機転が効き、援護も的確です。
真正面からの説得は、逆効果(激昂させる)になります。

●教団の人間×4
戦士二人(剣、槍)、魔術師一人、吟遊詩人が一人。
そこそこ腕が立ちます。

●依頼人
シリルの娘を跳ねた馬車の持ち主。
壮年の太り気味の男性。
シリルが教会を襲い始めた事で、いつか自分にも手を伸ばすのではないかと不安になり、依頼人となった経緯があります。

●成功条件
シリルを含む5人の殺害

「邪教の根城」
幻想の中心部から離れた、古びた教会です。時刻は深夜となります。

  • 怨嗟の炎完了
  • GM名ましゅまろさん
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月30日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
知識の蒐集者
逢魔ヶ時 狂介(p3p000539)
きぐるいドラゴン
シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士
八田 悠(p3p000687)
あなたの世界
豹藤 空牙(p3p001368)
忍豹
ヒグマゴーグ(p3p001987)
クマ怪人
九重 竜胆(p3p002735)
青花の寄辺
UUID=0000000(p3p004190)
仮想マシンの精霊

リプレイ

(もう罪を償えるような状態でも世の中でもない。私のギフトを使っても彼女らは救われない。 ……やるしかない。それに、私は仲間達を守らなきゃ)
 シリルに同情はする。だが、だからといって逃す気はなかった。決意を胸に秘め、『絶望喰らい』シエラ バレスティ(p3p000604)は、己の獲物を握りしめる。
「悲しいことがあったのは間違いないんだろう。だけど、自分が相手をそういう目に合わせる立場になったらおしまいだよ」
 その隣で、『祖なる現身』八田 悠(p3p000687)が静かに頷いた。


●神への怨嗟
 シリルは、朽ちた教会の一番前の席に目を閉じて座っていた。
 周囲には教団のメンバーが散らばっている。
 奇妙な静寂だった。

 しかし、その静寂を破る一撃が、教会の扉を破壊した。
「……ちっ」
 反応したのは、剣使いと槍使いの二人だった。後衛組を守るように道に立ちふさがる。
 シリルもすぐさま臨戦態勢へと整えるが、先手はイレギュラーズたちだった。
「あの人すごく悲しそうな顔してる……ということは、ええっと、早く殺してあげた方がいいってことだよね……?」
 逃亡阻止のため、空いたスペースを埋めるように位置取るった『仮想マシンの精霊』UUID=0000000(p3p004190)が、可愛い外見に似合わないシビアな言葉を吐いたのを、 『クマ怪人』ヒグマゴーグ(p3p001987) が豪快に笑う。
「グマハハハ!」
 特徴的な笑い声が教会に響く。
「神を呪い、その打倒を望む者達か…我らジャークデスにふさわしい人材だというのに、
殺さねばならんのは惜しい、実に惜しいぞ……! おおっと……心配せずとも、始末しろと言われた以上は生かしておくつもりはない!」
 おそよ善人とはかけ離れた言動ではあったが、そもそもがギルドローレットにおいて、善や悪など片側に寄る様な行為は良しとされない。
 悪しき事でも、それがローレットにとって必要であれば、任務をこなすだけなのだから。
「あら、意外ね。私がしたのは大量虐殺なのに。その部分は責めないのね」
 シリルが小首を傾げる。
「悪ぃがなぁ。ローレットに居る奴らが全員イイ子ちゃんだとは限らねぇんだぜ?」
 ニィ、とヒグマゴーグが言う隣、『きぐるいドラゴン』逢魔ヶ時 狂介(p3p000539)が同意する様に肩を竦めた。
「ここはヒーローやってやれるほどキレイな世界じゃねえ、生易しい世界に住んでいる旅人どもこれを機に心抉られてくださいね、っと」
「依頼は絶対。同情する事は構わない。でも、だからって刃を鈍らせたりしては駄目よ。
戦場での迷いは己だけでなく、仲間にも牙を向けるのだから」
 『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735) が、シエラの肩をぽんと叩いた。ぴりっとした空気を感じ取った竜胆なりの気遣いだ。
(……何て、私も思わない事がない訳ではないのよね。私の生い立ちも結構複雑だし)
 普通とはほど遠い己の過去もあり、色々と思うところはあったが、だが今はその事よりも、目の前の依頼を遂行しなければならない。
 前衛として、『智の魔王』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)が前に立つ。
(神を憎むというのはわからなくも無いのだが、なぜ教会関係者を殺すのだろうか)
 彼にはシリルの行動が理解できないのだろう。狂ってしまった女への疑問。だが、それは後で問うことができる。今は戦うだけなのだから。
「拙者、これが初依頼でござる。尚の事、依頼は完遂させて頂くでござるゆえ、こちらとて、覚悟はしておるでござる。罪なき民を巻き込むのを止めさせてもらうでござる」
 『忍豹』豹藤 空牙(p3p001368)は、初めの依頼に気を引き締める。これ以上は、誰も傷つけさせない、そう心に誓って。

 戦いは始まった。


「――滅する」
 剣を抜いたシエラが、剣士へと距離を詰める。最初は剣士から切り崩す。それが今回の作戦だった。
 シールドバッシュの強打が剣士へと襲いかかり、剣士が僅かに後ろへと体勢を崩す。
 槍使いが剣士への援護のため、シエラへと槍を突き刺そうとするのを、UUIDが受け止めた。
 ギチリ、と鋼が軋む音が辺りへと響いた。
 同時、グレイシア大剣が槍使いの前に躍り出る。
「老体が相手では不満だろうが、暫しの間付き合ってもらおうか」
「小賢しい……っ」
 槍を抑えている間、剣士を倒す、そのための陣営。
「剣士から落とすつもり、かしら?」
 けれど、シリルはそれをあらかじめ予想していたのだろう。吟遊詩人に目配せをすると、勇壮のマーチの歌が響き渡った。
 力ある歌は、5人の敵全員の反応を確実に上昇させた。
 素早く剣士が、シエラに切りつける。つ、と腕に傷ができ、血がしたたり落ちる。
 その間に、敵の魔術師が高速の詠唱を唱え始めるのを視界の端に捕らえた、竜胆が声を上げる。
「来るわっ!一刀三拝。死線の果てに無限に至る。 ――いざ、参る!」
 一刀両断が、剣士の身体を切り裂くと同時、魔術師の魔段が前衛のシエラを襲うが、既に詠唱を始めていた悠の魔弾がそれを相殺した。
 周囲へと魔力の衝撃波が散り、朽ちかけていた教会の椅子を破壊する。
 苛立たしげに、シリルが舌打ちをする。不愉快そうに瞳を濁らせ、UUIDを睨む。
「そ、そんな怖い顔しないで……私の心の中で生き続けるから誰も死なないよ……だからほら、安心して殺されて、ね?」
「……あら、残念ね。仲良くなれそうなのに」
 どこか壊れた者同士、と言いたげにシリルが呟いた。
 けれど、UUIDとシリルでは立場も違えば、行いも違う。所詮は、シリルは殺人者にすぎないのだから。
 剣士の傷を癒やすため、シエラが詠唱を始める。魔術師も2撃目の詠唱を開始した。剣士を最初に倒すため、と言う作戦ではあったが、後衛の魔術を無視は出来ない。悠は、再び魔弾の詠唱を始めた。
 槍使いとにらみ合うグレイシアと空牙は、二対一で槍使いを追い詰めていた。
「部外者が……っ!」
 それはこの世界の存在ではないグレイシアたちへの怨嗟の言葉だ。
 槍使いの傷は深いが、剣士への傷も軽んじるわけにはいかないシリルは、攻めあぐねていた。
 (何故、邪魔をするの……! ああ、私は神に復讐しなければならないのに)
 心の叫びは神には届かない。



 剣使いの腹を、ヒグマゴーグの一撃が貫いた。
「あばよ」
 ニィ、とニヒルに笑ったヒグマゴーグの顔に、剣士の返り血がびしゃりと飛び散る。
 それを拭いながら、次は、と槍使いへと視線を送る。
 だが、槍使いもまた、ぼろぼろの身体でやっと其処に立っているだけだった。
 二対一の戦いは、徐々に槍使いを追い詰めていたからだ。
「……私は『絶望喰らい』のシエラ・バレスティ。貴方達の絶望は既に罪で汚れてる。喰らう気は無い。散り際に神様に謝るといい……!」
 名乗り口上で、シリルたちの心が揺さぶられる。
 すでにシリルの采配も、尽きかけていた。
「見逃しが無いよう、確実に息の根を止めさせて貰う」
 グレイシアの獲物の一撃が、槍使いの肩を切り裂く。
 からり、と獲物の槍を落とした槍使いだったが、それでもなお闘志は残っているのだろう。
 あろうことか、素手で空牙へと殴りかかった。もはや勝機はない、と分かっているのに、それでもなお害する事を辞められないのは愚かだった。
「ともかくとして、コレでも喰らうでござる。」
 風前の灯火。槍使いの頭部が爆ぜた。
「……っ!」
 シリルが焦った様子で唇を噛みしめる。
「同情はするわ。でも、それだけよ。今更、こんな命のやり取りをしている連中に、優しい言葉を投げ掛けて欲しいとも思っていないでしょうしね」
 竜胆は、言葉を紡ぐ。
「でも間が悪かったんだと思うわ。貴女も、貴女の家族も。きっと、誰のせいではなく。
貴女が望んだささやかな未来に対して。ただその時だけかみ合っていなかった。実際、人の人生なんてそんなものよ。これが昔と今を生きた、私なりの結論。押し付ける心算はないけれど、こう思えば少しだけ楽にならない?」
 達観した竜胆の言葉に、シリルは苛立たしげに吠える。
「関係ない人間は皆そう言うわ……っ」
 シリルは持っていた杖で、思い切り竜胆を殴りつける。僅かに、後ろへと下がる竜胆だが、元々シリルは援護型なのもあり、ダメージは僅かだった。
 シリルはもう正常な判断を下せる状態ではないのだ。いかに優秀な説得であったとしても、狂ってしまった彼女の心が戻ることは、ない。
「この狂った世界に神も救いもねぇ、神なんてものすがったのが運の尽きだよん?不幸続きの人生にさらなる追い打ちをかけてやるよ。悔しい?悔しいだろうな、あの世でガキと旦那に会わせてやるから大目に見ろよな」
「ああ、そう。でも、残念ね。その台詞はそのまま返してあげる」
 心が壊れていても、相手が善であるか、悪であるか、そこの価値観はまだ残っているのだろうか。狂介の言葉にシリルは苛立たしげに、魔弾を放つ。その一撃は中々どうして威力があった。狂介の腹部に直撃すると、狂介が地面へと倒れる。
「たわいもないのね」
 冷めた眼差しで、シリルは狂介を見下ろした。
 ――しかし、狂介にはパンドラがある。地へと倒れ伏していた筈の狂介が、ゆっくりと再び立ち上がるのを見ると、シリルが目を見開いた。
「お前……っ」
「奥の手ってなあ!!」
 足払いを、狂介がかけ、女が地面へと転がる。その好奇をを、他のメンバーは見逃さない。
 深く踏み込んだ竜胆の一撃が、シリルの胸を切り裂いた。

●終わりが近づいて
 司令塔のシリルが倒れた後は、イレギュラーズたちに常に優位だった。そもそも、人数でもイレギュラーズが勝っていたし、何より残されたのは後衛の魔術師と吟遊詩人だ。魔術師は体力は低いし、それよりは体力のある吟遊詩人には決めてとなるような攻撃力は無い。魔術師が詠唱をする間の時間を稼ぐような細工も、吟遊詩人にはできなかった。
 ゆっくりと魔術師が地面に倒れ事切れる。
 吟遊詩人が逃げるそぶりを見せたが、いずれにしろ遅すぎた。
「悪いけど、僕は見逃さない!」
 悠の渾身の魔弾が、吟遊詩人の身体へと直撃し、四散する。
 そのダメージで身体が吹っ飛び、鈍い音と共に地面へ転がった。
「……う……っ」
 まだ息があるのだろう。吟遊詩人が起き上がろうとする。
 けれど、彼の身体を覆っているのは魔力によるダメージだけではない。
 魔弾の間に挟まれていたSPOの効果により、彼の身体は猛毒に蝕まれていたからだ。
「毒だからね、終わりまでには多少の時間がある今までの行いを、自分の神様に告げてみてはどうだい?きっと聴いてくれるさ」
 そう言う悠の言葉に、悔しげに吟遊詩人が睨み付ける。それを皮肉と取ったのか、最後のあがきとばかりに吟遊詩人は己の命であるはずの楽器を振り上げ、悠へと襲いかかった。
 けれど、手負いの吟遊詩人は、もはや脅威ではなかった。援護に優れているとはいえ、単体での攻撃力などたかが知れているのだから。
「これで終わりでござるよ」
 それは空牙の慈悲だった。
 苦しまずに、そう思い、吟遊詩人の喉元を切り裂く。
 血が辺りへと飛び散り、少しの間痙攣していた吟遊詩人だったが、すぐに動かなくなった。


「吾輩達に依頼をしてきたのは、貴様の娘を撥ねたという馬車の持ち主だった。加害者意識と言えばそこまでではあるが……教会関係者よりも、この貴族を殺す方が神への復讐としても納得がいく。何故、馬車の持ち主ではなく教会関係者を殺したのか」
 女は何も語らない。ただ、仰向けに倒れたまま、天井を見つめていた。
 グレイシアの言はもっともである。普通の意識ならば、私怨をぶつける相手は馬車の持ち主だろう。けれど、シリルの正気はもうそんな分かりやすい事を認識する事すらできなくなっていた。
「ふふ……」
 血が滴る口元は、恍惚の笑みを浮かべている。もしかしたら、その矛盾にもシリルは気付いていたのかも知れない。けれど、シリルと言う女は、それを認めることはできなかったのだ。
 これ以上、問うた所で女は何も話さないだろう。
 そう結論付けたグレイシアは、獲物に力を入れると女の胸を貫いた。
「あ……」
 かはっ、と血を吐いた後。シリルの瞳が、ほんの少しだけ優しい光を宿した。その視線の先には、悠がいる。彼女の一風変わったギフトが、シリルに愛する人を見せたのだろうか?それとも。
 しかし、それは一瞬だった。
 ――そして、シリルの鼓動はその時を止めたのだ。永遠に。


「私ギフト使って帰るから少しここに残るね……初仕事の余韻に浸りたいのもあるし……えへへ!」
 明るく言うUUID。とらえどころの無いその言動に、面々は頷いた。
「人とは、時に理解ができないものだ不可思議な点を追求していけば、いつか人を理解できるのだろうか… …」
「拙者も人間ではござらんが、難しい問題だと思うのでござるよ」
 グレイシアの言葉に、空牙が呟きを零す。種族によって価値観は違うし、何よりウォーカー組に関しては世界すら違うのだから、一つの答えを導き出すのは難解と言えよう。
「グマハハハ!だが、これで依頼は完遂だ」
「あー、でも依頼人いないのは残念だな。よかったな依頼人。俺たちのおかげで救われたな。またのご利用をお待ちしてまーすとか言ってやりたかった」
 (僕のギフトは効果があったようだね)
 悠のギフトは確かに発動していた。それが良かったのかどうかは、死んだシリルにしかもはや分からないだろう。
 シエラのギフトがもし、シリルに効果があれば、シリルはある意味では助かったかも知れないが、忘れることが本当にシリルにとって良い事だったのかは、今となっては……。
 しかし、仲間を守ることはできた。
 シエラは安堵の息を吐き、仲間と共にその場所を後にしたのだった。


 立ち去る直前、一陣の風が朽ちた境界に吹いた。
 ひゅう、と空を切る音が、まるで去りゆく面々に礼を言っているように聞こえた。

「今……」
 竜胆が振り返ったが、そこには誰も居なかった。
 こうして、シリル凶行は止められたのだ。

 その日、8人は夢を見た。
 幼い女の子と精悍な男と楽しそうに手を繋いだシリルの夢を。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

逢魔ヶ時 狂介(p3p000539) [重傷]
きぐるいドラゴン

あとがき

依頼お疲れさまでした(`・ω・´)またよろしくお願いします。

シリルはある意味救われたと思いますが、最後のシーンをどう捉えるかは、参加者様次第です。
愚かだと思うのか、それとも良かったと喜んでくれるかは、皆様にゆだねたいと思います。

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