PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<帰らずの森>フローラちゃんの決意

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ペイトに迫る危機
「えっ、それ本当?! だとしたら不味いわよね? 私、今すぐ行ったほうが良いと思うけど間違ってないよね??」
 亜竜集落、ペイト。
 地下に住処をおく集落であり、周囲にはいくつかの地底湖や独自の生態系が存在しており、それらの恩恵によって密やかに生きる亜竜種達を受け入れている。
 そんなペイトにあって、特異ともいえる思考を有するのが「フローラちゃん」こと莱・桃乃(あかざ・とうの)の存在である。彼女は外の世界のアイドル文化に触れた結果、アイドルとして生きることを心に誓い、自警団の仕事もそこそこに自らをより魅力的に見せるべく、日々研究を重ねていた。それも過去の話である。
 1年ほど前の話になるが、亜竜集落へとローレット・イレギュラーズが訪れ、桃乃と共に亜竜を蹴散らした折、自らの成すべきことを行わずに美や見栄えを追求する姿勢は誤りである、成すべきを成したうえで美しく振る舞うことこそがアイドルとして正しいのだと学んだ。
 そんな彼女も、今では立派な自警団の団員のひとり。最近の懸念があるとすれば、莱家として継いできた暗記使いとしての才能が「可愛くない」ことだがそれもまた自分らしさと割り切ろうと四苦八苦しているのだ。
 ……閑話休題。桃乃が驚いたのは、ペイトからやや離れた、かなり小さい地底湖が突如として干上がったという話にある。
 あたかも『底が抜けたかのように』一晩で消えた地底湖の水の行方はすぐに割れた。巨大な穴が空いていたのだから当然だ。問題は、その穴の主。『洞喰らい』などと称されるその亜竜は、地底をあちこち穴を開けてまわる存在ではあれど、ひどく臆病な性格で鉱物食の性質上、ペイトやその近辺に現れることは考えにくい存在なのだ。
 そんな相手が、やや遠いとはいえペイトからアクセス可能な位置まで進んできている。
 畢竟、このまま放置すればペイトに何らかの形で被害が及びかねないという証左である。そんな自体を、義に篤い彼女が放置できるはずがないのだ。
「ピュニシオンの森に向かった影響で、周囲で色々な影響が起きていると聞いていましたが……」
「立ち聞きで済ませていい話じゃないよね……?」
 とはいえ、不幸ばかりでもない。たまさか桃乃の様子を見に来ていたリースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)とココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)はピュニシオンの森の探索が始まったと同時に続発する異常との関連性を疑い、同行したイレギュラーズと共に『洞喰らい』の撃破を申し出ることとなったのだ。

●突撃戦線
 かくして、一同は底が抜けた地底湖まで足を向け、『洞喰らい』の出現を待ち構える格好となった。
 ヒントが少ない以上、確実に通った経路で待ち構えるのは間違っていない判断だ。
「来るわよね……? 素通りしてペイトを直接なんて……」
「フローラちゃんのアイドル力は無視できないから、大丈夫!」
 桃乃の不安の声に、ココロが根拠不明のフォローを入れる。だが、彼女にはそれで十分だったらしい。なにか決心したように拳を握る彼女……の、眼前の地面が丸く切り取られた。
「ひっ――!?」
 思わず彼女を後ろに引き寄せたイレギュラーズ達は、鎌首をもたげ突っ込んでくるその姿に声を失った。
 今から、あんなものを倒しに……相手の体内を目指すのか?

GMコメント

 前回登場が……13ヶ月前……?

●成功条件
・18ターン以内に亜竜『洞喰らい』の生存器官を破壊する

●失敗条件
・15ターン経過時点で『生体維持室』まで到達できていない、もしくは到達前の5名以上の戦闘不能
・18ターン経過時点での生存器官の未破壊
・莱・桃乃の死亡

●莱・桃乃(通称フローラちゃん)
 自称アイドルで、亜竜集落ペイトの自警団に所属しています。
 可愛らしい見た目と異なり、実はかなりの武闘派。実力も(前回登場以降)かなり上がっており、イレギュラーズと轡を並べて敵陣に突っ込んでいってもあんまり足手まといにはなりません。
 暗器使いという側面もあり、相手に姿を晒していても不意打ちが1回のみ通じる、という特異な性質を持っています。
 とはいえパンドラを持たぬ一般亜竜なので、生存性を無視しすぎるとあっさり死ぬ可能性も。

●洞喰らい
 巨大なワーム型の亜竜。直径7m、全長不明(地下をずっと掘り進んでいるところしか知られていない為)。
 本来は極めて臆病な性質をもっており、亜竜集落に近づくなんてもってのほか。……のはずだが、いきなり掘り進んできた。ペイト周辺を掘っているため、(大局的には大きな異常は起きないが)シナリオの結果によっては多少なり集落で犠牲が出るかもしれない。
 イレギュラーズは戦闘開始時点で口腔部からスタートし、正面に生えた歯(噛みつきをしてくる。出血系列など)を破壊して内部に侵入、内部に住んでいる共生生物を排除しながら『生体維持室』まで到達するのが目的となります。
 基本的には極端な先行はできない(先に行くにつれて妨害が強力になり、少数精鋭で対処しきれない為)と見ていいと思います。
 到達までの戦闘は『入り口(口腔部。歯の破壊のみ)』『内部前半』『内部後半』『生体維持室』の4パートに分かれます(入り口は1~2ターン目安)。
 このうち戦闘が発生するのは『内部前半・後半』のみで、入り口と生体維持室はひたすらに攻撃しまくって速攻を目指す局面です。
(生体維持室には暴食の魔種『???』が控えていますが、妨害一発かましてケツ捲って逃げます。これを加味して成功条件に3ターンの余丁があるわけですね)

●共生生物『グラト・ムスク』×15
 移動しないタイプの苔型生物。『内部前半』に出現します。
 【足止系列】に至る拡散型攻撃(神近扇)を複数体で行ってくるので避けづらい状況を生みます。
 また、苔のため燃えるかと思いきや湿度を伴うため【火炎系列】が付随する攻撃はやや効きが悪く、逆に【凍結系列】を含む攻撃がよく効きます。
 最悪、無視してもブロックしてこないので取捨選択が重要です。

●共生生物『ツェルク』×5
 入ってきた土や岩などをすり潰す役割をもった共生生物。『内部前半・後半』にそれぞれ同数出現。
 ハンマー状の手による圧殺攻撃(高威力、【ブレイク】、【飛】)などを用います。
 HPは雑魚相応といったところ(ただしHARD基準)。

●共生生物『リクエフィエリ』×15
 物体を溶かす酸を有する共生生物。『内部後半』に出現。
 アメーバ状の生物で、酸を飛ばす(物遠単・【乱れ系列】【必殺】など)が主攻撃。近づけば直に溶かしにくるでしょう。
 HPは比較的低め。その代わり抵抗とCTがやや高めに設定されています。

●生存器官
 本編の最終目標。
 攻撃してきませんが、致命ダメージを被った時点で【溜1】の爆発を起こします(これにより強制脱出となります)。そこそこの威力になるので注意しましょう(これだけでフローラちゃんが死ぬことはまずありません)。
 宙に浮いた格好ですが、直径7mの中での話なので至近攻撃が十分当たる位置です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

  • <帰らずの森>フローラちゃんの決意Lv:40以上完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年03月31日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
終わらない途
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
レイン・レイン(p3p010586)
玉響

リプレイ

●広がるは闇より濃い闇
「虫……かな……? ミミズっていうのに似てる……」
「そうですね……蚯蚓みたいなものですか。土竜よりはそちらのほうがしっくりきます。アダマンアントの一件も踏まえると、異常行動というのは見逃せません」
「鉱物食……ってことは俺が餌そのものなんじゃないか!!」
 『玉響』レイン・レイン(p3p010586)が呆然と顔を上げ、目の前の『洞喰らい』の砕けた牙に目をやる。全容は全く見えないが、話からするとミミズが一番妥当な表現か。食性すらも似通っているなら、排泄物は耕した土、つまりは地盤が緩むということで……『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)はその先の想像を敢えて避けた。碌でもないことが理解できたからだ。そして、鉱物食ということは鉄が混じった『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)らオールドワンにとっては天敵である、ということ。『こうぶつ』を前にした洞喰らいの身じろぎが激しくなったように見えたが、彼は極力意識しないように努めた。そして、その姿を恨めしそうに眺めるのが『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)。被食者であることに謎の誇りを持つ彼女が、このタイミングで半ば無視される格好になるとは思うまい。
「成程、虎穴に入らずんば虎子を得ずってか?」
「わたしも、このままひきさがるわけには、いきませんの……!」
「なんかよく分からねえ対抗心が芽生えてるみてえだが、時間もないんだ、突っ走りながら話そうぜ」
 『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)の、あたかも危機を楽しんでいそうな表情に被せるように顔を前につんのめらせたノリアのさまに、『老兵の咆哮』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)はちょっとだけ不安を覚えた。死に急いでいるというより、存在意義を求めて突き進もうとしている、対抗心混じりの危うさすら覚えた。
「そ、そうよ、とにかく急ぎましょう! アイドルっぽくとかとか気にする前に、ほっといたらペイトの皆が大変なことになるわ!」
 一同はなんとか迫ってきた洞喰らいの牙を叩き折ることに成功した、だが逆に言えばまだ、それしか済んでいない。
 いち早くそれを撃破せねばペイトに被害が及ぶ。アイドルらしさとは、自分との違いは、と考えたい気持ちを抑え、フローラちゃんこと莱・桃乃は先を促す。一同とて、すぐにでも奥に向かうべくコンディションを整えている。牙の圧力、そして破壊力は甘くなかった。だからこそ。
「フローラちゃん、もし武闘派たる自分の性質がアイドルに似つかわしくないと考えていたらそれは誤りです。このオデットさんをごらんなさい。太陽(ソレーユ)のような輝きをもつ、まさに妖精。しかし小柄なその体に秘めたパワーは……!」
「なんだか色々言われてるけど、敢えて食べられにいくのはいい気分じゃないから、無事に片付けて水浴びよ水浴び! 元気に帰るんだから!」
 『副官の覚悟』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)の紹介と、それが腑に落ちない様子の『氷の女王を思う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)のやり取りは微笑ましくもあったのだろう。剣でボロボロになった歯茎をぶっ叩くココロの姿と合わせて、桃乃の緊張を少しはほぐせただろうか?
「桃乃……さん、は、中央に。前も後ろも、危ない……」
「リースリット、最前線は任せたぜ」
「これだけの助力を貰えればこともなく。アルヴァさんも、ご武運を」
 レインに促されるようにして、桃乃はイレギュラーズに囲まれるような陣形で前進を開始する。リースリットは、アルヴァからの付与術により生まれた心の余裕をそのままに、激しい冷気を前方に叩き込む。吐き出された胞子ごと凍りついていった苔は無視できようが、範囲外にある苔ばかりは無視するか、倒すしかない。後方に控えていたツェルク達が大槌にも似た手で轢き潰そうと向かってきたのを、イズマの響奏撃とオデットの乱舞が弾き返す。すかさず反撃に出ようとするも、レインの呪歌に惑わされるもの、バクルドの勢いに押し切られるものなどがあって思い通りには足止めの用をなしていない。再度イレギュラーズに向かってきた個体はしかし、その得物をアルヴァに向けて大きく振るった。そして、こともなげに避けられる。
「先に行きなって、俺はすぐ追いつけるから」
「無理すんじゃねえぞ」
 アルヴァは残ったツェルク達を引き受け、一同に手を振って先を促す。
 彼の言葉に偽りはない。少なくとも、数十秒の差はすぐに埋めてくるだろう。だからこそ、先に待ち受ける連中を早急に片付ける必要があるのだが。

●光明
「後もう少しだ! 押し通るぞ」
 バクルドは手近な粘性生物を強引に押しのけ、前に出る。左右に散開してせまるそれら、中央から堂々と踏み込んでくるツェルクの陣容はなるほど、逃げ場を見事に塞いでくる巧妙な戦い方だ。だが逆に、正面のツェルクをどうにかすれば突破の確実性は上がるということだ。
「ツェルクの役割が、砕くことであるなら……わたしの鱗に、気を取られるはず、ですの……!」
 だからこそ、ここでノリアの実力が十全に発揮される。
 全身の鱗をより輝かせてアピールするその姿は堅牢な肉体を思わせ、透明度の高い尾は食欲を惹起する。洞喰らいの消化器官ともいえる共生生物達をこれ以上なく刺激する存在であったのだ。
「無理をなさいませんよう……フローラさん、できるだけ広範囲を狙って下さい。私達も殲滅に寄与しますので」
「相手が粘液なら、多分核があるはずよね……わかったわ、可能な限り全部、狙ってみせるわよ」
 リースリットの言葉に、桃乃は暗器を構え思い切り振りかぶると、粘性生物目掛け一気に解き放つ。放物線を描いたそれらは全て細糸で括られ、飛びついた個体群を一箇所に引き寄せる。
「まとまったなら、一気に吹き飛ばせるわね!」
「アルヴァさんが追いつくまでに、邪魔されない程度には減らさないとな……!」
 すかさず間合いに入ったオデットとイズマの全力攻撃が閃けば、敵は見る間に数を減らしていく。
 強敵ではあるし、相応の被害もある……のだが、ココロの卓越したペインコントロールの賜か、ここまでの被害は想定よりかなり浅いといえた。
 問題は時間だが、ここから全力で突っ走れば、なんとか間に合う域で収まっている。粘性生物のいびつな悲鳴を背景に、一同は只管に奥へ目掛けて駆けていく。正面に現れた肉壁をオデットがぶち壊した先は――。

●混乱の真実
 一本道でありつつも激しい抵抗を受けながら、一同はなんとか『生体維持室』まで到着することに成功した。薄暗い肉と飲み込まれた岩盤が散乱する先、上天に鳴動する生存器官は肉の網に覆われ、叩き落すことは困難に見える。……だが、十分に狙える高さだ。
 だが、それ以上に。一同の眼前には異常存在が紛れ込んでいた。猫めいた特徴を残す獣種らしき影。だというのに、洞喰らいのなかにあって傷一つない肉体。なによりあたりの鉱物にかじりつき、バターのように引き千切る顎の力は常軌を逸しているのがひと目でわかる。食事を邪魔されたと認識したそれは、不満そうに口を拭うと一同を値踏みするように眺めまわす。
「あれっ、お客さん? 困ったな……まだ食べ足りなかったんだけど」
「何だって暴食の魔種がこんなところに……?」
「まさかお前が洞喰らいにちょっかいをかけたんじゃないだろうな!?」
 バクルドが疑問をさしはさむのとほぼ同時に、イズマが苛立たしげに問い質す。覇竜に、明確な目的を持って現れた魔種……そしてその雑食性は暴食以外のなにものでもない。リースリットはあまりにも無防備なその姿勢に、しかし魔種特有の余裕と自負心が紛れていることを直感的に悟った。
「魔種だか何だか知らないけどこの亜竜をけしかけてるのがあんただとしたら相当やり方があくどいんじゃないの? せめて名前ぐらい名乗っていきなさいよね!」
「なんだいなんだい、この亜竜から少し……いや結構かな。分け前を貰ってるだけのボクに良いだ悪いだって随分と騒がしいじゃないか! ボクはただ、この亜竜が使いやすいから使ってるだけだったのに……でも面倒だな、キミ達と戦ってこいつの腹に穴が空いたらもう食べられないじゃないか……よし!」
 オデットが魔種を指差し、強く追及する。魔種は勘違いだと言わんばかりに首を振るが、お互いの目的が平行線をたどることもまた、直感的に理解したようだ。どっちにしろ排除される……そう理解した彼は内壁に手を付き四つん這いになると、大口を開けて『中空に牙を突き立てた』。
「何をし――」
 アルヴァが視界を塞ぎ、後方を狙えぬよう動いたがやや遅い。空間ごと噛み千切ろうとした魔種はしかし、首を斜めに振り下ろす直前、口元に舞い込んだ透明な肉片――ノリアの肉を嚥下したことで食いちぎる動作がやや、浅くなる。思いがけぬ食事の失敗と未知の味に目を細めつつ、にたりとそれは笑った。
「保険だよ。キミ達がこいつの核を壊す前に力尽きるとは思うけど、万が一間に合ってもらっちゃ困るからね……邪魔、させてもらったよ。名前、だっけ? 『コルミロ』とでも呼べばいいよ!」
 異常を認識した面々の表情を見るに、30m圏内の前方扇状といったところか、広範をカバーする術式や能力なら止めようがない。結果として妨害できなかったが、手の内ひとつを晒したなら上出来だ。もたらした結果と、今の動作で食欲を満たしたのか、魔種はすかさず踵を返す。猛烈な勢いで逃げるそれを無視し、一同は攻勢に出た。
「状態異常なら、私が一手切れば済む話です」
「私が魔力を回復します、オデットさんとリースリットさんは遠慮なく攻撃を!」
 去った魔種・コルミロの行動が能力を削ぐ目的だったと理解したリースリットは、即座に周囲の仲間から異常を取り払いにかかる。ココロはとりわけ攻勢に出るべきリースリットとオデットの魔力を最優先で充填させるべく術式を回す。コルミロの『捕食』は、魔力と能力阻害が目的だったとみえた。厄介極まりない。
「こっちもカツカツだが出し惜しみはしねえぞ!」
「生き物……なら……血は流れる、よね……?」
 バクルドは激戦続きで残り少ない魔力をつぎ込み、渾身の斬撃を放つ。レインもまた、気で編まれた糸で生存器官を切り刻み、その内部からの出血を促す。それぞれが付けた傷は、次の一撃、またその次へ繋ぎ威力を増していく。
「これ以上暴れる前にさっさと止まってもらうんだから!」
「フローラちゃんも、負けてられないわ……!」
 オデットの強烈な魔術が突き刺さった直後、桃乃のナイフが肉の網を引き裂く。僅かでも、網に隙間が生まれればより強烈な一撃を叩き込める。秒の猶予も許されぬ中、あと一歩と押し込む為に。
 時間の猶予は殆ど残されていない。だが、状況への焦燥よりも、イレギュラーズの決意と桃乃の本気が上回った。
 内壁が激しく鳴動を始め、生存器官の鼓動が停まり、光が収束する様子が見えた。
 ココロ達の治療が飛び、アルヴァとオデットはその足で以て全力で距離を取り、そしてイズマは手を広げ、足を踏ん張った。
 目に見える範囲は、全員守る。
 魔力が切れる目前まで吐き出したなら、あとは体力のすべてを賭ける。桃乃も、仲間も、背負い、強烈な爆光を受け止めた。運命を蹴飛ばし、それでもなお体力を削り取られた彼が倒れた後ろに、衝撃波が届くことはなかった。
「無茶しやがって……でも助かったぜ。あの二人くらい逃げりゃ別だが、俺達じゃ逃げ切れなかったかもな。死にゃしねえが……」
「ちょっとだけ、体がびくっと、なってしまいましたの……でも、無事ですの!」
 膝を屈しかけたイズマを、両脇からバクルドとノリアが抱え、焼け焦げた周囲と飛び散った洞喰らいの肉片を確認する。もしかしたら、倒さず残した共生生物がまだ闊歩しているかもしれないが。ともあれ、最大の窮地は脱したとみえた。
「フローラさん」
「ん、どうしたの?」
 桃乃は呆然としているところに話しかけられ、身構える。話しかけたリースリットはどこか垢抜けた、すっきりしたような表情の彼女にくすりと笑ってから、
「暗器、悪くないと思いますよ。ミステリアスで素敵です」
「……そう」
 彼女の在り方を、肯定した。

成否

成功

MVP

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

状態異常

イズマ・トーティス(p3p009471)[重傷]
青き鋼の音色

あとがき

 思った以上に被害が少なく、思った以上に派手だった。

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