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シナリオ詳細

カイラ・ロゴスと氷の塔

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●きっとドキドキする冒険へ
 依頼人のキアリ・スノードームは魔女である。
 海洋王国南部に生まれた彼女は代々受け継いだ魔女の血と、魔法の知識と、そして――。
「この剣、カイラ・ロゴス」
 真理の輝きを意味する剣がひとふり、テーブルに置かれている。
 刀身の黒い金属には波紋のような筋が走っており、両手で広く持つためか長い柄がついている。
 全体から淡く紫色の微光があがることから、これが魔法の剣であることが明らかだ。
 刀身を裏返すと、宇宙を思わせる紋様が描かれているのがわかるだろう。
 だがそれは、『半分だけ』だ。
「不思議、でしょう?」
 それまで剣をじっと観察していたあなたに、魔女キアリはどこかしっとりとした声音をかけた。
 魔女そのものといったローブには深いスリットが入り、胸元は母性すら感じるほどに豊満で艶やかだ。極めつけて、彼女の頭にはつばの広いウィッチハットが被さっている。彼女の格好を見て魔女と思わぬものはきっといないだろう。
 そんなキアリは象牙の煙管をくちにくわえ、指先にポッと魔法の炎を灯して先端にある煙草の葉に火を付けた。
 紅を引いた唇がわずかに歪み、煙草を離した口からはゆっくりと紫煙がのぼる。
「私の一族にはある決まりがあるの。生涯をかけて培った知識をこのカイラ・ロゴスの形に収めること。
 その片割れを子に、もう片方を自らの魔法で作り上げた氷の塔に収めること。
 もし片割れの知識を求めるならば、塔を攻略しなければならない。けれど……わかる、でしょう?」
 妖艶に微笑むキアリ。あなたの顔を覗き込むようにする。
「親世代の、大先輩。それが、生涯をかけて培った知識を収める塔。子がそれを、若いうちに越えることは、できない。
 だから、必ず誰かの助けを得ないといけない、わ」
 力、知恵、そして武器。けれどそれらはあくまで『片割れ』でしかない。
 もう片方を手に入れるならば、信頼できる誰かを見つけなければならない。そういう仕組みであり、決まりなのだ。
「あなた、なら……この塔を攻略できる。そう、信じているわ――あなた」

 こうして、あなたの冒険が始まった。
 挑むは塔。目指すは剣。未知への挑戦。

●魔女
 魔女には魔女だ。あなたはローレットに深く馴染みのある情報屋である『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)を尋ねた。
 彼女は『スノーホワイトなしきたりね』と彼女自身にしかわからないような言葉で呟くと、様々なツテを使って情報を集めてくれた。
「氷の塔。通称『スノードームの塔』は冒険者の間でも有名なダンジョンよ。
 スノードーム一族にとって挑戦は大きな意味をもつものだから、それを依頼される冒険者は生涯をかけられるだけの信頼を得ている。それだけ栄光のある冒険だと言えるわね。
 そしてだからこそ、情報もそれなりに集まるわ」
 スノードームの塔はある無人島に建てられた円柱型の塔だ。
 強力な魔法によって最下層から順に上がっていく方式でなくては攻略できないようになっており、中には大量の罠とモンスター、古代語による未知の仕掛け扉などが詰まっている。
 代々の魔女たちが作るものなのでモンスターや仕掛けはそのたびに違うはずだが、傾向は分かるというものだ。
 なにせ、この塔は『相応しき者が攻略する』ために作られているのだから。
 そう、あなたは相応しきものとして認められているということだ。
 プルーからある程度の情報を得た後、あなたは早速塔への挑戦を始めたのだった。

GMコメント

●シチュエーション
 あなたは魔女キアリからの依頼を受け、先代の魔女が作り上げた通称『スノードームの塔』をキアリと一緒に攻略します。
 敵と罠、そして仕掛けと交流。冒険を楽しみましょう。

●選択肢とプレイング
 道中には罠や古代の仕掛けが存在しています。また、休憩できるポイントもあるので美味しい料理などを作ると皆の行動にプラスの補正が加わるでしょう。
 戦闘は主に道中の雑魚モンスターとの戦闘のほか、塔の最上階を守るやや強力なガーディアンとの戦闘が待っています。


※相談期間が短めに設定されていますのでお気をつけ下さい


攻略スタイル
 この塔には様々なモンスターが蔓延り、罠や仕掛けがいっぱいです。
 あなたはどんなスタイルで塔を攻略するでしょうか。
 戦闘はどのみち行われますが、使うべき非戦スキルやスタイルの傾向を選択します。

また、魔女キアリも塔には同行するので

【1】戦闘メイン
 率先してバトルを行いモンスターを倒していきます。
 非戦スキルも索敵やアクロバティックな戦闘のために用いるでしょう。

【2】謎解きメイン
 古代語の仕掛けを解き明かしていきます。
 未知への知識や探索能力、突然の閃きや広い見聞など色々なものが役に立つでしょう。

【3】罠解除メイン
 あちこちに危険な罠が仕掛けられています。
 それを解くのはあなたの役目です。効率的に罠を探し、そして解除していきましょう。罠解除スキルが大いに役立つ場面です。

【4】お料理メイン
 塔の攻略は長く続くもの。
 途中でおなかが空いては攻略できるものもできなくなってしまうでしょう。
 そんなときはあなたの料理技術が役立ちます。美味しい料理を食べれば、仲間はそのモチベーションを大きく引き上げてくれるでしょう。


戦闘スタイル
 ダンジョンの中には恐ろしいモンスターが沢山出現します。
 当然バトルは避けられないでしょう。
 ここではあなたのバトルスタイルを選択してください。

【1】アタッカー
 率先して攻撃スキルをどかどかと撃ち込みます。
 威力やBSなど形は様々ですが、あなたは頼れるチームのアタッカーとなるでしょう。

【2】ヒーラー
 仲間は戦えば戦うほど傷付くもの。そんな仲間を治癒するのがあなたの役目です。
 手持ちの治癒スキルを駆使して戦闘中の仲間を治療したり、時にはカウンターヒールでスタイリッシュにダメージを打ち消します。

【3】ディフェンダー
 別名タンク。優れた防御ステータスを用いて敵の攻撃を引き受けます。かばったり引きつけたりは場合によりますが、あなたがいることで仲間のダメージ量は大きく減ることでしょう。

  • カイラ・ロゴスと氷の塔完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年04月04日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
繋げた優しさ

リプレイ


 ――あなた、なら……この塔を攻略できる。そう、信じているわ。
「そんな大事な塔を登る面子に、俺みてぇな冴えないおっさんを選んでくれるとは光栄だ」
 酒場で酒をちびちびやっていた『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は、グラスをテーブルに置いて首をもたげた。筋肉の凝りでもほぐすようにゆっくりと頭をめぐらせる。
「見込み違いだった、なんて思われねぇよう、気合いを入れるとしようかね」
 『まどろっこしいしきたりだねぇ』などと皮肉を言ってみせたのは、彼の癖というべきだろう。
 それを知っている『社長!』キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)はハハッと歯を見せて笑った。最近肩書きのせいか気にし始めた白く清潔な前歯だ。
「魔女! 知識! 歴史!
 いいねえ! 弊社の今後の発展の為にも是非ともキアリ・スノードームとの縁を作っておかねえと」
 などと言いながらグラスに酒のおかわりを注文するキドーの手付きはしなやかだ。フィンガースナップを二度鳴らすとウェイトレスをオシャレに呼びつける。
 『元気の盾』清水 洸汰(p3p000845)はフィンガースナップを真似しようとして、指先が擦る音だけを数度させると、てをグーパーしてからジュースのはいったグラスに手を伸ばした。
「きっとかーちゃんのかーちゃんから教わった事も残ってるのかもなー。って事はキアリのばーちゃんのかーちゃんから受け継がれたものや、ばーちゃんのばーちゃんやかーちゃんの知識もあったり……? ばーちゃんのばーちゃんってなんて言うんだ?」
「曾祖母。その上は高祖母ね」
 『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)は知らなくても生きて行けそうな雑学を話すと、どこかうっとりとした様子で虚空を見上げた。
「それにしても、スノードームの塔……代々魔女が作ってきた風習と伝統。興味深いし、攻略のしがいもありそうよね」
 特にしきたりに意味があるのがいい。
 知識も力も血も、必要なものの半分でしかない。
 頼れる人を見つけなさいという、代々の教えなのだ。そこには奢らず人を愛せという教えも当然含まれている。
 かなり独特の雰囲気がある女性だったが、確かに奢った様子はなかった。
「準備は、もう、できましたの」
 別の部屋で支度を済ませてきたらしい『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が地面すれすれを泳ぐようにやってくる。透き通った彼女の尻尾は、見る者の欲をかきたてるらしい。実際酒場にいる者たちの視線がチラチラとノリアに集まっている。
 流石に大袈裟かもしれないが、とってくわれないのは彼女の名声故だろうか。
「仕事が終わったら、どのような知識に長けていたりするのかお聞きしたいです」
 『星巡る旅の始まり』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)は仲間の準備を待っていたのだろう。用意しておいたリュックサックに小さなキャンプ用のフライパンをひっかけ、腕を通して立ち上がる。
「それじゃあ皆さん。行きましょうか」

 目指すは塔。ある魔女にまつわる、継承のしきたり。
 得られるのは、名声と報酬だ。


 青刀『ワダツミ』。刀でありながら、罠。
 十夜はまるで酔いどれたように歩み出ると、スノージャイアントやホワイトベアたちの前でわざと座り込んで見せた。
 あくびをしながらでも殺せそうな隙の大きさにむしろ戸惑った様子のスノージャイアントたちだが、すぐに気を取り直して一斉に襲いかかる。
 殺しやすい奴から殺すというのは、はやり彼らにとっても常識なのだろう。
 そんな一瞬のこと。
 十夜は地面に放り出していたはずの刀にいつのまにか触れていた。
 いや、いつの間にか『抜いていた』と言うべきだろう。
 刃を露わに、スノージャイアントの拳を受け止めたのだ。
 突然鋭利となった彼の様子に瞠目するスノージャイアント。その隙に、洸汰がとりゃーと言いながら跳躍。スノージャイアントの頭部めがけてバットを繰り出した。
 空中フルスイングによってボッと音を立てて頭を失うスノージャイアント。しかし脳でものを考えるタイプのモンスターではなかったようで、無くなった頭を探して手でぱたぱたと肩まわりを叩いている。
「おっと、もう一発!」
 ならばとばかりに構えた洸汰はスノージャイアントの腹めがけてバットをスイング。
 今度こそ核となる部分を撃ち抜かれたようで、氷で出来た人形のようなものが砕けスノージャイアントも季節の過ぎた雪ダルマのように崩れていった。
「『スノードーム』というだけあって雪にちなんだ敵が多そうですね」
 ジョシュアは白い氷の柱に身を隠しつつリロードを行うと、身体を傾けてリボルバーピストルを発砲した。
 腕を振るようにして放たれた弾丸はホーミングし、ホワイトベアの脇腹へと命中する。
 それだけではない。更に連発したジョシュアの弾丸によってプレッシャーをうけ、ホワイトベアはどたっと二歩ほど後退した。
 そのまま転倒してしまわないようにだろう。だが、そんな隙が命取りだ。
 キドーが袋から取り出した卵をホワイトベアめがけて投擲。
 何の攻撃か分からぬホワイトベアが払いのけようとしたその時、『十字路の女妖精』が出現。掲げたたいまつでホワイトベアを殴りつけた。
 華奢な女妖精の一撃は大した痛みこそないものの、ぶつかった場所を中心に石化の呪いが広がっていく。
 困惑に腕を振り回すホワイトベア。ノリアがここぞとばかりに自らの尻尾をさらした。
「さあ……ここに、おいしいのれそれが、ありますの……!」
 先述したように他者の欲を刺激するつるんとしたゼラチン質の尻尾だ。ホワイトベアは肩口が石化しつつあることも忘れてノリアに片腕を伸ばした。
 これもまた罠だと、多くの者は気付けない。
 ノリアの足元にぱちゃんと広がった水が突如として氷結し、ねじり上がった棘のように突き立った。
 当然伸ばした腕は迎えた棘に突き刺さり、ホワイトベアが痛みのあまり声をあげる。
 その瞬間、『熱水噴出杖』の狙いがホワイトベアへとつけられた。
「――!?」
 ここまでの流れで何が起こるのか流石に察したのだろう。
 ホワイトベアが血の流れる片腕を翳し防御しようと試みるも、吹き付けられるのは高温高圧の熱水流。防御など意味も無く腕が焼け、ホワイトベアはうなりをあげてぶっ倒れた。
 これで終わりのようだ。
「みんなお疲れ様。怪我はない?」
 モンスターを倒し終えたイリスが十夜やノリアたちの身体に怪我がないか確かめてくれる。
 彼女は治癒の担当だ。『輝ける星』なる術を行使してみせると、棘戦法でそれなりに怪我をしたノリアや敵を引きつけるために怪我をした十夜たちの身体がみるみる治癒され、傷口が綺麗な素肌へと変わっていく。
「へえ、やるなあ。お前さん、元からこういうのが得意だったかね」
「苦手じゃあなかったけど……最近色々『ダイナミック』な相手と戦うことが多くってね」
 イリスが肩をすくめてみせる。国を救った英雄達の会話は規模も派手になりがちだ。
 そんな風に言いながら、イリスと十夜は通路の奥へと進む。
 白い氷の柱が立ちならぶ通路はまるで雪のお城だ。
 小窓から差し込む光が氷によって乱反射し、幻想的な風情をもたせている。
 そんな通路の奥にあるのは巨大な壁だった。
「どう思う?」
「古代語、ってやつか」
 試しに洸汰がどかどか殴ってみたがびくともしない。魔法の結界が仕掛けられた壁なのだろう。ご丁寧に透過避けの魔術まで仕掛けられている。
 しかし他に上階へ通じる道はない。十夜は酒場で集めてきた情報を書いたメモをぱらぱらとめくり、この壁についての情報を調べ始める。
 彼の武器は海洋屈指の名声からくるコネクションと、勘の良さだ。
「こんな塔を建てちまうとは、スノードーム一族は大したもんだ」
 そう言いながら壁にぺたぺたとさわり、仕掛けを発動させていく。
「古代語を解読して特定の順序で仕掛けを動かす必要がありそうだな」
「任せて、解読ならできるから」
 イリスが壁に書かれた文字をメモに書き写しつつ、何度かうなって文字を解読していく。
 そして壁を操作すると……。
「動いた!」
 ゴゴッと音をたてて壁がゆっくりとスライドしていくではないか。
 こんな調子で、二人は塔に仕掛けられたいくつもの謎を解いてくれていた。
「よーし! どんどんいこーぜー!」
 洸汰がバットを肩に担いで歩き出そうとした、その時。
「危険ですの」
 ノリアがスッと彼の前へと出て手をかざした。
「罠を、解くこと自体は、得意ではありませんけれど……捕食者なら、どんなところに、罠をはるのか。
 ちょっとだけ、あやしいところが、わかりますの」
 ノリアは非捕食者としていろんな罠(おそらくは漁の罠)にかかりまくった経験から、どういうときに生き物は罠にかかりやすいか。そして罠を仕掛けるならどういう場所が適切かを知っていた。
 より厳密には、『罠はセットにして使うもの』という常識を彼女は身体で知っていたのだ。
「謎解きの後は、だれでも、気が緩みますの。そこが……罠の、しかけどころですの……!」
 そこですの! と熱水噴出杖から熱水流を噴射すると、魔術式の罠が発動して目の前の地面から氷の槍がどかどかと突き出た。
 謎解きをして意気揚々と次の階層へ向かった相手を串刺しにする仕組みだ。
「へえ、よくわかったな。確かに俺でも罠を仕掛けるならココって気がするぜ。でもって、この先進んでからもう一押しするんだ」
 キドーは地面に蜂蜜の入った小瓶を置くと、その場にどっかりと座り込んで酒を飲み始める。別にサボり始めたわけじゃなく、精霊を呼び寄せる彼なりの儀式だ。
 暫くすると氷の精霊がふわふわと彼の周りに集まり始めた。殆どが低位の精霊で、小さい雪ダルマみたいな姿をしているのだが、中には子供程度の知性があるやや高位の精霊も混じっていた。そんな奴にピンポイントで話しかけるのだ。
「俺らこの奥まで行きたいんだよ。でも、罠にかかったらこの菓子が駄目になるかもな。困ったな。罠にかからないように助けてくれたらくれてやってもいいんだがな」
「ホント!?」
 ホントホントーと言いながらキドーが蜂蜜の小瓶を差し出すと、精霊が罠の場所をぺらぺらと喋り始める。
 キドーはそれを悪い顔で聞いてからメモをした。
「おっし、情報ゲットだ。ついでにこの辺りはしばらく安全みたいだぜ」
「本当か!? じゃあオレ、カレー食いたい、カレー!」
 洸汰が目をキラキラしてジョシュアへと振り返った。
 微笑んでそれに答えるジョシュア。
「ちゃんと用意してありますよ。バターチキンカレーにしましょう」
 仲間の助けを借りながらキャンプの用意を調えると、ジョシュアは早速カレーを作り始めた。
 といっても、予め作っておいた凝縮版カレーをお湯で溶かして短い間ぐつぐつやるという時短レシピだ。
 更には鶏肉をヨーグルトとスパイスに浸けたパックをここぞとばかりに取り出して、ナイフをつかって切り分ける。
「うおー! すげー! カレーとチキンがすぐに出来た! 魔法みたいだなー!」
 目をそれこそキラキラさせまくる洸汰に、思わずジョシュアが笑ってしまった。カレーセットの時短レシピも彼にかかれば魔法なのだ。
「わたしにとって、いちばんの料理は、やっぱり、いとしのゴリョウさんの、手料理ですけれど。危険な場所で、ほっとしたときの料理も、格別ですの」
 ノリアもほくほくな様子だ。
「喜んで戴けてなによりです。一緒に紅茶もどうぞ」
 丁寧に紅茶を淹れてやるジョシュア。仲間達はほっこりした時間を過ごせたのだった。


 そんなこんなで、最上階。
「最上階にまってるのはガーディアン、だったな。どんなやつだろ」
 巨大な扉の前に立つ洸汰。いかにもここが最後の部屋だ。実際、イリスいわく古代語でそう書いてあるらしい。
 皆で協力して押し開くと……出迎えたのは巨大な氷のスケリトルドラゴンだ。いや、ドラゴンというのは過剰な表現だろう。
 実際はドラゴニックなシルエットをした巨大な氷の骨組みモンスターである。
 が、そういう見た目をしているだけはあってあげる咆哮には凄まじいプレッシャーがあった。
 常人であれば怯え竦み、人によっては逃げ出してしまうだろう。
 そんな物理的圧力すら感じる咆哮を前に――。
「だいじょーぶ、オレは365日四六時中元気いっぱい! シミズコータ様だからなー!」
 洸汰はまるで平然とした様子で通せんぼをしかけた。
 ガーディアンはそんな洸汰を最大の障害を見なしたのだろう。骨の翼を広げ、羽ばたきと共に吹雪を巻き起こした。
 当然ただの吹雪ではない。氷の針が次々と飛び突き刺さる。
「成程なぁ。こいつは確かに、一人じゃ挑めねぇわけだ」
 謎解きにしろ塔の長さにしろ罠にしろ、多彩な能力と協力がなければ攻略できない塔だ。キアリ・スノードーム自身がここに挑んでいない所からして(彼女的には)ハードモードの挑戦とすらいえる。
 十夜は洸汰と共に前へ出ると、刀を抜いて防御の姿勢をとった。
 飛来する氷針の吹雪を撃ち払い、その一部をガーディアンへと打ち返す。
 そしてそのまま、乗せた魔力を解き放つのだ。
 砲撃――と共に急接近をかけるノリア。その様子に思わず注目してしまったガーディアンから改めて距離をとり、牽制のように熱水流を吹き付ける。
 流石にガーディアンほどになると熱水流を浴びても嫌がる程度で済むらしく、吠えながらドカドカとノリアを追いかける。
 そして、まるで大きく息を吸い込むかのように口を開いた。
「皆、回復範囲に!」
 何が起きるのか本能的に察したイリスが叫んだ直後、ガーディアンの口から極寒のブレスが吐き出された。
 ノリアの熱水流がたちまち凍ってしまうほどの魔法だ。が、そんな中にあってイリスは『輝ける星』を発動。防御にまわった十夜たちに盾役をさせつつ、仲間達を一度に治癒する。かばう対象を増やせるイリスの後ろにキドーとジョシュアをつけ、ノリア、洸汰、十夜をかばい合いつつ順繰りに回復させながらブレスを凌がせる。
 ギリギリの時間で耐えたイリスは、ぷはあと大きく息を吸った。
 直後、ジョシュアとキドーが飛び出していく。
「仕事だぜワイルドハント!」
「ここまで来たら惜しまず撃ちます!」
 キドーの解き放った妖精狩猟団。そしてジョシュアの撃ちまくった銃弾。それらがブレスを撃ち尽くして疲弊したガーディアンへと殺到する。
 その巨体を打ち砕くには、充分な決定打であった。


「これが、完成したカイラ・ロゴス……」
 塔を攻略しカイラ・ロゴスの片割れを持ち帰ったジョシュアたち。彼らの前で、キアリはもう片割れの剣と合成する儀式を見せてくれた。
 勿論、ジョシュアたちへの信頼と感謝を現しての招待である。そうそう見れるものではないし、次に見れるのは数十年後(あるいはもっともっと)かもしれない貴重な瞬間だ。
(キアリ様が知識を良き事のために使われますように……)
 心の中で願いつつ、ジョシュアはちらりとキドーたちを見た。
「今はフェデリアが中心だが、将来的には混沌を手中に収めたいと思ってる。その為に必要なのは人脈だ。もし、この仕事がうまく行ったら今後俺とウチのかわいい連中の為にその知識と力を貸しては貰えないかい?」
 儀式が終わってから、キドーは早速キアリに人脈作りを始めていた。遠目からは色っぽい魔女のお姉さんを口説いているように見えるが、これも立派なビジネスだ。
「自分に足りない力があるなら他から借りればいい。そうだろ? その剣みたいにさ」
 ええ、その通りね。キアリはキドーに笑いかけるのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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